青春の真ん中で君を想う

青春の真ん中で君を想う

last updateLast Updated : 2026-07-02
By:  眠り姫Updated just now
Language: Japanese
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幼い頃からずっと一緒だった。 水原伊吹、東堂湊、鳴沢陸、久我玲央。 幼なじみとして当たり前のように過ごしてきた高校2年生の春。 これからも変わらない日々が続くと思っていた。 だけど、その想いは少しずつ形を変えていく。 友情と恋愛の狭間で揺れる心。 伝えられない想い。 すれ違いと嫉妬。 そして、大切な人を想う気持ち――。 青春の真ん中で出会う恋は、甘くて、苦しくて、かけがえのないものだった。 これは、幼なじみたちが紡ぐ青春恋愛物語。 『青春の真ん中で、君を想う』

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Chapter 1

変わらない朝

「伊吹ー!遅刻するぞー!」

聞き慣れた声が外からして、

私は布団の中で顔をしかめた。

カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。

時計を見る。

七時四十二分。

「……え?」

次の瞬間、私は飛び起きた。

「やばいっ!!」

今日から高校二年生。

新学期初日。

絶対に遅刻しないようにしようと思っていたのに。

慌てて制服に袖を通し、鏡の前で髪を梳かす。

ぴょこんと跳ねた寝癖が直らない。

「もう!」

水で押さえても元気よく跳ね返ってくる。

仕方なく前髪だけ整え、鞄を肩に掛けると

勢いよく部屋を飛び出した。

階段を駆け下りて、

「お母さん!行ってきます!」

「朝ご飯は!?」

「時間ないー!」

玄関を飛び出すと、そこには呆れた顔の鳴沢陸が立っていた。

「また寝坊かよ。」

「おはよ!陸!今日だけだよ!」

「昨日も言ってたそれ。」

「…それは忘れて。」

「伊吹、今日から二年生だぞ。」

「知ってる!」

「ならもう少し余裕持て。」

「無理!」

陸は大きくため息をついた。

陸とは家が隣同士で幼稚園の頃からずっと一緒。

兄妹のように育ってきたのだ。

今さら取り繕う必要もない。

寝坊した日も、

忘れ物をした日も、

寝癖をつけていた日も、

全部知っている。

「ほら、行くぞ。」

「うん!」

ぶっきらぼうだけど、いつも家まで迎えにきてくれて

なんだかんだ優しいんだよね。

私たちはいつもの通学路を歩き始めた。

春風が心地いい。

桜並木の花びらが風に乗ってふわりと舞い、

制服の肩に落ちた。

新しいクラス。

新しい一年。

少しだけわくわくする。

「そういえば。」

陸が歩きながら口を開いた。

「またクラス替えで騒ぐんだろ。」

「だって緊張するじゃん!」

「どうせ誰かとは一緒になる。」

「でも四人とも同じクラスがいい!」

その言葉に陸は少しだけ笑った。

「伊吹は欲張りだな。」

「いいじゃん。」

そんな話をしていると、

「あ、おはよー!」

前から聞こえた声に顔を上げる。

そこにいたのは東堂湊だった。

湊はサッカー部所属の誰からも好かれる人気者だ。

今日も肩にサッカーバッグをかけて、

爽やかな笑顔でこちらに向けて笑う湊は

朝日に照らされて美しく見えた。

「おはよ、伊吹。」

「おはよ!」

「また寝坊?」

「なんで二人ともそれ聞くの!」

「だって分かりやすいんだもん伊吹。」

湊は声を上げて笑った。

その笑顔につられて、私も笑う。

昔から変わらない。

湊はいつだってそうだった。

私が泣いている時も。

失敗して落ち込んでいる時も。

いつも隣で笑ってくれた。

「今年も同じクラスだといいな。」

私がそう言うと、

「だな。」

湊は少しだけ優しく目を細めた。

その笑顔を見ていると、不思議と安心する。

その時だった。

「お前ら朝からうるさい。」

後ろから聞こえた低い声。

振り返ると久我玲央がいた。

「玲央!」

「おはよう。」

「おはよう!」

玲央は成績優秀で冷静沈着。

口数は少ないけど仲間思いなんだよね。

昔は宿題を忘れた時、

勉強が分からなかった時に

なんだかんだ助けてくれる。

こうして四人が揃った。

