Beranda / BL / 血と束縛と / 第40話(32)

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第40話(32)

Penulis: 北川とも
last update Tanggal publikasi: 2026-07-24 08:00:10

 結果が、昨夜の出来事だ。

 恋愛の機微には聡いはずの元ホストにしては、迂闊すぎると言わざるをえない。あくまで、中嶋の話を聞いた限りでは。だが一方で、同じ元ホストである秦は、これまでの経験で培ったはずの手管を発揮できず、無邪気な悪女に翻弄されているようだ。

 中嶋と秦の二人は、享楽的でスマートな関係を築いているとばかり思っていただけに、和彦としては困惑するしかないのだが、第三者としてはこう言うしかなかった。

「問題は二人で解決してくれ。――他人に迷惑をかけない形で。どちらにしてもぼくは、しばらく個人的な問題でバタバタするから、愚痴も聞いてやれないからな」

 残念ですねと、本当にそう思っているのか疑わしい言葉を秦が洩らす。

 いよいよ時間が気になってきた和彦は、話を切り上げて電話を切ろうとする。すると秦が囁きかけてきた。

『――本当にいいんですか?』

 なんのことかと問うまでもない。ほんの一瞬の逡巡のあと、和彦は短く応じた。

「いい」

 電話を切ったあとで、一気に心臓の鼓動が速くなる。気がつけ
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  • 血と束縛と   第40話(35)

     身近にいすぎて見過ごしてしまうが、千尋は外見も中身もまだ成長過程にある。犬っころのような青年が、背に彫った恐ろしくも献身的な獣を身の内に宿す日は、近いかもしれない。それとも、すでに棲みついて、息を潜めているのか。 それはとても怖いことだが、一方で、抗い難い魅力も感じてしまうのだ。 ふいに千尋の片手が伸びてきて、髪を掻き上げられる。「何か、考え事してる?」 少し怒ったような声で問われ、和彦はふっと我に返る。「お前も成長してるなと思って。体、鍛えてるだろ?」「最近、人に勧められてさ、ジムに通い出したんだ。スーツ着る機会も増えたし、ちょっとでも映える体つきになりたくて。何より、体力つけないと。この世界、化け物みたいな体力持ったオッサンたちが多すぎるんだよ」「……ほどほどでいいからな」 和彦の言葉に、千尋が意味ありげな笑みを浮かべる。「なんの心配してるの? いやらしいなー、和彦は」 ここでムキになっては相手の思うツボだと、和彦は自分を戒める。反論は、言葉ではなく行動で示した。 興奮して身を起こした千尋の欲望を優しく片手で握り込むと、ビクリと腰を震わせた千尋が短く声を洩らす。「お前もいやらしい。――もう、こんなにして」 握り込んだものを緩く上下に扱いてやると、素直に悦びを表し、硬さも重量も増していく。甘ったれの本領発揮とばかりに、掠れた声で千尋に求められ、ゾクゾクするような興奮を覚えて和彦は応じる。 頭の位置を下ろし、千尋の反応をうかがいながら、欲望の根元から丹念に舐め上げてやる。ときおり唇を這わせ、優しく吸いついてやると、それだけで千尋は切羽詰まった声を上げ、体を波打たせる。 先端から滲み出た透明なしずくを舐め取り、まず括れまでを口腔に含むと、指の輪で欲望を扱きつつ、唇で締め付ける。 たっぷりの唾液を絡ませた舌で、口腔に含んだ先端を舐める。千尋がうわ言のように『先生』と呼びながら、和彦の後頭部に手をかけてきた。望み通り、口腔深くまで欲望を呑み込み、熱く濡れた粘膜をまとわりつかせ、吸引する。 瞬く間に逞しく成長した熱い塊が、和彦の喉を圧迫す

  • 血と束縛と   第40話(34)

