*** 夕飯後、半分に切ったレモンと絞り器と、淹れたばかりの熱い紅茶をマグカップに並々と注ぎ、お盆にのせて兄貴の部屋に向かう。 ノックをしたら、すぐに顔をのぞかせた兄貴。その顔は、とても嬉しそうな表情に僕の目に映った。「ティカップじゃなくて、マグカップで淹れてくれたのが嬉しいかも」「絞りたてのレモン汁もサービスする予定ですけど、お兄様!」「どうぞ。おまえみたいに、エッチなことしてないから」「ホントかなぁ。誰かに見られる可能性のある公共の場で、彼女の胸を激しく揉みしだいていたのに?」 ズバリとあのときのことを言ってやったら、「もうやめてくれ」なんて、すぐに降参する言葉を口にした。 大きく開けた扉から先に入った僕の後に、ちょっとだけ困り顔した兄貴が部屋の中に入る。別段いつもと変わらない様子を確認しつつ、勉強机にお盆を置き、さっそくレモンを絞り器でぎゅっとねじった。「辰之、レモン汁の量、多くないか?」 僕の行動を隣で見ていた兄貴の指摘に、力なく首を横に振った。「マグカップに入れるんだし、このくらい入れた方が兄貴の目が覚めるだろ」 言いながら紅茶に、レモン汁をだばだば投入してやる。「俺のために気を利かせた、弟の愛情に感謝しながらいただくよ……」 愛想笑いした兄貴が右手でマグカップを持ち上げ、ゆっくり口に含む。レモン汁で濡れた手を持参していたおしぼりでぬぐいつつ、黙って見つめた。どうぞ遠慮なく、全部飲んでくださいと思いながら――。「レモンの酸味で、紅茶の苦味が倍増してる。こりゃ目が冴えるわけだ!」「それを計算して、紅茶の抽出時間を短めにしたのに。苦みがあるなんてミスっちゃった」 へらっと笑った僕の頭を、兄貴は笑って撫でてくれた。優しく何度も。「辰之には助けてもらってばかりだな。図書館では悪かった。彼女とのこと、おまえに見られたのが恥ずかしいのもあってさ」 照れを隠すように、ふたたび紅茶を口にする。「兄貴ってば、彼女とイチャイチャしてるところを、他人に見られるのが趣味だったりしないよな。見られると燃えちゃうタチなんてことはない?」「まさか! そんな悪趣味してないから」「ホントかなぁ……ねぇ、その彼女についてのすごい情報を、クラスメイトから耳にしたんだけど――」 僕が彼女の話題を切り出すと、兄貴は不思議そうな顔をしながら紅茶をすする
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