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第2話

Author: 森野白鷺
友人たちは次々と前に出て、晴香を責め立てた。

「晴香、いくらなんでもやりすぎよ。自分の家だからって、そんなふうに暴れていいと思ってるの?」

「征司、早く一花を病院に連れていって、けががないか診てもらいなよ。こんな頭のおかしい女、相手にしなくていいから」

晴香は痛みで冷や汗を流しながら、床に敷かれたウールの絨毯を必死に掴んでいた。手の甲には青筋が浮き上がっている。

「征司」

歯を食いしばり、震える声で言った。

「私と甘奈、どちらか一人しか選べないなら、あなたはどっちを選ぶの?」

征司は立ち上がり、見下ろすように晴香を見た。

「お前を選ぶ。けれど甘奈も手放せない。一花には父親の存在が必要なんだ。どうして二人を受け入れられない?みんなでうまくやっていけばいいだろう?」

晴香は、あまりの馬鹿馬鹿しさに、息をするだけで血の味がするような気がした。

「受け入れる?不倫相手と隠し子を、私に受け入れろって言うの?」

「言い方に気をつけろ!」

征司は眉をきつく寄せ、厳しい声で言った。

「不倫相手だの隠し子だの、何を勝手なことを言っているんだ。甘奈は俺にとって一番大切な女友達だ。一花には何の罪もない。二人をそんなふうに侮辱することは、俺が許さない」

晴香は力なく笑った。涙が目尻を伝ってこぼれ落ちた。

三年前、征司は婚姻届を出した役所の前で、土砂降りの雨の中、膝をついて誓った。

「俺、賀来征司は誓う。一生、望月晴香に少しのつらい思いもさせない。もしこの誓いを破ったら、どんな罰を受けても構わない」

たった三年で、誓いは笑い話になった。

腹部の激痛はいっそう激しくなり、晴香は下半身から熱いものが流れ出すのを感じた。

血が太ももの付け根を伝って流れ落ち、床に滴って、赤く広がっていく。

「征司……お腹が、痛い……子どもを……助けて……」

晴香は痛みに耐えきれず、征司のスラックスの裾を掴もうと手を伸ばした。

だが征司は嫌悪をあらわに、一歩後ずさった。

冷たい目で彼女を見下ろす。

「今度は何の芝居だ?嫉妬に狂って、そんな下劣な真似までするのか?」

そのとき、傍らで甘奈が悲鳴のような声を上げた。

「あっ、一花のおでこから血が出てる!征司、一花が血を出してるわ!」

征司はたちまち顔色を変え、一花を抱き上げた。

床に倒れている晴香には、一瞥もくれなかった。

「行こう。小児科で手当てしてもらう」

彼は甘奈の肩を抱き、一花を腕に抱えたまま、振り返ることなく出ていった。

友人たちも後を追うように散っていった。

去り際、彼らは晴香を嘲る言葉を残していった。

「芝居もやりすぎると誰も見てくれないよ。いい加減、起き上がったら?」

広い邸宅は一瞬で静まり返り、晴香だけが冷たい床に倒れ伏していた。

腹部を絞られるような痛みに、意識が遠のきそうになる。

血はますます流れ出し、絨毯の上に、ぞっとするほど赤い水たまりを作っていった。

家政婦は今日、征司が休ませていた。

家には、彼女を助けてくれる人など誰もいない。

晴香は最後の力を振り絞り、玄関のほうへ這っていった。

高価な絨毯の上に長い血の跡を引きずりながら、ようやく廊下の固定電話に手を伸ばし、119番に通報した。

三十分後、晴香は救急車で病院へ搬送された。

看護師が駆け込んできて、血まみれの晴香を見るなり、切迫した声で叫んだ。

「ストレッチャーを早く!すぐに処置の準備を!」

数人の医師と看護師が慌ただしく晴香をストレッチャーに乗せた。

晴香の意識はすでに霞み始めていた。

耳に届くのは、入り乱れる足音と、医療機器の電子音ばかりだった。

「心拍が落ちています!血圧も低いです!」

「ご家族を呼んで同意書に署名してもらってください!緊急処置の準備を!」

看護師は手術同意書を手に廊下へ走り出し、大声で呼んだ。

「望月晴香さんのご家族はいませんか?賀来征司さんはどちらですか?」

廊下には、誰もいなかった。

晴香はストレッチャーに横たわったまま、最後の一滴の涙をこぼした。

唇を強く噛みしめ、声ひとつ漏らさなかった。

痛みで、神経はすでに麻痺していた。

心の奥にわずかに残っていた期待も、流れ続ける血とともに完全に消えていった。

看護師は額に汗をにじませ、電話を握って救命室へ戻ってきた。

「先生、賀来さんに電話がつながりません!すぐに切られました!」

「かけ続けて!患者さんは大出血しているのよ。同意書がなければ手術に入れない!」

医師が厳しい声で急かした。

看護師は震える手で、もう一度征司に電話をかけた。

電話がつながった。

「賀来さん、奥様が大出血を起こしています。緊急処置が必要です。今すぐ来て、同意書に署名してください!」

看護師は電話に向かって必死に叫んだ。

電話の向こうから、征司の苛立った声が聞こえた。

「いつまで騒ぐつもりだ?一花はおでこをけがして泣いているんだ。あんなくだらない芝居に付き合っている暇はない。もう演技はやめろって伝えろ!」

通話は無情にも切れた。

看護師は電話を握ったまま、信じられないという顔でその場に立ち尽くした。

晴香は全身の力を振り絞り、ゆっくりと目を開けた。

「持ってきて……私が、自分で署名します」

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