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All Chapters of Lilas: Chapter 21 - Chapter 30

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21.見たくない

「あいたたたた…」 材料を運ぶためにパレットに載せていたのだが、一昨日の行為が今になって響いてきて、腰を押さえながら作業をしていた。 「どうしたんだ?腰。」 私の腰痛の原因が聞いてきた。 「誰のせいだと思って…」 「?ああ、ごめん。俺か。」 反省してなさそうだ。 まあ、煽ってしまった私も悪いのだから夕也だけのせいではないのだが。 「おーい、桐山くーん!トラック来ちまったから対応してくれるかーい!」 「はーい!すぐ行きます!」 夕也を見送って作業を続けた。 材料の準備が終わってフォークリフトで材料の搬入口まで持っていくと、夕也が不機嫌そうな顔で荷降ろしをしていた。 美奈に絡まれたのだろう。 あとで夕也の好きなコーラでも持っていってあげるか。 休憩時間になり、自販機でコーラを買って夕也の元へ向かった。 「はい、コーラ。」 「え、いいの?ありがとう。」 嬉しそうに受け取ってすぐに飲んでくれた。 機嫌が直ったみたいだ。 「じゃ、私は先に…わわっ!」 持ち場へ戻ろうとしたら、夕也に引き戻されてそのまま夕也膝の上に座る体制になってしまった。 立ち上がろうとすると夕也が腕で私をがっしりと捕まえて離さない。 「ちょっ、離せ、他の人が見てるからっ…」 「別にいいだろ。俺たちが付き合ってんのは周知の事実だし。」 この人、馬鹿力すぎる。 どんなにジタバタしても私を離してくれない。 時計を見ようと後ろを向くと、そこにはあんぐりと口を開けた美奈が立っていた。 ―美奈視点― なにあれ。 なんであの子にはあんな顔をするの。 私以外の女にそんな顔をする桐山くんなんか、見たくない。 「2人とも仲良しだね~。」 声をかけた途端、怖い顔になった桐山くんが顔を上げた。 「仲良しで悪い?用が無いならさっさとどっか行ってくれる?」 「夕也っ!」 美奈と付き合ってた時は、そんな風に触れてくれなかったのに。 美奈の方がその子なんかより可愛いのに、桐山くんは美奈を好きになってくれなかった。 きっかけは中学の入学式。 トイレから教室に戻ろうとしたら、他の生徒とぶつかってしまった。 「あ、ごめんっ。痛かったよな?」 それが桐山くん。 一目惚れだった。 あんなにかっこいい人は、見たことがなかった。 手に入れたいって思った。 昔から欲
last updateLast Updated : 2026-07-27
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22.見るべきもの

桐山くんと付き合ってから3年。 デートをしたり、手を繋いだりはしたけど、キスは1回もしてこなかった。 キスをねだっても、「恥ずかしいから」と断られてしまう。 今日は映画館デートをしにきた。 「久しぶり!待たせてごめんね。」 「うん。行こうか。」 最近は愛想もなくなってきた桐山くん。 付き合い始めた時は、もっと優しかったのに。 「なあ、美奈。」 「ん?なあに?」 「なんで俺を好きになったの?」 「かっこいいなって思ったから。」 「あとは?」 それ以外思いつかなくて、黙り込んでしまった。 というか、かっこいいとか可愛いって思うから人を好きになるもんでしょ。 「…ごめん、美奈。俺、やっぱり美奈のこと好きになれなかった。…俺達、別れた方がいいと思う。」 え? 私の事を振ろうとしてる? 「な、なんで…?美奈、桐山くんのこと大好きだし、桐山くんのためにこうしてデートだって…」 「美奈が好きなのは俺じゃなくて、俺の外面じゃない?それに、デートだって美奈の行きたい所ばっかで、俺の行きたい所は行かせてくれなかったじゃん。」 「え、あの…」 「美奈には悪いけど、俺はやっぱりあさひへの気持ちを忘れられない。」 は? なんでまだあの子が好きなの? 「どっ、どうして?あの子なんかより、美奈の方が可愛いのにっ…」 「そういうとこだよ、美奈。美奈は外見しか見てない。あさひは美人だけど、俺が好きになったのはあさひの見た目じゃなくて、あさひの中身。優しくて、誰よりも強いあさひが好きなんだ。」 「は…?」 「美奈の3年間を無駄にしちゃったのは俺の責任。けどもう自分にも美奈にも嘘はつきたくない。ごめん、別れよう、美奈。」 「なん、で…」 「…これ、今日見るチケットと美奈のお昼代と電車賃。今までありがとう。じゃあ…」 そして桐山くんとはそのまま別れてしまった。 何がいけなかったんだろう。 桐山くんに好きになって貰えるように、毎日「好き」と「かっこいい」を言ってきた。 男の子は単純な生き物。 そう思っていたのに。 まさか美奈がフラれるなんて。 ムカつく。 ムカつくムカつくムカつく。 その子より、美奈の方がスペックも可愛さも上なのに。 どうしてその子なんかと付き合ってるの。 「ねえ、あさひちゃん。」 「なに…?」 「桐山くん
last updateLast Updated : 2026-07-27
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23.夏祭りのお誘い

