Tous les chapitres de : Chapitre 11 - Chapitre 20

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11:近くて遠い

「あれ? 綾香じゃん。何? 朱莉と待ち合わせ?」背後から菱本に声を掛けられた。「ううん、専務が食事に連れて行ってくれるって」「えぇ、いいなぁ。課長、俺も上司と食事に行きたいんですけど」菱本の背後から藤堂課長が現れる。しかし、菱本のおねだりを一蹴して手を上げただけで去って行こうとする。「悪いが俺は身重の妻が家で待ってるんでな。高辻さん、水無瀬専務によろしくお伝えください。では」藤堂課長の背中から、早くおウチに帰りたいオーラが出ているのが見えた。「はぁー新婚さんは参るねえ」菱本のその昭和っぽいセリフに思わず笑ってしまう。「あ、そうだ、綾香、今年のクリスマスも朱莉と鍋パしようって話になってんだけど、来るだろ?」三人ともクリスマスに過ごすパートナーがいないので、毎年だれかの家で鍋をしている。「うん、朱莉からも聞いてる。ケーキは、私が、買っていくね」「じゃ、俺、酒買ってくから。今年はクリスマスが平日だから、俺、お泊りしよっと」「久しぶりのお泊りだねぇ。楽しみ」背後から、ふいに低い声がかけられた。「随分と楽しそうだが、外に車を置いたままなんだ。菱本くん、綾香を連れて行っていいかな」クリスマスの話で盛り上がっていたら、急に肩を引き寄せられた。いつの間にか廉が立っていた。「水無瀬専務、お疲れ様です。本日はお時間をいただきありがとうございました。では、私はこれで失礼します。じゃあね、綾香」菱本が、一瞬、驚いたような顔をして廉の顔を見つめたが、表情をビジネスモードに戻してさわやかに挨拶をして去って行った。外に続く自動ドアを抜けると冬の夜風が綾香の頬を刺す。車寄せに止められた、白いスポーツタイプの車に案内されて乗り込む。走る車の窓に師走のイルミネーションが流れていく。「綾香は、菱本くんと仲が良いんだな」運転席を見ると、前を向いてハンドルを握る廉の顔が暗くなったり、明るくなったりしている。影が落ちると長いまつげが際立つ。綺麗な顔。「同期だから。入社して最初に仲良くなったの」廉は、何故か険しい顔で押し黙ってしまった。もしかして、疲れていたのに気を使って食事に誘ってくれたのかもしれない。明日は、朝の会議の後、オープンしたばかりのホテルを視察しに沖縄へ移動だったはず。「なるべく早めに帰ろうね。明日、忙しいでしょ?」その言葉に、廉の表情がます
last updateDernière mise à jour : 2026-07-14
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12:海辺のホテル

趣味でホテル経営という言葉の意味が、今一つ飲み込めず、頭に?がいくつも浮く。廉には表情からそれが汲み取れたらしい。笑いを含んで返される。「食事が済んだら案内してあげるよ」運ばれてくる料理は、どれも素晴らしかった。あらかじめすべてが手配されていて、完璧なタイミングで皿が出てくる。「ねぇ、もしかして厨房に紫衣さんがいるの?」出てくる料理は、出汁の味やソースの風味がなんとなく食べ慣れたものに感じた。「母さんが、ここで料理を作ってるはずないだろう? いくらなんでも家族経営過ぎる。あぁ、でも、メニューの開発に、母さんの料理教室を使ったからそう感じるのかもな」廉が声を出して笑う。「綾香の舌は、ちゃんとそういうのを嗅ぎつけるんだな。すごい」「嗅ぎつけるって‥‥人を犬みたいに。廉は、ホテルの経営が好きなのね。楽しい?」父はいつも『俺は仕事が嫌いだ』とこぼしている。その割には世間的に辣腕経営者と言われているのだが。廉が、父の会社に入ったと聞いた時は、もしかして恩返しなのだろうか?と思った。廉ほどの才能があれば、海外の大手でいくらでも働くことができたのではないか。日本国内では、父の会社は優良で大手のホテルグループだ。とはいえ、上には上がいくらでもあるし、うちの会社が、海外のホテルや地方の経営の傾いたホテルのM&Aに乗り出し、業績を上げ始めたのは廉が経営に参加してからだ。「そうだな。楽しいかな。生活でも仕事でもないところに衣食住があるのは、こうした場所だけだろう? ホテルでの時間を非日常と捉えて楽しむ人もいるけど、いつもと違う場所で過ごす時間が、日常と密接に結びついてこそ、生活の中の癒しになると思うしね」「なんだか、奥が深い話。深すぎて私にはちょっとよくわからなかったわ‥‥」美味しいワインが進んで、ポワンとしてしまう。テーブルの上に置かれた手の上に、いつの間にか廉の手が添えられている。自分の手が酔いで熱いせいか、廉の少し冷たい手がとても気持ちいい。「デザートと食後の飲み物は、他の部屋で食べることにしよう。少し、建物の中を案内しようか」そう言って手を取られて部屋に続く扉へ向かう。エントランスを回り込むように緩やかな螺旋階段があり、上がりきるとさらに眺望の良い部屋が現れた。壁が一面ガラス張りで、海に向かってバスルームと洗面がしつらえて
last updateDernière mise à jour : 2026-07-14
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13:夜の海に溺れる

