LOGINリリスをかばい、魔餉気の直撃をその身に浴びたマキシマ。大したことはないと強がるが…足元がぐらつき、その場に倒れてしまった。急ぎ伊蔵が容態を確認するが、呼吸がかなり弱っているようだ。一刻も早く病院に運ばなければ危険だろう。次いで倒れたリリスに駆け寄る影光とフレイヤ。魔餉気の余波を浴びてしまったのか、気絶している。マキシマが庇ってくれたとはいえ、こちらも一刻も早く病院に運ばなければ…。慌てる一同を見て、オーディンが高らかに笑う。まるでその姿を愚かそのものと断ずるように。「ふははは。滑稽、滑稽千万。庇ったところで余の魔餉気の余波は防げぬ、ぞ。一人死ぬだけで済むはずが、愚か者二人をまとめて片付けられたわ」「こ、この…!!絶対に許さん!お前だけは、絶対に許さんぞ!!」怒りに震え立ち向かうサイラスだが…オーディンは動じない。いやそれどころかまた高笑いをして、サイラスをしっかりと甲冑の奥から赤い眼で睨んだ。「許さぬ?許さなければどうする。余に挑むか?それでも良いぞ。貴様と勝負してやってもよい。お前がその命を懸けるのならば、な」「ぐっ…!」その言葉に怯みつつも一歩前に進むサイラスだが…それを影真が必死に止める。まだ早い、あの魔餉気の正体を掴まねば我らに勝ち目はない…と。そう、それはサイラスもわかっていたことだ。しかし、幼き頃からの友であるリリスや、かつての後輩マキシマを傷つけたオーディンを許すことはできなかった。今は勝てぬと警告する理性、友を傷つけられた怒り、その相反する衝動がサイラスを揺さぶりつつも…。サイラスは諦めたように俯いた。拳は血が滲むほど握りしめながらも。「ハハハ…臆病者め。友を傷つけた余が憎くないのか?余を許すのか?貴様の怒りは、想いとやらは、しょせんその程度だったか。フハハハハ!」「サイラス殿、挑発だ。乗るな!」「わかっている…だがしかし、おのれ…ぐううっ、くそっ!」サイラスを必死に止める影真と、悔しさのあまり握った拳を地面に打ち付けるサイラス。
調理タイム終盤、ついに動いたオーディン。しかし、その行動は誰もが目を疑うものだった。急に素早く動いたかと思うと、対戦相手であるリリスのパフェを完全にコピーしたのである。それも、ほんの一瞬で。会場の全員が度肝を抜かれる。急にそんなことできるわけがない。それまでオーディンは一切動いていなかった。動き出した途端に…目の前に唐突にパフェができていたのだ。「あ、ああ…信じられない、いったいどうやって…?」「スポンジの用意も、フルーツのカットもしていなかった!そんなはずはない!」「ま、魔王…あれが料理の魔王オーディンなのか…」見ていた影光や、勝負に加わっているマキシマ、伊蔵も唖然としている。サイラスは悔しそうに歯噛みし、影真も冷や汗をかきながらオーディンを睨む。暗黒食王はただ静かに目をつぶるが…。「だ、大丈夫。ママのパフェが…完全にコピーできるわけがない!ママのパフェは世界に一つ、ママしか作れないから…。あんな簡単にマネできるもんか!」フレイヤは気丈にそう言う。母を信じる愛がそう言わせるのだろう。リリスもその通りだというようにフレイヤを見て力強く頷くが…。オーディンは、その言葉を侮蔑するかのように高笑いをした。「フハハハ…ハーッハッハッハ!これが偽りの母娘の情か!掃きだめに堕ちて腐ったクズ肉のほうがまだ価値がある、ぞ!所詮失敗作、貴様を捨てた余の見立てに一分の狂いもなかったわ!!」あまりにもひどい侮辱の言葉を吐いた後、オーディンはフレイヤを睨み…嘲るような声で告げた。「クズ肉にも劣る失敗作よ。貴様の言った戯言、一つだけ的を射たものがある。余は貴様の偽りの母の料理をコピーしたわけではない…。それを遥かに凌駕するものを余は生み出した…いや、生み出すのだ!」そう言うとオーディンは甲冑に備えた包丁を抜き、高く天に掲げる。一体何をする気だ、と観客がざわざわするが…。なんと、オーディンはその包丁を振り下ろし空を切った。それを二度、三度、四度…いや、その動きは速すぎてもはや数えることができない
