LOGIN24歳で処刑された侯爵令嬢ルピナス・カーディナル。 王妃候補として国のために尽くしてきた彼女だったが、大好きだった婚約者の第一王子ローゼンは隣国の王女に心を奪われ、「俺の言うことを聞かないならお前は要らない」と冷たく言い放つ。裏切りの果てにギロチンで命を落とした―― しかし次に目を覚ますと、処刑される一年前へと時が巻き戻っていた。 そして再び訪れた運命の日。 「もし良かったら―」 「結構です!!」 今度の人生で同じ失敗は繰り返さない! 元婚約者を全力回避しながら、自分の夢と未来を切り開くルピナス。だが、彼女を振ったはずの王子はなぜか執着を始めて……? 笑ってスカッとできる、人生やり直しラブコメファンタジー!
View More世界樹の祭壇が激しく揺れた。絶望の化身が翼を広げるたび、王都全体が悲鳴を上げるように震えている。城壁では、なおもフジとヘリアンサスが魔物の群れを食い止めていた。ローゼンは兵士たちを率い、最後の防衛線を守っている。誰も諦めてはいない。だが、誰もが限界だった。ラベンダーは静かにルピナスを見つめる。「花の巫女。」「世界樹は、あなたを待っています。」ルピナスは大きく息を吸い、祭壇へ一歩踏み出そうとした。その時だった。「待ちなさい。」重厚な声が祭壇に響く。振り返ると、サクラディウス国王がゆっくりと歩いてきた。王冠を戴き、王衣をまとったその姿は、威厳に満ちている。しかし、その瞳に宿っていたのは王としての厳しさではなく、一人の父親の優しさだった。「父上……。」ルピナスは思わず立ち止まる。サクラディウスは娘の前まで歩み寄ると、そっと肩へ手を置いた。「幼い頃のお前は、泣き虫だったな。」突然の言葉に、ルピナスは目を丸くした。「庭で転んでは泣き、木登りに失敗しては泣き、ダリアの後ろへ隠れてばかりいた。」「ち、違います……!」「少しだけです。」思わず反論すると、国王は穏やかに笑った。「そうだったか。」その笑顔は、王ではなく父親だった。ルピナスの胸が熱くなる。前世では、父とゆっくり話した記憶がほとんどない。王として忙しく、自分も王女として必死だった。「父上……。」サクラディウスは静かに首を振る。「すまなかった。」その一言に、その場にいた全員が息を呑んだ。「私は王であることを優先し、お前の父である時間を失ってしまった。」「苦しかった時も。」「泣きたかった時も。」「私は気づいてやれなかった。」ルピナスは首を横に振る。「違います!」「父上は国を守って……。」「それでもだ。」国王は娘の言葉を優しく遮った。「どれだけ立派な王でも、娘を孤独にしたなら父としては失格だ。」ルピナスの瞳から涙があふれた。サクラディウスはその涙を親指でそっと拭う。「ありがとう。」「お前は私の娘に生まれてきてくれた。」「それだけで、私は幸せだった。」ルピナスは堪えきれず、父へ抱きついた。幼い頃に甘えられなかった時間を取り戻すように。「父上……!」サクラディウスは静かに娘を抱きしめる。「泣いていい。」「今だけは、王女ではな
西門では、フジとヘリアンサスが巨大な魔物と激しく剣を交えていた。轟音が響くたび、大地が揺れる。王都を守る兵士たちは必死に応戦しているが、その表情には疲労の色が濃く浮かんでいた。一方、王城の最上階。世界樹へ続く祭壇の前で、ルピナスは立ち尽くしていた。「私……本当に、この世界を救えるのかな。」小さく漏れた本音。ここまで何度も前を向いてきた。それでも、大切な人たちが命を懸けて戦う姿を見るたび、不安は胸を締めつける。「もし私が失敗したら……。」「みんなの想いまで無駄になる。」肩が震えた。その時だった。コンコン。静かに扉が叩かれる。「入るわよ。」聞き慣れた声だった。振り返ると、ダリアが優しく微笑んでいた。「探したわ。」ルピナスは慌てて涙を拭う。「ダリア……。」「泣いてたでしょう?」「泣いてない。」「昔から嘘が下手なんだから。」ダリアはくすりと笑い、ルピナスの隣へ並んだ。しばらく二人は何も話さなかった。幼い頃から一緒だった。だからこそ、沈黙さえ心地よかった。やがてダリアが口を開く。「覚えてる?」「七歳の時、庭園の池に落ちたこと。」ルピナスは思わず吹き出した。「もう、やめてよ。」