「浮かれてるな」 隆亮が言った。「大姫とつつじの君は別人だったんだ」 貴晴は隆亮につつじの君と会った時の話をした。「牛車を止めた?」「ああ。蛇が怖いのに神様の使いだから轢かないでくれって。優しいよな」「それで、ぽーっとなってたのか」 隆亮が笑う。 なんとでも言え……。 妻が二人もいる隆亮からしたら可笑しいのかもしれないが――。 大姫は間違いなく歌会に出ていたと言うからつつじの君とは別人だと分かったのだ。「あの蛇のお陰でつつじの君と再会出来たし、確かに神様の使いかもしれないな」「つまり大姫が入内してもつつじの君がいるって事か」「人聞きの悪い言い方をするな」 貴晴はそう言ってから、「つつじの君も姫って呼ばれてたが、大姫の妹なのか?」 と続けた。「さぁ?」 隆亮はそう言って首を傾げた後、「しかし、私が泊まりに来ると襲撃がないんだな」 と言った。 そういえば、ずっと襲撃がなくて来たのは隆亮がいなかった晩だ。 こいつ戦うの好きだな……。 そもそも知り合ったのも戦ってるところに入ってきたからだし……。「歌を送ってきたのも謎だしな」 貴晴が答える。「歌?」「襲撃予告をしてきたんだ」 貴晴は歌を見せた。〝望月の 沈む山の端 をぐるまの にしきの紋の 門は開くかと〟「…………」 歌を見た隆亮が黙り込む。「どうかしたか?」 貴晴が訊ねた。「これは予告じゃないんじゃないか?」「え?」「これは『錦』と『西』を掛けてるんじゃないか? で、丑の刻に西の門を開けろって意味じゃないのか? 多分、姫との逢引を手引きしている侍女に送ったんだろ」
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