「廉、別に今は寒くない」アルコールと甘い雰囲気に、今一つ頭が働いていないが、ちょっと密着し過ぎているように思えて、モゾモゾと体を動かす。「ん? 窓際は冷気が入るからね」大きな窓だが厚みのあるペアガラスで、触れても外気の冷たさなど感じない。廉は返事をしながら、首筋に顎を乗せて鼻を擦り付けている。その触れ方があまりに気持ちよくて、思わずため息をもらした。首筋に熱く湿った唇が触れる。綾香の体がその刺激でビクンと揺れた。「ちょっと‥‥くっつき過ぎかも、んっ」柔らかな唇が、首筋を撫でるように滑る。その刺激に綾香は思わず目を瞑って呻いた。廉の腕がいつの間にか腰に回され、体がしっかりと抱きしめられている。腰を優しく抱いていた手が、二の腕をさすり軽く胸に触れて、首筋を撫でた後、綾香の顎を捉えた。耳の後ろで熱い息を吐いていた唇を迎えるように、顎をひかれる。廉の熱い唇が、さっきから粗い息を吐いている綾香の唇を捉えた。「んっ」最初は、軽く唇を合わせているだけだったのに、いつの間にか廉の舌が綾香の小さな舌を探し当て、絡めて、弄んでいる。「廉‥‥どうしてこんなことするの?」息苦しいほど口の中を探られ、ようやく唇を離した時には、頭の中が痺れてうまく物が考えられなくなっていた。潤んだ瞳で廉の顔を見上げ、子どものように問いかけた。「どうして? 綾香にはそれがわからない?」体を向き直され、胸が押しつぶされるほど引き寄せられた。腰に回された手は互いを密着させ、ズボンの布越しに廉の興奮が感じられた。「だって、廉‥‥んん」『廉にはエリカさんがいるのに』と聞こうとした唇を再び塞がれる。行き場を失った手は縋るように廉のシャツを握り、より体が密着するように、廉の手で尻を掴まれ押しつけられていた。動いていた手が体の横を滑り脇へと上がってくる。もう片方の手が優しく胸の形を探るように触れる。「あ、ダメ‥‥」体を離そうと綾香が背中を引くと、行かせまいと腰に回した手がさらに引き寄せる。「ダメなのか?」唇を押し当てたまま、廉が口元で囁く。甘いワインの香りがする息が流れ込む。縁側で転寝をする廉の唇から漏れ出た甘い息を思い出し、綾香の体に震えが走った。だって‥‥こんなのダメよ。廉にはエリカさんがいるのに‥‥ダメだ、と言おうとした口を再び塞がれ
last updateDernière mise à jour : 2026-07-15
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14:行き違う思い

