「俺には俺の予定がある。待たなくていい」信行はそう答えた。だが由美は食い下がった。「やっぱり一緒に行きましょうよ。成美だって、その方が喜ぶわ」その言葉に信行は何も返さず、一方的に電話を切った。しかし……沈黙もまた一つの答えであり、行くという同意の証でもあった。つい先ほどまでは真琴のことばかりを考え、どうやって駆け引きし、どうすればもう少し距離を縮められるかと思案していたというのに。由美からの電話一本で、その考えはすっかりかき乱されてしまった。思わずあの事故の日のことを思い出す。自分を助けようと、必死に人を呼びに走っていった成美の後ろ姿を。あっという間に、成美がこの世を去ってから六年が経った。真琴との結婚生活、そして愛憎入り混じる日々からも、気づけば五年以上が過ぎている。スマホをポンとキャビネットに放ると、信行は両手をスラックスのポケットに突っ込み、わずかに眉を寄せて庭へ目を向けた。ライトに照らされた庭は美しく、昔、真琴がよくこの片桐家の屋敷で遊んでいた姿がふと思い浮かんだ。ただ今となっては、実家にご飯を食べに呼ぶことすら容易ではない。そして、成美の命日はこの金曜日だ。これほどの年月が経っても、信行と内海家との関係は、実のところ完全に断ち切れてはいなかった。……あの電話の後、金曜日当日になり、信行は結局、由美とその両親と共に成美の墓参りへ足を運んだ。墓前で、由美の母、真弓は墓石を磨き、花を手向けながら成美に色々なことを語りかけた。信行が内海家をとてもよく世話してくれていること、内海家が今どんどん良くなっていること、だから心配しないで安らかに眠ってほしいということなどだ。由美も成美にいくつか言葉をかけ、信行はただ傍らに立ち、何も口にすることはなかった。十時半、墓参りが終わった後。四人が連れ立ってゆっくりと駐車場へ向かって歩き出した時、真弓が口を開いた。「信行さん、お忙しいのに時間を作って成美に会いに来てくれて、本当にご苦労様」信行が口を開くより先に、真弓はさらに続けた。「お昼、一緒に食べていきませんか」真弓の誘いに対し、信行は前を見たまま淡々と答えた。「いえ、遠慮しておきます。まだ仕事がありますので」真弓は言う。「お仕事も大事ですけど、お食事も大事です
Read more