「このラグと座布団、ビーズクッションは叔父さんが買ってくれたんです」 グラスをテーブルへ置きながら、壱を座布団へ促して、彼が座るのを見届けると、誰も訊いていないのに、葵依は壱へそう教えた。 葵依は、他人を自宅に呼んだのはこれが初めてで、何か喋っていないと緊張してしまうのだ。ついつい、普段より口数が多くなってしまう。「楽に座って下さいね」 壱は正座をするつもりで片膝を突いたが、葵依からそう言われて言葉に甘えて胡坐を組むことにした。「上着、おかけましょうか?」「ありがとう」 壱のスーツの上着は、葵依の制服の隣に並んだ。二人の服が並ぶ様子を眺めて、まるで同棲しているようで壱は口元を綻ばせる。 壱の隣に葵依も腰を下ろしたが、彼女は正座だった。「楽にしてくれ」 自分の家じゃないのに、そう言うのはおかしな話だが……姿勢良く座る葵依を見て、壱は思わずそう言ってしまった。背中に定規が入ってると思わせるくらいに背筋が真っ直ぐだ。「いつもこうやって座ってます」 キョトンとした様子で答えられて壱は「ならば、大丈夫か」と答えたものの。頭の片隅に「楽な座り方を知らない可能性が……?」という疑問が生まれる。コンビニで働いている姿を思い出すが、他の学生バイトは壁に背中を預けて立っていたり、立ち仕事で疲れた足首を解す為に爪先を地面に付けてクルクルと回し、脹脛を揉んだりしていたが葵依のそう言った姿を一度も見たことがなかった。いつだって葵依の姿勢は良く、一番下の棚の商品を陳列する時だって背中は丸まっていなかった。 ──目にしていないだけかもしれない……でも、だらけた姿を見たいという欲求が壱の中で生まれた。下心はなく、純粋に肩の力を抜かせたい。 (やはりドロドロに甘やかすか……) 壱は、葵依が人へ甘えるという行為自体、得意ではないような気がした。 壱には二人の兄と姉がおり、それぞれ十四、十二、十一歳離れている。この三人にどれだけ甘や
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