出勤途中で御園さんから、つわりで具合が悪く、申し訳ないけれど今日も休ませて欲しいと連絡があった。流されて休もうとしなくてよかった。廉が1日早く出張から帰って来たため、スケジュールの変更や、出張後の打ち合わせ、報告会などが立て続けに入り、連絡事項も多く忙しく時間が過ぎる。昼前に朱莉からランチに行けるかどうかの連絡が入っていた。今日は外に出るのは無理そうだ、と返すと、何か買って持っていく、と秒で返信がきた。「綾香、すごい噂になってるけど。水無瀬専務と」昼休み、カウンターの中で、買って来てもらったミネストローネを胸に詰まらせそうになった。「昨日、一緒に帰ったでしょ? 電車で。ビルから出て駅までの間でいちゃいちゃしてたって、朝から大騒ぎだよ」ハンカチで口を押えて、ゴホゴホと咳き込む背中を、朱莉がポンポンと叩く。「グッ‥‥大騒ぎって、そんな?」胸を叩きながら水を一口飲んで、ようやく落ち着く。「桐谷さんに見られてたみたいよ。まぁ、他にも総務の女子も見たって言ってたから」まぁ、時間と場所を考えればそれはそうか。ふぅと肩を落とす。「桐谷さんが、水無瀬専務は、社長の娘と付き合って、さらなる出世を狙ってるんだろうって、腕組みして言ってた」何時代の話だ、それは。桐谷さん、仕事の上では優秀なのに、つくづく残念な人だと思う。経営の権利は会社のものであって、たとえ社長であっても人事権は好き勝手にはできない。社会人ならだれでも知ってるだろうに。「まぁ、桐谷さんのラノベ的な妄想はいいとして、で、ホントのとこはどうなの?」水のペットボトルを口につけたまま、上目遣いで朱莉の顔を見る。「ちょっと‥‥よく、わからない」その返事に、朱莉が目を細めて、食べていたナシゴレンのカップをテーブルに置いた。「この間、菱本くんが、綾香は専務と食事行ってるって話してたのよ。だいたい、いつからそういうことなの? もしかして専任になる前?」「違う、違う。確かに幼馴染としてずっと知ってはいたし、えぇっと‥‥私は、子どもの頃から好きではあったんだけど‥‥向こうは、ほら、なんていうかエリートだから」「私から見れば、綾香もエリートでしかもセレブだけどね」セレブなのは親であって、私自身ではないのだが‥‥まぁ、恩恵が無いわけではない。「正直、とまどってる。男の人に言い寄られたことが人生でほとん
Last Updated : 2026-07-17 Read more