تسجيل الدخول歯車式手回し泡立て器の図面を見せ、構造を説明する。手回し式で、上から支えているだけで、あまり力や手首のスナップを利かせることもなく、一人でも大量の材料をかき混ぜることができるだろうと解説。本当はこっちを先に作ってもらうべきだったのだろうが、試しに作ってもらった泡立て器で満足してしまった俺のおかげで二度手間になってしまった。
ギド親方には、マヨが商業ギルド預かりのレシピになったことと、それにより大量生産大量消費の可能性が出てきたこと、そして、かき混ぜる人手を減らすためにこの歯車式手回し泡立て器が利便性の良い道具として働いてくれるであろうことを説明する。
「なるほど……仕組みはわかった。作り方もわかった。後は値段だな。人一人雇う人件費より安けりゃそれなりに売れてくれる……とみていいな? 」
「それだけじゃなく混ぜ棒でかき混ぜて大量にソースを作ったりしている大きめの飯屋でも、もしかしたら人を減らせてその分他に人を回せると好評になるかもしれない。そこまでじゃなくても、物珍しい機械を使って
午後からは、畑から完全に出て、外側を回って近寄ってくるミニボアを狩り続ける……という狩りに変わった。休んでる間にも少しばかりにじり寄ってきていたらしく、畑のすぐそばにいたミニボアを一匹狩って、お仕事開始の号砲が鳴ることになる。 と言っても午前中とほぼやることは同じで、セルフィと別れてミニボアを倒しながら、徐々に森の方向へ進んでいく。セルフィはテンポよくポンポンとミニボアの首筋にショートソードを突き立てては、一撃で瀕死にし、そのまま放置して血抜きをしていく。 俺はそのセルフィの動きを見ながら、自分の分もやりつつ、セルフィがその場に置きっぱなしにしていったミニボアの血抜きをしていく。血が抜けたら収納して……とやっていくが、セルフィがテンポよくやっていくので俺の周りには逆さに吊られた空中に浮くミニボアが複数体存在する、不思議な光景になっている。 ここが冷蔵庫の中や解体所の中だと、一般的な肉屋の光景で済むんだろうが、周りにあまり何もない草原と畑の入り混じった場所での空中浮遊肉なので、こっちを見た村人がぎょっとして逃げていくのが見えた。まあ、いいんだ。実利があるなら多少の見た目の悪さは。 セルフィがかなり早いペースでミニボアを狩っていくものだから、段々俺の周りの肉や地面が血だらけになり始めた。その血に近寄って他のモンスターが寄ってくるならまだいいんだが、ミニボアも自分の仲間の血にまみれるのはあまり好まないらしく、俺の周りには近寄ってこない。 このままセルフィに好きなだけ暴れてもらうのも悪くはないし、俺がひたすら血抜き担当でもいいんだが、それもちょっとフラストレーションがたまるというか、俺もちゃんと仕事をしてる気分になりたい。 セルフィが置いていったミニボアは充分に血抜きがされていく、という前提に基づいて、どこにどれだけミニボアを倒した跡があるかを覚えておいて、俺も戦闘に参加することにした。 ◇◆◇◆◇◆◇ 午後からも一生懸命仕事をした結果、今日一日で倒したミニボアの数は100を超えた。セルフィとバラバラで行動したことも大きい。村長に一声かけて、依頼の達成報告をもらう。「今
村の外側まで大きく回って、まずは被害の大きそうな畑から見ていく。畑一枚当たりで考えると、二割から三割ほどの作物が荒らされてしまっている。麦は踏まれると強くなるとは言うが、収穫直前にこれでは商品や食い物にならないだろうな。 早速一匹目のミニボアを見つけたので、さっと近寄って首筋にショートソードを入れて血を抜き、畑から引っ張り出して畑のそばに横たえておく。さすがに畑を血で汚されるのは好まないだろうし、かといって畑から追い出してから倒すのでは余計な被害が出かねない。 冷静に一匹ずつ、ミニボアを倒していく。本当に大量繁殖しているかどうかは置いといて、畑一枚あたりに一匹は潜り込んでいる感じだ。畑が……30枚ぐらいあるから、少なくとも30匹は倒せるな、という感覚でまずは一枚一枚畑を確認していく。 