Todos los capítulos de なぜか近づいてきたコイツの本性を暴いてやる!: Capítulo 1 - Capítulo 10

16 Capítulos

第2話 残念美人

 「——————そういえば、自己紹介がまだだったね! 私は姫柊花音《ひめらぎ かのん》。これからよろしくね!」    カフェ店内のイメージに合わせた落ち着いたBGMを掻き壊すかのように、花音が馬鹿デカい声で自己紹介をする。  てかさっきから思っていたことだが、そんなに大きな声出さなくても聞こえてるから。  「……はぁ」  「君の名前は?」  「俺? 俺は……」  「知ってる。久山雅春《ひさやま まさはる》君、だよね?」  「何で聞いたんだよ。知ってるなら、わざわざ聞くな」  「あちゃー。こりゃ一本取られたな~」    花音はペチッと可愛らしく額を叩く。  こいつ、全然人の話聞かないな……。しかも意味分からんこと言ってるし。  俺のことを何で知っているかは、まあ一々確認するまでもないだろう。  「久山君ってあれでしょ? 嘘告白の人だよね?」  「……お前も、やっぱり人の心とか無いんだな」  「お前も?」  「美しい薔薇にはトゲがあるってことだよ。外面は良い顔して、内面は人のことを傷つけることしか脳のないカスってことだよ」  「うっわ~。辛辣~」  そんなことを言いながらも、花音はケタケタと笑ってる。  笑い要素はなかったと思うんだけど?  「だから、お前のデリカシーの無さにも納得だわ」  「ふぅ~ん? そんなに美人が憎いんだ。てか、やっぱり私って美人なんだ! 私最高! 私最強‼」  胸の前で腕を組んで踏ん反り返っている花音の前に、先ほど注文したオレンジジュースが運ばれてくる。  オレンジジュースはオレンジジュースでも、グラス縁に輪切りオレンジが付いてる高級感あるオレンジジュースだ。  ちなみに、俺はアイスコーヒーを注文した。    「でもさ、でもさ~。美人は美人でもその子と私じゃ全く違うと思うんだよね~」  「なに、美人レベル的な話? 俺からしたら何も変わらないんだけど」  「いやいや、そういう話じゃなくてね。私、これがノーマルだから」  「つまり、今のお前が素ってこと?」  「ダッツライト!」  指をピストルの形にして俺を指さす。  てか、発音が酷すぎてびっくりしたわ。  「……信じられないな。仮に今のお前が素なんだとしたら、かなり残念な子だぞ?」  「ふふふ、そう。私は残念な子なんだよ!」  
last updateÚltima actualización : 2026-05-21
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第3話 選択授業

 翌朝、登校して自分の席に突っ伏していると背中をツンツンされた。  いや、ツンツンされたような気がする。多分気のせいだ、そうに違いない。  「とうっ!」  威勢の良い声を共に右脇を思い切り突かれた。  「うひゃっ!?」  突然奇声を上げたせいで、注目が一気に俺に集中する。  嘘告白の件で変に目立っているのに、これ以上の悪目立ちはしたくないんだけど。  原因は右隣にいる金髪美少女のせいだ。てか、本当にクラスメイトだったんだ……。  「こら、マサくん! なんで昨日は私を置いて帰っちゃったのさ~」  「いやいや、お前が先に帰ったんじゃん。この食い逃げ女」  「いやいやいや! 女の子が荷物を持って席を立ったら化粧直し以外にないでしょ! 言いがかりはやめて欲しいなー」  「そんな世界線を俺は知らない」  「残念だけど、これが現実なんだよなー」  「さいですか」  それだけ言い残して、俺は再び机に突っ伏す。  「こらこらこら、私を無視して眠りにつこうなんて失礼じゃありませんかね?」  「……」  「公衆の面前で抱きついちゃうぞ?」  「マジでやめろ。てか早く席つけよ」  「ほいほ~い」  はぁ、ようやくうるさいのがいなくなった。  そう思った矢先、後ろからツンツンされる。  確か、彼女の名前は姫柊花音《ひめらぎ かのん》。そして俺の名前は久山雅春《ひさやま まさはる》。  嫌な予感がするので、俺は決して後ろを振り返らないことにした。  すると今度は、俺の背中に何やら文字を書き始めた。考えたくもないのに、神経が無意識に背中に集中する。  こ、っ、ち、み、な、い、と、さ、す、よ、♡  思わず俺はその場で飛び跳ねた。  クスクスと後ろから笑い声が聞こえてくるので振り返ると、そこにはイタズラな表情を浮かべた花音の姿が。  その手には、しっかりとシャーペンが備えられている。  「お前、一体何がしたいんだよ……」  「ん~? 私はマサ君と友達になりたいだけだよ?」  「……」  「どした、急に真剣な顔して。正直キモいぞ」  「思っても口に出すな。それより、さっきから気になってたんだけど、なんでマサくん呼び?」  「やっぱり友達なら名前呼びかなーって!」  「マサくんって名前呼びじゃなくて愛称呼びだけどな」  「あ、ほん
last updateÚltima actualización : 2026-05-21
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第4話 花音理論