    「俺、カッとしやすいけど、自分にできることと、できないことの区別はつけているつもりだよ。和彦に何かあったとき、一番動けるのはオヤジ。そのオヤジが止めないんなら、多分俺にできることはない。……長嶺で一番力を持っているのはオヤジじゃなく、じいちゃんだからね。単なる父子ゲンカなら逆らうことも、殴り合うこともできるけど、二人とも、それぞれ組織を背負ってる。そこに面子が乗っかってるんだ。父子でも、絶対的な不可侵ってやつはある。いや、父子だから、かな」 千尋なりに、組織の力学というものをきちんと理解しているのだ。むしろ、裏の世界に引きずり込まれて二年も経っていない和彦より、生まれた瞬間からその世界で育まれてきた千尋のほうが、骨身に叩き込まれているはずだ。 そのうえで尚、千尋は成長している。以前に、和彦が兄である英俊と対面することになったとき、火のような激情を露わにして悔しさをぶつけてきた千尋だが、今は少し様子が違う。感情的になりながらも、経験と知識が歯止めとして働いている。 優しく甘いホットミルクの味が、そう知らせてくるのだ。「――移動の車の中で、俺なりにオヤジの真意ってやつを考えてたんだ」「うん?」「和彦に関することでは、じいちゃんを……、長嶺守光を全面的には信用するな、って言いたいんじゃないかって。だからオヤジは、和彦がまた自分の父親と会うことになった経緯を教えてくれた」 どうだろう、と和彦は心の中で呟き、またホットミルクを啜る。賢吾が何を考えているのか推測することは難しいし、さらに父子間の機微となると、それはもう想像が及ばなかった。 それでなくても賢吾と千尋は一般的な父子とは言い難く、常識が当てはまらない。「……思惑はどうあれ、ぼくは、父さんと会わざるをえない。父さんと会長の間に何かしら密約があって、履行のためにぼくは欠かせない駒なんだ。お前や組長には申し訳ないけど」「そんなこと思わなくていいけどさ……。それより、俺の前でも遠慮なく、オヤジのことを名前で呼んだら? 賢吾さん、って」 思いがけない提案に、噎せて咳き込んだ

  • 血と束縛と   第40話(33)

    「なんだよ、それ……。俺が心配するのも、気を使うのも、当然だろ? もしかして、迷惑って――」「違うっ。……これは、佐伯家の問題だから、巻き込みたくないんだ。お前たち父子と、長嶺組を」「俺たちなんて、長嶺家の問題に和彦を巻き込みまくっているけど。気になるなら、お互い様って考えたらいいじゃん。それに、今回はオヤジには言ったんだろ。……オヤジだけは巻き込んでも大丈夫って判断したんなら、悔しい。いつも俺だけガキ扱いされて、問題が起きたら報告は後回しにされることも」 この場合、なんと声をかけるのが正しいのか。逡巡した挙げ句に和彦は、すまない、と小さく謝罪する。 今にも泣き出しそうな顔をして千尋が抱きついてこようとしたが、寸前で動きを止め、急に犬のように鼻を鳴らした。「……千尋?」「なんか、変な匂いしない? 焦げ臭いような――」 ハッとした和彦は、千尋を置き去りにしてキッチンに駆け込む。案の定、鍋の中で牛乳が煮え立ってひどいことになっていた。呻き声を洩らして火を止める。 がっくりと肩を落としていると、まだ鼻を鳴らしながら千尋もキッチンに入ってきて、和彦の背後から鍋を覗き込む。「これ、何しようとしてたの?」「……眠れないから、ホットミルクを作ってたんだ」「レンジで温めたら……」「膜ができるから嫌だ」「だったら鍋で作るにしても、弱火でゆっくり掻き混ぜ続けないと、結局同じでしょう。いや、焦がした分、もっと悪いのか」 そこまで言って千尋が、ニヤニヤしながら和彦を見た。「飲みたいなら、俺が作ってあげようか?」 寸前までの緊迫した空気が一変した瞬間だった。和彦が目を丸くしたまま何も言えないでいると、千尋はさっさとダウンジャケットを脱ぎ、シャツの袖を捲って鍋を洗い始める。和彦はおずおずと声をかけた。「お前、作れるのか?」「俺がどこでバイトしてたと思ってるんだよ。ホットミルクなんて簡単、簡単。カフェのキッチンだ

  • 血と束縛と   第40話(32)