そして、ミニボアがいたら倒して畑から引きずり出して、畑の横に並べて置いておく。畑の中を移動しながら戦う都合上、いつものアイテムボックスで血抜きをしながら戦う方法は封印だ。 セルフィが時々集めてくるミニボアを血抜きが終わったかどうかを確認しながらアイテムボックスに詰め直していく。普段よりちょっと手間だが、実質二倍速で作業をしているので、やはり総合すると五割増しぐらいのスピードで仕事が進んでいることになる。 午前中の間にすべての畑の見回りを終わり、セルフィと確認し合ったところで、畑の外側に生息しているであろうミニボアを予防措置として倒していく手はずとなった。 外側とはいえミニボアもそこそこ生息領域が広いモンスターではあるらしいのだが、村の周辺に近寄らないように予防線を張っておくのは大事だろう。 村の畑から出て、目に見える範囲ぐらいの間にいるミニボアをまた一匹ずつ狩り始める。今度は畑の外なので、血も抜き放題だし逆さにし放題だ。手順良く倒しては半分格納、血抜きが終わったら完全収納、と手順良くやっていく。 途中、セルフィが倒して血抜きをしたまま放置したのであろう跡を見つけたので、血が抜けていることを確認してアイテムボックスに収納していく。ワイルドボアは今のところ出てきていないのが救いか。 ワイルドボアの相手を一人でやる
パルム、というのがこの村の名前らしい。それほど人口は多くないらしく、村というよりさらに小さい集落、というほうがしっくりくる程度の、数十人程度が暮らしている様子の場所だ。村の裏手……街道から見て反対側には畑が広がっている。 この畑がある都合でここに集落があるのだとすると、毎日ボコマズの街やその更に向こう側の村から通うとなると中途半端な上に、きっとここが作物を育てるのにちょうどいい場所だったのだろう。 しかし、街の城壁に囲まれない場所では周辺のモンスターの状態によって環境や危険度を左右されるのは仕方がないところ。今回も”そういう依頼”ということなんだろう。 パルムの村の中に入り、一番大きい家のほうへ向かっていく。村長や代表なんだから一番大きい家に住んでいるだろう、という偏見でしかないが、それでもおそらく間違ってないだろうところに向かう。「すいません、誰かいますか」「なんじゃい、どちら様かな」 爺さんらしき人が一人出てきた。長老って威厳はないが、気安そうな爺さんが一人出てきた。気難しそうな人でなくて良かった。「冒険者ギルドから来ました。ミニボアの繁殖で困ってると聞いたので」「おお、来てくれたか。待っとった。今年はグレートボアの大繁殖期らしくてな。そのおかげでワイルドボア、ミニボアの数も増えておってな。畑を掘り返されて困っとるところなのよ。その畑の警備をお願いしたいんじゃが……一日銀貨二枚、倒したミニボアは二匹を除いて好きにしてもらって構わない、という条件のはずだが、聞いておるか? 」「ミニボア二匹を残す件以外はおおむね。ちなみに、ミニボア二匹の理由を聞いても? 」「単純に、畑を荒らされてる分食い物がないからその腹いせに食い返してやろう……というだけじゃ。深い意味であるとか、少しでも依頼料をごまかそうとかそういう意味ではない。一匹残らず狩った自分たちのもんだと言い張るなら、それでもかまわんて。ただ残してくれるといろいろ手間が省けてうれしい、程度のもんじゃ」 なるほど。なら、二匹ぐらいなら
常設ではない依頼を見ていく。村に現れるゴブリンの定期駆除、わかっている場所のゴブリンの巣の掃除、ミニボアの大発生による畑の警備、村の倉庫の整理手伝い、いろいろある。しかし、ゴブリン退治や定期駆除のほうはDランクからの依頼となっている。まだ受けられないな。 村の倉庫の整理手伝いなんかはFランクからでも受けられるようになっているが、村までの距離と受け取れる報酬なんかを考えると、効率はあまりよろしくないな。ちょっと悪いけどパスさせてもらおう。 そして、ゴブリンはどうやらこの世界では面倒なモンスターの範囲らしい。きっと、駆除するにも集団行動をしっかりしてくる、統率の取れたモンスターなのだろう。 