今日は夕也の家でおうちデート。 食材を買って、2人で食べたいと決めていたものを作って食べる。 一見退屈そうだが、2人で作業をすることが私は好きだった。 完成した料理を2人で食べていた時… 「あ、そうだ、あさひ。」 「ん、どうした?」 「来週、地元の夏祭りあるだろ?一緒に行かね?」 「ああ、もう来週なのか。うん。いいね。行こう。」 夏祭りか… ここ4年くらい行っていない。 予定があるわけではなかったが、夏祭りはいつも愛華と行っていて、愛華が看護師になってからは行けていなかった。 愛華は今年も勤務があるのだろうか。 「なあ、夕也が良ければなんだけど、愛華を誘えたら誘ってもいいか?嫌じゃなければ愛華の彼氏も誘っていいか?」 「いいよ、ダブルデートって楽しそうだし。昔みたいに一緒に周りたいかも。」 「ありがとう。後で聞いてみるよ。」 夏祭り。 夏祭りで、今まで沢山楽しい思い出を作ってきた。 ただひとつ、夏祭りの悲しい思い出も私にはある。 「あさひ?どうかした?」 「え?」 「いや、暗い顔してたから…」 「ああ、いや、考え事してただけだ。今年は何着ようかなーって。浴衣、実家に置いてきちゃったからさ。」 「そう…俺はあさひの浴衣姿、久々に見たいけど。」 「ふふっ、じゃあ今年は浴衣にするよ。」 「へへっ、楽しみ。」 おうちデートが終わり、私は帰宅して愛華にメッセージを送っていた。 『愛華、来週の土曜日って予定空いてる?夏祭りに行きたいって思ってて。夕也もいるんだけど…』 すぐに既読がつく。 『空いてるよー!夕也も来るんだ!いいね~。』 『あ、愛華の彼氏も誘っていいって承認は貰ったから良ければ彼氏も誘って?』 『えー、楽しそー!聞いてみるね!』 5分ほどして、再び愛華からメッセージが来た。 『彼氏も行きたいって!集合場所はどうするー?』 『地元の駅でいい?』 『おっけー!』 画面をロックしてソファに横たわる。 「ふぅ…楽しみだなぁ。あ、明日実家に浴衣を取りに行かないと。」 翌日、私は実家に帰って自分の部屋を漁っていた。 「あ、あった。…まだ着れるよな?」 何年も着ていなかったから少し心配だったが、きつくはなっていなかったので安心した。 「あ…あれも持っていこう。」 ガサゴソとオリコンを漁り、お面を取
last updateLast Updated : 2026-07-27
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24.私のせいで

