紗音は両手をぎゅっと握り込み、震える声で答えた。「……水琴お姉ちゃん……」「そう、私よ。私が手を伸ばして、あなたはボートに乗り込んだ。二人の乗ったボートは波間に漂って、風に吹かれて遠くへ流されていく……ねえ、あなたはそもそも、どうして海の中にいたのか思い出せる?」「わたし……わたしね、人を、探してたの」「そう。そして、あなたはその人を見つけた。その人は今、あなたのそばにいるわ。これであなたのそばには、私と、あなたが探していた人、合わせて二人がいるわね?」すると、紗音の眉間にぎゅっとシワが寄った。「ううん、いない。……一人だけ……」水琴は一瞬戸惑ったが、焦らずに言葉を繋いだ。「わかったわ。探していた人は見つからなかったのね。私たちのボートはそのまま漂い続けている。ふと気づくと、周りにたくさんの船が現れて、私たちのボートに向かって近づいてくる。この人たちは、何をするつもりだと思う?」「人殺し!」紗音の甲高い悲鳴のような声が響いた。「あの人たち、人を殺す気だわ!」「その時、ある匂いがしてきたわ。とってもいい匂いが、その船のひとつから漂ってくるの。近づいてきた人たちは、私たちを傷つける気なんてなかった。むしろ、とっても親切に、捕まえたばかりのお魚を分けてくれたのよ」紗音の固く握りしめられていた拳が、少しだけ緩んだ。「……うん。見えた」「そこで水琴は姿を消したわ。今、ボートにはあなた一人だけ。これからどうする?」「……人を探すの」「ええ。あなたはボートを進め、何層にも重なる霧をかき分けていく。そして、ふと振り返ると、探していたその人があなたのボートに乗っていた」水琴の声はさらに落ち着きを増す。「あなたは、その人を乗せて海を漂い続ける。目的地はあの小島。でもそこに、十数人の悪い人たちがいて、あなたをいじめようとしてくるの。あなたは必死に抵抗して、助けを求めた。そしてその時、彼らが人を痛めつけている場面を目の当たりにしてしまう……ねえ、あなたは何を見たの?」途端に、紗音の息遣いが荒くなり、声が激しく上ずった。「血……!血が見えたの!あいつら、人を……人を食べてる!」人を食べてる……?水琴の目に鋭い光が走った。一体この子は何を見たというのか。「怖がらないで。大丈夫。彼らが人を痛めつけているのを見た、その時よ。あなたの後ろか
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