Lahat ng Kabanata ng 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します: Kabanata 651 - Kabanata 660

728 Kabanata

第651話

そして最後に、柊馬はそっと一花の唇にキスを落とした。しかし、そのキスには如何なる欲望も含まれていなかった。ただ優しく、温かく、何かを感じ取っているかのようなキスだった。一花も両手を彼の背中に回して、彼の純粋な瞳を見つめた。「一花」「うん、なに?」「一花……」柊馬は何度も彼女の名前を呼んだ。その声はどんどん低く魅力的なものに変わり、一花は体全体が痺れてしまいそうだった。「どうしたの?また私が恋しくなった?」「それは毎分、毎秒感じているよ」柊馬の声は捉えられないほどに軽かった。彼は一花の耳を甘噛みした。一花はこれ以上彼の愛撫には理性が耐えられなくなりそうだった。それで彼の胸に手をあて、少し距離をとってから、両手を彼の頬に添えてじっと見つめた。「柊馬、ちょっとおかしいわよ。どこか具合でも悪い?」「俺は大丈夫だよ」柊馬は彼女にされるがままに、温かい瞳で彼女を見つめていた。彼は小さな声でクスッと笑い、彼女を抱きしめた。「なんだか急に……とても嬉しいなって思って」彼が何に喜んでいるのか、言われなくとも一花には分かった。一花が美穂と部屋のドアの前でこそこそ話していたのが、恐らく彼の耳に入ったのだろう。一花は一度たりとも彼のことを負担だとか、足を引っ張っているとか思ったことはない。逆に喜んで彼のために努力したいと思い続けている。なぜなら、柊馬こそ、一花の人生の希望であり、理想だからだ。「私だって同じ気持ちだよ……」一花は顔を柊馬の首元に埋めた。彼女が話し終わるのを待たず、彼は腕を彼女の両足に回して横抱きにかかえた。「柊馬、何してるの?早くおろして……」一花は突然のことに驚いて、とっさに彼をぎゅっと抱きしめた。柊馬は淡々とした声で言った。「一日疲れただろう。そろそろ休まないと」「少しくらい自分で歩けるから……それに、あなたの体は弱っている……」「誰の体が弱ってるって?」一花は唇を閉じた。突然、自分が言ってはいけない言葉を口にしてしまったことに気づいた。柊馬は立ち止まり、彼女を横抱きにしたまま動かなくなった。一花は瞬きをした。「そういう意味じゃなくて……」「一体誰が弱ってるって?」柊馬は危険を漂わせるような低い声で、まだしつこく彼女に尋ねた。「はっきり言ってごらん?」
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第652話

「どこが調子悪い?体が冷えちゃったのか?それとも、体のどこか悪いところでもある?」柊馬が瞬時に緊張し慌てた様子になったので、一花は心が温かくなると同時に鼻の奥がツンとしてきた。彼女は彼の手をとり、ぎゅっと握りしめた。「大丈夫、ただちょっと疲れただけよ。少し休めば問題ないから。あなたもよ、今日は一日疲れたでしょ。早くお風呂に入って、一緒に寝ましょう」柊馬はまだ眉間に皺を寄せたままだった。「本当にただの疲れ?やっぱり医者を呼んで診てもらったほうが……」「本当に大丈夫だってば」一花はさっさと立ち上がり、彼を浴室のほうへ押した。「寝たらすぐ良くなるって約束するから」柊馬はどうしようもなくなり、ただ押されるがまま浴室に入るしかなかった。彼はあっという間に風呂を済ませ出てくると、まずは一花のところにやって来た。しかし、彼女は本気で疲れていたらしく、十数分ほどの時間の間にすでにベッドで寝てしまっていた。柊馬は後ろから彼女を抱きしめ、彼女の規則正しい呼吸の音を聞きながら安心して目を瞑った。……翌日の朝一、一花はやっと亜由からメールを受け取った。途中が欠けている監視カメラの映像だ。その映像には、匠が事故に遭った当日に修治があのエリアに来ていたことを示していた。しかし、修治がそのエリアに入ってからの映像は欠けている。この監視カメラの映像は、修治がわざとあの事故を起こした犯人だという疑いを強めている。「どうして監視カメラ映像があるの。当時の事は、お義父さんも、あの事故現場のエリアが封鎖された時に、監視カメラの映像も消されたって言ってなかった?」「きっと何か企みを持つ人間が映像を保存していたんだろう。一部だけの映像があるということは、他にももっと監視カメラの映像があるんじゃないのか?」この時、一花と柊馬は何かを思いついたようだった。亜由が送ってきたメールには、この映像は和香が昨日幸雄に提供したものだと書いてあった。和香は裏を使ってどこからかその映像を買い取ったようだと。二人は同時にあの三倉大和という男を思い浮かべた。今、二つの可能性がある。一つは、大和が事故当日の監視カメラ映像の全てを保管しているから、和香と手を組んで修治を陥れようとしている。そしてもう一つの可能性は……大和はこの映像など持って
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第653話

