ログイン結婚式の日、平井綾は胸いっぱいの期待を抱いていた。しかし待っていたのは、徳野昌浩の婚約破棄だった。 「綾.......ごめん、君とは結婚できない。僕が愛していたのは、ずっと(妹の)美奈だ」 平井綾の頭の中は一瞬にして真っ白になった。 美奈と昌浩は彼女に内緒でずっと連絡を取り合っていた。そして今.......美奈は彼の子を宿しているのだ! 怒り、屈辱、裏切りが彼女を飲み込み、裏切った者たちに思い知らせたい! こうして、彼女は誰も予想しなかった決断を下す。 彼女が選んだ道は……
もっと見る倉田からの電話に緊張が走った。 『坊ちゃん、若奥様の弟さんが見つかりました』 それは、思ったより早い報告だった。 もちろん美奈に聞けば済むことだ。 しかし、美奈が綾に──素直に本当のことを話すとは思えない。 それに、綾ももう会いたくはないと思っている。 あらゆる方面から探してもらい分かったようだ。 綾の弟は──アメリカに居た。 やはり美奈がアメリカ留学中に二人は出会ったようだ。 まさか異母姉弟だとは知らずに……。 美奈は綾の2歳年下、更に1歳年下の弟。 名は──草壁涼太(くさかべ りょうた) 美奈のスマホにはRとう名前で登録されているようだ。 父親が知り合いの草壁夫婦には、子どもが出来ないと聞いていたので、ならばと涼太が生まれてすぐに、アメリカから引き取りに来てもらったようだ。 綾の母は、死産だったと言う父親の言葉を信じ込んだまま、亡くなってしまった。 その事実に、綾は怒り心頭している。 母が命がけで早産した我が子を知らないまま、死産したと思い込まされていた。 生まれてすぐに、大きな病院へ転院させ母親の目につかないようにした。 その頃から元看護師が絡んでいたようだ。 ──なんて酷い人たち 草壁夫婦は、ニューヨークで事業を成功させている資産家のようだ。 「草壁? あの会社か?」 修は草壁氏を知っていると言う。 業界こそ違うが、今最も勢いのある会社のようだ。 なので、綾の父親も何度か無理を言って借金をしていたようだ。 当の弟、涼太はそんな草壁の跡を継ぐべく、同じ会社に入り、ようやく勉強を始めた
綾は心機一転、やはり長い髪を切りショートカットにしたいと修に告げた。 すると修は──「分かった、今すぐ美容師に来てもらう」と言って美容師を手配した。 ──!! もうお腹は6ヶ月。 ジッと同じ体勢で座っていると疲れるので、素早くカットしてもらえる人が良い。 ソファーに座って待っていると、お腹の赤ちゃんがグニョグニョと激しく動き出した。 「あ〜修さん、今日に限って動きが活発よ」 「え、赤ちゃんが?」 慌てて駆け寄る。 「ええ、ほら」 修の手を取りお腹に当てる。 修は初めて立ち会った。 「うわ〜っ! ホントだ! 凄い!!」 修は、最初は感動し喜んでいたが…… ──お腹に何か違う物体でも入ってるんじゃないのか? そう思うほどグニョグニョと動き回っている赤ちゃんに驚いている。 いつも綾が「動いた!」と言った時には、全然動かなくて修は動く場面に立ち会えていなかったのだ。 「ほら、蹴られてる」 ──!! 腹が四角くなるほど足で大きく蹴っているようだ。 「スゲッ、これ足?」 修は少し引いている。 「足なのか手なのか分からないけど、足じゃない?」 修が赤ちゃんの足を撫で、掴もうとしている。 「何してるのよ?」 「コミュニケーショ
──!! 綾は修と顔を見合わせた。 修も驚き、首を横に振ったので知らないようだ。 「何を言ってるの?」 「お前には弟が居るんだ」 「弟? 誰が産んだの?」 綾は、あまりにもおかしな話に、今度はいったい誰に生ませた子なのかと呆れかえっていた。 すると父親は──「お前の母さんが産んだ子だ」と言った。 「は? そんなこと一度だってお母さんから聞いたことがないわよ」 綾がそう反論すると…… 母は綾が大病で入退院を繰り返していた頃に早産したようだ。 その為、その子は生まれてすぐに亡くなったと言って、知り合いの人に引き取ってもらい、アメリカで暮らしていたのだと言った。 綾は初めて聞く話に驚愕し頭が混乱した。 ──ホントこの人は、どこまで自分勝手で理性のないルーズな生活をしていたのだろう。 頭を抱える。 父親は初めて出来た男の子だった為、帰国した時には知人に頼んで、こっそり綾と遊ばせたこともあったのだと言う。 ──まさか! 綾は、持っていた写真を父親に見せた。 背中越しに写っていた"小さな男の子”との写真。 「ああ、そうだ、この子だ」 「!! この写真、貴方が?」 「ああ、こっそり撮ってアルバムに入れた」 綾はもう一つ気になっていた。 「私の財布に入っている写真は?」 「ああ、それは母さんが入れたものだろう。この写真が欲しいと言われたから。この頃の綾、可愛いかったな……」 綾の目には涙が溢れていた。 ──やっぱりお母さんだったんだ。 「なのに、殺そうとしたんだよね?」
