All Chapters of 虚飾の檻 ~余命僅かな私は、私を憎む夫が隠した真実を追う~: Chapter 41

41 Chapters

第四十一話

玲司はスマホを耳に当て直し、私に背を向ける。 「……わかった。今から行く」 掠れていたはずの声には、もう迷いがなかった。 「玲司……?」 呼び止めても、彼は振り返らない。 さっきまで私たちの子供を、生まれてこない方がよかったと言っていた人が、別の女の妊娠を告げられた途端、そのもとへ駆けつけようとしている。 あまりにも残酷だった。 それでも一言ぐらい、私に何か言い残してくれるのではないか。 そう期待したけれど、玲司の足音は遠ざかっていくばかりだった。 やがてその背中は墓石の並ぶ道の向こうへ消え、私は冷たい風の吹き抜ける墓園に一人取り残された。 追いかける気力はなく足元から力が抜け、その場に膝をつく。 目の前には、白峰紗良と刻まれた墓標がある。 添えられた遺影の中で、紗良さんは穏やかに笑っていた。 「……あなたは、どう思うの?」 問いかけても、答えが返ってくるはずはない。 「玲司の言っていることは、本当なの?」 私の母が、娘である私を救うために紗良さんを見捨てた。 玲司の口から突きつけられた話は、あまりにも衝撃的だった。 母がそんなことをするはずがないとそう信じてきた。 誰よりも患者に真摯に向き合い、自分の時間を削ってまで命を救おうとしてきた人だ。 私に対して厳しいことはあっても、医師として間違ったことをする人ではない。 けれど、三年前の記憶が頭をよぎる。 病室で目を覚ました私を見下ろしていた母の顔。 無事だったことを喜んでいるはずなのに、なぜか泣きそうな表情をしていた。 安堵だけではなく、何かに怯え、悔やみ、自分自身を責めているような瞳だった。 あのときは、手術で私を救えなかったかもしれない恐怖が残っているのだと思っていた。 だけど、本当にそれだけだったのだろうか。 母は、私が眠っているあいだに何をしたの? 生まれて初めて、母に対する疑念が胸に芽生えた。 玲司が何かを誤解しているのだと思いたい。 それなのに、母のあの表情を思い出すたび、玲司の話を完全には否定できなくなる。 息をするたびに胸の奥が痛んだ。 私は乱れた心を落ち着かせるように、鞄からハンカチを取り出した。 墓石の表面には、雨に運ばれた砂埃が薄く付着している。 水を含ませたハンカ
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