オークションが終わると、樹は青音を産後ケアセンターまで送り届け、そのまま家へ戻ろうとする。だが青音が離さず引き止め、結局翌朝まで身動きが取れない。ようやく我慢の限界に達し、樹はスマホを取り出してLINEを開いた。ここ数日、長野夕月から連絡が来ていないか確かめたかった。だがトーク画面は、二週間前で止まったまま。そこで初めて気づいた。夕月は、もうずっと彼に連絡していない。何かがおかしい。これまでの彼女なら、少なくとも一日に三回は連絡してきた。それが今回は、ここまで何もないなんてあり得ない。胸に不安が押し寄せる。彼は「タバコを吸ってくる」と言い訳して階段室へ向かい、そのまま夕月に電話をかけた。「おかけになった番号は現在使われておりません」「使われてない?」樹は思わず笑う。最初に浮かんだのは、また彼女の駆け引きだという考えだった。本当に、手の込んだ真似をする。苛立ちが募り、今度はLINE通話をかける。だがアカウントそのものが削除されていることに気づく。そこでようやく、事態の異様さを理解する。一気に血の気が引き、樹は慌てて家へ電話をかけた。「夕月は?戻ってきているのか?」使用人は一瞬戸惑い、それから答える。「旦那様、奥様が出て行かれた日、お伝えしましたよね。もう戻らないとおっしゃっていました」樹の体が固まる。「つまりこの何日も、一度も戻っていないのか?」「はい。旦那様はいつお戻りですか。奥様が出て行かれるとき、旦那様に渡してほしいと箱を預かっています」「今すぐ戻る」電話を切ると、樹は青音に一言も告げず、そのまま車を飛ばして帰宅した。玄関に入るや否や、彼は反射的に夕月の姿を探す。だがどこにもいない。「箱はどこだ。夕月が残した箱は?」「こちらです、旦那様」使用人から受け取り、箱を開ける。中に入っていたのは、三つ。一つ目は、彼女がここ数年受けてきた体外受精の記録。分厚い束が、手の中でずっしりと重い。数えてみると、六回分。つまり、この三年間で夕月が六回も体外受精を試みた。最初の頃は、彼も付き添っていた。だが、青音との間に子供ができてからは、一度も付き添うことはなかった。その事実が、胸を鋭く締めつける。彼はそれを横に置いた。二つ目は、彼が隠しておいた離婚協
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