「シャワーを浴びよう」こめかみから首筋へといくつも口づけを落とした後、廉は体を起こし、綾香を抱きかかえて、ガラス張りの海が見えるバスルームへと運んでいく。下ろされた足の裏に触れるタイルの冷たさに、思わず廉の手首をキュッと掴んだ。腰を抱いて綾香を引き寄せ、そのつむじに唇を落として廉がふっと笑う。「ちっちゃいなぁ」ちょうどいい温度のシャワーが肩にあたり始める。泡立てたボディソープで体全体を撫でるように洗われる。綾香は黙って立って、廉のされるがままになっていた。まるで小さな子どものようだ。くるりと後ろを向かされて同じように背中を洗ってもらう。さっきの余韻でまだ体のあちこちが痺れたようになっていて、まるで自分の体じゃないみたいだ。ピタリとくっついた廉の体の一部が熱を持っているのが感じられた。ちょうど腰の上あたりに触れている。なんだか恥ずかしいのと、身の置き場のなさで所在なげに体を動かすと、ちょうどそこが擦れるようにあたってしまう。「こら。なんで、そんないたずらをするんだ。我慢してるのに」耳元に怪しく掠れた声が聞こえる。そっと自分を抱く手が、胸に触れる。その優しい触れ方に、綾香の口から甘い吐息が漏れた。大きくため息をつきながら廉が呟いた。「このままだと、もっと酷いことをしてしまいそうだ。ここから出られる内に動かないと」バスルームから出ると廉が髪を乾かしてくれた。その間も肩に触れたり、頬に触れたり。この何時間かの間に起こった出来事が、あまりに現実味がなくて、綾香はずっと押し黙ってぼぅとしていた。そして、のろのろとベッドの周りに落ちていた服を身につける。廉は手早く服を着ると、綾香のジャケットを手に取り軽くブラシをかけると、後ろに回り着せてくれる。襟に入った髪を持ち上げた時に、そっと首筋に唇を落とす。「綾香、ごめん。こんなつもりで今日誘ったんじゃなかったんだ」こんなつもりじゃなかった‥‥この不本意な状況を謝っているのだろうか。綾香の心にぐさりとくるものがあった。物欲しげにしていた自分のせいだろうか。「だい‥‥じょうぶ」うつむいて小さく答える。かなりきわどい行為ではあったが、最後まではしていないのだし、自分だって同意の上だ。謝ってもらう必要はない。階下に降りてコートを羽織り、廉がここのコンシェルジェらしき人物と話をしている間に、出口に向か
last updateDernière mise à jour : 2026-07-15
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15:それでも日々は続く

容赦なく朝がやってきて、携帯のアラームが優しい鳥のさえずりを奏でる。画面にはメッセージの新規着信が通知されていた。開くと、廉からだった『おやすみ』昨夜、自分が眠ってから送られてきたのだろう。廉らしい短いメッセージ。どんな顔をして会えばいいのか。考えると気が重い。いつも通りに接するしかないのに。這うようにベッドを出てシャワーを浴びる。バスタオルを頭に置いて、洗面所の鏡の前に立ったときギョッとした。胸の上、肩、首筋、あちこちに薄赤い斑点がある。こ、これが噂のキスマーク‥‥本物を見たのは初めてなので、体の向きを変えてあちこちを見る。幸いうなじには無いので中にハイネックのニットを着れば大丈夫そうだ。薄く半月のような形でついているそれをじっとみて、廉の薄くやわらかな唇を思い出した。じわじわと昨夜のことがフラッシュバックして、いても立ってもいられなくなる。「ひぇぇぇぇ」洗面台の前にしゃがみ込みバスタオルで頭を抱えこむ。しゃがんだ拍子に内もものキスマークに気づいて憤死しそうになった。あぁ、本当に、今日ほど仕事を休みたいと思ったことはない。泣きそうな気持で、体調不良でって電話しようかな、と考えた。でも、そんな言い訳をして休んだところで、上司の廉には全部わかっているのだし、次に出社する時がさらに気が重くなるだけだ。深くため息をついて、立ち上がると、いつものルーティーンで身支度を始めた。早くオフィスに着いて廉と二人きりになるのは、さすがに心の整理ができてないから、御園さんが出社するくらいの時間に合わせて、駅前でコーヒーを飲んでから向かおうと決めた。「あれー、綾香にしては今日の出社は遅めじゃない?」ちょうどビルに向かう信号待ちで朱莉に出会う。一緒に出社できることが気持ちを軽くしてくれる。友よ、本当にありがとう。「朝、コーヒーこぼしちゃって、床掃除が大変だった」着替える前でセーフだったよー、と嘘話で盛り上がりながら、混み合うエレベーターに乗る。「じゃ、今日、昼は恵乃木田亭で蕎麦ね」秘書課のオフィスがある階で、朱莉がそう言いながら手を振って下りて行った。重役のオフィスはさらにその2階上だ。同じエレベーターに乗っている他の重役の専任秘書と朝の挨拶程度の雑談をしてフロアに下り立つ。御園さんが先に来てくれていますように。そう、願うようにオフィス
last updateDernière mise à jour : 2026-07-17
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16:有能な上司は仕事が早い