綾は、修と倉田の言うことに頭が追いついていない。 「!! 犯人が居たのですか?」 「はい……」 「犯人ってどういうことですか? 事故じゃなかったんですか?」 綾は──助けられた時、母親の運転ミスで崖から海に転落したと聞いていた。 「うん、綾あの事故は誰かによって事故に見せかけて故意に起こされたものだったんだ」 修の言葉を聞いて、綾は顔面蒼白になっている。 「綾、大丈夫か?」 修は綾を抱きしめた。 「そんな……」 綾は母の無念を思い涙が溢れた。 修は──「大丈夫か? イヤならこれ以上は聞かなくても」 しかし、しばらくすると、 ──このまま犯人を許すわけにはいかない! 綾は──「倉田さん、犯人はいったい誰なの? 教えてください!」 倉田は修の方を見た。 修には、もしやと思っていたことがあったので、 それが当たってしまったのだとすぐに分かった。 修は、倉田にゆっくり頷いた。 すると倉田は──「若奥様のお父上です」 「!!……」 綾は、驚きのあまり声が出なかった。 「綾……」 修が心配しながら綾を見つめている。 「父、ですか?」 「……はい」 「どうして……」
綾がプールへと落ちた刹那、意識は凍りつくような恐怖に襲われた。 十七歳のあの年の記憶の断片が激しく押し寄せる ──制御を失った車、砕け散るフロントガラス、最後の力で彼女を水面へと押し上げた母の手、そしてすべてを呑み込む果てしない青。 彼女は水が怖い。骨の髄まで染みついた恐怖。 それを、美奈は誰よりもよく知っている。 義妹とは言え、綾は本当の姉妹のようになろうと思っていた。 ──助けて! 恐怖で身体は強張り、必死にもがいても虚しく、水が口と鼻に流れ込み、視界は揺らめく水の光で白く滲む。 窒息しかけた絶望の中、揺れる水面越しに、ためらいなく飛び込んで来る人影が
綾のシャンパングラスを握る指先には、 わずかな白さが滲んでいた。 今夜は彼女の婚約パーティー。 だが、婚約者の昌浩はすでに三十分も姿を消している。 周囲の名士たちの祝辞は、潮のように押し寄せては耳障りに響く。 そのとき── 本来なら"未来の花嫁“である彼女をしっかりと捉えているはずのスポットライトが、ふいに揺らぎ階段の奥へと落ちた。 綾は、目を細める。 光があまりにも強く、目の奥がじんと痛む。 スポットライトの下、逆光の中に立つひとつの影。 息を奪うほど鮮烈な、深紅のトレーン付きロングドレス。 生地一面に散りばめられた細かなクリスタルが、歩みに
──天埜修 視点── 「あっ! 危な────い!」 運転手の倉田が大声を上げる車内。 キキ────ッ 急ブレーキをかけた車は、急停車した。 「どうした?」 慌てながら心配そうに、倉田に声を掛ける天埜。 綺麗に着飾ったドレス姿の女性が突然、道路に飛び出して来て事故が起きた。 その場に倒れ込んだ女性に運転手が駆け寄り、謝罪しようとしたが、 突然意識を失ってしまった。 その後救急車が来て、その女性は病院へと運ばれて行った。 周りに居た人に、被害者の詳細を聴き調査する秘書の倉田。 彼女が平井綾だと分かった。 平井家と天埜グループは、直接の競合関係にはない
「……え──っと?」 綾は驚きながらも、その男性に尋ねるが、美樹は固まったままだ。 「……初めまして、天埜修です。こちらは私の秘書、倉田です」 強大なオーラ、圧迫感──その姿だけで病室の空気が一気に重くなる。 美樹はすぐにスマホで彼の情報を検索し、画面には──天埜グループの若き実権者、業界屈指の人物の名前が表示
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