《魔女の婚活 〜理想の夫を育成したら、世界を滅ぼす魔王になりました〜》全部章節:第 61 章 - 第 68 章

68 章節

第61話:三百年の純情と、最悪のタイミング

 私の名前は、エヴリン。 この世界で三百年以上を生きる、誇り高き『炎の魔女』である。 これまで、数え切れないほどの魔物と戦い、魔法の真理を追究し、魔女としての尊厳を守り抜いてきた。 どんな困難にも立ち向かう強靭な精神力を持っていると、自分でも自負していた。 ……そう。 あの日、隣の屋敷で。 親友とその狂った旦那様の、最高にドロドロで甘い『情事』を覗き見てしまうまでは。「……あぁっ……もう、だめ……っ」 深夜の寝室。 私は、自分のベッドの上で、羽毛布団を頭から被り、シーツをギリギリと握りしめていた。 目の下にできた濃い隈が、私のここ数日間の悲惨な状態を物語っている。 そう、あれ以来。 私は、まともに一睡もできていなかった。 目を閉じれば、暗闇の裏側に、あの光景が鮮明にフラッシュバックしてくるのだ。 乱れたシーツ。 真っ赤に染まったヴェラの、信じられないほど色っぽい、蕩けた表情。 彼女の体を蹂躙するアシュの、雄(オス)としての狂気に満ちた赤い瞳。 そして。 扉の隙間から覗き見ていた私に向けられた、あの『ドSな微笑み』。『――そのまま、俺の神様の美しさを、その網膜に焼き付けながら這いつくばっていろ』「ヒッ……!!」 思い出しただけで、全身の産毛が逆立ち、背筋に強烈な悪寒が走る。 ……と、同時に。「あぁっ……だめ、また……っ」 私の下腹部の奥深くが、きゅぅん、と。 甘く、痺れるような熱を持って、疼き出すのだ。 信じられない。 本当に、信じたくない。 私は、あの光景を思い出して『恐怖』しているはずなのに。 その恐怖すらもスパイスにして、三百年間一度も使われたことのない私の純情な回路が、暴走を始めているのだ。「私、頭がおかしくなっちゃったの……っ!?」 私は、布団の中で身悶えした。
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第62話:ムラムラの矛先と、竜の瞳に宿る熱

 王都にある私の屋敷のリビング。 テーブルの上には、ヴェラが持ってきてくれた最高級のフルーツタルトと、芳醇な香りを漂わせる紅茶が並んでいる。 本来なら、優雅で楽しい魔女同士のティータイムになるはずだった。 ……そう、本来なら。「美味しいわね、エヴリン! アシュが淹れてくれる紅茶もいいけど、エヴリンと飲む紅茶も最高だわ!」 ヴェラが、ニコニコと無邪気な笑顔でタルトを頬張っている。「そ、そうね……! 美味しいわね!!」 私は、紅茶のカップを握る手をガタガタと震わせながら、引きつった笑顔を顔に貼り付けていた。 無理だ。 平常心なんて、保てるはずがない。 私の視線は、どうしてもヴェラの首筋に向かってしまう。 薄手のワンピースの襟元から覗く、真っ白な肌。 そこに散りばめられた、赤紫色の生々しいキスマークの数々。(ああああっ……! 見ちゃダメ、見ちゃダメなのに!!) 見るたびに、昨日のあの光景が脳裏にフラッシュバックする。 激しくシーツを握りしめ、甘い声を上げるヴェラ。 彼女を獣のように貪り食う、銀髪の悪魔。 そして。 私自身の、下腹部の奥底でジンジンと疼き続ける、このドス黒く甘い熱。(ダメよ、エヴリン。あんたは三百年生きた誇り高き炎の魔女でしょ。 親友の首のキスマークを見ただけで、お股を濡らすような変態じゃないわ!) 私は、必死に自分に言い聞かせ、熱い紅茶で無理やり思考を洗い流そうとした。 だが。 抑え込めば抑え込むほど、私の中で暴走を始めた『生物としての本能』は、恐ろしいほどの好奇心と欲求を生み出していた。「ね、ねえ、ヴェラ」 気がつけば。 私は、絶対に聞いてはいけない、禁断の質問を口にしてしまっていた。「ん? どうしたの、エヴリン?」「その……アシュ君と、どうなの?」「どうっ
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第63話:使い魔の嫉妬と、離れられない距離

