死に戻り令嬢は、初恋を選んだ元婚約者が土下座しても絶対に許さない

死に戻り令嬢は、初恋を選んだ元婚約者が土下座しても絶対に許さない

last updateHuling Na-update : 2026-06-29
By:  さぶれ-SABURE-In-update ngayon lang
Language: Japanese
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前世、婚約者の陽太に資産も才能も捧げ尽くした白峰結月。 陽太は初恋の女性を選び、無情に捨てられ、絶望のなか病死した。 しかし目を覚ますと、大学時代に回帰していた! 結月はクズ男への投資をやめ前世の知識を駆使し、若き天才投資家として無双。孤高のカリスマ投資家・諸星帝(もろぼしみかど)とビジネス契約を結ぶが、なぜか彼から異常なまでに溺愛されて……!? 一方、結月を手に入れられなかった陽太はみるみる没落。なんと陽太もやり直し人生を歩んでおり、前世の記憶があったのだ! 結月に近づこうとするが、まったくうまくいかずに苛立つ陽太は、暴挙に出るが――? 死に戻り令嬢の、やり直し人生・痛快大逆転劇!

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Kabanata 1

第1話 奪われた女 Side:白峰結月

「はぁ……」

 私はため息をついた。

 天井のしみを、もう何百回数えただろう。

 白い天井に走る、雨漏りのあとのような薄茶色のしみ。三つ、いや四つ。数えるたびに増えていくような気さえする。かつての私なら、こんな安アパートの天井を見上げて死ぬ日が来るなんて、想像すらしなかった。

 白峰結月(しらみねゆずき)。白峰ホールディングスの一人娘として生まれ、何不自由なく育った。海外の大学で経営学を修め、二十代の半ばで財閥の中核事業を任され——そして三十を過ぎた今、私は、すべてを失った。

 医者は、過労と慢性的な栄養失調が重なったのだと、淡々と告げた。笑ってしまう。財閥令嬢として生まれた女が、その日の食事にも事欠くようになるなんて、いったい誰が想像しただろう。一条を——いや、一条という名の、私自身が作り上げた作品を守るために、私は自分の体のことなど、いつも後回しにし続けた。気づけば貯えは底をつき、頼れるはずの人脈もすべて、奪われてしまった。

 私はこの六畳一間で、誰に知られることもなく、ただ静かに朽ちようとしている。

 体が、動かない。指の一本さえ、もう自分の意思では持ち上がらない。少し前まで腕に刺さっていた点滴の管も、その冷たささえ感じなくなって久しい。感覚があるのは、ただ一点、胸の奥だけだ。燃える炭を押し当てられているように、そこだけが、ずっと熱い。

——陽太(ようた)。

 その名前を思い浮かべるだけで、もう涸れたはずの目の縁が、じわりと滲んだ。

 一条陽太(いちじょうようた)。私の、婚約者だった男。

 大学のレセプションで出会ったときの彼は、地方の中堅企業の御曹司で、野心だけは一人前の、けれどどこか危なっかしい青年だった。スーツの着こなしも、名刺の渡し方も、財界の作法も何も知らない。背伸びした言葉ばかりが先走って、足元はいつもぐらついている。私はその危うさを、どうしても放っておけなかった。

 だから、私はすべてを注いだ。

 父から譲り受けた、私名義の株式。母方の祖父の代から財界に張り巡らせてきた人脈。十年かけて磨いた経営の勘と、誰にも真似のできない買収のノウハウ。一条グループが業界三位まで一気に駆け上がったのは、世間では陽太の若き手腕として語られているけれど、いつもそばでアドバイスを繰り返し、彼を支えたのは私だった。

