บททั้งหมดของ 『RE:LAY ―幽霊となった伝説のモデルが妹をプロデュースする話―』: บทที่ 51 - บทที่ 60

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第51話《起きる服》

展示会会場。 昼過ぎ。 人の流れは途切れない。 ブランドの説明。 商談。 名刺交換。 笑顔。 評価。 数字。 その中を。 良太と彩は歩いていた。 「すごいな」 良太が周囲を見回す。 「全部服の展示会なんだよな」 彩も静かに頷く。 学校帰りでは見られない世界だった。 服を作る人。 売る人。 選ぶ人。 着る人。 その全部が集まっている。 彩は一つ一つのブースを見ていた。 有名ブランド。 大手メーカー。 海外インポート。 整然と並ぶ服。 完成されたブース。 どれも綺麗だった。 だから。 彩の足は止まらなかった。 ただ見ていく。 その時だった。 彩が立ち止まる。 良太も止まる。 「どうした?」 彩は答えない。 視線の先。 会場の隅。 小さなブース。 Atelier SAKUMA。 並んでいるのは。 ジャケット。 コート。 シャツ。 どれも派手ではない。 ブランド名も知らない。 けれど。 彩は動かなかった。 その瞬間。 レイラが小さく呟く。 「……あら」 《何だ?》 レイラは服を見る。 一拍。 「面白い服」 さらに数秒。 「ハンガーで損してる」 《分かるのか?》 「分かるわよ」 少し笑う。 「だって私」 「こういう服で仕事してきたもの」 彩は小さく呟く。 「この服」 一拍。 「着てみたいです」 良太が服を見る。 正直。 よく分からない。 綺麗な服だとは思う。 だが。 それ以上は分からない。 彩だけが。 何かを見ていた。 その時。 ブースの奥から男が出てきた。 佐久間圭介。 一瞬。 彩を見る。 そして。 奏の言葉が蘇る。 ――あの人が着たら。 ――服、起きると思います。 佐久間は思わず息を止めた。 同じ人だった。 奏が指差した少女。 「えっと……」 佐久間は迷う。 こういうことは慣れていない。 営業も苦手。 声を掛けるのも苦手。 それでも。 言わずにいられなかった。 「もしよかったら」 良太が振り向く。
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第52話《起きた人生》

​展示会終了後。 ​会場の照明が一つずつ落ちていく。 ​人の流れも減っていた。 ​搬出準備。 ​撤収作業。 ​スタッフたちが慌ただしく動く。 ​その中で。 ​Atelier SAKUMAだけが静かだった。 ​佐久間圭介は椅子に座っている。 ​何もしていない。 ​いや。 ​出来なかった。 ​スマートフォンを見ていた。 ​画面にはメール。 ​一件。 ​また一件。 ​さらに一件。 ​商談依頼。 ​サンプル確認依頼。 ​発注相談。 ​展示会では何度も名刺交換した。 ​だが。 ​それだけだと思っていた。 ​いつもそうだったから。 ​名刺だけ交換して終わる。 ​その場だけ盛り上がって終わる。 ​期待して。 ​何も起きない。 ​そんな経験を何度もしてきた。 ​だから。 ​まだ信じられなかった。 ​スマホが震える。 ​またメール。 ​佐久間は画面を見る。 ​しばらく動けなかった。 ​十年前。 ​小さなアパート。 ​二人暮らし。 ​まだ子どもはいない。 ​テーブルにはノート。 ​デザイン画。 ​生地見本。 ​そして。 ​退職届。 ​華がそれを見ていた。 ​「本当に辞めるの?」 ​佐久間は頷く。 ​「やってみたいんだ」 ​華は聞く。 ​「儲かるの?」 ​佐久間は黙る。 ​そして。 ​正直に答えた。 ​「分からない」 ​華は少し笑った。 ​「分からないんだ」 ​「うん」 ​沈黙。 ​しばらく考える。 ​そして。 ​華は言った。 ​「じゃあやってみなよ」 ​佐久間が顔を上げる。 ​華は笑った。 ​「今しか出来ないでしょ」 ​現在。 ​スマホが震える。 ​商談希望。 ​佐久間は目を閉じた。 ​息を吐く。 ​まだ信じられない。 ​五年前。 ​工場。 ​電話。 ​「申し訳ありません」 ​担当者の声。 ​「この数量では難しいです」 ​佐久間は頭を下げる。 ​電話越しに。 ​何度も。 ​「お願いします」 ​「お願いします」 ​それでも駄目だった。 ​電話が切れる。 ​机の上。 ​請求書。 ​通帳。 ​残高。 ​ため息。 ​帰宅。 ​玄関。 ​華が迎える。 ​「どうだった?」 ​佐久間は靴を脱ぐ。 ​「駄目だった」
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第53話《世界が見つけた日》