幼稚園からずっと変わらないメンバー。

私たちの当たり前。

学校が見えてくる。

昇降口にはたくさんの生徒が集まっていた。

みんなクラス替えの結果を見ている。

「ねぇ、どうしよう。もし誰とも被らなかったら。」

と不安気にみんなに伝えると、

「そんな顔するなよ。」

と言う湊。

「伊吹は絶対騒ぐ。」

と言う玲央。

「もう!陸と同じこと言うな!」

と玲央の肩をたたいた。

「見に行くぞ。」

陸が言った。

「うん!」

私は少しだけ緊張しながら掲示板へ向かう。

どうか。

どうか今年も――。

「あった!」

思わず声が出た。

私の名前の近くには、

東堂湊。

鳴沢陸。

久我玲央。

三人の名前が並んでいた。

「また一緒じゃん!」

「すご。」

陸が笑う。

「腐れ縁だな。」

玲央も珍しく口元を緩めた。

そして。

「よかった。」

湊が小さくそう言って笑う。

その笑顔を見た瞬間。

なぜか胸が少しだけ高なった。

でも、その理由なんて考えもしなかった。

春だから。

新学期だから。

きっと、それだけ。

この時の私はまだ知らない。

この一年で、

変わらないと思っていた私たち四人の日常が、

少しずつ形を変えていくことを。

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変わらない朝
「伊吹ー!遅刻するぞー!」聞き慣れた声が外からして、私は布団の中で顔をしかめた。カーテンの隙間から差し込む朝日が眩しい。時計を見る。七時四十二分。「……え?」次の瞬間、私は飛び起きた。「やばいっ!!」今日から高校二年生。新学期初日。絶対に遅刻しないようにしようと思っていたのに。慌てて制服に袖を通し、鏡の前で髪を梳かす。ぴょこんと跳ねた寝癖が直らない。「もう!」水で押さえても元気よく跳ね返ってくる。仕方なく前髪だけ整え、鞄を肩に掛けると勢いよく部屋を飛び出した。階段を駆け下りて、「お母さん!行ってきます!」「朝ご飯は!?」「時間ないー!」玄関を飛び出すと、そこには呆れた顔の鳴沢陸が立っていた。「また寝坊かよ。」「おはよ!陸!今日だけだよ!」「昨日も言ってたそれ。」「…それは忘れて。」「伊吹、今日から二年生だぞ。」「知ってる!」「ならもう少し余裕持て。」「無理!」陸は大きくため息をついた。陸とは家が隣同士で幼稚園の頃からずっと一緒。兄妹のように育ってきたのだ。今さら取り繕う必要もない。寝坊した日も、忘れ物をした日も、寝癖をつけていた日も、全部知っている。「ほら、行くぞ。」「うん!」ぶっきらぼうだけど、いつも家まで迎えにきてくれてなんだかんだ優しいんだよね。私たちはいつもの通学路を歩き始めた。春風が心地いい。桜並木の花びらが風に乗ってふわりと舞い、制服の肩に落ちた。新しいクラス。新しい一年。少しだけわくわくする。「そういえば。」陸が歩きながら口を開いた。「またクラス替えで騒ぐんだろ。」「だって緊張するじゃん!」「どうせ誰かとは一緒になる。」「でも四人とも同じクラスがいい!」その言葉に陸は少しだけ笑った。「伊吹は欲張りだな。」「いいじゃん。」そんな話をしていると、「あ、おはよー!」前から聞こえた声に顔を上げる。そこにいたのは東堂湊だった。湊はサッカー部所属の誰からも好かれる人気者だ。今日も肩にサッカーバッグをかけて、爽やかな笑顔でこちらに向けて笑う湊は朝日に照らされて美しく見えた。「おはよ、伊吹。」「おはよ!」「また寝坊?」「なんで二人ともそれ聞くの!」「だって分かりやすいんだもん伊吹。」湊は声を上げて笑った。その笑顔につられて
last updateLast Updated : 2026-06-29
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いつもの距離