 忘れもしない。一条が初めて大型の資金調達に挑んだとき、彼のずさんな事業計画書は、どの銀行にも門前払いされた。徹夜で書き直したのは私だ。

 担保も、保証人も、最初の出資者も、私が裏で手を回して用意した。プレゼンの当日、舞台袖で震える彼の背中に「大丈夫、あなたならできる」と囁いたのも私。

 スポットライトを浴びて喝采を受けるのは、いつも陽太だった。それでよかった。彼が笑っていれば、私はそれだけで満たされた——少なくとも、そう思い込んでいた。

『結月がいれば、俺は無敵だ』

 彼はよくそう言って笑った。少年のように無邪気に。私はその言葉を愛だと信じていた。

 婚約指輪を受け取った夜のことを今でも鮮明に覚えている。安物の、けれど彼が初めて自分の稼ぎで買ったというその指輪を、私は世界中のどんな宝石よりも尊いものに思えた。

「いつか必ず、本物を贈るから」と、彼は照れたように笑った。その約束が果たされることは、ついに、一度もなかった。

 彼の初恋の女性――志田成美(しだなるみ)が現れたのは、一条グループが頂点に手をかけようとしていた頃だった。彼女が戻ってから、陽太はおかしくなっていった。

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第1話 奪われた女 Side:白峰結月
「はぁ……」 私はため息をついた。 天井のしみを、もう何百回数えただろう。 白い天井に走る、雨漏りのあとのような薄茶色のしみ。三つ、いや四つ。数えるたびに増えていくような気さえする。かつての私なら、こんな安アパートの天井を見上げて死ぬ日が来るなんて、想像すらしなかった。 白峰結月(しらみねゆずき)。白峰ホールディングスの一人娘として生まれ、何不自由なく育った。海外の大学で経営学を修め、二十代の半ばで財閥の中核事業を任され——そして三十を過ぎた今、私は、すべてを失った。 医者は、過労と慢性的な栄養失調が重なったのだと、淡々と告げた。笑ってしまう。財閥令嬢として生まれた女が、その日の食事にも事欠くようになるなんて、いったい誰が想像しただろう。一条を——いや、一条という名の、私自身が作り上げた作品を守るために、私は自分の体のことなど、いつも後回しにし続けた。気づけば貯えは底をつき、頼れるはずの人脈もすべて、奪われてしまった。 私はこの六畳一間で、誰に知られることもなく、ただ静かに朽ちようとしている。 体が、動かない。指の一本さえ、もう自分の意思では持ち上がらない。少し前まで腕に刺さっていた点滴の管も、その冷たささえ感じなくなって久しい。感覚があるのは、ただ一点、胸の奥だけだ。燃える炭を押し当てられているように、そこだけが、ずっと熱い。——陽太(ようた)。 その名前を思い浮かべるだけで、もう涸れたはずの目の縁が、じわりと滲んだ。 一条陽太(いちじょうようた)。私の、婚約者だった男。 大学のレセプションで出会ったときの彼は、地方の中堅企業の御曹司で、野心だけは一人前の、けれどどこか危なっかしい青年だった。スーツの着こなしも、名刺の渡し方も、財界の作法も何も知らない。背伸びした言葉ばかりが先走って、足元はいつもぐらついている。私はその危うさを、どうしても放っておけなかった。 だから、私はすべてを注いだ。 父から譲り受けた、私名義の株式。母方の祖父の代から財界に張り巡らせてきた人脈。十年かけて磨いた経営の勘と、誰にも真似のできない買収のノウハウ。一条グループが業界三位まで一気に駆け上がったのは、世間では陽太の若き手腕として語られているけれど、いつもそばでアドバイスを繰り返し、彼を支えたのは私だった。 忘れもしない。一条が初めて大型の資金調達に挑んだと
Magbasa pa
第2話 死にゆく女