1207号室。昼過ぎ。窓の外は晴れていた。静かな午後だった。良太はノートパソコンを開いている。法人用メール。契約書。請求書。やることは増えていた。少し前まで無職だった男とは思えない量だった。それでも。不思議と嫌ではなかった。彩はソファに座っている。学校帰り。制服姿。テーブルには麦茶。スマートフォンを眺めていた。その時だった。「え?」彩が小さく声を上げる。良太が顔を上げる。「どうした?」「ニュースです」「ニュース?」彩はスマホを見せた。速報。大きな文字。【NORDI緊急会見】その瞬間。良太の表情が変わった。「ノルディ?」彩が驚く。「知ってるんですか?」「いや」良太は苦笑した。「服なんて全然分からない俺でも知ってる」一拍。「世界一有名なファッションの人だろ」レイラが少し笑う。「だいたい合ってるわ」良太はリモコンを取る。テレビをつける。ニュース番組。速報テロップ。スタジオのキャスターも興奮していた。「ただいま、アレッサンドロ・ノルディ氏による緊急会見が始まりました」映像が切り替わる。海外。巨大な会見ホール。無数のカメラ。世界中のメディア。フラッシュ。ざわめき。中央の壇上。一人の男が座っていた。白髪。端正なスーツ。静かな威圧感。誰も騒がない。誰も口を挟まない。ただ一人の言葉を待っている。アレッサンドロ・ノルディ。ファッション界の帝王。五大コレクションの一つ。NORDI COLLECTION創設者。彼が動けば市場が動く。ブランドが動く。世界が動く。その男が。静かにマイクを取った。会場が完全に静まる。そして。最初の言葉は。誰も予想していなかった。「まず最初に」通訳が続く。「歌原レイラについて、お話しさせてください」部屋の空気が止まる。彩も。良太も。テレビを見る。レイラだけが黙っていた。ノルディは少しだけ視線を落とす。そして続ける。「歌原レイラは特別でした」会場は静かだった。「彼女は美しかったから特別だったのではありません」「有名だったからでもありません」「技術があったからでもありません」一拍。「彼女は、チームだったのです」彩が小さく息を呑む。ノルディは続ける。「ヘアメイク」「スタイリスト」
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第54話《選ぶのは、彩》

UTAHARA MODEL OFFICE。夜。応接スペース。テーブルの上には、一通の封筒が置かれていた。白い封筒。上質な紙。金色の箔押し。中央に刻まれている名前。NORDI COLLECTION TOKYO。良太は何度目か分からないほど、その文字を見ていた。彩も隣に座っている。そして。誰にも見えない場所には、レイラが立っていた。静かな夜だった。だが。三人とも分かっている。今日という日が。この事務所にとっての転換点になることを。良太は封筒から書類を取り出した。もう内容は読んだ。それでも。もう一度確認する。RE:CODE MODE CONTEST。NORDI COLLECTION TOKYO特別選抜枠。参加資格。招待事務所よりモデル一名を選出。ヘアメイク。スタイリスト。衣装提供。スポンサー。演出。自由編成。モデル単体ではない。チーム戦。ノルディらしいルールだった。良太は小さく息を吐いた。「彩」「はい」彩が顔を上げる。良太は書類を指差した。「出るなら大変だぞ」彩は黙って聞いた。良太は続ける。「モデルだけじゃない」「ヘアメイク」「スタイリスト」「衣装」「スポンサー」「演出」「全部必要らしい」書類を閉じる。「つまり」一拍。「チームを作れってことだ」彩も頷いた。理解していた。良太は少し考える。そして。真面目な顔になる。「お金もかかると思う」彩は黙る。良太は続けた。「事務所はある」「運営資金もある」「でも」一拍。「元を辿れば彩のお金だ」彩は小さく頷いた。歌原レイラが遺した資産。事務所設立。各種契約。運営費。それらを支払った今でも。まだ四億円台後半が残っている。良太は彩を見る。「だから」「俺は勝手に決めない」彩が顔を上げる。「出るかどうか」「彩が決めろ」部屋が静かになる。良太はもう一度、参加要項へ目を落とした。開催日程。年齢欄。出場条件。そこを見て、少しだけ眉をひそめる。「開催の頃には、十六歳か」彩が見る。「はい」良太は書類を見たまま言った。「世界大会って」一拍。「そのくらいの年齢でも出るものなのか?」彩はすぐには答えられなかった。業界のことを、知っているわけではない。自分がまだ高校生であるこ
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第55話 《眠らない幽霊》