あれは、近所の夏祭りの日だった。 同じ地区の人達が神社に集まって、お祭りを楽しんでいた。 「お父さーん、俺かき氷食べたーい!」 「あさひ、アイス食べたい。」 「おう、ちょっと待ってな。」 しばらくして、父がかき氷とアイスを私達の元へ持ってきた。 「ありがとう!」 「ありがとう。」 買ってもらったものを食べていた時、はるひがあるものを指さす。 「お父さん、あれ、なあに?」 「ああ、あれはお面だな。欲しいか?」 「欲しい!」 私達はお面屋さんへ向かった。 「俺、あの白いのがいい!」 「狐のお面か。分かった。あさひはこの中に欲しいものあるか?」 「えっと…猫さんのお面がいい。」 「よし、じゃあ、父さん買ってくるから、ちょっと待ってなさい。」 「よっしゃー!」 「やった!」 1分もしないうちに、父が買ったお面を持ってきた。 「はい、どうぞ。」 「わあーっ!ありがとうお父さん!」 「猫さん可愛い!ありがとうお父さん!」 私たちは買ってもらったお面をすぐ身に着けた。 近所の友達と追いかけっこして遊んでいた時、遠くから上の兄達が歩いてくる姿が見えた。 「あっ!にぃに達だ!」 私は兄達の所へ向かおうと走り出した。 はるひも後から続いた。 「待って!あさひー!」 2人で並んで走ると、向こうにいた兄達も気付いてこっちに手を振る。 が、すぐに顔色が変わって叫んだ。 「お前ら左に避けろ!」 「危ない!左に行け、左!」 何事かと思って後ろを振り返ろうとした時… ブォーンッ バンッ! 車が何かを跳ねた音がした。 右を見ると、そこにいたはずのはるひがいない。 車が跳ねたのは、はるひだった。 10メートルくらい先に、はるひは頭から血を流して倒れていた。 「はるひっ!!!」 はるひの元へ駆け寄り、名前を呼び続けた。 「はるひ!はるひっ!起きてっ!はるひっ!!」 はるひが目を開けない。 「はるひ!!おい、あさひ、大丈夫か!?」 「おいおいおい嘘だろ!?」 「にぃにっ、はるひを助けて!はるひが目開けないの!!」 「そら!救急車!」 「今かけてる!」 音に気づいた人達が走ってやってくる。 「なんだ、事故か!?」 「子供が倒れてるぞ!」 その中に、両親もいた。 「はるひ!!!何でこんなことになったんだ!
last updateLast Updated : 2026-07-27
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25.私とはるひ

はるひの葬儀が終わった。 はるひが父にねだった狐の仮面だけは、棺に入れないでと両親に懇願して持ち帰った。 事故で傷が付いたけど、私にとっては大切なはるひの形見だった。 はるひがいなくなってから、私ははるひみたいに振る舞うようになった。 やんちゃで、優しかったはるひ。 男の子のように話し、はるひのような髪型に切ってもらった。 サイズが小さく感じるまで、はるひの服を着た。 はるひを忘れたくなかったのだ。 顔は似てないけど、鏡を見ればそこにはるひがいるような気がした。 まだはるひがそばにいると、自分自身に思い込ませたかったのだろう。 そう振る舞い続けているうちに、『はるひらしさ』が『あさひらしさ』へと変わっていった。 「あれから18年か…」 夕也達にはるひのことを話してこなかったのは、事故のことを思い出したくなかったからだ。 6歳の時に見たあの光景は、今でも目に焼き付いている。 浴衣と狐のお面を持って、私は自宅アパートに帰った。 夕食を食べていると、家のチャイムが鳴った。 「ん?はーい。」 扉を開けると、そこには夕也が立っていた。 「えっ!?夕也!?どうしたんだ!?」 よく見ると顔が赤く、目がぼんやりしていた。 「んー…友達と飲み行った帰り…」 「酔ってるな…ってかなんでここに?」 「あさひに会いたくなった…」 そう言って頭を私の肩に乗せる。 「…ご飯は食べてきたのか?」 「ん…おなかいっぱい…」 普段ここまで甘えてくることは今までにないから、子供のように話す夕也が可愛いと思ってしまう。 「とりあえず中に入って休んでな?」 「ん…」 「ご飯食べ終わったらすぐ来るから。」 夕也をソファに座らせて、急いでご飯をかきこんだ。 夕也の隣に座ると、とろんとした目でこちらを見つめてくる。 まるで犬のようだ。 「あさひ、ギュってしていい?」 今日は何があったのだろうか。 やけに甘えたがりだ。 「うん。好きなだけしていいよ。」 「んー…」 抱きついてきた夕也の頭を撫でていると、夕也の体の力が抜けて、そのまま私に寄っかかって寝息を立て始めてしまった。 「疲れてるのかな…」 あまりにも気持ちよさそうに眠っているので、起こさないようにしようと、そのまま動かずにいた。 ―夕也視点― 「ん…」 ここは…あさひの
last updateLast Updated : 2026-07-27
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26.あなたのそばに