新しいクラスでの一日目は、思っていたよりもあっという間に過ぎていった。新しい担任は明るい先生で、教室は何度も笑い声に包まれていた。自己紹介が始まり、みんなが緊張した様子で前に立つ。「水原伊吹です!甘いものが大好きです!よろしくお願いします!」「東堂湊です。昨年同じクラスだった奴は知ってると想うけどサッカーしてます。よろしくお願いします。」「鳴沢陸。好きな食べ物は肉で、BBQが結構好きです。よろしくおねしゃす。」「久我玲央です。なにか分からないことがあればいろいろ聞いてください。」みんなそれぞれ自己紹介を終え、担任の先生の話を聞いて、教科書を配られて。「二年生になったんだなぁ。」そんな実感が湧く頃には、もう昼休みになっていた。「伊吹!お昼食べよ!」湊に声をかけられ、私は頷いて笑顔で立ち上がる。「もちろん!」四人で今までと変わらずいつものように机をくっつける。幼稚園の頃からこれは変わらない光景なんだ。「いただきます!」お弁当を開けた瞬間、陸が私のおかずを見て笑った。「また卵焼き多いな。」「お母さんの卵焼き大好きなんだもん。」「知ってる。」「…それ、一個ちょーだい。」湊が少し遠慮がちに言う。「いいよ!」私は思わず卵焼きを一つ渡した。すると湊は、自分のお弁当から唐揚げを一つ乗せてくる。「交換!」「やった!」そう喜んでいると、「なんだ、交換なら現金じゃないのかよ。」と玲央がぼそっと呟く。「だって唐揚げ大好きなんだもん。」「子供か。」「失礼な!」四人で笑い合う。こういう時間が私は好きだった。特別なことなんて何もしないけど、それでも、四人で笑い合えることが何よりも幸せだった。「てか、なんでうちの学校は初日から授業があるんだろうな。」と陸が不服そうに言う。「それな!先生ひどいよね。」と同意すると、「伊吹、寝るなよ。」と玲央に釘を刺された。寝るもんか!!と心で呟きながら、気づけば午後の授業が終わっていた。「疲れたー!」私は机に突っ伏す。「まだ初日だぞ。」陸が呆れたように言った。「初日だから疲れるの!」「意味分からん。」そんなやり取りをしていると、前の席の湊が振り返った。「伊吹。」「ん?」「これ。」机の上に置かれたのは、私の好きなイチゴオレだった
last updateLast Updated : 2026-06-29
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席替え
朝の教室は、いつもより少しざわついていた。窓から差し込む春の日差しが教室を明るく照らし、あちこちに笑い声が響いている。「今日席替えだってさ」誰かのその一言で、教室の空気が一気に変わる。「それほんと?」「え、マジ?くじ?」「運悪かったら最悪じゃん」「隣イケメンがいいー!」「東堂くんの隣とか絶対緊張するよ!」そんな声があちこちから聞こえる。女子たちも楽しそうに話していた。私はというと、正直あまり気にしていなかった。(まぁ、誰とでもいいし)そんな軽い気持ちだった。「そんなに騒ぐこと?」首を傾げながら言うと、「いぶは興味なさそうだね。」近くの女子が笑う。この子は昨年も同じクラスで私のことをあだ名でいぶと呼ぶ。「うーん、誰とでもいいかな。」「そう言う人に限って良い席を引くんだよ。」「そうなの?」私は本当にあまり気にしていなかった。隣が誰でも、きっと楽しく過ごせる。そう思っていた。ホームルームが始まり、先生が教室に入ってくる。「はい、お前ら静かにー。」それでも教室はどこか落ち着かない。先生は苦笑しながらプリントの束を持ち上げた。「そんなに楽しみか?」「うん!」「先生早くしよー!」「はいはい、じゃあ、席替えのくじを配るぞー」一人ずつくじを引いていく。紙を開く瞬間、みんなの表情が変わる。「頼む!」「窓側!!」「あー終わった!」悲鳴や笑い声が次々と聞こえてくる。「伊吹、何番?」後ろから陸が覗き込んでくる。「えっと……」紙を開く。「……前の方。」「いいじゃん、見やすいじゃん。」「そういう問題じゃない。」そんなやり取りをしていると、先生が黒板に新しい座席表を貼った。一瞬、教室が静かになる。次の瞬間。「えっ」思わず声が出た。私の席の隣。そこに書かれていた名前は。東堂湊。「…え?」「隣…湊?」思わず本人を見る。湊も座席表を見つめたまま動かない。「……マジか。」陸の声が、少しだけ低くなる。玲央は黒板を見て、小さく息を吐いた。「終わったな。」「何が?」「いや、なんでも。」私は意味が分からず、首をかしげる。湊は特に表情を変えずに、席を見ていた。でも、ほんの少しだけ動きが止まっていた気がした。席移動が始まる。私は机を持って、指定された場所に向かう。「よい
last updateLast Updated : 2026-06-29
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近すぎる距離