1207号室。 深夜二時。 リビングにはパソコンの光だけが残っていた。 カタカタカタカタ。 キーボードの音。 止まらない。 カタカタカタカタ。 止まらない。 画面には大量の文字。 【彩に必要な人材候補】 スタイリスト ヘアメイク ブランド関係者 ショーディレクター カメラマン 演出家 スポンサー候補 さらに下。 人名。 会社名。 特徴。 経歴。 関係性。 評価。 連絡先候補。 膨大な情報。 まるで資料集だった。 カタカタカタ。 カタカタカタ。 入力しているのは良太の身体だった。 だが。 操作しているのはレイラだった。 「次」 キーボードが動く。 「その次」 さらに動く。 「あと二十人」 「その後スポンサー候補」 「海外ブランドもまとめる」 良太は死んだ目で画面を見ていた。 「レイラ」 返事はない。 「レイラ」 「何よ」 即答だった。 「寝たい」 「駄目」 即答だった。 良太は机に突っ伏した。 「今何時だと思ってる」 「二時」 「そうだよ」 「だから何?」 良太はゆっくり顔を上げた。 「だから何じゃねえよ」 レイラは気にしない。 カタカタカタ。 入力を続ける。 「時間がないの」 「知ってる」 「二か月しかない」 「知ってる」 「だから急ぐの」 「知ってる」 「じゃあ働いて」 良太は天井を見た。 駄目だ。 会話にならない。 数分後。 再びキーボードが鳴る。 カタカタカタ。 カタカタカタ。 止まらない。 良太の瞼が落ちる。 落ちる。 落ちる。 そして。 ガクッ。 「寝るな」 「寝るわ!」 思わず叫んだ。 レイラが振り向く。 良太も振り向く。 しばらく無言だった。 先に口を開いたのは良太だった。 「限界だ」 「まだ大丈夫」 「大丈夫じゃない」 「大丈夫よ」 「お前基準で言うな!」 レイラが黙る。 良太は立ち上がった。 「俺は幽霊じゃない」 一拍。 「寝ないと死ぬ」 「死なないわよ」 「死ぬんだよ」 レイラは腕を組む。 「彩の方が大事でしょ」 「大事だよ」 良太は即答した。 「だからやってる」 一拍。 「でも人間には休養が必要なんだ」 レイラが黙る。 良太は続けた。
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第56話 《最初の一人》

UTAHARA MODEL OFFICE。午後。応接スペース。良太は資料を整理していた。「RE:CODE MODE CONTEST」参加要項。評価項目。チーム構成。そして。空白だらけのチーム表。モデル。歌原彩。それ以外はまだ何も決まっていない。「まず一人目ね」レイラが言う。良太は頷いた。「候補は?」「いるじゃない」レイラは即答した。良太は嫌な予感しかしなかった。     ◆数時間後。都内某所。相沢七瀬は相変わらず安い案件を回されていた。スタジオのドアを開ける。七瀬と目が合う。その瞬間だった。「やるわ」良太は止まった。「は?」「彩ちゃんのメイク」七瀬は椅子から立ち上がる。「私がやる」良太はまだ何も言っていない。勧誘もしていない。説明もしていない。だが。七瀬は完全にそのつもりだった。「待て」「何?」「まだ何も話してない」七瀬は呆れた顔をした。「ニュース見たわよ」当然だった。今や業界で知らない者はいない。七瀬は腕を組む。「RE:CODE MODE CONTEST」一拍。「出るんでしょ?」良太は頷く。「出る」「じゃあ決まり」即答だった。「私がやる」「即決だな」「当たり前でしょ」七瀬は言う。「彩ちゃんを一番綺麗に見せられるの私だから」良太は眉を上げる。「言い切るな」「言い切るわよ」七瀬は一歩も引かなかった。「だって他に思いつかないもの」その自信だけは昔から変わらない。良太は頭を押さえる。レイラを見る。レイラも見ている。二人とも同じことを考えていた。技術に不安はない。問題は別だ。相沢七瀬。才能と同じくらい面倒な女だった。「一つだけ約束してほしい」七瀬が眉を上げる。「約束?」「そうだ」良太は資料を閉じた。「今回はチームだ」七瀬が黙る。良太は続ける。「これから人が増える」「スタイリストも来る」「演出も入る」「スポンサーもいる」「たぶん価値観が合わない奴も出てくる」七瀬は鼻で笑った。「いるでしょうね」良太は頷く。「たぶん全員、彩を良くしたいと思ってる」「だから意見もぶつかる」一拍。「でも彩は一人じゃ完成しない」七瀬の眉が少し動く。「ヘアメイク」「スタイリング」「演出」「撮影」「全部で一つの作
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第57話 《二ヶ月のレンタル》

