真琴はあの頃、何度もチャンスを与えていたというのに、当の本人は大切にしようともせず、すべてをふいにしてしまった。午後六時になってようやく会議が終わる。真琴と一明、そして淳史は皆、このプロジェクトの重要な責任者である。二年半の時を経て、三人は再び顔を合わせ、タッグを組むことになった。ただ、このプロジェクトは本来、信行が真琴の歓心を買うために持ってきたものだった。それがまさか、プロジェクトが始動した時には、二人の関係がもう二度と元には戻れなくなっているとは、思ってもみなかった。互いに、すでに新しい人生を歩み始めている。……夜。祐斗が皆に接待の宴席を手配し、その席で三社は新たに補足契約を交わした。誰もがこの提携に真剣そのものだった。九時過ぎに宴がお開きになると、数名の女性を除いて、皆すっかりアルコールが入っていた。ホテルのエントランスに運転代行が到着したものの、人数が多く、やはり運転手が足りない。祐斗が皆をそれぞれの車に振り分けた後、最後に取り残されたのは信行と、もう一人年配の男性幹部である北山正治(きたやま まさはる)だけだった。それを見た祐斗は、困り顔で真琴に声をかけた。「真琴様、社長は今夜随分と飲まれております。お手数ですが、社長をお送りいただけないでしょうか。さもないと、真琴様に北山さんをお送りいただくことになり、それはちょっと筋が違いますし……」今夜の席で酒を飲んでいないのは、真琴のほかには女性が二人だけ。その二人も、すでに祐斗の手配で運転手として先に出発していた。夜風が優しく吹き抜ける。後部座席で泥酔して前後不覚に陥っている信行を見やり、真琴は小さく頷いた。「分かったわ。車の鍵、貸して」自分が正治を送るというのは、確かに少々お門違いだ。だが今、残っているのは自分一人だけ。ここでわざと信行を送らないというのも、おかしな話になる。だから、仕方なく承諾するほかなかった。真琴のその言葉に、祐斗は慌てて車の鍵を差し出した。鍵を受け取ると、車の前をぐるりと回って運転席のドアを開け、真琴は身をかがめて乗り込んだ。すぐさま自分のバッグを助手席に置き、エンジンをかけて、信行を送り届けるべく車を発進させた。両手でハンドルを握りながら、真琴はルームミラー越しに一瞥して尋ねた。
Read More