 志田成美、彼女は陽太がまだ何者でもなかった学生時代に、ただ一人本気で恋をした女。  そして、彼の前から黙って姿を消した女だった。 彼女は、儚げな人だった。私とは何もかもが正反対の。守ってあげなければ今にも壊れてしまいそうな、潤んだ瞳。風が吹けば飛んでいきそうな、頼りない肩。陽太は成美を前にすると、人が変わったように優しくなった。まるで、置き去りにしてきた青春を、もう一度やり直そうとするみたいに。 成美が「経営のことは、私、何も分からなくて」と困ったように睫毛を伏せれば、陽太は嬉々として手を差し伸べた。私が十年かけて整えてきた会議の段取りを後回しにしてまで、彼女のために時間を割いた。 私は、何も言えなかった。だって私は——強いから。一人でも、平気だから。  いつからか、それが陽太の口癖になっていた。『結月は強いから、これくらい平気だろ』『成美はお前と違って繊細なんだ。少しは察してやってくれよ』 私は彼の理解者であろうとした。物分かりのいい、聞き分けのいい妻であろうと努力した。けれど、与えれば与えるほど、彼の心は私から遠ざかっていった。皮肉な話だ。尽くすことでしか愛をつなぎとめられないと信じていた私は、尽くすことで、自分の居場所を失っていったのだから。 そして、あの日が来た。 役員会の席で、陽太は私を名ばかりの子会社へ追いやることを告げた。私が築き上げた取締役のポストには、経営の「け」の字も知らない成美が座ることになった。 信じられない思いで見つめる私に、陽太は、まるで明日の天気の話でもするように、軽く笑って言ったのだ。『結月は強いから、一人でも平気だろ。成美は僕が傍にいなきゃだめなんだ』 そこからは、坂道を転げ落ちる小石のように早かった。 私名義だったはずの株式は、巧妙にすり替えられた書類の束の中で、いつの間にか一条のものになっていた。私を守るはずだった財界の人脈は、私の悪口を吹聴されたせいで陽太の側へと流れていった。手のひらを返す音さえ聞こえないほど、それは滑らかだった。 そして——白峰の家までもが彼らの手に落ちた。 父の死後、傾きかけた実家を「僕が立て直す」と言って近づいてきた陽太に、私は最後の砦まで委ねてしまっていた。気づいたときにはもう遅かった。白峰の名を冠していた建物の表札は、一枚残らず、一条の名に書き換えられていた。
Magbasa pa
第3話 戻ってきた女
 ※「——結月さん?  白峰結月さん、聞いていらっしゃいます?」 名前を呼ばれて私は目を開けた。 まず飛び込んできたのは、まばゆいシャンデリアの光だった。磨き上げられた大理石の床。氷とグラスの触れ合う澄んだ音。着飾った人々が交わす華やかなざわめき。香水と、生花と、上等なワインの匂い。 冷たい安アパートの天井ではなかった。胸を焼く痛みもない。 視界を落とすと、手が映った。それは——細く、白く、傷ひとつない若い指が、シャンパングラスを握っていた。 鏡張りの壁に映った自分の姿に私は息を呑んだ。そこに立っていたのは、二十二歳の私だった。  すべてを奪われ、たった一人で死んでいったはずの女ではない。 二十二歳。まだ何の苦労も知らず、世界はすべて自分の味方なのだと信じきっていた、あの頃の私。これから始まる長い地獄を、この娘(わたし)はまだ、何ひとつ知らない。——いや。今度は、違う。今度こそ、違う。「白峰さん、どうかなさいました?」  隣で見覚えのある誰かが心配そうに声をかけてくる。大学のゼミの同級生だ。「あ、大丈夫です。すみません。ちょっと立ち眩みがしただけです。失礼します」 現状を把握するために、逃げるように彼の前を立ち去った。  確か、研究の話を饒舌にしていた時だったはず。となれば―― 会場の入り口を睨むように見つめていると、両開きの扉を押し開けて入ってきた人物が映る。 それは若き日の一条陽太だった。まだ何者でもない、野心だけが空回りした、あの頃の彼―― なんてこと……。 私はこのパーティーで、これから陽太に声をかけられるのだ。