都内。午後。桐島誠司のスタジオ。大きな作業机。ラックに並ぶ衣装。色見本。生地サンプル。大量の資料。スタイリストの戦場だった。その中で。良太は少しだけ緊張していた。彩もいる。レイラもいる。見えるのは良太だけだが。桐島が椅子へ腰掛ける。落ち着いている。静かだ。だが存在感がある。良太は頭を下げた。「今日はお時間をいただいてありがとうございます」桐島は軽く頷く。「話は何となく読めてる」テーブルの上には既に資料が置かれていた。RE:CODE MODE CONTEST。招待状のコピー。参加要項。開催概要。桐島はすでに目を通していた。「招待されたらしいな」彩を見る。「おめでとう」彩は少し緊張しながら頭を下げる。「ありがとうございます」短いやり取り。それ以上は言わない。だが。十分だった。しばらく沈黙。良太が口を開く。「本題ですが」桐島が頷く。「高梨奏さんを、お借りしたいんです」静かになる。良太は続ける。「スタイリストとして」「チーム彩に参加していただきたいと思っています」桐島は返事をしない。資料へ視線を落とす。数秒。長い沈黙。そして。顔を上げた。「どうして奏なんだ」良太は少しも迷わなかった。「展示会で見ました」「服だけじゃありません」「人も見ていました」桐島は黙って聞いている。「高梨さんは」「服を見て終わる人じゃなかった」「服がどう生きるかまで見ていました」一拍。「彩に一番必要なのは」「高梨さんだと思いました」静寂。桐島はしばらく良太を見ていた。そして。小さく頷く。「……そうか」さらに数秒。「本人は知ってるのか」「まだ伝えていません」「そうか」桐島は静かに言った。「構わない」良太が思わず聞き返す。「……いいんですか?」桐島は不思議そうに首を傾げる。「何がだ」「もっと反対されると思っていました」桐島はわずかに苦笑する。「展示会のあとからだ」良太が顔を上げる。「あいつの様子が変わった」「暇さえあれば彩の話をする」「『服を立たせる人でした』」「『また一緒に仕事がしたいです』」「『あんなモデル初めて見ました』」「そんな話ばかりだ」彩は少し照れたように俯く。桐島は続けた。「だから」「そのうち来ると思っていた」
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第58話《たった一つの席》

ナレーション かつて── ノルディコレクションの舞台には、 歌原レイラという“絶対的な存在”が立っていた。 しかし、彼女はもういない。 その空白を埋めるために── アレッサンドロ・ノルディは、一つの“異例”を提示した。 《RE:CODE MODE CONTEST》 レイラ亡きあと、 その舞台に立つ“たった一人”を選ぶためのコンテスト。 そして、ノルディが定めたルールは、 日本のモデル業界に静かな爆弾を落とした。 出場条件。 招待状が届いた各モデル事務所から、 選ばれるのは──一人のみ。 つまりそれは、 多くのモデルにとって、 人生に一度きりの《世界への切符》だった。 それは才能の選別であり、 同時に、 事務所の未来を賭けた決断でもある。 この“たった一つの席”を巡り── 日本最大手の事務所が、揺らぎ始める。 【画面テロップ】 《日本最大手モデル事務所 HORIZON》 1.ホライゾン・会議室 午前9時04分 重苦しい空気。 幹部たちが席につく。 部長が資料を閉じた。 部長 「それでは、《RE:CODE MODE》の出場枠についてだ。」 ざわ……。 小さなざわめき。 部長 「結論から言う。」 一拍。 「出場モデルは──《御堂玲奈》とする。」 空気が止まる。 2.真壁ミラの反発 テーブルの端。 真壁ミラが拳を握る。 ミラ 「……また御堂さんですか。」 部長 「“また”ではなく《当然》だ。」 「彼女がうちの顔だ。」 ミラの奥歯がきしむ。 (心の声) 《RE:CODE MODE》に出られるのは一人。 私は玲奈と違い、 モデルに人生を捧げてきた。 テレビも。 バラエティも。 イベントも。 全部断ってきた。 モデルだけを選んできた。 ミラ 「納得できません。」 幹部たちが顔を上げる。 役員 「ミラ。あなたも実力はある。」 「だが、看板を背負う器がまだない。」 ミラ 「正直に言ってください。」 「稼げるのは玲奈さんのほうだから……ですよね。」 沈黙。 ミラ 「私は……《モデルの仕事だけ》を選んできました。」 「ランウェイの質。」 「ブランドとの相性。」 「誌面の反応。」 「月によっては、御堂さん以上の評価もありました。」 部長 「数字
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第59話《覚悟の移籍》