     結果が、昨夜の出来事だ。 恋愛の機微には聡いはずの元ホストにしては、迂闊すぎると言わざるをえない。あくまで、中嶋の話を聞いた限りでは。だが一方で、同じ元ホストである秦は、これまでの経験で培ったはずの手管を発揮できず、無邪気な悪女に翻弄されているようだ。 中嶋と秦の二人は、享楽的でスマートな関係を築いているとばかり思っていただけに、和彦としては困惑するしかないのだが、第三者としてはこう言うしかなかった。「問題は二人で解決してくれ。――他人に迷惑をかけない形で。どちらにしてもぼくは、しばらく個人的な問題でバタバタするから、愚痴も聞いてやれないからな」 残念ですねと、本当にそう思っているのか疑わしい言葉を秦が洩らす。 いよいよ時間が気になってきた和彦は、話を切り上げて電話を切ろうとする。すると秦が囁きかけてきた。『――本当にいいんですか?』 なんのことかと問うまでもない。ほんの一瞬の逡巡のあと、和彦は短く応じた。「いい」 電話を切ったあとで、一気に心臓の鼓動が速くなる。気がつけば、携帯電話を握った手も冷たくなっていた。秦の最後の囁きは、和彦の心の深い部分を抉ったのだ。 遠い場所で潜伏していると思われた鷹津が、実は自分の動向を探り、さらには側にまでやってきたと知ったところで、喜びはなかった。いや、湧き起ころうとするその感情を、懸命に抑えつけていた。 鷹津は、二つの組織から追われている身で、さらに俊哉とも通じている。危険極まりない存在だ。だから、鷹津と会ってはいけない。鷹津のことを誰にも言ってはいけない。 そう心の中で繰り返していると、仮眠室のドアをノックされた。そろそろ予約の時間だと告げられ、平静を装って返事をする。「今行くよ」 和彦は携帯電話の電源を切ると、何事もなかった顔で仮眠室を出た。**** 胸の奥がずっとモヤモヤしている。 何度目かの寝返りを打った和彦は、とうとう目を閉じ続けていることを諦めた。寝室の暗い天井を見上げ、金曜日までの日数を数えてから、憂鬱なため息をつく。 二日続けてなかなか寝

  • 血と束縛と   第40話(31)

    『まあ、そんなところです。もちろん、あの人がどこにいるかは知りませんよ。ただ、新しい携帯電話の番号は知っています。少し前にうちの店のスタッフが、鷹津さんに似た男から手紙を預かって、そこに書かれてありました』「……どういう意図があって、そのことをいままで黙っていたんだ」『わたしはそこそこ野心は持っていますが、鷹津さんには多少なりと友情めいた感情を抱いているんですよ。さんざんタダ酒を集られましたが、その分の便宜は図ってもらいましたし。そして先生には、命を助けてもらった恩があります。――鷹津さんと先生は、お互いを気にかけていたでしょうから、わたしはささやかなお節介をしただけです。ときどき、先生の様子を知らせるというお節介を。鷹津さんは、聞きたくないとは一度も言いませんでした。ただ黙って聞き入って。そうですか……。あの人やっぱり、先生に会いに行かれたんですね』 危険を冒して、と念を押すように言われ、和彦はゾクリと身を震わせる。長嶺組と総和会から追われている男が繁華街をうろつく危険性は、鷹津自身がよく承知しているだろう。 それでもあえて、鷹津はやってきたのだ。胡散臭い秦からの情報を信じて。 感情が高ぶり、心を揺さぶられるものがあったが、和彦は必死に押し殺す。そうしなければ、鷹津の連絡先を教えてほしいと秦に頼んでしまいそうだった。 ゆっくりと深呼吸をしてから、なんとか平坦な声を作り出す。「確認したかったことは、それだけだ。……鷹津の連絡先を君が知っていることを、他に誰が――」『誰も。先生だけです。本当は、先生にも話すつもりはなかったんですよ。鷹津さんに口止められていましたから』「……昨夜のやり取りは、ヒントのつもりだったのか」『気づかれなければ、それはそれでよかったんです。知れば、先生は煩悶するでしょう?』 しない、と言い張るのも大人げなく、和彦は唇を引き結ぶ。『先生なら大丈夫だと思いますが、わたしと鷹津さんが繋がっていることは他言無用でお願いします。当然、長嶺組長にも。後ろ盾になっていただいている身でわたしも心苦しいで

  • 血と束縛と   第40話(30)