 教室購入を終えて迎えた放課後、俺と花音《かのん》は昨日と同じカフェに来ていた。  現状でお分かりだと思うが、一日中くっつき虫状態だった花音から逃げ切ることができなかったのである。  男子トイレまで付いて来ようとしたのは、さすがの俺でも正直引いた。  まさか、変態女子が世の中に実在するなんて思わなかった。  てか、なんでそこまでして俺に執着するのかが本当に分からない。  「ねね、何頼む?」  当の本人はと言うと、呑気にメニュー表を見てやがる。  そんな花音に、俺はため息交じりで応える。  「俺は水でいいや」  「え~。せっかくのカフェなのに水なんてもったいないよ~。てか、水だけで席に着くのはルール違反なんだぞ~?」  「どっかの誰かさんが食い逃げするかもしれないからな。これ以上の高い料金は払ってられん」  ちなみに昨日の会計金額は一二一〇円(税込み)。  高校に入学して間もない俺には、少々カフェの金額は高すぎた。  てか、ここのカフェ絶対に高校生が来るところじゃないだろ。高校生が俺たち以外に誰もいない状況が全てを物語っている。  「まあまあ、カリカリなさんなって。今日は私が払うからさー」  「これでまた食い逃げなんかしたら、お前の財布から昨日の分含めて金引っこ抜くから」  「いやー! 犯罪者ー!!!」  「おい、ガチやめろ!」  突然叫び出すもんだから、思わず立ち上がってしまった。  直接確認したわけじゃないが、絶対周りから白い目で見られてる……。  店員さんが「どうかされましたか!?」と慌てた様子で駆け寄ってきたが、それを花音が「すみません、演劇の練習で声量を間違えてしまいました」と弁明していた。  お前が業務妨害で犯罪者だ、ボケ。    「いや~。ビックリしたね」  「論理的に考えて、お前がビックリするのはおかしい。頭のネジぶっ飛んでんのか? どこかに落としたんなら探すの手伝うぞ」  「え、急に親切じゃーん! なになに、もしかして私のこと好きになっちゃった~?」  「んなわけあるか。これ以上の被害が出る前に正常な人間に戻ってもらうだけだ」  「でも、ごめんね? まだ恋愛とかよく分かんなくて……。友達のままじゃダメ、かな?」  「うん、ダメ。せめて赤の他人で」  「いみふ~」  ケタケタと腹を抱えて笑う花
last updateÚltima actualización : 2026-05-22
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第5話 花音ちゃん大ピンチ!

 「ただいまー」  マサくんとお茶を楽しんだ後、私は寄り道することなく真っ直ぐ家に帰った。  明日も学校があるからというのも一つの理由だけど、単純に疲れたから家に帰ってきたというのが一番の理由だ。  一日の疲労度合いを円グラフに表すと、マサくんと話すのが一割、残りの九割が気疲れといったところかな?  いやー、慣れないことするのはやっぱり精神的に疲れますなー。  「おかえり、今日も学校は楽しかったかい?」  私の帰宅に優しい笑顔で迎えてくれたのは、今年から新社会人となった兄の姫柊世一《ひめらぎ よいち》だ。  世一にぃを一言で表すと、『頭の回転早すぎお化け』。学力はそこそこなんだけど、なんせズバ抜けて自頭が良い。  その自頭の良さで、私は中学生の時に両手では数えきれないほど沢山助けてもらってきた。  その節もあり、私の中で世一にぃは両親よりも逆らえない王様的存在となっていた。  つまり、私は世一にぃの従順な下僕。    「うん、おかげさまで楽しかったよー」  「そっか、ちゃんと学校に馴染めるか心配だったんだよ。まぁ、まだ入学して二日目だしこんなこと言われても困るか」  ハハハと乾いた笑みを浮かべる世一にぃ。  ちなみに、家に帰る度に「学校は楽しかったかい?」と聞かれている。  本当、世一にぃには色々と心配かけさせてばかりだな……。私ももう少ししっかりしないと。  「私なら大丈夫だよ。世一にぃは会社どんな感じ?」  「んー、まだよく分かんないかな。入社してまだ一週間ぐらいしか経ってないからね。一昨日《おととい》からだったかな? OJT研修を終えて独り立ちしたよ」  「よく分からないとは一体……」  世一にぃの要領の良さは昔から知ってるので、これしきの事では大して驚かない。  「相変わらずのハイスペックを活かしてるなー」としか思わなかった。  「まぁ、同僚にも恵まれているしね。楽しく社会人生活を送ってるよ」  「そっか、それはよかったね。……とりあえず、そろそろ家に上がってもいいかな? 着替えてから話の続きしたい」  「あ、ごめんごめん。確かに玄関で立ち話することではないよな。ゆっくり着替えておいで、花音の好きなオレンジジュース入れて待ってるから」  「ほーい」  そして私は、革靴を脱いで自室へと向かう。  やっぱり、
last updateÚltima actualización : 2026-05-23
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第6話 花音の戦い 1st round