風呂から上がり、俺はあさひが用意してくれた布団に寝そべった。 どうやらお兄さん家族が泊まりに来ることが年に何回かあるらしく、その時に使っている布団を出してくれた。 隣の布団に凛も寝転がって、2人で談笑しあった。 そして、先程から気になっていることをあさひに聞いた。 「なあ、あさひ。」 「ん?」 「さっき、あさひが寝言で『はるひ』って言ってたけど…友達?」 そう聞いた途端、あさひの表情が暗くなる。 「そっか。言っちゃってたか。」 「ごめんな。聞かないでおこうと思ってたけど、あさひ、寝ながら泣いてたし、どうしても気になるんだ。その人と喧嘩でもしたのか?」 「いや、喧嘩なんて滅多にしなかったよ。ただ…見てた夢が、いい夢じゃなくてな。」 「…?」 「夕也にも、愛華にも言ってなかったことがあるんだ。聞いてくれるか?」 「…うん。」 そしてあさひは重い口を開いた。 『はるひ』という人は、あさひの双子のお兄さんだったこと。 2人がとても仲良しだったこと。 あさひは本当は控えめな子だったこと。 はるひさんが亡くなってしまい、それからはるひさんのように振る舞うようになったこと。 そして、はるひさんの死に対して今でも責任を感じていること。 「…夏祭りの時期になると、必ずはるひの夢を見るんだ。夕也に会わせたかったよ。きっと仲良くなれた。」 「やっぱり、今でも寂しい?」 「うん。2人一緒にいるのが当たり前だったから。今は流石にもう慣れたけど、はるひがいなくなってすぐの時は、すごく辛かった。」 泣きたくなるのを我慢しているあさひを見て、思わず抱きしめた。 「夕也…?」 「あさひ、俺、死ぬまであさひのそばにいる。あさひのことを守る。だから…あさひも、ずっと俺のそばにいてくれるか?」 はるひさんの代わりになんてなれないけど、せめて俺はあさひのためにそばにいたい。 そう考えていると、あさひがそっと唇を重ねてきた。 「私は最初からそのつもりだったけど?」 「…っ!」 あさひはたまに積極的になる時がある。 2人で寝そべっている時にこんなことされると、抑えていたものが爆発しそうだ。 「あさひ、悪い、トイレ借りていい?」 「?うん。いいけど。お腹痛いのか?」 「まあ、そんな感じ。」 心配そうに見つめてくるあさひに罪悪感を抱きながら、ト
last updateLast Updated : 2026-07-27
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27.夏祭り

夏祭り当日。 朝から準備をしていた。 以前からメイクを日々練習していたから、どうにか思い通りの化粧はできた。 髪もアレンジして、簪をさした。 最後に、狐のお面を頭に付けた。 「これでよし。」 約束の時間になると、夕也が私を迎えに家へ来た。 「はーい。」 「あさひ、来たぞ…うおっ…」 「どう…?」 「めっちゃくちゃ綺麗だよ。」 「えへへ、ありがとう。」 「ん、行こうか。」 私達は駅へ向かって歩き始めた。 「…あ、愛華達もうすぐ駅に着くってよ。」 「あれーっ!あさひー!夕也ー!」 「あ、愛華!大和さん久しぶり!」 市川大和さん。 愛華の彼氏で、愛華と同じく看護師をしており、看護学校にいた頃から付き合っている。 「あさひさん、どうも。こちらが彼氏さん?」 「初めまして、桐山夕也です。」 「初めまして、俺は市川大和っていいます。」 「あ、ちなみに大和はうちらとタメだよ。タメ口でいいんじゃない?」 「俺は構わないですけど、大和さんは?」 「俺もタメ口でOK。」 「んじゃ、遠慮なく。」 よかった。 2人は仲良くできそうだ。 「あっ、今年もつけてきたんだね、そのお面。」 「うん。これがないと落ち着かなくて。」 「あ、待てあさひ、紐が緩んでる。」 「え、本当?」 夕也が紐を結び直してくれた。 「…よし、できた。落とすなよ。大事な物なんだから。」 「ありがとう。」 私達4人は電車に乗り、地元の駅に降りて夏祭りの会場へ向かった。 まだ午後3時だというのに、既に人で溢れていた。 「愛華、手繋ごう。はぐれたらまずい。」 「うん。あ、あさひ達も…あら、もう繋いでた。ラブラブ~。」 「あはは…あ、そうだ。愛華達はもう何か食べた?」 「いや、私たちはまだ食べてないんだ。」 ちょうど目の前に、唐揚げ屋さんがあった。 祭りが始まるまでまだ時間はあるから、食べ歩いても良さそうだ。 「せっかくだしみんなで唐揚げ食べない?」 「名案!」 私達は唐揚げ屋に並び、それぞれ食べたい分を買った。 「いただきまーす!…ん~、揚げたてで美味しい~!」 「あのおっちゃんが作る唐揚げ、いつも絶品だよな。」 4人でわいわい楽しく話していた時、知っている声がした。 「よぉ、お前ら、祭り楽しんでるかぁ?」 「楽しそうにしてんな
last updateLast Updated : 2026-07-27
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28.夏祭り②

