All Chapters of 暴走する愛情、彼は必死に離婚を引き止める: Chapter 561 - Chapter 563

563 Chapters

第561話

車の前に立ち、信行は振り返って車内を一瞥した。真琴が助手席に乗り込み、腕を組んだまま目を閉じて眠りについたのを確認すると、思わず口元に笑みがこぼれる。ただこうしてそばにいてくれるだけで、まだ救いがある。真琴は車に戻ったが、信行自身はすぐには乗り込まず、両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、眼下に広がる夜景を淡々と見下ろしていた。真琴がいれば、それだけで心が落ち着く。由美のことなど、渚のことなど、今やすっかり頭から抜け落ちていた。特に渚に関しては、何度か一緒に飯を食い、顔を合わせたはずなのに、実はその顔すらまともに覚えていない。相手がどれほど美しい女子アナウンサーであろうと、だ。身動き一つせず、一人で外に立ち尽くして随分と物思いに耽った後、再び車内に戻ると、真琴は本当に助手席に寄りかかって寝息を立てていた。だが、普段から頭を酷使している彼女の激務を思えば、信行にもそれがいかに無理からぬことか納得できた。あれだけ神経をすり減らしていれば、ひどく疲れるのも当然だ。後部座席から上着を取り出してそっと掛けてやり、手を伸ばしてその頬を優しく撫でる。眼差しはどこまでも温かかった。車内には暖房が効いている。信行はすぐに車を出そうとはせず、運転席に座ったまま、ただ静かに寝顔を見つめ続けた。手は頬から離さず、ずっと優しく触れ続けている。やがて随分と時間が経ち、真琴が寝返りを打ったところで、信行はガソリンが尽きるのを懸念し、ようやくエンジンをかけて山を下り始めた。曲がりくねった山道。信行はひどくゆっくりと車を走らせ、時折助手席へと視線を落としては、右手でこっそりとその手を握りしめていた。昔は、二人の間にこれほど親密なスキンシップなどなかった。今となっては、頭に思い描ける限りのロマンチックなことを、すべて真琴と共に経験したいと願っている。車が真琴のマンションの下に停まった時には、すでに時計の針は午前一時を回っていた。彼女はまだ夢の中にいる。信行は起こそうとはせず、ただ静かに見つめていた。夕方、渚に「縁がなかった」、「もう連絡してこないでくれ」ときっぱり関係を断ち切ったことで、信行自身もすっかり肩の荷が下りていた。何よりも、それを真琴の目の前ではっきりと告げたことで、自分の立場と覚悟を示せた
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第562話

今この瞬間の信行の距離感は、まるで学生時代に戻ったかのようだった。その遠慮のない振る舞いに、真琴は振り返って一瞥した。信行のちょっとした下心など、真琴にはすっかりお見通しだ。だが、思い通りにさせる気など毛頭ない。部屋に上げることも、何らかの間違いを起こすことなど絶対にあり得なかった。やがてエレベーターが目的の階に到着し、降りて玄関先まで来ると、真琴は振り返って告げた。「着いたわ。もう帰って」そのあからさまな門前払いに、ある程度予想していたとはいえ、いざ面と向かって言われると、信行も内心面白くなかった。両手をズボンのポケットに突っ込んだまま、目の前の真琴を見下ろして言う。「本当につれないな。せっかく家の前まで送ってきたんだ、お茶の一杯くらい淹れてくれてもいいだろうに」信行を見上げ、真琴は言い返す。「こんな時間にお茶なんて飲んだら、目が冴えて眠れなくなるわよ」信行が背を向けて立ち去らない限り、真琴は頑としてドアの鍵を開けようとはしなかった。とにかく、付け入る隙など一ミリも与えるつもりはない。そのあまりに徹底した警戒ぶりに、信行自身、だんだんとおかしくなってきた。そのまま玄関先で膠着状態が続き、一向にドアを開けようとしない様子に、とうとう信行は堪えきれずに吹き出してしまった。いきなり笑い出したのを見て、真琴もこうして睨み合っているのが馬鹿らしくなってきた。小さくため息をつき、口を開く。「もういいわ。じゃあ気をつけて帰……」言い終わるよりも早く、信行が唐突にその首の後ろを掴んだ。ぐっと力を込めて自分の方へ引き寄せると、そのまま身をかがめて強引に唇を塞ぐ。眉をきつくひそめ、真琴は咄嗟に両手を上げて突き飛ばそうとした。だが、信行はとうに予期していた。抵抗する隙など一切与えず、真琴の両手首を掴み上げると、さらに深く強引に口づけてきた。男女の力差はあまりにも歴然としており、本気で力ずくに出る信行を前にしては、真琴になす術などなかった。必死に抵抗したものの、結局は壁に押し付けられ、抗いようもなく唇を奪われ続ける。しばらく身をよじって抗っていたが、どうしても振り解けないと悟ると、真琴はもはや無駄な抵抗をする気すら失せた。背中を壁にぴったりと押し付けられ、強引な口づけも、手首を押さ
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第563話

一瞬にして頭の先から足の先まで澄み渡り、全身に活力がみなぎるのを感じた。たとえよりを戻せていなくとも、もう心が塞ぎ込むことはなかった。*マンションの一室。真琴は部屋に入るなり、ドアを背にしてずるずるともたれかかった。信行という男はあまりにも手強く、そのやり口はどこまでも抜け目がない。まだ離婚していなかったあの頃、信行がここまで自分にすがる日が来るなど、想像することすらできなかった。ただ……あまりにも遅すぎた。ドアに背を預けたまましばらく立ち尽くし、やがて真琴はようやく足を踏み出して寝室へ向かい、着替えを手にして浴室へと入っていった。扉の外では、先ほどの口づけの余韻からゆっくりと抜け出した信行が、階下へと降りて帰路についていた。真琴の反感を買わないよう、その後二日間、信行は大人しく身を潜め、彼女の邪魔をすることはなかった。ある夜、信行が早めに仕事を切り上げて本家へ戻ると、前庭の屋敷で由紀夫が両手で杖を突いたまま、鋭い眼光でこちらを睨みつけていた。祖父の険しい眼差しを正面から受け、信行は何事もなかったようにふっと笑った。「俺、何か犯罪でも犯したか?」言い終わるや否や、由紀夫は単刀直入に切り込んできた。「お前、成瀬のお嬢さんとはどうなってるんだ?前はあんなに上手くやってたじゃないか。どうしてまた急に掌を返したように突き放したんだ」信行が口を開く間も与えず、祖父はソファから立ち上がり、先ほどよりもさらに厳しい口調で説教を始める。「お前も今年で二十八だ。子供じゃあるまいし、もう少し責任ある行動はとれんのか。向こうはこの縁談に大きな期待を寄せているというのに、お前のこの身勝手な振る舞いは一体何だ?」祖父の叱責に、信行もさすがに聞く耳を持てなくなり、顔に浮かんでいた笑みはすっと消え失せた。無表情で由紀夫を見据え、焦る様子もなく淡々と反論する。「お祖父さん。第一に、俺はあいつと関係をはっきりさせた覚えはない。何度か顔を合わせて飯を食っただけで、俺から何か約束したことは一度もない。第二に、成瀬のほうがどんな期待を抱こうが、それは向こうの勝手だろ。俺はあいつらの願いを叶えるための打ち出の小槌じゃないし、彼らの期待に応える義務なんざどこにもない。第三に、見合いなんてものはただの顔合わせだ。気が合え
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