グラスを片手に会場の隅で途方に暮れていた田舎出の青年を、放っておけずについ手を差し伸べてしまうのだ。彼が声をかけやすいように、大事な話を中断し、ひとりになって、彼に声をかけやすい環境を作った。 それが、すべての始まりだった。私の十年を喰い尽くす、長い長い悲劇の、最初の一歩。 戻ってきた。あの日に。すべてを、やり直せる場所に。 近づいてくる若い陽太は、まだ私を知らない。これから自分が、目の前の女の人生をどう喰い尽くすことになるのかも、知らない。 私は、シャンパングラスを握る指にゆっくりと力を込めた。冷たいガラスの感触が、これが夢ではないと、はっきりと教えてくれる。 指先がかすかに震えた。けれどそれは恐
Magbasa pa
第4話 選択
 シャンデリアの光の下で、若き日の一条陽太は、滑稽なほど浮いていた。 仕立ての悪いスーツ。借り物のような笑顔。名刺入れを握りしめる指先は、誰の目にも分かるほど強張っている。この華やかな会場にいる誰もが、彼を「場違いな田舎者」として、視界の端で処理していた。 二十二歳の陽太。まだ、何者でもない。これから十年をかけて私を喰い尽くす牙も、初恋の女に狂って身を滅ぼす弱さも、その内側にすべて眠らせたまま、彼はただ、必死だった。 前世の私は、その姿に、どうしようもなく惹かれたのだ。磨けば光る原石だと、本気で信じた。そして、光らせてやれるのは自分だけだと——思い上がっていた。 今なら分かる。私が惹かれたのは、彼の才能なんかじゃなかった。誰かに必要とされたかった、ただそれだけだ。父に認められず、ただ"強い娘"であることだけを求められて育った私は、「君がいなければ」と乞われることに、麻薬のように溺れていたのだ。 会場の中央、人垣の奥に、一人の老紳士がいた。武藤征一郎(むとうせいいちろう)。一代で巨大コングロマリット(※異なる業界や業種の複数の企業を一つの大きな企業グループとして統括する形態のこと)を築き上げた、財界の生ける伝説。この日のパーティーの、実質的な主役だった。 陽太が、意を決したように武藤へ歩み寄っていくのが見えた。 ああ、これも前世と同じだ。彼は、武藤に取り入ろうとして、的外れな世辞と、背伸びした事業論を並べ立て——そして、けんもほろろに追い払われる。 「君のような若い人の熱意は買うがね。中身が、まるで伴っていない」  彼の冷ややかな一言が、離れた私の耳にまで届いた。周囲のくすくすという忍び笑い。陽太の顔が、屈辱で赤く染まっていく。 会場の空気そのものが、彼を弾き出していくのが見えた。誰もが沈みかけた船から目を逸らすように、陽太からそっと距離を取っていく。前世の私だけが、その船に自ら飛び乗った。 前世では、ここで私が動いた。  恥をかいた陽太にそっと近づき、武藤の関心を引く一言を耳打ちし、彼を立て直してやったのだ。あのとき囁いた言葉を、私は今でも覚えている。「会長は、世辞より反論を好まれる。臆さず、会長の事業の弱点を一つだけ指摘なさい」、と。震えながらもそれを実行した陽太に、武藤は破顔した。『面白い若者だ』、と。 ——その『面白い若者』の
Magbasa pa
第5話 極上の人生、第一歩
 その困ったような笑顔。前世で私の心をいとも簡単に溶かしたあの顔。 不思議だった。あれほど焦がれた表情を前にしているのに、私の心は凍った湖のように静かだった。 手を伸ばして彼に武藤を紹介し、二言三言の助言を与えれば、彼はすぐに息を吹き返す。そしてまた、あの幸福で——その実、破滅へと続く十年が始まるのだ。 私はゆっくりと微笑んだ。  前世の私なら、ここで罪悪感に押し潰されていただろう。困っている人を見捨てる冷たい女だと、自分を責めたはずだ。けれど私を無情に切り捨てた男のために、これ以上、自分の優しさを安売りするのは——終わりにする。「ごめんなさい。人違いだと思いますわ」「えっ……」「私、あなたのことを存じ上げません。