さあ、第三試合、リリス対オーディンの最終決戦が始まった。料理テーマはパフェ…リリスの得意分野である。勇んで準備をするリリスに、サイラスと影真が協力を申し出る。「リリス、私も手伝おう。かの者を追い詰めるこの好機、見逃すわけにはいかない!」「この影真もなんなりとお使いください!悪は絶対に許さん!」その申し出にリリスは優しく微笑むが…柔らかくそれを拒否する。「悪いわね。これは私の義憤…というか私怨による闘い。誰の力も借りられないわ、申し訳ないもの。それに…もしもの時は私の子たちを護ってほしいから」そう言ってリリスはフレイヤと影光を見る。勝負が終わった後、オーディンがどういう行動に出るかわからない。暴れて被害が出る可能性もある。サイラスたちにはその時に備えてフレイヤと影光を護ってほしい。そういう願いだった。それを承知した二人もしぶしぶ引き下がるが…その代わりに別の二人が協力を申し出る。それは、マキシマと伊蔵だった。「リリスさんよ、俺達にゃ杉森をやられた恨みがある。いわばあんたと一緒、あいつに対する恨みで動いているってわけだ。あいつの首を殺れるなら死んでも何も惜しかねえ」「この伊蔵も、あやつを討つためお主に協力させてもらうぞ。盾にでも囮にでも捨て駒にでも何にでも使え。いらんと言われてもサポートさせてもらう」「…あっそ。じゃあ好きにしなさい。言っとくけど、死んでも謝るくらいしかできないからね。ま、私も生き残れるかわからないけど」そう言いながらもリリスは笑い…マキシマと伊蔵に指示を出したのだった。――――――――――さて、目覚めず担架で運ばれる杉森を見ながら、影光は恐怖を覚える。先ほどオーディンが杉森を吹き飛ばした時、彼はまったく近くにいなかった。殴り飛ばしたりなど決してできなかったはずだ。それに、高速で吹き飛ぶなど…たとえ殴ったり蹴ったりしても、人はあんな不自然に勢いよく吹き飛ぶだろうか。(あいつ…オーディンがやったのは間違いない。でも、どうやって離れた距離から攻撃したというんだ?それに
――さて、気絶から回復した他の審査員たちが影光の勝利を確認、まあDさんが言うならそれでいいでしょう、異議をつけてまた暴れられても困るし、と追認した。これで影光の勝利は確定したのである。残すは大将戦、リリス対杉森だが…審査員が最終戦のテーマを発表する。それは…なんと『パフェ』! この言葉を聞いた瞬間、リリスと杉森の顔色が変わった。まさに、正反対とも言うべき色に。「あら?パフェなら得意だわ」と嬉しそうなリリスに対し、愕然とした表情の杉森。そう、杉森の異名は『カレー王者』。カレーに特化した料理人なのだ。いや別にパフェも作れないことはないが、はっきり言って不得手である。しかも実は、リリスはG.O.D.在籍時『甘味三魔人』その筆頭と呼ばれた人間…スイーツなら組織でも指折りの職人だったのだ。どう考えても杉森がパフェ対決で勝てる相手だとは思えない。「…まあその、なんだ。運が悪かったな」「とりあえず、一応手伝ってやるよ。一応」…落ち込んでいる杉森を慰めるように、伊蔵とマキシマがそう声をかけた。――反面、チームかがやき側はすでに終戦ムードである。どういうパフェを作るか楽しそうに考えながら前に出るリリスと、それを誇らしそうに見送るフレイヤ。出生や育ちに関わる深刻な話を聞かされた後だというのに、いつも通りのようだ。影光が心配そうに大丈夫なのかと聞くが…。「うーん、それほど気にしないよ。だって、私は私、ママはママだし。実の親子じゃなくてもそれは何も変わらないから」とフレイヤは笑って返すのみだった。それが本心なのか、内心を隠してそう振る舞っているのかはわからないが…この子は強い子なんだな、と影光も感心する。さて、先の闘いで共闘したサイラスと影真も、何やら言葉を交わしている。いずれ落ち着けば料理対決をしようと朗らかに約束しているようだ。強者同士、やはり競い合いたいものなのかもしれない。さて、勝負の舞台に立つリリス。それに対し、もうこうなれば仕方ないと諦めつつも勝負に向かう杉森だが…。次の瞬