 花音《かのん》の様子がおかしい。  いや、そもそも花音が頭のおかしい子だというのはいつものことなんだけど、今日の彼女はいつもと違う雰囲気を漂わせていた。  自分の席へと向かう際に自然と花音の姿が目に映り込んできたわけだが、彼女は机に両肘をついて身動き一つ取ることなくジッと一点を見つめている。  何というか、虎視眈々《こしたんたん》と何かを狙っているかのような……。  まあ、何を狙ってるかなんて俺には心底どうでもいいことなんだけど。  そして俺は、花音に挨拶することなくスッと自分の席に着く。   本日の予定は、午前中に健康診断で午後に部活動紹介。はっきり言ってクソめんどい。  健康診断は学校行事の一環だから仕方ないとして、部活動紹介に関しては正直部活に入りたい奴だけ参加すれば良くね、と思ってしまう。  部活に入る気がない俺みたいな人間からすれば、ただの時間の無駄遣いでしかないのだ。  早く帰って寝たいのに……。   「……コホン、マサくん少し良いかね?」  部活動紹介って、どのくらいの時間で予定してるんだろう。  やっぱり一時間から二時間くらいを想定しているんだろうか。  「……コホンコホン、久山雅春《ひさやま まさはる》くん。少し良いかしら?」  マジでなげぇー、頼むから一〇分、一五分で終わらせてくれないかな。  それか、健康診断が終わってから体調不良で早退でも——————  「——————とうっ!」  悩める子羊の悩みを切り裂くように、俺の頭に見事なチョップが決まる。  ちなみに、威力はそこまでだった。  「なんだ、登校してたのか」  「その言い訳はちょっと苦しくない? 席着くまでに私の前通るんだから必然的に視界に入るでしょ」  「入らなかったんだから仕方なくね? ……てか、お前なんか今日雰囲気違くね?」  「え? べ、別に普通じゃない……かな」  「いやいや、お前といったら、もっと頭のネジぶっ飛んでるようなおかしい奴だろ。今日はその片鱗が全く見えないんだけど」  「普通に失礼過ぎない? 私は至って普通……」  とか言いつつ、なんか凄くモジモジしてるんだが。  しかも、なんか顔も少し朱を帯びている気がする。    「あ、あの……。マサくんに大事な話が……」  この嫌な既視感、俺は勘づいてしまった。  こ
last updateÚltima actualización : 2026-05-23
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第7話 花音の戦い 2nd round