「湊」柊馬はすぐに湊を呼び出したが、彼が何か言う前に、湊のほうがすでに主人の意味を理解していた。「奥様の予想は間違いありません。その一人は少し前に病気ですでにこの世を去っています。そして、この熊岡剛(くまおか つよし)という人物なら、今すでに部下に探しに行かせています。きっと二日ほどで情報を掴めるかと」「二日……遅すぎる」一花は何か考えている様子でそう言った。和香は彼らよりも行動開始が早かった。今この劣勢を打ち破れるのは時間の早さだけだ。もし、熊岡剛という男が和香に先に見つけられてしまえば、唯一の証拠は徹底的に失われてしまう。「……」柊馬の表情は暗くなり、彼は湊を一瞥した。湊自身も今切羽詰まった状況であることをもちろん理解していて、冷や汗を流した。しかし、剛を見つけ出そうにも、その捜索範囲は広く、さらに彼がまだその場所に今も住んでいるのかも定かではない。だから二日という時間はかなり早いほうだ。もし、剛が他の所に移っていれば、国内中を捜索する羽目になってしまう。「私が探しに行きたいわ」一花は剛の資料を見つめ、無意識にそう口に出した。「ダメよ」「ダメだ!」すると柊馬と美穂がほぼ同時に言った。二人は互いに目を合わせ、柊馬が黙り、美穂が一花の手を引いた。「この件はどうしても危険が潜んでる。それにここからでは遠いし、あなたに何かあれば、約束の期限に間に合わないだけじゃなく……西園寺和香の策略にまんまとはまることになるかもしれないわ」一花は眉をひそめた。確かにそうだ。一花もさっきはただ無意識に口に出してしまっただけだ。事が重大なだけに、彼女はただ知らせを待つのは嫌だと思ったから、そんな言葉を口にしたのだ。それに、彼女が直接探しに行くとなれば、必ずといっていいほど柊馬もついてくるはずだ。二人の今の体調を考えれば、一花もさっきはただ頭でそう思っただけだ。一花が心配している様子を見て、柊馬は湊に目配せをした。湊はすぐに察し、すでに総力をかけて捜索しているし、何人もの腕の良い探偵も雇っているから、一花に安心して待っているように伝えた。「そんなに多くの人を動かせると逆に目立つから、これ以上は人手は必要ないよ。数名プロに頼んで、西園寺和香の手下の国内での動きを見張ってもらおう」柊馬は淡々とした口調で
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第654話