コボルトがその分弱いというわけではないのだろうが、コボルトは低ランク向けのダンジョンのモンスターとしても出るところを見ると、ゴブリンのほうが厄介なのだろう、と考えておいたほうがいいな。「うーん、社会的信用もそうだが、きちんとした依頼っぽいものを受けるためにはまだまだ努力が足りないらしいな。Dランクからということはかなり大変な戦いになるらしいし、まだ常設依頼以外をするにはちょっと効率が悪そうだな。どうする? 一応Eランクでも受けられる依頼はあるようだけど」「そうですね……せっかく朝から活動できるんですし、近くの村へ行って移動時間分だけ稼ぐお金が少なくなりますが、それでも名前を売りに行くのはありだと思います。私たちも名を売りに出かけましょう。一番近くの村で何か仕事がないか探してみるのがいいと思います」「一番近くの村……地図が必要だな。まずは地図を探そう」 書棚を漁って周辺地図を探しだし、近くの村の位置や隣町までの距離などを、この街に来て十数日目にしてようやく拝むことになった。そういえば、俺も南門から入った当初は近所の村から出稼ぎにきた、という表向きの理由で来てることになっているんだったな。 隣村の名前を近い順に頭に思い浮かべて、近くて楽そうな依頼を探す。すると、やはり近くの村ではミニボア……またミニボア狩りか、と思うところではあるが、うっかりワイルドボアなんかが出てきた場
今日もいつもの朝を迎える。本当に、このあたりはあんまり雨が降らないんだな。時期的なものだと思いたい。きっと、梅雨ではないにしろ雨期は存在するんだろうな。でなければ草原など自然に維持されるようなものではない。「おはようございます、ご主人様。今日も頑張りましょうね」 セルフィも昨日はリバーシに勝ってからゆっくり眠れたからなのか、いつもより目覚めも快調の様子。さて、今日は何をしようかな。 清潔魔法を使って服を洗って体の身支度を済ませて、綺麗に服装を整えたところで昨日の残り物のご飯をもらいに食堂へ。「おはようリンカちゃん。今日も朝食と、お出かけ用のお昼ご飯もよろしく」「おはようございます。座って待っててください、すぐお持ちしますね。お昼は朝を食べ終えたぐらいで用意できるように頑張ります」 テーブルに座ってしばらく待ってる間に、今日やることを決めようと考える。 三日前は薬草採取と肉集め。二日前は一日豚骨スープ作り。昨日は骨焼きと午後から肉集め。そうすると、今日はできるだけ被らないようにするには……薬草採取かダンジョンかってところだな。 もしくは、新しく依頼を探してそれを受けてみる、という手もある。しかし、Eランクでも受けられる常設以外の依頼というのは、ちゃんと稼げる範囲で存在するんだろうか。それを色々と確かめてみるか。特になかったらダンジョンに行こう。「よし、今日の予定を決めた。とりあえず冒険者ギルドで依頼探しだ。何かEランクでも世の中に貢献できる、胸を張って人の役に立てたと言えるような依頼があればそれをこなすことにしよう」「そういうのもいいですね。みんなのお腹を満たすことも必要ですが、もっとより明確に他人の役に立てることがあればそれに越したことはないと思います。やる気も名誉も信用も得られて何重もお得ですね」 名誉や信用が欲しくて仕事をするわけではないが、ないよりはあったほうがいいからな。お金にはならないけど、お金を呼んでくれる条件として名声や信用は大事だ。信用があれば金も借りれるし、すぐ返せと言われなくて済む。 それに名誉や信用があれば、ちょっとした