ナレーション 大手を出るということは、 肩書きだけでなく、 整えられていた世界を失うことでもあった。 それでも。 たった一つの席のために、 人生を変える人間がいる。 1.クロスリンク・エンターテインメント 応接スペース(午前10時42分) 都内。 クロスリンク・エンターテインメント。 大手ではない。 だが、ここ数年。 SNS戦略で急成長を続けている中堅事務所だった。 応接スペースの扉が開く。 一人の男が入ってくる。 四十代半ば。 派手さはない。 だが、目だけが妙に鋭い。 この事務所を十年かけて中堅まで押し上げた男。 クロスリンク代表。 榊原健吾。 榊原 「──ようこそ、真壁ミラさん。」 深く頭を下げる。 「あなたが来てくれたこと、本当にありがたく思っています。」 ミラ 「……こちらこそ。」 軽く会釈する。 榊原 「単刀直入に言います。」 一拍。 「RE-CODE MODE。」 「うちから出るのは──あなた一人です。」 ミラが顔を上げる。 榊原 「出場枠は確約します。」 静かな声。 だが、その重さが滲んでいた。 ミラ 「……ありがとうございます。」 「そのために、ここへ来ました。」 榊原は頷く。 「分かっています。」 少し間を置く。 「ですが、正直に言えば……。」 「ホライゾンと同じ環境は用意できません。」 ミラは黙って聞いている。 榊原は窓の外を見る。 向かいの高層ビル。 巨大な広告。 《HORIZON》 しばらく見つめて、 小さく笑った。 「……あれを、一度でいいから追い越してみたかったんです。」 ミラが顔を上げる。 「うちみたいな中堅が。」 一拍。 「でも、あなたなら届くかもしれない。」 静かな声だった。 「だから、賭けさせてください。」 沈黙。 榊原 「もしあなたが勝てば──」 再び窓の外を見る。 「うちは、別の景色を見ることになります。」 静かな部屋。 「だから。」 「あなたを立たせるチームを集めます。」 「ヘアメイク。」 「スタイリスト。」 「カメラ。」 「演出。」 「人材はこちらで声をかけましょう。」 静寂。 ミラはしばらく考えた。 そして、 静かに首を横に振る。 榊原 「……真壁さん?」 ミラ
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第60話《救われたことを、まだ知らない》

ナレーション 大手を離れる。 それは、 会社を辞めるということではない。 積み上げてきた実績。 与えられていた環境。 保証されていた未来。 その全部を、 自分の意思で手放すということだ。 それでも。 たった一つの席のために、 動く人間がいる。 そして。 その覚悟を知っている人間もいた。 1.ニュース番組・スタジオ 大型モニター。 映し出されるテロップ。 《元HORIZON No.2・真壁ミラ 電撃移籍》 《RE:CODE MODE CONTEST出場へ》 アナウンサー 「芸能界に大きな衝撃が走っています。」 「国内最大手・HORIZONのNo.2モデル、真壁ミラさんが、中堅事務所クロスリンク・エンターテインメントへ移籍しました。」 画面が切り替わる。 クロスリンク本社。 真壁ミラの宣材写真。 そして。 《RE:CODE MODE CONTEST》 テロップ。 《開催日 8月15日》 《優勝チームにNORDI COLLECTION WINTER(12月20日)出場権付与》 アナウンサー 「今回の移籍ですが、一部ではRE:CODE MODE CONTESTの出場枠を確保するための移籍ではないか、という見方も出ています。」 「こうした移籍は、ルール上問題ないのでしょうか。」 隣に座る専門家が頷く。 専門家 「問題ありません。」 「RE:CODE MODE CONTESTの招待状にも、公式サイトにも、これを禁止する記載はありません。」 「ルール上は、何も問題ありません。」 アナウンサー 「しかし……。」 「HORIZONといえば、業界最大手です。」 「この事務所で働くことを目指す芸能人の卵や、芸能界を志す若者は数多くいます。」 「その事務所を辞めてまで、このコンテストにはそれだけの価値があるのでしょうか。」 専門家は少し考える。 そして、 静かに頷いた。 専門家 「……人によると思います。」 一拍。 「ですが、真壁ミラというモデルに限って言えば。」 「私は、驚きませんでした。」 アナウンサー 「驚かなかった。」 専門家 「ええ。」 画面に、 過去の真壁
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