そのメールの最後には「鳥宮誠」と書かれてあった。美穂はそのメールにとても驚いたが、そこまで気に留めていなかった。その頃、美穂はちょうど修治と結婚しようと決めたが、彼が一度結婚し子供も持っていることで、一族からの圧力を受けていた。しかし、あのメールを受け取ってからすぐに、五十嵐家の資金繰りが突然断たれ、助けを求めることになった。この時、修治がタイミング良く五十嵐家の前に現れたわけだ。それにより、二人の結婚は滞りなく進んだ。しかし、この一件に美穂は相当驚いていた。五十嵐家は決して一般的な家とは違っている。数十代にも渡って続いてきた家業が一夜にして打撃を受けることなど、まずありえないのだ。そして彼女がどういうことなのか調べてみると、五十嵐グループの核心のデータがハッキングを受けて、全てのデータが消えてしまったことを知った。そして攻撃を仕掛けてきた相手はかなり荒い手を使ったようで、その破壊的な行動を起こした犯人を調べようと思っても、困難を極めた。五十嵐家は権力を持った誰かを怒らせてしまい、不利な状況に立たされたのだと疑っていた。美穂は無意識に、これは誠の仕業だと思った。そしてメッセージを送って彼に尋ねてみると、なんと彼はあっさりとそれを認めた。誠は美穂に、彼は当時あの戦地では雇われ兵で、今は懸賞金がかかった犯罪者を追う国際組織の一員なのだと教えた。組織はかなりの力を有し、様々な人材を囲っている。大物のために専門に活動を行っているらしい。もちろん、彼には自分なりのモットーがあり、金を稼ぐのは人助けをするためであり、グレーゾーンまでには手を染めるが、ギリギリのラインを越えることはしないという。五十嵐家のメインコンピューターは彼が事前に交換し、データを全て保存してあった。そしてすでにそのデータはまた元に戻していた。美穂はただの温室育ちのお嬢様ではなく、国際的なこういった裏の顔というものにも詳しかった。ただ、自分がこのような人物に出会い、縁を持つことになるとは想像もしていなかった。誠が自ら自分を助けてくれたことに美穂はとても喜んだ。しかし、その件で少し恐ろしさも感じてしまい、あれから二人は連絡を一切とっていなかった。だが、美穂は相手の連絡先をメモしておいた。必要な時が来たら彼に連絡するつもりだったのだ。「こうい
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第655話

柊馬はいつも強がることを一花は知っていて、いつも彼の調子を確認するようにしていた。「大丈夫だよ。君と一緒なら、何をしたって疲れないから」柊馬は小さな声で答えた。二人のこそこそ話に美穂はすぐ気づいた。「よし、二人とも休憩してきて。彼から返事がないか私が待ってるから」美穂はリビングから二人を寝室のほうへ押し出した。一花が何か言おうとしたが、柊馬は素直にそれに従い、一花の手を引いた。「ありがとう、母さん」美穂はとても幸せそうな笑みを見せ、二人に手を振った。一花もそれに従うしかなかった。この件が解決するまで、一花は心から落ち着いて休むことができなかった。部屋に戻ると、柊馬がいきなり咳をし始め、一花はすぐに警戒して彼を抱きしめた。「また苦しくなったの?お医者さんを……」「もう呼んだよ」柊馬はすぐに彼女を止めた。実際、これはあの強い効き目の薬の副作用だった。ここ数日、彼は状態は良かったし、病状も落ち着いている。しかし、免疫はかなり下がっていて、いつも軽い風邪のような症状が出る。一花を心配させないように、彼も多めに休むことにした。しかし、一花も今日は昨日と比べると顔色があまり良くないようだった。同じく彼も彼女のことを心配し、さっき医者を呼んだところだったのだ。二人が話している時に、医者がドアをノックして、入ってきた。一花はすぐに医者に柊馬を診てほしいと頼んだ。柊馬もおとなしくソファに寝そべり、問診から診察までずっと静かにしていた。「体のどこか気分が悪いところがないなら、それは良い兆候です。薬でどうにか抑え込めるなら、身体機能も良い状態を保てるでしょう」柊馬の状態に医者も安心した。そして次に一花のほうを見た。「奥様はどこの具合が悪いのでしょう?」一花は驚いた。「私は、別に悪いところはない……」「顔色をうかがうと、どうも血色が悪いようにも見えますが」医者は一花が話し終わるのを待たずにすでに診察を始めていた。彼は直接手を伸ばして、一花の脈を診ようとした。一花は無意識に後ろにさがり、柊馬のほうを見た。今日、柊馬が素直に先に医者を呼んできたのは、強制的に一花も診てもらおうという魂胆だったからだ。「私は本当に具合の悪いところなんてないです」一花があまりに拒絶するのを
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第656話