「そういえば、お姉ちゃん達は?」 「佳奈達は先に場所取って待ってる。真奈美ちゃん達はその隣。」 「俺達はおつかい。レジャーシート超広めのやつだから、あさひたちも来なよ。」 「え、いいんですかー?お邪魔じゃありません?」 「いや、むしろ来てくれた方がもっと楽しいかもなぁ。」 「じゃ、遠慮なく~。」 兄2人はそれぞれ結婚して子宝にも恵まれた。 だいち兄ちゃんは佳奈お姉ちゃんと結婚して3人の子宝に恵まれ、そら兄ちゃんは真奈美お姉ちゃんと結婚して2人の子宝に恵まれた。 道中で色々な屋台で食べたいものを買って、兄達も頼まれていたものを買ってお姉ちゃん達の元へ向かった。 「ただいま戻りましたー。」 「おかえり、ありがとね…あっ、あさひちゃん!」 「佳奈お姉ちゃん久しぶり~。」 「あら、あさひちゃん今日はいつも以上にべっぴんさんだね。」 「やめてよ、真奈美お姉ちゃん。」 「そちらの方々は?」 義姉達は愛華とは面識はあるが、夕也と大和さんとは初対面だった。 「初めまして、桐山夕也です。」 「あさひを昔泣かせた奴。」 「そら兄ちゃんっ!」 「まあ、事実だから否定できない…」 「そらくん、あさひちゃんの彼氏に意地悪しちゃダメ。」 「冗談だって。半分は。」 そう言ったそら兄ちゃんの肩を真奈美お姉ちゃんがバシッと叩いた。 「あ、自分は市川大和です。よろしくお願いします。」 「私の彼氏でーす。」 「お似合いのカップルたちだね~。」 「うちらもこんな感じだったのかな~。」 話を弾ませていると、賑やかな声が聞こえてきた。 「あっ!ねえねだ!」 甥達と姪達だ。 兄達より歳が近いため、私の事をおばさん呼びではなく姉呼びしている。 「あっ、こら!優希!急に走らないの!」 そう弟を叱るこの子はだいち兄ちゃんの長女、希美ちゃん。 優希くんはだいち兄ちゃんの末っ子だ。 だいち兄ちゃんの子は上から長女の希美、長男の和希、次男の優希がいる。 そら兄ちゃんの子は上から長男の響、長女の奏がいる。 子供達が実家に来る度に遊んでいたから、懐いてくれてはいる。 「あ、お姉ちゃん!」 「久しぶり、希美。和希は?」 「和希なら今トイレ行ってる。」 「そっか。」 「ねえね、今日お姫様みたい!」 「そうかな…?でもありがとう、優希。」 優希の
last updateLast Updated : 2026-07-27
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29.夏祭り③