翌日の朝、御園さんからつわりがひどいので今日は休ませて欲しいと連絡が入った。最近、具合の悪そうな様子を時々見かけるので、上司のいないこんな日くらい無理しないで欲しいと思う。というか、私が早く一人前にならなくては。入ってくる連絡を手際よく処理して、タスクをこなしていく。気づけばあっという間に時間が過ぎている。明日には廉が帰ってくるので、なにがしかの話をすることになるだろう。あの日の出来事をどうとらえればいいのか、まだ、ちょっと整理はできていない。PCの電源を落とし、コートを手に取ってカウンターから出ようと振り返った瞬間、目の前に廉がいた。「もう、仕事は終わりだな。話がある。こっちへ」そう言って専務室へと手を引かれて入った。「専務、おかえりは明日の午前の便ではなかったですか?」驚いて顔を見つめながら、問いかけると、ソファに腰かけるように促しながら廉がコートを脱いでいる。「明日の午前中に会う予定だった現地のデベロッパーの担当者が、インフルエンザになったんだ。だから、便を変更して帰ってきた」ソファに座ると、コートとジャケットを脱いだ廉が隣に腰かける。「綾香、その、この間のことなんだが‥‥」「あ、き、気にしないで。ほら、お互い大人だし、たまたま、そういう気分になってしまったっていう‥‥」顔を真っ赤にして、必死で笑顔を浮かべる。「よ、よくあることかも知れないし」廉が眉間に皺を寄せて綾香の手首を掴んだ。「よくあることのはずないだろ。綾香はだいたい俺のことをどう思ってるんだ」引き寄せられて顔が近づく。至近距離で見つめ合うと思考がすべて止まってしまいそうで、思わず目を伏せる。「どうって‥‥素晴らしく有能な上司‥‥だと」「そういうのじゃなくて。男としてだ」そんな、答えに困るようにことを聞かないで欲しい。「じゃ、じゃぁ、廉こそ私のことをどう思ってるのよ。いつまでも子ども扱いしてるけど‥‥」「女として好きに決まってるだろ」食い気味に返事が返ってきた。その言葉に綾香の体の奥の方から火がついたように熱くなり、耳まで真っ赤になる。「う、う、う、嘘でしょ。だって、そんな要素がどこに‥‥」「ずっと好きだったよ。離れてる間もずっと思ってた」低いバリトンでゆっくりと囁かれると、この間の夜の囁きを思い出して体の奥がキュッと絞られたようになる。「い、いつか
last updateDernière mise à jour : 2026-07-17
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17:近づく心と体の距離

ブブブブ ブブブブソファのテーブルに置いてあった廉の携帯がサイレントモードで震え始めた。二人で動きを止めてそちらを見つめる。しばらく待ったが電話が切れる様子が無いので、廉がため息をつきながらそれを手に取った。「Ah, Fred. I've been hearing good things about the acquisition of the land. I hear it's going well.‥‥」どうやら今関わっているリゾート開発の土地買収の関わる電話のようだ。綾香は、廉から解放されてそそくさと下着とセーターを元に戻した。ソファに座り直して、さてどうしたものか、と考えていると、逃がさないというように廉が電話をしながら片手で綾香の手を掴む。「‥‥Oh, yes. Please do. I'll see you later.」電話を切って、廉が神妙な表情で向き直る。「このままここに居たら、大変なスキャンダルを起こしてしまうかもしれないから‥‥綾香、この後の予定は?」手首に唇を押し付けながら、廉が親指で綾香の腕をさする。その触れ方だけでもゾクゾクしてしまう。「ウチに帰る‥‥だけ、です」「食事は?」先日のことを思い出し、少し考えて、ためらいがちに提案してみる。「‥‥ウチに来るのはどぅ」廉が連れて行ってくれる食事は、すごくレベルの高いところになりそうだし、昨夜作ったばかりのバジルソースでパスタを作るのを朝から楽しみにしていたのだ。「そうしよう」言い終わる前に食い気味に返事を返された。「廉は、今日も車なの?」「いや、普段は送迎車で出勤してる。今日もまだ蓬莱さんが下で待ってくれているよ。綾香の家まで送ってもらおう」「いやいや、それは良くないと思うわ。二人でウチまで蓬莱さんに送ってもらうのはちょっと」蓬莱さんは、父の送迎担当でもあったわが社の古参運転手だ。もちろん綾香のことも知っている。廉と二人でウチまで送ってもらうのはさすがに気が引ける。「綾香は、電車で出勤してるのか。じゃあ、電車だな」「廉、電車になんて乗るの?」「‥‥高校卒業までずっと電車通学だったのを忘れたのか?」「あ‥‥」廉は、プライベートで行くところができたから今日はもう送迎は不要だ、と蓬莱さんに連絡を入れている。その間に綾香はコートを着て、鞄を手にした。「た
last updateDernière mise à jour : 2026-07-17
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18:してもしなくても①