 健康診断を終えて迎えた午後、俺は体操着から制服に着替えて机の上に突っ伏していた。  女子の健康診断がまだ終わってないようで、当初の予定よりも早く終わった男子が教室で待機しているという構図だ。  ちなみに、机の上に突っ伏しているのは単純に暇だからである。  特に雑談が出来る友達がいるわけでもなく、スマホを開いて何かすることもない。  こういう自由な時間を設けられた時、ぼっちは虚無地獄《きょむじごく》を味わわないといけないのだ。  まあ、変な期待をしてこっぴどく裏切られた時の精神的ストレスに比べればこの程度どうってことないんだけど。  にしても、花音がいないと凄く静か!  「学校ってこんなに静かな場所だったっけ?」と錯覚を起こしてしまうほど、俺の周りは静寂に包まれている。  中学生の時も陰キャを貫いていたので、なんだかいつもの日常が戻ってきた感じ。  あ~、やっぱり一人は落ち着くな~。  「なあ、ちょっといいか?」  なんか如何《いか》にも陽キャっぽい男が俺に話しかけてきた。  なんだよ、こっちは一人の時間を噛みしめていたのに……。    「なに?」  「おぉ、さすがの塩対応……。これじゃ『孤高の一匹ぼっち』と呼ばれても仕方ないか」  馬鹿にしてんのか?  てか、『孤高の一匹ぼっち』ってなんだよ。ぼっちが大渋滞してんじゃねぇか。考案者のやつ、普通に馬鹿じゃね?  とりあえず、こういうのは真面に取り合ったら負けだ。  サラッと受け流すのが得策だろう。  「そりゃどうも。んで、用件は?」  「まあ、大した用件じゃないだけどさ……」  そして陽キャは、バツが悪そうにしながら言葉を綴った。  「——————姫柊《ひめらぎ》さんと、もう関わらない方がいいよ」     確かに、この陽キャの言っていることは正しいのかもしれない。  花音と関わるとロクなことがないからな。だが……  「それ、お前に指図される筋合いはないと思うんだが? 俺近辺の関係性にまで一々口出しする権利がお前にはあるのか? てか、お前誰だよ」  「ごめんごめん、そういうつもりで言ったわけじゃないんだ! 気を悪くさせてしまって悪かったね。僕は榊健斗《さかき けんと》、これからよろしくね」  そう言って、榊は手を差し伸べてくる。  俺はその手を問答無用で振り払
last updateÚltima actualización : 2026-05-23
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第8話 花音の戦い Fainal round

 聞くところによると、わざわざ俺に会いに来たこのお兄さんは姫柊世一《ひめらぎよいち》さん。花音《かのん》のお兄さんらしい。  純白の白スーツで迎えに来た世一さんは、さながら白馬の王子のようで——————まぁ、片膝をついて手を差し伸べられた時はさすがに引いたけど。  「いやー、急に連れ出すような真似をして悪かったね」    言いながらも、ケタケタと笑っている。  本当に申し訳ないと思っているのだろうか。  こういうところ、花音に似てるかも。  ちなみに現在、姫柊宅にお邪魔しております。  何気にクラスの女子の家に来るのは今回が初だ。  それなのにどうしてだろう、全然ドキドキしない。  「いえ、午後の予定正直めんどくさいと思っていたので大丈夫です」  「今日の午後の予定は部活動紹介だったかな。確かに、黙って何時間も聞いてるのは生き地獄だよな。しかも興味のないことなら尚更ね」  世一さんが、俺の前にホットコーヒーをそっと置く。  カップの下皿には、ご丁寧にミルクとシュガーも添えてある。  そして世一さんは、自分のホットコーヒーを持って俺の向かいにゆっくりと腰を掛けた。  何だろう、俺にとっての生き地獄が始まる予感がする……。  「そう身構えないでくれ。俺はただ雅春《まさはる》君と少し話がしたかっただけだ」  「話、と言いますと?」    世一さんは、コーヒ―を一口啜ってから俺の後に続く。  「君が本当に花音の友達なのか知りたくてね。昨日花音に聞いてもあやふやな回答しか得られなかったから、こうして俺自ら調査を行うことしたというわけさ」  「……な、なるほど」  今朝の花音の様子がおかしかったのは、多分この兄のせいだ。  花音的には、俺と口裏を合わせたかったのだろう。  てか、今時妹の近辺調査をする兄って、普通にやばくないか……。  もしかしたら俺、やばい一家に目を付けられたのかも。  「花音の学校鞄《スクールバッグ》に盗聴器も仕掛けさせてもらったんだけどね、俺的にはどうしても君たちが友達同士とは思えないんだよね」  そう言って再び、世一は優雅にコーヒーを啜る。  ……やばいよ。  やばいよ、やばいよ、やばいよ! この人マジでやばいよ!!!  え? これ俺がおかしいの? なんでこの人は至極当然な表情で語ってんの!?
last updateÚltima actualización : 2026-05-24
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第9話 友達勝負、開幕!