力をお貸しする義理もございませんの」  突き放すようにそう言って、私は彼から視線を外した。 陽太の顔から、貼りつけた笑みが剥がれ落ちた。助けを乞うた相手に、にべもなくあしらわれた屈辱。そして隠しきれない苛立ちが滲み浮かぶ。彼は苦渋の顔で言った。「……失礼しました。白峰ホールディングスのお嬢様ともなれば、僕のような人間の挨拶など、耳に入れる価値もないということですか。噂通りの、お高くとまったお方だ」 この男は最初からこうだったのだ。強い女も、賢い女も、彼にとっては「かわいげのない女」でしかない。私が十年をかけて、命を削って思い知らされたことを、彼は出会ってわずか一分で証明してくれた。 彼は自分より高い場所にいる女を認めたくないだけ。認めてしまえば自分の小ささを直視しなければならなくなるから。 ——この男に、二度と私の知識を与えはしない。 彼を無視して踵を返した。陽太に背を向け、まっすぐに——武藤征一郎のもとへ歩き出す。「武藤会長」 突然声をかけられ、彼が訝しげに眉を寄せた。「……どなたかな」「白峰結月と申します。白峰ホールディングスの娘です」 名乗ると武藤の目に、わずかな興味が灯った。白峰の名は、かろうじて財界に通用する。だが、彼が本当に身を乗り出したのは、その次の私の一言だった。「会長が今、最も頭を悩ませていらっしゃるのは、半導体材料事業への参入の是非——違いますか?」  武藤の眉がぴくりと跳ねた。  それは、まだ世間どころか、社内のごく一部にしか知られていないはずの、グループの極秘案件だったはず。前世の
Magbasa pa
第6話 記憶のある男 Side:一条陽太
 「な、んでだよ……っ!!」  俺は、武藤会長を連れて女王様みたいに華やかに去っていく白峰結月の後ろ姿を、ただ口を開けて見つめることしかできなかった。 驚きとパニックに、名刺入れを握る指先がみっともなくガタガタと震える。 周囲の連中が「何だあいつ?」と俺をクスクス笑っている気配がして、顔がカッと熱くなった。  おかしい。こんなの絶対におかしい! だって俺の頭には、はっきりと『前世の記憶』があるんだ――  確か結月の財産を根こそぎ奪うことに成功し、成美といよいよ一緒になれると思い、激しい夜を過ごして目覚めたら――なんと、大学時代に戻っていた!  心の中でガッツポーズをキメた。 (よっしゃあ! 俺には、あの輝かしい10年間の記憶がある!) (一条グループを業界3位まで押し上げた、俺の天才的な経営手腕をもう一度再現できる!)  だからこそ、さっきこの会場で武藤会長に冷たくあしらわれた時も、「フン、今に見てろよ」と余裕をぶっこいていた。 前世と同じだ。ここで俺がちょっと困った顔をして見せれば、結月という都合のいい金持ちの令嬢が「放っておけない」とすり寄ってきて、アドバイスをくれる。  どんなアドバイスだったかは覚えていない。なんだったかな?  まあいいや。すぐにでもやって来るさ。なにせ、前世の記憶があるとか、勝ち組すぎん?  俺、最強。わっはっは。この世のすべてを牛耳ってやるぜ~。
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第7話 帝登場
  それどころか、前世の一条グループじゃ逆立ちしても手が届かなかった財界のドン・武藤会長に自分からすり寄って、なんかクソ難しそうな半導体の話をして、あっという間に気に入られてやがる。 俺にわからねえ話で盛り上がるなんて……生意気だ! 「おい、ふざけんなよ……! なんであいつ、俺をあんなゴミを見るような目で見たんだよ……っ!?」  計算が合わない。最初の第一歩から、俺の完璧な人生設計が狂っている。 結月が俺の言う通りに動いて、俺を輝かせるための奴隷になってくれないと、俺の素晴らしい計画がスタートしないじゃないか! あいつ、マジで俺のこと置き去りにして、そのまま武藤会長と奥の談話スペースに行きやがった。  