 あの日。 親友であるヴェラの、狂おしいほどに愛されている惚気を聞かされて。 すっかり毒されてしまった私は、夜の庭で、愛する使い魔のイグニスに向かって愚痴をこぼした。『私だけを抱きしめて、私だけを愛してくれる……そんな運命の旦那様、どこかに落ちてないかしら』 ただの独り言だった。 三百年生きてきた、孤独で純情な魔女の、痛々しい叶わぬ願い。 神話級のドラゴンであるイグニスに、人間の恋愛感情なんて分かるはずもない。 そう思っていた。 ……だが。 まさか、あの言葉が。 イグニスの中に眠る『オス』としての本能を、完全に呼び覚ましてしまうなんて。 その時の私は、微塵も気づいていなかったのだ。 ◇ ◇ ◇「……んん……重い……」 翌朝。 私は、胸の上にのしかかるズッシリとした重みと、息苦しさで目を覚ました。 薄く目を開けると。 私の顔のすぐ数センチ上で。 犬サイズに縮小しているイグニスが、私の顔をじっと、瞬きもせずに見下ろしていた。「イ、イグニス……? どうしたの、こんな朝早くから」 普段の彼なら、私が起きるまで足元で丸くなって寝ているか、お腹を空かせてエサ入れの前で待っているはずだ。 こんな風に、私の上に馬乗りになって、顔を覗き込んでくるなんて珍しい。「お腹空いたの? 今、起きるから……」 私が体を起こそうとした、その時。 ペロッ。「ひゃっ!?」 イグニスのザラリとした熱い舌が、私の首筋を、下から上へとゆっくり舐め上げた。「ちょ、ちょっとイグニス! くすぐったいわよ!」 私は慌てて彼を引き剥がそうとした。 だが。「……グルルル……」 イグニスは、低く喉を鳴らし、私の胸の上から退こうとしない。 それどころか。 彼の前足が、
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第64話:魔王と竜の対話、そして悪魔の取引

世界最悪の悪魔が住む、隣の屋敷。 その広大で美しい庭園に足を踏み入れた瞬間、私の胃はすでにキリキリと限界の痛みを訴えていた。 「さあ、こっちよエヴリン! アシュはあそこのテラスにいるわ!」 親友のヴェラは、完全にピクニック気分で私の手を引いていく。 その無邪気な足取りのすぐ後ろを、私の足首にガッチリと四肢でしがみついたイグニスが、ズルズルと引きずられながらついてきていた。 (あああっ……! 帰りたい! 今すぐ自分の屋敷のベッドに潜り込んで、毛布を被って震えていたいわ!!) 私は心の中で絶叫しながら、必死に足を進めた。 昨日の今日なのだ。 あの、ドロドロに甘くて過激すぎる情事を、扉の隙間から覗き見てしまったのだ。 おまけに、あの悪魔には完全に見つかっていたし、「舞台装置として這いつくばっていろ」と脅されまでした。 そんな男の顔を、まともに見られるわけがない。 「アシューっ! 連れてきたわよー!」 ヴェラが、テラスで優雅に紅茶の準備をしていた銀髪の青年に声をかけた。 アシュ・ノクス。 世界を滅ぼすほどの力を持った、狂気の魔王。 彼は、ヴェラの声を聞いた瞬間。 氷のように冷たかった表情を一瞬にして蕩けさせ、この世のすべての春を凝縮したような、極上の微笑みを浮かべた。 「お待ちしておりました、ヴェラ様。 ……あぁ、少し見ない間に、また一段とお美しくなられましたね。 あなたのその輝く笑顔を見ているだけで、俺の心は天にも昇る心地です」 「も、もう。アシュったら、エヴリンもいるのに……っ」 ヴェラは、恥ずかしそうに頬を染めてモジモジしている。
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第65話:生意気なオスの熱と、片言の求愛