柊馬は深い瞳で静かに一花を見つめていた。彼女の些細な表情の変化ですらも、彼には見透かされているような気がした。一花はそわそわする心を隠すように、彼とは目線を合わさなかった。彼女が何か言おうとした瞬間、柊馬の温かい手が彼女の頬に優しく触れた。「一花」彼はここでようやく口を開いた。その声はどんどん低くなっているが、ぐっと感情を抑えた中にも優しさを感じられる。「君が嘘をつく時に、まつ毛が小刻みに震えるって知ってる?」一花はその言葉にすぐ反応し、驚いたようにまつ毛を跳ね上げた。「柊馬……」隠しきれないだろうかと思い、一花はギクッとした。彼が心配するような瞳に、彼女はさらに心を乱した。どうしても彼に隠さなければならないわけではない。ただ、柊馬の性格をよく理解している一花は、彼女と子供を守るために、衝動的に決断を下すのではないか不安なのだ。「俺がヤキモチを焼くと思って、医者に触れられないようにしたんだろう?」「……」その言葉に、一花は少し呆気に取られてしまった。しかしすぐに、彼女は恥ずかしそうに笑いだした。「まさか気づかれるなんて……」「一花が俺の気持ちを気遣ってくれてることは分かっているよ。でも、俺はそこまで理不尽な人間じゃないぞ」柊馬は一花に近づき、話す時、頬が少しだけ赤くなっていた。さっき、医者が一花の手首に触れようとした時、彼もじっと彼女を見つめていた。彼は本心と口から出る言葉が真逆な人だ。一花が医者から触れられるのが嫌なわけではなく、ただ彼は彼女の独占欲がどんどん増して、それはもう自分ではコントロールできなくなるくらいなのだ。医者であろうが、誰か男が彼女に触れて、あちこち触るのなら、彼は神経をとがらせて、機嫌が悪くなってしまう。一花の体は指先まで全て彼のものだ。彼だけが、彼女を見たり、触れたりすることができる。一花は彼が耳を微かに赤くさせているのを見て、さっきまでの心配が一気に消え、今度は可笑しくなってきた。そして一花も我慢せずに、軽く笑い声をもらした。「なんで笑うんだ?」柊馬は眉をひそめた。「別に……ただ、あなたが可愛いなって思って」一花は小声でそう言った。彼女が視線を上げると、その瞳はキラキラと輝き、柊馬は思わず唾を飲み込み、キスしたくなった。「……
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第657話

一花が甘えるように不満をもらすのを見て、柊馬は表情を柔らかくして、愛おしそうに笑った。「そんなことないよ。一花の印象はうちのみんなとても良いと思ってる。信じられないなら、後で母さんに聞いてみようか?」「柊馬!」「分かったよ、からかってごめん」柊馬は起き上がると、自ら一花の少し乱れた服と髪を整えてあげた。一花がまだ顔を赤くし、可愛らしくしているのを見て、彼は思わず彼女の眉間にキスをし、手を繋いで部屋を出た。美穂はすでにパソコンの前で待機していて、表情もさっきよりもかなり険しくなっていた。メールの返事は、ただこれだけ。【あなたは誰?】柊馬はメールに合言葉をちゃんと書いていたが、その文章の書き方の違いから、相手は一目で美穂からのものではないと気づいたらしい。それで美穂自ら彼と交流するしかなかった。相手が美穂だと分かると、あちらの返事は早かった。【そのターゲットの資料を送ってくれませんか?それから、彼が最後に現れた場所も】一花はすぐに熊岡剛の資料をまとめて送った。一花は失礼にならないように、言葉遣いに注意しながらまた付け加えた。【この人を探しているのは私たちだけではなく、時間があまりないんです。もし、あちらに先にこの人を見つけられてしまったら、彼がどうなってしまうか】今回、返事が来るまで少しかかった。【分かりました。期限はいつまでに?】一花は期日を書いて、また報酬もついでに尋ねた。【美穂さんへの恩返しとして今回は報酬はいただきません。しかし、ある条件があります】【条件とは何ですか?】【俺が行動している間、あなた方にはこちらの言うことを聞いてもらいます。もし、この任務のリスクが想像よりも超えていると判断した場合、こちらから捜索の続きはキャンセルします】【たったそれだけ?】【そうです】一花はすぐに返信した。【でも、私にも条件があって、秘密裏に行動してもらいたくて……】彼女がまだそのメールを送信する前に、相手から質問を予想されて、またメッセージが届いた。【ご安心ください。俺にはモットーがあります。雇い主の行動の全て秘密にし、途中で約束を破ることも裏切ることもしません】そのメールを送った後、誠は送られてきた資料を携帯に移し、古いパソコンからはその情報を全て消した。そしてタバコ
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第658話