    **** 俊哉と再び対面することが決まったからといって、特別な変化が起こるでもなく、いつものようにクリニックで過ごす月曜日は始まった。「……うーん」 診察室のイスに深くもたれかかって、一声唸った和彦はこめかみを押さえる。前夜、中嶋の愚痴につき合ったあと、自宅マンションに帰宅した和彦だが、今度は一人で深酒をしてしまったのだ。おかげで、朝から頭痛がする。 次の予約まで時間があるため、紅茶を飲みながらのんびりしているが、頭の中ではめまぐるしく懸念事項が駆け巡っていた。この辺りも頭痛と関係しているのだろう。 和彦は深いため息をつくと、デスク上の卓上カレンダーを手に取る。週末まであっという間だと思ったあと、十一月ももうすぐ終わることに気づかされる。今年最後の月が巡ってくるということに、ささやかな感慨に耽っていた。 そこでふと、去年の今頃、自分はどうしていたのだろうかと思い返す。男たちの事情に振り回されてはいたが、それでも比較的穏やかな日々を送っていた。守光とはまだ顔も合わせたことはなく、鷹津は相変わらず嫌な男ではあったが、なんとなく接し方がわかりかけていた頃で――。「佐伯先生」 突然呼びかけられて、和彦は姿勢を正す。メモを片手にスタッフが傍らに立っていた。「どうかした?」「十二月三日の午前中に予約を入れられている患者さんから、さきほど連絡があったのですが……」 和彦はすぐにパソコンを操作し、言われた日付の予約状況を確認する。確かに予約が入っており、先日カウンセリングを行った患者の名が表示されている。「まさか、キャンセル?」「いえ、そうではないんです。予約の日は都合が悪くなったそうで、できればもう少し早い日に変更できないかとおっしゃられて。佐伯先生はまだ診察中だったので、折り返し連絡を差し上げるとお伝えしました」「あー、そうだね。施術の予約だから、空いているところにポンッと入れるわけにもいかないし」 和彦は、患者のカウンセリング表と予約状況を交互に眺めて検討し、メモにいくつかの日付と時間を

  • 血と束縛と   第11話(20)

     外から男二人のにぎやかな話し声が聞こえてくる状況で、求められるまま、やむをえず舌を絡め合い、唾液を交わす。引き出された舌を痛いほど吸われると、たまらず和彦は鷹津の肩にすがりついていた。 ますます鷹津の腕の力が強くなり、和彦の中で奇妙な変化が起こっていた。鷹津のことがどうしようもなく嫌いで、嫌悪しているのに、そんな男にねじ伏せられるように口づけを交わしていると、高揚感に襲われ、体の奥深くから強引に官能を引き出される。 官能に形を借りた、サソリの毒かもしれないと、ふとそんな考えが脳裏を過る。鷹津の毒を注入され、体も心も侵されていくのだ。 思わず身じろごう

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-27
  • 血と束縛と   第11話(22)

     さすがの賢吾も、和彦の心を煩わせるものすべてを見通すことは不可能らしい。「……最初にぼくを狙って、あんなことをした人間が、どんな顔をして、そんなことを言うんだ」「俺はいい。俺は、許されるんだ」 さすがに図々しい発言だと思って和彦が顔を上げると、待っていたようなタイミングで唇を軽く吸われた。「先生を狙って自分のものにして――見事に、骨抜きにされたんだ。そんな哀れなヤクザを、愛情深い先生なら、たっぷり甘やかしてくれるだろ?」 本当に図々しいと思いながらも、和彦はつい笑みをこぼしてしまう。 自

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  • 血と束縛と   第6話(22)

    「不愉快どころか、やけに楽しそうでしたよ、秦さん。いい店を先生に紹介しないと、と張り切ってもいましたし」「ならいいんだ。あの人、職業柄なのか知らないけど、よく気をつかってくれるから。ぼくみたいな人間につき合って、迷惑をかけても悪いしな」 和彦が、長嶺父子のオンナであることは、すでに知られている事実だ。いまさら千尋と甘い会話とキスを交わしていたからといって、他人に喜んで報告するような悪趣味なまねを、秦がする必要もない。 和彦が心配していたのは、そんなことではなく、純粋に今言った通りのことだった。 大きく息を吐き出しながら、中島がマシンをゆっく

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  • 血と束縛と   第4話(27)

    「――先生」  呼ばれて、おずおずと振り返ると、そこに真剣な賢吾の顔がある。何か言われたわけでもないのに、和彦は小さく喘いでから賢吾の唇にそっと自分の唇を重ねた。すると、賢吾のもう片方の手に、和彦の柔らかな膨らみは包み込まれる。 「ひっ、あぁっ」  泡で滑る手に柔らかく揉みしだかれ、たまらず和彦は、ビクッ、ビクッと腰を震わせ、背をしならせる。下肢が、甘く溶けてしまいそうだった。 「あとでたっぷり、ここを揉んで悦ばせてやる。最近、弄られるのがよくなってきたみたいだからな。今は、洗うだけだ」  賢吾の的確に動く指は貪欲に、和彦の官能を刺激する

    last updateTerakhir Diperbarui : 2026-03-19
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