さて、試合会場ではマキシマと影光の闘いで盛り上がっている頃…。試合会場の遠くに停めた超絶高級車『ロールスロイス ファントム』から、その勝負を窺う者がいた。運転席にいたサングラスの女性…闇の料理組織『G.O.D.』の幹部の一人である『ラミア』が沸き立つ観客を見て忌々しげに呟く。「ふん…あの三人、本当に使えないわね。観客を沸き立たせてどうする。虫けらを圧倒的な力で踏み潰してこそのG.O.D.でしょうが」会場に忍ばせた調査員から聞いた話では、一試合目は引き分けになったという。この勝負もどう転ぶかわからない、とのこと。それでは目的に反している…ラミアはそう考えた。総帥オーディンの子ながらも失敗作の烙印を押されたフレイヤ、そしてそれを秘密裏に連れ出し育てたリリスへの制裁にはならないのだ。特にリリスには徹底的に潰れてもらわなければならない。もう二度と料理などしたくないと思わせるほどに。舌打ちをするラミアだが…後部座席に座っていた男が静かに言う。「…なればやはり。余が出るべきであろう、な」「え!?そ、そんな!貴方様自らが出るほどでは…」ラミアは慌ててそう言うが…後部座席の男は止まらない。「よい。時には下々の者へ、余自ら教えてやらねばならぬ。料理とは楽しいものではない。笑い合い、愛を育むものではない。食材を支配し、他者を蹂躙し、命を弄ぶものだと。そう…すべてを圧倒的な絶望に沈めるものだ、と」明らかに偏った危険思想を吐きながら、後部座席のその男は車から降りる。そして…花宮町の地をその足で踏みしめた。――――――――――さあ、両者の料理が出揃う。まずはマキシマ作のラーメン…『黄金比率の中華そば』から、審査員実食!審査員A曰く:「おおっ、スープが黄金色に輝いている!鶏の芳醇な旨味とまろやかな醤油のスープ、鶏油の芳しき香りが見事に調和し、麺と具に力を与えている!ううむ、何口飲んでもまったく飽きさせないぞ!」審査員B曰く:「ほほー!これは美味い!すべての素材が隠れず、しかし主張しすぎないスープ!このスープの
さあ、結集したG.O.D.チームとかがやきチーム。第二試合であと一戦を残しながらも、この闘いはすでに総力決戦の様相を呈していた。「サイラスが向こうにつくことは想定していた。だが、あの影真という男…これは想定していなかったな。奴もサイラス同様、とんでもない手練れだぞ」かがやきチームのメンツを見て杉森が眉間にしわを寄せる。サイラスに影真…料理を生業とする者ならば、知らぬ者はモグリと言えるほどの料理人だ。これは苦戦を強いられるだろうと全員が考え込むが…。「…フッ、どのみちいずれ倒さなきゃいけねえ敵だ。たまたまそれが今だっただけのこと。行くぞ、俺達の力を結集して勝利を掴み取る!」マキシマが杉森と伊蔵を鼓舞するようにそう言う。そして…自らのラーメンについて完成形を語った。マキシマのラーメン…それは言わば『黄金の中華そば』。鶏清湯をベースに醤油ダレと鶏油を用いる。麺は自分たちで用意した縮れ麺、具は豚肩ロースの低温チャーシューに鶏むねチャーシュー、穂先メンマに九条ねぎ、そしてゆずの皮を少し。万人向けのラーメンといったものだ。(ラーメンとはあまりにも多種多様、好みも千差万別だ。万人が100点を出すラーメンなど作れるわけがねえ。ならば俺が選ぶのは…最大公約数のラーメンだ!)そう、マキシマのラーメンの完成形はそこにあった。百人が食べて百人が80点以上を出すラーメン…。こと料理勝負においては勝利への最適解とも言えるだろう。そう考えて動き出したマキシマたちだが…ちらりと影光の方を見る。彼はサイラスと影真に自分の完成形ラーメンを話しているようだ。内容までは聞き取れないが、サイラスは深く頷き、影真はガッツポーズを取っている。いったい何を作るつもりなのか…?しかし、それを気にしても仕方がないとマキシマはスープの準備を進めた。(フッ、何を作ろうが構わねえ。いや、むしろ見せてもらいたいもんだぜ。天才たちが結集して作る『万人が好むラーメン』を!)――――――――――一方、マキシマが動き出した少し後に影光たちも動き出す。「影光様!この影真、まずは必殺の出汁とタレを持ってまいりますぞ!こういうこともあろうかと、もちろん用意しておりました!もちろん麺も!すべてお任せ下され!!」そう言って影真が走り出す。影光のラーメンに必要なものを準備しに。そ