金に関して「青空」に資金がある限り、誠も金に困ることはない。「ある古い友人ですよ」誠は詳しくは教えなかった。ポケットからタバコを取り出し、口に咥えたが、火はつけていない。「ちょっとした仕事ですよ。人探しで、まあ、数日で帰ってきます」まるで話す価値もないほどのことであるかのように、彼は淡々とした口調で言った。亮は社長椅子にもたれかかった。彼は誠のことをよく理解している。誠があまり話そうとせず淡々と語る任務の場合、それは決して小さなことではない。それに、あの誠が休みを取ってまでその「ちょっとした仕事」を依頼した人物にも、亮はかなり興味を抱いた。「人探しだって?」亮はゆったりとそう言いながら、誠をじっと見つめた。「お前も知ってのとおり、俺も最近ある仕事を受けてるんだ。同じく人探し。そいつの名は……熊岡剛」誠はこの時テーブルの上からライターを掴もうとして、その名前を聞いた瞬間、手を滑らせてシュッシュッと火をつける時に空振りする音を立てた。しかし、彼は表情を全く変化させず、そのままタバコに火をつけて、一口吸った。「そんな仕事まで、『青空』が請け負うんですか?」「それも俺の古い友人から頼まれた仕事だ。だが、この仕事はそう簡単じゃない。国内でも影響力を持つビジネス界の大物に関わってる」亮はじいっと誠を見ていた。彼はそれだけ口にし、誠には一切質問などしなかった。しかし、探りを入れているのは明らかだ。誠はこの時も感情を顔に出さなかった。「そうなんですか?なら、慎重にされてくださいね」誠はそう言い終わると、ライターを元の位置に戻し、背を向けて離れようとした。「誠!」しかし、突然亮が彼を呼びとめた。「俺はお前のことをずっと本当の兄弟だと思ってきた。ここ暫くの間、俺とお前にはわだかまりがあることは分かっている。しかし、理解してほしい。俺はただ、俺たちの理想のために走り続ける。『青空』はこれからもっと強く、巨大な組織に育てあげられるはずだ」「……」誠は少しの間立ち止まると、手を左右に振り、後ろを振り返ることもなく去っていった。人は変わるものだ。彼のように、頑固者を除いて。誠自身、自分のモットーと信念に固執しすぎていることは分かっている。しかし、それは、昔亮が誠を地獄の底から引き
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第659話

