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第7話

Auteur: ちょうどいい
郁人は、まさか私がそこまで言うとは思っていなかったのだろう。

一瞬だけ目を見開き、それから紗季のほうをちらりと見て、取り繕うように口を開いた。

「澪華、いくらなんでも、この寒い中で今すぐ出て行けっていうのはきついだろ。引っ越すにしたって、次の部屋を探す時間くらいは必要じゃないか?

それに、若い子って、ちょっと見栄を張ったりするもんだろ。注目されたくて話を大きくしただけで、本気でお前の家をどうこうするつもりだったわけじゃない。そこまで追い詰めなくてもいいじゃないか」

私は黙って郁人を見返した。

「部屋を探す時間がないなら、ホテルにでも泊まればいいでしょう」

そう言ってから、私は郁人をまっすぐ見た。

「今すぐ、あの女を私の家から出て行かせて」

私が言い終えた、その直後だった。

紗季が急に息を詰まらせたかと思うと、胸元を押さえたまま苦しそうに壁にもたれかかった。

「え……ちょっと、喘息じゃない?」

すぐ近くにいた女が、息をのむように声を上げる。

「「まずくない?これ、ひどくなると危ないんじゃ……」

紗季の顔がみるみる青ざめていくのを見て、さっきまでこちらに向いていた
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    オークショニアは郁人に視線を向け、淡々と告げた。「本間様。本日中にお支払いが確認できない場合、当オークションハウスとして法的な手続きに移らせていただきます」その言葉を聞いた途端、郁人はその場にへたり込んだ。そして、縋るように私の足元に手を伸ばす。「頼む、澪華……俺たち夫婦だろ。今回だけ助けてくれ。捕まりたくないんだ。このままだと本当に終わりなんだよ」私はその手を冷たく振り払った。「よくそんなこと言えるわね。あの女と一緒にいたとき、夫婦だったことなんて思い出しもしなかったくせに。今さら何を言ってるの」私に頼っても無駄だと分かったのだろう。郁人はすぐに紗季へすがった。「紗季、今までお前に渡した金だって、相当な額になってるはずだ。足りないなら、買ってやったブランド品でも何でも売ってくれ。頼む、少しでも金をかき集めてくれ。俺は刑務所なんかに入りたくないんだ」あてにしていた相手が、見かけだけの男だったと分かって、紗季はますます苛立ったのだろう。躊躇なく、郁人の頬を叩いた。「何言ってるの?自分が今どんな立場か、分かってる?こんな状況で、まだ私に金を出させる気?」まさかここまであっさり切り捨てられるとは思っていなかったのだろう。これまで紗季に注ぎ込んできた金のことが頭をよぎったのか、郁人は顔を歪めた。そのまま紗季の腕をつかみ、力任せに床へ押し倒した。たちまち、豪華なオークション会場に紗季の悲鳴が響き渡った。警備員が駆けつけ、ようやく二人は引き離されたが、その頃には郁人の顔は紗季に引っかかれて傷だらけになり、紗季の体にもあちこちに痣ができていた。二人とも見るに堪えないほど無様な姿だった。オークション側は落札代金未払いの責任を問う形で、その場で郁人を警察へ引き渡した。一方の私は、すぐ卓也のもとへ向かい、急ぎで離婚協議書を作成してもらった。卓也は得意げに書類を軽く掲げてみせた。「約束どおりだ。あいつには財産分与なしで出て行ってもらう」私は満足してうなずいた。「報酬はいくら払えばいい?」すると卓也は眉をひそめた。「金の話なんて野暮だろ。クズ男にちゃんと報いを受けさせる。それだけで十分スカッとするじゃないか」私たちは顔を見合わせ、思わず笑い声を上げた。法律事務所を出る頃には、あの

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    郁人は、まさか私がそこまで言うとは思っていなかったのだろう。一瞬だけ目を見開き、それから紗季のほうをちらりと見て、取り繕うように口を開いた。「澪華、いくらなんでも、この寒い中で今すぐ出て行けっていうのはきついだろ。引っ越すにしたって、次の部屋を探す時間くらいは必要じゃないか?それに、若い子って、ちょっと見栄を張ったりするもんだろ。注目されたくて話を大きくしただけで、本気でお前の家をどうこうするつもりだったわけじゃない。そこまで追い詰めなくてもいいじゃないか」私は黙って郁人を見返した。「部屋を探す時間がないなら、ホテルにでも泊まればいいでしょう」そう言ってから、私は郁人をまっすぐ見た。「今すぐ、あの女を私の家から出て行かせて」私が言い終えた、その直後だった。紗季が急に息を詰まらせたかと思うと、胸元を押さえたまま苦しそうに壁にもたれかかった。「え……ちょっと、喘息じゃない?」すぐ近くにいた女が、息をのむように声を上げる。「「まずくない?これ、ひどくなると危ないんじゃ……」紗季の顔がみるみる青ざめていくのを見て、さっきまでこちらに向いていた視線が、また彼女へと流れていくのが分かった。「かわいそうに……あんなふうに追い詰められたら、そりゃ発作も出るわよ。いきなり出て行けなんて言われたら、相当こたえるでしょうし」「やっぱり強すぎる女って、男に敬遠されるのよね。慣れない土地で部屋探すのだって大変でしょうに……やり方はまずかったとしても、本当に家を売ったわけじゃないんでしょう? そこまで追い込まなくてもいいんじゃない?」「ほんとよ。この寒い時期に今すぐ出て行けなんて、少しくらい猶予をあげてもいいじゃない。さすがに厳しすぎるわよ」「さっき旦那さんも言ってたじゃない。すぐ疑うタイプだって。あれ、愛情っていうより嫉妬よね」けれど――紗季のその安っぽい芝居は、すぐそばにいた私には見え見えだった。あまりにわざとらしくて、まともに相手をする気にもなれない。私はその場から動かず、もちろん手を貸すこともしなかった。すると郁人はいきなり私を突き飛ばし、苛立ちを隠そうともせず吐き捨てた。「澪華、どんな事情があったって、今はそれどころじゃないだろ。お前が放っておくなら、俺が連れて行く」そう吐き捨てると、郁人

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  • 別宅に夫の愛人がいた   第3話

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