 ドンッ!! 私の体に、凄まじい衝撃が走った。「きゃっ!?」 私は、猛烈な勢いで飛びついてきた『彼』を真正面から受け止め。 そのまま、アシュとヴェラの屋敷の美しい芝生の上へと、無様に押し倒されてしまった。「エヴリン……!! エヴリン……!!」 私の上に馬乗りになっているのは。 たった今、アシュの理不尽な魔法によって『人間の少年』の姿へと変貌を遂げた、私の使い魔。 神話級のドラゴン、イグニスだった。「オレ……エヴリンの……オトコに、なった……!!」 辿々しい、けれど少しハスキーな少年の声が、私の耳元で甘く囁く。「は……はぁぁぁぁぁっ!?」 私の脳の処理能力は、完全に限界を突破していた。 オトコになった。 その言葉の意味が、頭の中で何度もエコーする。 使い魔が、人間になった!? しかも。 燃えるような真紅の髪に、健康的な褐色の肌。 細身だけれど、獣のようなしなやかな筋肉を持った、野生味あふれる生意気そうな少年(日焼けショタ)!?(私の……私の、ストライクゾーンをピンポイントでぶち抜いてるじゃないのよォォォッ!!) 私は、心の中で血の涙を流しながら絶叫した。 そう。 私は三百年間、魔法の研究に明け暮れてきた純情な魔女だが。 密かに愛読していた恋愛小説の趣味は、完全に『生意気で一途な年下』に偏っていたのである。 目の前にいるのは、私の理想(性癖)をこれでもかと具現化したような存在だ。 それが、私の上に馬乗りになり。 スンスン、と、まるで犬が飼い主の匂いを確かめるように、鼻先を私の首筋に押し付けてきている。「ち、ちょっとイグニス!? 重い、重いわよ!!」 私はパニックになりながら、彼を引き剥がそうとした。 しかし、ビクともしない。 少年の細い腕のどこにこんな力
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第66話:発情の夜這いと、破られた純情

 ガチャリ、と。 静まり返った私の寝室で、重々しい金属音が響いた。 それは、イグニスが背手で扉の鍵をかけた音だった。 と同時に。 三百年間、誰一人として招き入れることのなかった私の『理性の扉』に、完全に鍵がかけられた音でもあった。「イ……イグニス……っ」 私は、シーツの上に放り出された体勢のまま、後ずさるように身を縮めた。 窓から差し込む夕暮れの赤い光が、部屋を薄暗く照らしている。 その逆光の中に立つ彼は。 つい先程まで、赤い鱗に覆われた犬サイズのドラゴンだったとは思えない。 燃えるような赤髪。 健康的に日焼けした、褐色の肌。 生意気そうで、野性的な少年の顔立ち。 私のストライクゾーンを粉々に打ち砕く『理想の容姿』を持った彼が。 着ていた黒いベストを、無造作に、乱暴に脱ぎ捨てた。「…………っ」 あらわになった、しなやかな上半身。 細身に見えるが、無駄な脂肪など一切ない。 獣のように引き締まった腹筋と、力強い胸板。 そこから発せられる熱気と、神話級のドラゴンの圧倒的な魔力が、部屋の空気をビリビリと震わせている。「エヴリン……」 イグニスが、ベッドの上へと這い上がってきた。 四つん這いのような、獣特有の動き。 ズリ、ズリとシーツを擦る音を立てながら、私ににじり寄ってくる。 その赤い瞳は、縦に細く割れた瞳孔をギラつかせ、獲物を……いや。 交尾の相手である『メス』を、完全に捕食する光を宿していた。「ま、待って……っ! イグニス、冷静になって……っ! いくら人間の姿になったからって、あなたは私の使い魔で……家族でしょ!? こんなこと、絶対に間違ってるわ……っ!!」 私は、震える声で必死に抵抗した。 そうだ。 彼は私が卵から孵し、三百年間育ててきた使い魔だ。 家族同然の存在に、こんな発情した目を向けられるなんて。 ましてや、私が彼に対して欲情するなんて、倫理的に絶対にあってはならない。 大魔女としてのプライドが。 三百年生きてきた理性が、全力で警鐘を鳴らしている。 だが。「……カゾク、ちがう」 イグニスは、私の言葉を低くハスキーな声で否定した。「オレは、オトコ。エヴリンの、オトコ」 ドンッ。 私の両腕が、彼の手によって、シーツに力強く縫い留められた。 逃げ場はない。 彼のがっしりとした両脚が
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第67話:溺愛される炎の魔女と、砕け散った腰