「あれは事故だったの。」「事故?」「あなた、自分で白鳥を追いかけて飛び込んだじゃない。」「そんなことしたっけ?」「したわよ。」二人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。戦場のすぐ近くとは思えないほど、穏やかな時間だった。笑い終えると、ダリアは真剣な表情になる。「ルピナス。」「あなた、昔から何でも一人で抱え込む癖がある。」その言葉に、ルピナスは黙り込む。「前世でも、そうだったんでしょう?」図星だった。誰にも相談せず、一人で運命を変えようとしていた。その結果、多くの人を失った。「でも今回は違う。」ダリアはルピナスの両肩に手を置いた。「あなたの隣にはフジ様がいる。」「ローゼン様もいる。」「アスター様も。」「そして……私もいる。」ルピナスの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。「怖いの……。」「うん。」「みんなを失うのが怖い。」ダリアは優しくルピナスを抱きしめた。「私だって怖い。」「でもね。」「怖いからって、あなたを一人にはしない。」その温もりは、子どもの頃と変わらなかった。泣き虫だったルピナスを
西門では、フジとヘリアンサスが巨大な魔物と激しく剣を交えていた。轟音が響くたび、大地が揺れる。王都を守る兵士たちは必死に応戦しているが、その表情には疲労の色が濃く浮かんでいた。一方、王城の最上階。世界樹へ続く祭壇の前で、ルピナスは立ち尽くしていた。「私……本当に、この世界を救えるのかな。」小さく漏れた本音。ここまで何度も前を向いてきた。それでも、大切な人たちが命を懸けて戦う姿を見るたび、不安は胸を締めつける。「もし私が失敗したら……。」「みんなの想いまで無駄になる。」肩が震えた。その時だった。コンコン。静かに扉が叩かれる。「入るわよ。」聞き慣れた声だった。振り返ると、ダリアが優しく微笑んでいた。「探したわ。」ルピナスは慌てて涙を拭う。「ダリア……。」「泣いてたでしょう?」「泣いてない。」「昔から嘘が下手なんだから。」ダリアはくすりと笑い、ルピナスの隣へ並んだ。しばらく二人は何も話さなかった。幼い頃から一緒だった。だからこそ、沈黙さえ心地よかった。やがてダリアが口を開く。「覚えてる?」「七歳の時、庭園の池に落ちたこと。」ルピナスは思わず吹き出した。「もう、やめてよ。」「あれは事故だったの。」「事故?」「あなた、自分で白鳥を追いかけて飛び込んだじゃない。」「そんなことしたっけ?」「したわよ。」二人は顔を見合わせ、声を上げて笑った。戦場のすぐ近くとは思えないほど、穏やかな時間だった。笑い終えると、ダリアは真剣な表情になる。「ルピナス。」「あなた、昔から何でも一人で抱え込む癖がある。」その言葉に、ルピナスは黙り込む。「前世でも、そうだったんでしょう?」図星だった。誰にも相談せず、一人で運命を変えようとしていた。その結果、多くの人を失った。「でも今回は違う。」ダリアはルピナスの両肩に手を置いた。「あなたの隣にはフジ様がいる。」「ローゼン様もいる。」「アスター様も。」「そして……私もいる。」ルピナスの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。「怖いの……。」「うん。」「みんなを失うのが怖い。」ダリアは優しくルピナスを抱きしめた。「私だって怖い。」「でもね。」「怖いからって、あなたを一人にはしない。」その温もりは、子どもの頃と変わらなかった。泣き虫だったルピナスを