自分の部屋に廉がいることがものすごく不思議だ。皺になってはいけないので、コートとジャケットを預かる。ネクタイを緩めてくつろいだ格好になると、敏腕ビジネスマンは出会った頃の『廉くん』になった。カウンター内側のキッチンで夕飯を作り始めると、しばらく携帯で仕事のやりとりをしていた廉が、何か手伝おうか、とやってきた。買って来たサラダの盛り付けと冷蔵庫の常備菜を少しずつ皿に出してもらう。「廉は料理をするの?」「いや、まったくしないな。ほとんどが外食だ。休みの日も外が多いよ。食材を買っても使い切らないからね」出張が多く留守がちな上に、仕事の会食も多いと仕方がないだろう。「紫衣さんがすごく料理にセンスがあるから、やってみたらすごく才能ありそうだよね。廉は何でもうまくやりそうだから」出来上がったパスタをテーブルに並べる。「ジェノベーゼか。綾香、手際いいな。うまっ。このバジルソースすごくコクがあるね」褒められて嬉しい。「バジルソースは紫衣さんに教えて貰ったやつなの。すごく簡単にフードプロセッサーだけで出来るし、パスタにも野菜にも肉にも魚にも使えてすごく便利」「綾香は自炊するんだな」一人暮らしを始める時に、紫衣さんにお願いして少しだけ料理を教えて貰った。案外、自分に向いていたようで、家事の中では一番好きだと思う。「でも、お弁当は作らないの」「なんで?」「最初は何回か作ってたけど、仲のいい友達とランチに行くのも大事だと思って。お弁当持ってると断らないといけないでしょ? 友達がお弁当作らない派の人だから、それはそれでいいかなって思って」食事をしながらオフィスの近隣にある美味しいランチの店の話などをする。「廉は一人でランチをするってことは無いでしょ? その時間が会議を兼ねた昼食会か、移動の時間になってしまうものね」「アメリカでは結構オフィスで食事したけどな。同じフロアの部下に買って来てもらうこともあったし。近所におにぎりの店があって、そこはよく使ったよ」幼馴染の良いところは、話をしていると一瞬で子どもの頃の気安さに戻るところだ。少し前まで遠い人のように思っていたのが嘘のようだ。その後も食事をしながら、彼のアメリカ支社時代の話や大学生活の話になった。「あ、エリカさんと住んでたって言うのは、シェアハウスってことなのね。私、てっきりエリカさんと廉って、学生
last updateDernière mise à jour : 2026-07-17
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19:してもしなくても②