席替えから三日。私はある問題に悩まされていた。「近い……。」隣の席に座る東堂湊をちらりと見る。近い。とにかく近い。授業中も。休み時間も。移動教室も。気付けば隣にいる。幼なじみなのに。今さら何を気にしているんだろう。そう思うのに、なぜか落ち着かない。「伊吹。」不意に名前を呼ばれた。「ひゃっ!」変な声が出た。湊が目を丸くする。「どうした?」「な、なんでもない!」恥ずかしい。すごく恥ずかしい。「これ。」湊が私の机を指差した。消しゴムが床に落ちていた。「あ。」「ほら。」拾って渡してくれる。指先が少し触れた。たったそれだけ。なのに。心臓がうるさい。「ありがと……。」「?」湊は不思議そうな顔をした。もちろん気付いていない。湊はいつも通りなのに…。私が勝手にドキドキしていることなんて。「ねえねえ、水原さん!」声の方に目を向けると、クラスの女の子たち。二年になってから同じクラスになった子と、その取り巻きだ。この子は学年の中でも上位に入るくらい可愛くて男の子からも人気がある。取り巻きの二人も流行りにのったおしゃれをしている。「どうしたの?」私がそう聞くと、「水原さんって東堂くんと仲良いよね!」「東堂くんの連絡先知ってる?」「東堂くんって好きな子いるのかな?」と一斉に話しかけられる。私は聖徳太子か!と思いながら、「さぁ、本人隣にいるんだから聞いてみなよ。」と答えた。「そんなことできるならあなたになんて話しかけないわよ!」と女の子が言いながら取り巻きを連れてスタスタと去って行った。とんだ災難だったなと思うも、私は全く気にしていなかった。隣では湊が少し困ったように、そして私には見えないようにこっそりと笑っていた。今日は私の苦手な数学の授業があった。私は頭を懸命に働かせて、先生の話を聞く。すると先生が、「じゃあこの問題を…水原。やってみろ。」と私の名前を呼んだ。私はまずい…!と焦った。だって先生の話を真面目に聞いても全然理解できないんだもん。終わった。そう思っていると、隣から湊がスッとノートを私に見せてきた。私はその答えを即座に見て立ち上がって、前の黒板に書き示した。「正解だ。」先生にそう言われ、ほっと安心した。席に戻ると湊と目が合い、私は口パ
last updateLast Updated : 2026-07-01
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体育祭実行委員
五月に入り、学校中が少しずつ騒がしくなっていた。理由はひとつ。体育祭。廊下には体育祭のポスターが貼られていて、クラスは体育祭の話で持ちきりだ。「いよいよ始まるね、体育祭。」私が呟くと、陸が「今年は優勝したいよな!」とはりきっていた。「昨年はおしかったもんな。」と返事する湊。玲央はというと…。「暑そう。無理。」と嫌そうな顔をしていた。現実的ですね、相変わらず。そんな話をしていると、先生が教室へ入ってきた。「じゃあ早速実行委員決めるぞー。」ホームルームで先生が言った瞬間、教室中がざわついた。「やりたくないー。」「絶対忙しいじゃん。」そんな声があちこちから聞こえる。私もその一人だった。できることなら避けたい。面倒だし。人前に立つのは得意じゃないし。「誰か立候補いるか?」もちろん誰も手を挙げない。静寂。気まずい空気。「じゃんけんしようぜ。」誰かがそう言った。「それは嫌!」とクラス中が笑いに包まれた。陸とかやらないのかな…と思っていた、その時だった。「はい。」手を挙げたのは湊だった。教室がざわつく。「東堂やってくれるのか?」「はい。」爽やかか。爽やかなのか。さすが人気者。私は心の中で拍手した。これで一人決定。すると担任が言う。「じゃあ女子は?」静寂再び。誰も動かない。みんな目を逸らしている。私ももちろん逸らした。すると。「水原。」聞き慣れた声。振り向くと陸だった。「え?」「お前向いてそう。」「向いてない。」「向いてる。」「向いてない。」「向いてる。」「向いてない!」教室から笑い声が上がる。「仲良いなー。」誰かが言った。恥ずかしい。すごく恥ずかしい。すると。「水原ならいいんじゃないか?」先生が言った。「えっ!?」周りも頷いている。待って。なんで。なんでそうなるの。だって私。小学生の時に、前に出て発表する時に盛大に失敗したことがあって今でもトラウマなの。あれから人前に立つことは避けてきた。どうしよう。また失敗しちゃったら。私が葛藤していると、「伊吹ならできるだろ。」湊が笑って私を見た。「無責任なこと言わないで!」「大丈夫だって。」その一言がずるかった。湊にそう言われると。なんだかできる気がしてしまう。
last updateLast Updated : 2026-07-02
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