 チュン、チュン……。 窓の外から聞こえる、長閑な小鳥のさえずり。 王都の朝は、今日も平和で穏やかだ。「…………痛っ」 私は、ベッドから身を起こそうとして。 腰から背中にかけて走った、雷に打たれたような激痛に、思わず顔をしかめてシーツに突っ伏した。 痛い。というか、もはや下半身の感覚が麻痺している。 三百年間、どんな過酷な魔法の修行でも、氷竜の巣の極寒の吹雪の中でも、こんな物理的なダメージを負ったことはなかった。 原因は、明白である。「エヴリン……オハヨウ」 私のすぐ背後から。 たくましく、しなやかな褐色の腕が伸びてきて、私の腰をガッチリとホールドした。 振り返ると、そこには。 私の使い魔であり、昨日から私の『旦那様』へと昇格した神話級のドラゴン――イグニスが、とろけるような笑顔で私を見つめていた。 燃えるような赤髪は寝癖で少し乱れ、健康的に日焼けした肌には、昨夜の激闘(交尾)の汗がうっすらと光っている。 そして、私の体には。 彼が昨晩、狂ったように刻み込み続けた、無数の赤紫色のキスマークが、首筋から足先までびっしりと咲き乱れていた。「お、おはよう、イグニス……っ」 私が、声を震わせながら挨拶を返すと。「エヴリン、いい匂い。あまい」 イグニスは、嬉しそうに私の首筋に鼻を押し付け、スンスンと匂いを嗅いだ後。 チュッ、じゅる……ッ。「ひゃあっ!?」 昨晩、何度も何度も攻め立てられた一番敏感な部分を、再びねっとりと舐め上げてきた。「ちょっ、待っ……! イグニス、朝からだめっ……! 私、もう腰が砕けちゃってて……っ!!」 私が必死に抵抗しようとするが、彼の両腕の力には到底敵わない。 それどころか、彼は私の背中にぴったりと体を密着させ、その『朝の元気な証』を、私の腰の辺りにグイグイと押し当ててきたのだ。
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第68話:連鎖する熱情と、完璧なウィンウィン

「あぁっ……イグニス、だめ、窓が開いてるわよ……っ」 昼下がりの、明るい光が差し込むリビング。 私は、ソファーの上に押し倒されながら、必死に抵抗の声を上げた。 春の心地よい風を入れるために、庭に面した大きな窓は開け放たれている。 普段なら、魔女の防音結界を張るはずなのだが……ここ数日、腰が砕けるほど愛され続けたせいで、私の魔力コントロールはすっかりガタガタになっていた。「いい。エヴリンのいい声、外に出ても、ダレも来ない」 私の上に覆い被さっているイグニスが、ニシシとイタズラっぽく笑う。 その健康的な褐色の肌と、赤く燃えるような瞳が、至近距離で私を捕らえて離さない。「来ないって保証はどこにも……っ、んんっ!!」 私の抗議は、彼の熱い唇によって完全に塞がれた。 チュッ、ちゅる、レロ……ッ。「んぁっ……あ、あぁ……っ」 人間の姿になった神話級のドラゴンの口づけは、本当にヤバい。 ただのキスなのに、私の魂ごと吸い尽くされそうになるほど深く、そして甘い。 彼の舌が絡みつくたびに、私の脳髄がトロトロに溶けていくのが分かる。「エヴリン、かわいい。すぐ、真っ赤になる」 イグニスが唇を離し、私の胸元へと顔を埋めた。 彼の大きな手が、私の着ている薄いワンピースの裾から入り込み、素肌を直接撫で上げる。「ひゃあっ!? だ、だめぇっ、そこは……っ!」「ダメじゃない。エヴリンは、オレのもの。ぜんぶ、オレが好きにしていい」 独占欲にまみれた、絶対的なオスの言葉。 それに逆らう気力なんて、今の私には一ミリも残されていなかった。 私は、恥じらいと快感の狭間で、彼にすべてを委ねて、甘い嬌声を漏らすしかなかったのである。 ……しかし。 この時の私たちは、完全に忘れていた。 隣の屋敷に住む、恐ろしい悪魔の策略と。 その悪魔が愛してやまない、天然で無邪気な親友の存在を。
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