おいおいおい、嘘だろ!?  こんな展開は前世ではなかった!  俺の最強の経営計画はどうなるんだよ!  あいつが徹夜で書類直してくれないと、明日銀行に持って行けないじゃん!  確か俺が武藤に気に入られて、経営計画もってこいっていうから、結月に泣きついてなんとかしてもらったのに、このままだと話が違ってくる。なんとかしないと! 「チッ、おい、そこを退け!」  周囲の連中の「何だあの泥臭い男は」というヒソヒソ声を無視して、俺は結月を追いかけた。  あ。そうか。俺の気を引きたくてやったんだな。あのまま武藤と仲良くなって、俺に紹介してくれるつもりなんだろ。そうかそうか。そういうことか!  おい結月、ちょっとツンツンすれば俺が焦るとでも思ったか?  仕方のない女だなあ。  前世み
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第8話 物売り
  前世の記憶の中にある帝は、常にテレビの向こうか、あるいは雲の上の経済界の頂点で冷酷に微笑んでいるだけの存在だった。一条グループがどんだけ背伸びしても、挨拶すらさせてもらえなかった本物のバケモノ。  そのバケモノが、今、俺の目の前にいて、信じられない力で俺の腕を掴んでいる。   「痛っ……! あ、イテテテっ……!」  痛い。マジで痛い! 腕の骨がミシミシと嫌な音を立てている。 男の大きな手から、まるで見えない炎でも吹き出しているみたいに、掴まれた場所が熱くて、感覚が麻痺しそうだ。 男の漆黒の瞳に、俺の引きつった顔が映っている。触れたら一瞬で殺される猛獣の目。睨まれただけで、全身の血の気が引いて、膝がガタガタと笑い出した。 「は、離せよ……っ! 誰だか知ってんのか、俺は一条グループの――」 「一条? 聞いたこともないな」  ヤツは虫ケラを見るような冷ややかな目でこちらを見つめ、俺の言葉をバッサリと切り捨てた。 声のトーンは低いのに、VIPエリアの空気が一瞬で氷点下まで凍りついたのがわかる。 「武藤会長との大事な商談の場に、随分と泥臭い野良犬が迷い込んできたものだ。……ガードマン、この男を今すぐつまみ出
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第10話 結月 VS 帝 Side:白峰結月
 「白峰さん! 騙されるな! そいつは人殺しみたいな目をしてるぞ! 近寄っちゃだめだ!!」  陽太がなにか喚いている。けれど、私はそれを完全に無視した。馴れ馴れしくしないで欲しい。  今世では、私とあなたは他人。決して交わることのない者同士よ。 「お前たち、なにをやっている。早くこの物売り男をつまみ出せ」  無情に帝が言い放つと、SPは彼の腕をがっちり掴んだ。 「やめろ、離せ!!」  背後から、耳障りな野良犬の遠吠えが聞こえてくる。 ガードマンやSPたちに両脇を抱えられ、絨毯の上をズズズと引きずられていく一条陽太の姿は、滑稽の一言に尽きた。  前世の私は、あの男の無様な虚勢を「危なっかしい野心」だと勘違いし、都合よく搾取されていることにも気づかずに全てを捧げてしまった。けれど、こうして一歩引いて見てみれば、ただプライドばかりが高くて中身のない、哀れな羽虫でしかない。 (さようなら、一条陽太。あなたは一生、そこで地べたを這いずり回っていなさい)  私は心の底から冷めきった視線を一度だけ投げると、完全に彼を視界からシャットアウトした。 「往生際が悪いぞ、外へ出ろ!」  無慈悲に閉まるVIPエリアの重厚な扉。その向こうへクズ男が消え去ると同時に、会場を支配していた張り詰めた空気の矛先が、一斉に私へと向
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