 姫柊《ひめらぎ》家訪問から一夜明けた翌朝。  静かに席に突っ伏していると、いきなり肩をツンツンされた。  一々確認するまでもない、どうせ花音《かのん》だ。  ぼっちの俺に、こんなイタズラをしてくるのは彼女だけだからな。  「んだよ、せっかく良い夢みてたの……」    そう言いかけて、俺は言葉を詰まらせた。  思いがけないことが目の前で起こっていたのだ。  花音が……泣いてる……。  「ごベんね、ぎのうは、ごべんね。ごべんね、おんどうに、ごべんね……」  「あっ、えっと……」  大変綺麗なお顔をぐしゃぐしゃにしながら号泣する花音。  エマージェンシー、エマージェンシー! 至急状況を報告せよ、大至急状況を報告せよ!  ——————なんて言葉が、俺の脳裏を幾度《いくど》となく過る。  俺だって一人の人間だ。  いくら人間不信だからといっても、涙には滅法《めっぽう》弱い。  てか花音さん、できれば校舎裏とかでお話できないかな? 教室だと視線がかなり痛すぎるんだけど……。  まあ、すでに手遅れなんだけどね。  第三者からすれば、俺が花音を泣かせてる絵面みたいになっているからね……。  「ま、まあ、落ち着けって。急にどうしたんだよ」  「ぎのう、わたじのせいでマサぐんに迷惑がげたがら。だがら、ごべんね……」  「いや、別に迷惑だなんて一ミリも思ってないけどさ……」  言いながら俺は、ふと思った。  花音の日頃の行いから察するに、己の行いを悔いて謝罪するなんてまずありえない。  となれば、この謝罪もあの変態兄が深く関与しているはずだ。  つまり、この一連の会話の流れも兄に聞かれている可能性は十分に高い。  俺は花音にそっと耳打ちする。  「お前、盗聴器のことって何か知ってる?」  俺に言われても、花音はキョトンとしている。  やはり、あの兄は秘密裏に実の妹に盗聴器を仕掛けていたのだ。  本当に現実で起こるんだという驚きよりも、シンプルにキメぇ~の気持ちの方が強かった。  盗聴器に声を拾われないように、再び花音に耳打ちする。  「もしかしたら、世一さんに盗聴器仕掛けられてるかも。一旦自分の身の回りを確認した方がいい」  「う、うん。分かった」  花音は、泣きじゃくりながら自分の身の回りを念入りに確認する。  そ
last updateÚltima actualización : 2026-05-25
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第10話 榊健斗のターン

 「久山《ひさやま》、トイレ行こうぜ」  ホームルーム終了後、野生の榊《さかき》が現れた。  それと同時に、俺の脳内で三つの選択肢が浮かび上がる。  その一、申し出を承諾して一緒に連れションする。  その二、ハッキリと断る。  その三、ガン無視をかます。  正直なところ、三つ目の選択肢を選びたいところではあるが、榊のような陽キャタイプは逆に面白がって今後もちょっかいをかけてくるに違いない。  シンプルにウザいので、俺的には絶対に避けたいところだ。  そうなると、二つ目の選択肢が一番理想的に思えるが、この選択肢にもちょっとした罠がある。  それは、榊の申し出を断った時点で背後に控える花音《かのん》がすぐさま突入してくるということだ。  その証拠に、背後でジッと機会を窺っている。  そのような展開になった場合、ホームルーム前みたいな騒ぎになるのは目に見えて明白だ。  シンプルにめんどくさいので、俺的には絶対に避けたいところだ。  一つ目の選択肢は論外。  ……おわた、選択肢全部消えたわ。  「姫柊《ひめらぎ》さん、あまりこっちを見ないでくれるかな。今は僕のターンだから」  榊が自信に満ちた良い笑顔で花音に語りかける。  それに対して花音は「クソ、油断してた……」と悔しそうな表情を浮かべていた。  てか、ターン制だったのこれ。当事者が知らないってどゆこと?    「さあ! 一緒にトイレに行こうぜ!」  榊が満面の笑みで手を差し伸べてくる。  トイレに行くだけで、なんでそんな笑顔なの?   行きたければ一人で行けば良いじゃん。俺は別にトイレに用はないからさ!  そんなことを考えていると、ガタッと後ろから席を立つ音がした。  「榊くん、やめなよ! マサくんが嫌がってんじゃん!」    おお、花音にしては真面なこと言うじゃないか!  榊も図星をつかれてやや後退気味だ。  そして花音は、トドメを刺すべくビシッと言い放った。  「マサくんは私とトイレに行きたいんだよ! 友達ならもう少し察してあげてよ!」    次の瞬間、クラスが悲鳴の色に染まる。  そりゃそうだよね、俺と花音は男女なのだから"連れション"という行為は、そもそも存在しないんだよ。  なのに、この花音《アホ》は的外れなことを、さも当たり前かのように大き
last updateÚltima actualización : 2026-05-25
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