西門を吹き抜ける風は、血と黒い霧の匂いを運んでいた。崩れかけた城壁の向こうから、絶望の化身が生み出した魔物たちが次々と押し寄せる。その数は数百。いや、すでに千を超えているのかもしれない。「来るぞ!」ヘリアンサスが剣を構え、兵士たちへ号令を飛ばす。「弓兵、第一列!」「魔導士は後方支援! 民の避難を最優先に!」兵士たちは震える手で武器を握り直した。恐怖は消えていない。それでも、一人として逃げる者はいなかった。ローゼンの演説が、彼らの心に火を灯したのだ。黒い魔物の群れが、一斉に城門へ襲いかかる。「撃て!」無数の矢が夜空を切り裂く。しかし、魔物たちは倒れても倒れても立ち上がる。「くそっ……!」兵士の一人が弾き飛ばされる。巨大な魔物が牙を剥き、その兵士へ飛びかかった。次の瞬間。ギィンッ!鋭い金属音が響く。黒い剣が魔物の牙を受け止めていた。「立て。」低く落ち着いた声。フジだった。「まだ終わってない。」一閃。黒い魔物は真っ二つに切り裂かれ、霧となって消えていく。兵士は呆然とフジを見つめた。「ありがとう……ございます。」「礼はいい。」フジは視線を前へ向けたまま答える。「守るべきものを守れ。」その一言だけ残し、再び戦場へ駆け出した。「すごい……。」若い兵士が思わず呟く。「あれが……黒狼騎士。」ヘリアンサスは小さく笑った。「見惚れるな。」「俺たちも負けていられん。」そう言うと、自らも魔物の群れへ飛び込む。剣と剣がぶつかり合う音。魔法が夜空を染める光。悲鳴。叫び。それでも二人の騎士は、一歩も退かなかった。その頃。王城の塔では、ルピナスたちが戦場を見下ろしていた。「フジ……。」思わず駆け出しそうになるルピナスを、ラベンダーが静かに止める。「今、あなたが行く場所ではありません。」「でも!」「彼はあなたを守るために戦っています。」ラベンダーの瞳は優しかった。「その覚悟を、無駄にしてはいけません。」ルピナスは拳を強く握る。悔しかった。大切な人たちが命を懸けているのに、自分は見ていることしかできない。その気持ちを察したように、アスターが口を開く。「焦るな。」「戦いには、それぞれの役目がある。」彼は西門を見つめながら続けた。「騎士は道を切り開く。」「王は民を導く。」「賢
帰りの馬車の中。ルピナスは向かい側に座るフジを見つめていた。フジは窓の外を見ている。無言。ひたすら無言。静かだった。あまりにも静かだった。ルピナスは耐えられなくなった。「フジ」「なんだ」返事は早い。「趣味は?」「剣術」「それ仕事では?」「そうだな」会話終了。ルピナスは困った。ダリアがいたら笑っていただろう。「好きな食べ物は?」「米」「子供?」「違う」会話終了。ルピナスは天井を見上げた。何この人。難しい。しばらくして。フジが口を開いた。「お前」「なに?」「なぜ王子を振った」ルピナスは固まった。核心だった。聞かれると思っていた。
ダリアは頭を抱えていた。目の前には満面の笑みを浮かべたルピナス。意味が分からない。本当に意味が分からない。「友達になりましょう」「断りますわ!」即答だった。教室中が頷いた。当然である。普通ならここで終わる。だが。ルピナスは普通ではなかった。「そう」「そうですわ」「じゃあ明日また聞くわ」「聞かなくて結構です!!」ダリアは思わず叫んだ。ルピナスは感心したように頷く。「良い声ね」「何を言ってますの!?」「将来有望だわ」「何がですの!?」ダリアは混乱していた。授業終了後。ルピナスは帰宅準備をしていた。そこへ。ローゼンが現れる。「ルピナス」「結構
翌朝。第一王子ローゼンは寝不足だった。目の下にはうっすらと隈。朝食のパンを見つめながら呟く。「なぜだ……」隣にいた国王が顔を上げた。「何がだ?」「なぜ振られた」国王はパンを落とした。「は?」「ルピナスに振られた」「誰が?」「俺が」「ルピナスに?」「そうだ」国王は頭を抱えた。朝から重い話だった。「何かしたのか?」「していない」「本当に?」「していない」国王は疑わしい目を向けた。ローゼンは真剣だった。本気で分からないのだ。「ルピナスは昔からお前を好いていただろう」「そうだ」「ではなぜだ」「それが分からない」親子揃って分からなかった。その頃
その夜。王宮の第一王子の寝室では異変が起きていた。ローゼン王子が眠れないのである。ベッドに横になる。目を閉じる。開く。閉じる。開く。そして天井を見つめる。「なぜだ……」誰もいない部屋で呟いた。なぜ振られたのか。それが分からない。二十七年生きてきたが、女性に断られたことなど一度もなかった。むしろ逆だ。幼い頃から令嬢達が寄ってきた。微笑めば頬を染める。手を差し出せば喜ぶ。それが当たり前だった。なのに。「結構です!!」ローゼンは飛び起きた。耳に残っている。あの声が。あの勢いが。「結構です!!」「……うるさい」思わず自分で言った。だが脳内ルピナ