唇を奪われ、舌を絡め合いながらため息を吐くように何度も唇をつけては離す。いつの間にかスカートのウェストからセーターが引っ張り出され、綾香の背中に廉の手が直に触れていた。ひょいと太もものあたりを抱きかかえられ、そのままダイニングの衝立の奥にあるベッドへ運ばれた。ぽすんとベッドに下ろされて額と額がコツンと合わされる。廉は、綾香の体を起こしてセーターを脱がせると、自分も膝立ちになって着ている物を脱いで、胸に綾香を抱き寄せた。「綾香は、柔らかいな。ずっとこの柔らかさを想ってた」口づけを繰り返しながら、静かに廉の重さを感じながら横たえられた。目尻を少し赤くしながら、困ったような照れたような表情で廉が見下ろしいている。垂れた前髪が出会った中学生の頃のようだ。思わず、手を伸ばして前髪に触れてそのまま頬へと手を滑らせた。誘うように顔を引き寄せて口づけをねだる。「廉‥‥大好き」「綾香、綾香‥‥」耐えかねたように名前を呼びながら深く口づけをして、その唇が首筋から胸へといくつもの痕をつけていく。綾香は、太ももの内側に廉の熱いモノを感じながら、触れる唇の熱さに粗い息を落として体を反らす。「んっ、あ、はぁ」どこを触れられてもそこが熱く燃えるように感じて、小さく呻いてしまう。下りてきた指がショーツの上から襞を擦るように触れる。先端にある蕾を布越しに押すように愛撫され、綾香は嬌声を上げて腰を跳ね上げた。「あっ、廉」「もう、ぐちょぐちょだよ、綾香」綾香の脚からショーツを抜き去りながら、廉は、太ももを大きく掲げるように持ち上げる。「やっ、ダメ、どしてっ」あられもない格好で秘部を見つめられる羞恥に綾香は悶えた。それを上目遣いに見つめながら、廉は太ももの上から舌を這わせ、中心に向かう。熱い舌に撫でさすられて、綾香は自分の拳を唇に当てて声を押さえる。「ふっ、んん」廉の舌が、蜜を垂らす襞に辿りつき、その先端の充血した蕾を舐め上げた。電流が流れるような刺激に、綾香は、細かく粗い息を繰り返す。頭の奥がジンジンと痺れ、何かを欲しがって締め上げる下腹の奥の疼きに思わず腰が動いてしまう。舌で突き刺すように触れられていた隘路に、廉の指がツプリと入り込む。その刺激に奥がギュッと痛いほどに収縮して腰が浮く。「綾香、もう少し力を抜いて」掠れた声で廉が囁く。廉の指は綾香の反応の見ながら、
last updateDernière mise à jour : 2026-07-17
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20:オフィスラブの難易度①

いつもの小鳥のさえずりのアラームが聞こえる。枕元に置いている携帯電話を手で探そうと、体の向きを変えようとしたら、がっちりと後ろ向きに体をホールドされていた。自分のではない手が反対のテーブルにある携帯電話のアラームを切ってくれる。「ん、綾香。おはよう」首筋にあたる温かい唇。慣れない感覚に一瞬で覚醒したが、どうしたらいいかわからなくて、動けない。太ももに堅い何かが当たっている。ホールドしていた腕が緩められ、綾香の体をあちこち触り始めた。「おはよう、廉、あの‥‥仕事に行かなきゃ」「‥‥」ふにふにと胸に触れる手を押さえて、たしなめるように言うと、廉は、綾香の首筋に顔を埋めた。「午前中は休みにするのは、どうかな」綾香の肩甲骨の上に鼻を押しあてたままで、廉がモゴモゴと言う。廉がずる休みをしようとするなんて、なんか変な感じだ。「‥‥昨日、御園さんがつわりで早引けしたの。今日ももしかしたら来られないかもしれない。休む訳にはいかないかな」「‥‥」「起きて準備をしたいのだけど‥‥」胸の上にある腕に触れて、出して欲しいと暗にお願いする。大きなため息とともに熱い息が背中にかかって、ビクンと体が反応する。「仕方がないな‥‥」腕が緩み、クルリと体を反転させられた。顔が近い。根乱れた髪で、孝也が置いていったクタクタのスウェットを着た廉は、無防備でドキドキする。とりあえず、ベッドから抜け出して洗面所へ向かい、メイクを始めた。しばらくすると背後に廉が現れて、再び綾香の腰を抱いて首筋に顔を埋める。「もう、終わるから‥‥廉も朝の準備をする?」「‥‥ん」さっきから廉の仕草がすごく可愛い。なんで、こんなに甘えた感じになっているのだろう。もう、どう返していいかわからないほどドキドキする。洗面所に廉を残し、キッチンでコーヒーを入れ、出て来た廉に勧める。「どうぞ。オフィスのマシンの味には及ばないけど。良かったらトーストも」目の前の廉の表情が心なしか嬉しそうに見えて、直視できずに俯く。こういう状況になったことがないから、とにかくどうしていいか困る。言葉少なく準備を終えて、部屋を出る。「廉は、タクシーで行く?」「いや、一緒に電車で。久しぶりに通勤電車に乗るのもいい」このままオフィスまで一緒に行っていいものかどうか気になるが、廉はまったく気にしている様子がない
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