「君のことは公表しない」 「はぁ。やっぱり日陰の身ってことですね」 「君のためだ。俺の妻だなんて知られたら、外も自由に歩けなくなるからな」 遠慮なくため息をつかせてもらう。 ……そんなこと、婚姻届を出す前からわかりきっていたこと。 そして私自身、予想していなければいけないことだった。 「幸いこの家は、事務所の社長と権堂しか知らない」 ……奈津が知っていると言いかけて、彼女なら秘密を守るだろうと思い直す。 「都内に事務所が借りているマンションがある。今まで、家に帰れない時はそこに寝泊まりしていた。……だから大多数の人間はそこが俺の住まいだと認識している」 「それじゃこれからも、大雅さんはここへはあまり帰ってこないということですね」 「……たいがーっ!これみてっ!」 2人で話していると、庭で遊んでいた春希が、大雅の背中に突っ込んできた。 お昼寝から目覚めた彼が、大雅の姿を見て喜んだのは言うまでもない…… そんな春希の手に、何やらうごめくものが乗せられていることに気づいた。 うぎゃっ、と小さく叫んで離れる花。 「おぉ?!これはウスバカマキリっていう珍しいカマキリだぞ?……どこで見つけた?」 興味を示した大雅に、春希はとても嬉しそうな笑顔を見せながら……大きな手に小さな手を絡ませる。 2人で広い庭の草むらをのぞき込み、そのうち遊びはじめた。花はそんな姿を微笑ましく思う。 ……できたら毎日帰ってきて、夕飯とお風呂だけでも一緒にできたらいいのに。 「でもさすがに……それは難しいのかな」 大雅が帰らない夜、何気なくつけたリビングの大きなテレビに、彼のこれまでの活動が勝手に映し出された。 それは華々しい活躍ぶりで…… 花は映像に吸い込まれるように見入って時間を忘れた。 ……特にVÉLOURSのボーカルとしての歌唱力、表現力には感動して涙が出るほど。 ダンスも歌も、これまで目にしてきたアイドルのそれとは格の違う完成度に魅了され、思わずライブに行けないものかと考えてしまう。 「あのぉ……VÉLOURSというグループの活動はもうなさらないんですか?」 「……は?」 珍しいというカマキリは、なんと鈴里家の庭にはもう2匹生息していたようで、両手にカマキリを捕獲して家に入ってきた大雅に思い切って質問した。 間が悪かったのか、そのままの
Terakhir Diperbarui : 2026-07-15 Baca selengkapnya