食事を食べ終わり、水を飲んで休憩をしていると、リバーシ待ちで声を上げる人がいたので、セルフィとそれぞれの席に向かってリバーシを楽しむことに。「よろしくお願いします」 お互いに礼をして、リバーシを始める。ルールを完全に知っているのと、ルールを活かして勝負ができるのと、読みあいや棋譜の基本が頭に入っていてどう相手に打たせればこっちに有利になるかまでを誘導するように打たせられるかはレベルが違う。 俺にできるのはせいぜいルールを活かして読み合いが軽くできる程度だ。ちょっとだけ、ルールを覚え始めたプレイヤーよりは強いぐらいの腕しか持ち合わせていない。 俺がリバーシの考案者ということは広まっていないので、考案者の癖に弱い、ということまではばれていない様子だ。ただのリバーシをルールだけは覚えた宿泊者、という立場を崩したくないので、ここは精一杯戦って勝てるかどうか試すことにしよう。 もし相手の腕に自信があるなら、俺に勝てたら飯代はおごりでいい、と自主的に言い出して奮起させる方向に行くだろうが、この相手はそんなことは言いださなかったので、そこそこの腕前、というところなのだろう。 実際、十手ずつほど進めたところで、まだいい感じの勝負を続けている。それほど強いと感じないあたりが……いや、もしかするとそこそこの腕前に見せかけているだけかもしれないな。油断せずいこう。「参りました」「お粗末様でした」 ほぼ同時に始めたはずだが、セルフィのほうはセルフィが勝って終わったらしい。やっぱりセルフィ、頭が柔らかいのか、かなり強い気がする。俺が弱いわけじゃないんだな、という自信がさらについた。よし、ここは俺も勝って……あれ、どんどん俺の色が減っていくぞ。 とりあえず……ここで、いや、ここにおくとこっちに置かれるから……うん、これ微妙に詰んでないか? 相手の顔を見ると、ニコニコとしている。どうやら、こっちの手の内を読んで、何手か先までは見通されているかのようだ。これは……負けかな。 どこ
コボルトファイターは武器も立派な割に動きのほうがついてこれてない。それが分かっただけでも儲けだ。もし、こちらのほうが確実に早く動けるならば一方的にボコることができるので美味しいモンスターだと言えるだろう。 だが、コボルトスカウトは斥候と名前がついている以上、素早いモンスターである可能性が高い。ナイフも持っているようだし、それだけ危険であるかもしれない。苦手なのはこっちかもしれないな。 しばらくコボルトファイターを倒して三層をうろうろしていると、コボルトと同じぐらいの大きさでナイフを持った、コボルトっぽいものがタタタッと駆け寄ってきた。自然に出てきたので普
教えたがりのおじさんから情報を得て、食事も無事にし終えた。どうやら四層ではコボルトフェンサーやコボルトバーサーカーなど、より戦闘意欲と武器の鋭いモンスターが襲ってくるらしい。とりあえず三層に降りてみて、そこで戦えるかどうかを確認したほうがいいだろうな。「さて……二層の地図も出来上がったし、三層まで行ってみるか」「大丈夫ですか? 三層のモンスターはより強いとさっき聞きました。ご主人様はまだいけますか? 」「二層でも大丈夫だったし、三層もきっと大丈夫だろう。とりあえず行くだけ行ってみて、ダメそうなら戻ればいいさ。今
次のコボルトを探す。探さなくてもその辺にうろうろしているが、この中で一番近いコボルトを探す。できれば同時に三匹以上の集団には出会いたくない。こっちは二人、同時に相手にできるのは二匹が限界だ。 もっとこなれてくれば複数モンスターにも対処できるようになるかもしれないが、こちとら戦闘はまだ三日目なんだ。そこまで手慣れたベテランでもないし、もしかしたら戦闘開始三日目でダンジョンに潜るというのも無謀な話だったのかもしれない。しかし、実際にできてしまっていることを考えたら決して無謀な策ということでもないらしい。 さて、俺の番だ。コボルトは決して大きい体格をしていない
パナメラのダンジョンに入場する。入った先では人が幾人もいて、臨時パーティーの募集やそれぞれの持ち物の確認、今日の探索予定などを確認していたりする。ダンジョンの中で確認していてもいいのかとも考えたが、どうやら第一階層はモンスターが出てこないらしい。さすが初心者向けダンジョン、緩いものだな。 実際に活動するのは一層の途中から、ということらしい。楽しみにしすぎて地図も何も持ってこなかったおかげで、自分で地図を作りながら進まなくちゃならないな。「とりあえず奥へ行くか。この辺はまだ安全というより何も出ないらしい。モンスターが出るところまでまず行こう。戦ってみてから