誠は亮のオフィスを出ると、すぐに携帯にあるデータをデータクラウドに移行し、すぐに元のデータは消去した。さっき、亮から探りを入れられた時は、非常に落ち着いた様子でいたが、亮は疑り深い人間だから、あれで信じたかどうかは分からない。もし、亮に誠も同じ人物を捜索する任務を受けていることを知られれば、事は厄介だ。実は、誠はさっき一瞬ためらった。なんと言っても、亮は彼にとって兄貴分でもあり、父親代わりでもあるからだ。だから亮を裏切りたくはなかった。しかし、彼は熊岡剛の資料にすでに目を通していた。剛は一般人だ。しかし、亮が以前人探しをする指示を出した時、剛を見つけ次第、こっそりと彼を消すという指示も出した。もし、美穂側の話が本当であれば、剛は何かの証人であるだけだ。それなら、亮は悪者に加担しようとしていることになる。亮はもう、昔のように彼が兄と慕っていた男ではなくなった。誠はタクシーで市内に向かい、適当にあるモールに入って、新しく携帯を購入しようとした。しかし、店に入ると、小柄で可愛らしい女性にぶつかってしまった。「あ、すみません……」夏海は顔も上げずに、何度も謝った。彼女は店に置いてある見本の携帯で何か没頭しているらしく、入り口から入ってくる人に意識が向いていなかったのだ。「何のゲームをしてるんですか?」誠は夏海のほうではなく、彼女が手に持っている携帯のほうに興味を示した。携帯画面には、今人気沸騰中のゲームだ映っていた。とても鮮明な画像で、ゲームをしていてもスムーズに動いている。この携帯の性能は見た感じなかなか良いらしい。彼は普段あまりゲームをしていないが、実はゲームオタクだ。特にここ二年ほど暇だったので、何もする事がない時には部屋でずっとソーシャルゲームをしていた。「えっと……古代をモチーフにしたRPGですけど」夏海は少し驚いていた。「最近とっても流行ってるんです」彼女も特にゲームが好きなわけではない。今日は弟の昂輝の新しい携帯を買いに訪れていたのだ。昂輝は姉に、ゲーム性能が良い機種を選んでほしいと伝えていた。さっき、店員が忙しそうにしていたので、彼女は適当にそこらへんにあった機種を手にとり、操作確認をしていた。「その携帯はなかなか良いですね。どの機種ですか?」誠は夏海から携帯を受け取
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第660話

夏海は急いでその場から離れ、別の携帯を選び始めた。誠は待つ間暇だったので、視界に常に夏海を捉えていた。夏海は毎回別の機種を手にすると、すぐに店員にゲームするときの性能を念入りに尋ねていた。その姿に、彼は思わずニヤリと笑った。夏海は長い時間かけて選んだが、予算内で満足できる機種を見つけられなかった。どうやら、最初に見ていたあの販売員お勧めの機種が比較的良いようだ。携帯は消耗品であるし、昂輝はまだ学生だ。夏海はそんな彼にまっさきに一番良いものを買いたくはなかった。そんなことをすれば今後買い替える時に物足りなく感じるだろう。しかし、彼女は何度も考え、そう思いながらも、実際は一番いいものを弟に選んだ。夏海は販売員にその機種を持ってきてもらおうと呼ぼうとした時、最初に接客してきた店員が急いでやって来た。「お客様、これがこの機種の新品になります。ご確認ください」夏海はまだこれをもらうとは言っていないのに、どうしてレシートが目の前にあるのだろうか。「あ、さっきのお客様がこれを、とおっしゃったんです。こちらのメモをお客様にと」「でも、私は彼と知り合いではないのですが……」夏海はこの時、まったくわけが分からなかった。しかし、あの男のほうを見ても、すでにそこに彼はいなかった。彼女は急いでそのメモを受け取り、中に相手の連絡先でも書いていないだろうかと確認してみたが、そこには、あるゲームのニックネームとアカウントしか書かれていない。「あの、私が自分で支払うので、さっきのお客さんのほうには、返金することってできますか?」別に何もしていないのに、棚から牡丹餅のように降ってきたプレゼントなど、夏海は受け取るわけにはいかない。彼女はすぐに販売員に尋ねた。「申し訳ございません。それは無理かと思います。さきほどのお客様は現金支払いをされたので」夏海が困っているのを見て、販売員は笑って言った。「連絡先を渡されたのではありませんか?そこに連絡してお尋ねになってはいかがでしょう?一目惚れした相手に、お金をぽんと出すなんて、あんな男の人、今の世の中にはなかなかいませんよ、それにとってもイケメンでしたし」その店員の話を聞き、夏海は顔が少し熱くなるのを感じた。一目惚れって……そんなまさか?……二日後、国内、深夜。ある漁
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