屋台で買ったものを全て食べ終え、気付けば日が沈みはじめた。 「あと1時間したら花火が打ち上がるか…」 「楽しみだな、あさひ。あ、そうだ、だいちお兄さん。俺とあさひで違うところに移動してもいいですか?」 「へっ?」 「俺たちは全然構わないけど。変なことはすんなよ~?」 「ちょっと、だいち。」 「はははっ!冗談冗談。2人きりになりたいんだろ?行ってこい。」 「私も大和くんとどっか移ろうかな~。花火が綺麗に見れるところあるんだよね~。」 「俺達は南側の方に行くから、愛華達はいつものとこ行ったら?」 「りょーかい!じゃね!」 「じゃあ、すいません。俺達は失礼します。」 「あいよ。楽しんでこい。」 私たちは移動を始めた。 移動の途中、夕也が屋台で簪を買って私に付けてくれた。 綺麗な水色の玉が付いていて、クラゲのようだった。 「ありがとう、夕也。」 「どういたしまして。」 何気ない会話なのに、心が満たされていく。 それほど私がこの人を大好きなのだろう。 いや、むしろ愛していると言う方がしっくりくる。 しばらくして、夕也がある方向を指さす。 「あそこ。誰もいないから花火がすごい綺麗に見えるんだよ。」 「へえ、よく見つけたな。」 「さっきみたいに人が密集しすぎてる所は疲れるからさ。昔1人でウロウロしてたらここを見つけたってわけ。」 ちょうど2人座れそうな大きな石があったので、私達はそこに座った。 「なあ、夕也…」 夕也に問いかけようとした時、花火が打ち上がり始めた。 「ん?どうした?」 「いや、なんでもない。」 もし私が結婚したいって言ったら、結婚してくれるのだろうか。 聞きたかったけど、今はこの景色を楽しみたいと思った。 「花火、来年も2人で見れるかな。」 「来年どころか、その先もずっと俺はあさひと見たいって思ってるよ。」 「ずっと…?」 「ああ。お互いしわくちゃになっても、俺はあさひと見たい。」 それってつまり、私と結婚する意思があるということなのだろうか。 夕也の手を握って身を寄せる。 「そっか。私も、夕也とずっと一緒にいたい。」 30分ほどすると、フィナーレの演出になってきた。 絶え間なく花火が上がり続けて、もうすぐこの楽しい時間が終わることを知らせていた。 何気なく夕也の顔を見ると、夕也もま
last updateLast Updated : 2026-07-27
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30.二度と失わない

―そら視点― 「あさひーっ!!!」 ブレーキ音の後に聞こえた衝撃音。 少し離れた所に倒れたあさひと、その少し先にはるひのお面が落ちている。 まるで、あの日と同じだ。 「響!無事か!?怪我は無いか!?」 すぐに息子の元へ走り、怪我が無いか探る。 「だ、だい、じょう、ぶ…でも、ね、姉ちゃん…」 幸い、夕也くんが抱きとめてくれたおかげでかすり傷ひとつない。 問題は、あさひだ。 「姉ちゃんなら大丈夫。お父さんが助けるから。」 「ごめ、姉ちゃん、僕の、せいで…」 ショックで泣き始めた息子に昔のあさひの姿が重なる。 「響、よく聞け。お前のせいじゃない。お父さんは姉ちゃんと一緒にいるから、お母さんのところに戻るんだ。いいか?」 「う、ん…」 まだ泣いているが、少しだけ落ち着いてきている。 「そらくん!あ、あさひちゃんっ…!」 「真奈美、俺はあさひに付き添うから、響達と家に帰れるか?」 「わ、分かった。」 「俺は警察に状況を説明する。終わり次第、すぐに病院に向かうから、そら、搬送先が分かったら教えてくれ。佳奈、真奈美ちゃん、お前らは母さん達の所に帰ってくれ。そっちの方が近いし、今はなるべく子供たちを母さん達と一緒にいさせて落ち着かせた方がいい。」 「分かったわ。」 「分かりました。」 「お兄さん、俺も行きます。」 「!ああ、頼む。」 すぐに救急車とパトカーが来て、あさひはストレッチャーに乗せられ、救急車の中に入っていった。 続いて俺と夕也くんも乗った。 救急隊員は俺の見知った顔の奴らだった。 「風間さん!この方はお知り合いですか?」 「妹のあさひだ。」 「既往歴は?」 「無い。」 「分かりました。風間さーん!風間あさひさーん!聞こえますかー?」 あさひが全く呼びかけに反応しない。 目も開かない。 嫌な予感がする。 「脳出血を起こしている可能性がある。搬送先の病院に頭部CTの準備をしてもらうよう連絡をしてくれ。」 「脳出血っ…!?」 夕也くんの顔がみるみる青くなっていく。 「あさひならきっと大丈夫だ。信じてやれ。」 「今、総合病院へ頭部CTの依頼をかけました。」 「助かる。」 病院に着き、あさひはすぐに検査室へ連れていかれた。 しばらくすると、中から医者が出てきて言った。 「風間あさひさんは脳出血
last updateLast Updated : 2026-07-27
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