Home / 恋愛 / Lilas / Chapter 31 - Chapter 40

All Chapters of Lilas: Chapter 31 - Chapter 40

44 Chapters

31.あなたは

「っ、先生!妹は…あさひは…」 「手術は成功いたしました。ただ、頭を強く打っていましたので、目が覚めるまでに数日はかかるかもしれません。それと、妹さんは事故の衝撃で右側のあばら骨を2本、右足の骨が折れていますので、しばらく入院していただくことになります。」 「っ、本当に、ありがとうございます…妹を助けていただいて…」 時刻は夜中の3時を回っていた。 集中治療室に行くと、痛々しい姿の妹がベッドで眠っている。 「どうして、こんな事になったのよ…」 夕也くん、愛華ちゃん、大和くんの3人を、兄貴が車で送ることになった。 「夕也くん。あさひの意識が戻ったら、すぐ連絡する。」 「お願いします…」 ―夕也視点― 事故から5日が経った。 あさひの意識はまだ戻っていない。 家族ではない俺は面会がまだ許されず、どうしようもない不安を抱えている。 仕事を終えて更衣室で着替えていると、電話が鳴った。 電話の相手は、そらお兄さんだ。 「もしもし!?」 「夕也くん!今あさひの意識が戻った!病院に来れるか!?」 「は、はい!すぐに向かいます!」 電話を切って足早に駐車場へ向かい、車に乗った。 1時間ほど車を走らせて、病院に着いた。 あさひの病室へ向かうと、険しい顔をしたそらお兄さんが病室の前に立っていた。 「お兄さんっ、あさひの意識は戻ったんですよね…!?」 「意識は完全に戻った、ただ…」 あさひの病室に入ると、あさひはベッドの角度を変えられ、ベッドに体を預けたまま上体を起こされていた。 「あさひ、よかった…助かって…」 「…そらにぃ、このお兄ちゃん、だあれ?」 「え…?」 おかしい。 普段のあさひはこんな話し方をしない。 そらお兄さんのことも、『そら兄ちゃん』と呼ぶのに、『そらにぃ』と呼んでいる。 まるで、子供のような話し方だ。 それに…どうして俺のことが分からないんだ。 「あさひ…?夕也だぞ?」 「?」 「夕也くん、1回出ようか。」 病室の外へ出て、そらお兄さんが話し始めた。 「あさひは…記憶障害を起こしてる。」 「記憶、障害…?」 「事故の影響で、あさひは18年分の記憶が抜けている。」 18年。 つまり、俺と付き合っている事も、俺と出会った事すらも、全て忘れてしまっているということだ。 「そんな…」 「す
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more

32.思い出せない人

―あさひ視点― ここは、どこだろう。 変な匂い。 なんで私、寝ているんだろう。 あれ、そらにぃがいる。 でも、なんでだろう… そらにぃなのに、そらにぃじゃないみたい。 「うっ…!」 起きようとしたら、痛い。 すごく、痛い。 「…!あさひ!意識が戻ったのか!?ちょっと待て、まだ起きるな。今すぐ看護師さん呼ぶからな。」 そらにぃが、ボタンを押した。 すぐに、白い服のお姉さんが来た。 「風間さーん、分かりますか?ここ、病院ですー。」 「あ…」 「夕也くん!今あさひの意識が戻った!病院に来れるか!?」 そらにぃ、誰と話してるんだろう。 なんだろう、あの四角い物は… あれ… 「あさひ、今から夕也くんが来るからな!」 「…そらにぃ、はるひはどこ?」 「…何言ってんだ…あさひ…はるひは…」 お部屋にお医者さんが入ってきた。 「風間さん、ここ、どこだか分かりますか?」 「えっと、病院…?」 「先生、妹が…」 そらにぃとお医者さんがお喋りしてる。 「…なるほど…恐らく、頭を打った衝撃で記憶障害を起こしています。」 「記憶障害…!?」 なんの話をしてるんだろう。 「風間さん、自分の名前、言えますか?」 「風間あさひ…です…」 「今、何歳ですか?」 「6歳…」 そらにぃとお医者さんがお部屋を出た。 「はるひ、どこかなぁ…」 そらにぃが戻ってきた。 「あさひ、話があるんだ。」 「うん。なあに?」 そらにぃが教えてくれた。 私が車とぶつかって、色んなことを忘れちゃったこと。 6歳じゃなくて、本当は24歳だってこと。 はるひは、すごく遠いところに行ったこと。 「はるひ、いつ帰ってくるの?」 「兄ちゃんには分からない。はるひは、色んなところを冒険しなくちゃいけないんだ。」 「そうなんだ…」 「あさひ、ちょっと待ってな。」 そらにぃがお部屋から出て、すぐに戻ってきた。 知らないお兄ちゃんも入ってきた。 「あさひ…よかった…助かって…」 この人、誰だろう。 なんで私のお名前を知ってるの? だけど、怖くない人だ。 「そらにぃ、このお兄ちゃん、だあれ?」 「え…?」 お兄ちゃんが悲しい顔になった。 どうしてだろう。 「あさひ…?夕也だぞ?」 分からない。 知らない名前、知らない顔。
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more

33.もう一度好きになって

―夕也視点― あさひの目が覚めてから1週間ちょっと経った。 まだあさひの記憶は戻らない。 今日もあさひのいる病室に行く。 「あさひ、来たよ。」 「あっ、夕也くん!」 まだ折れた骨が完治しておらず、今日もベッドにもたれかかっている。 「頭の包帯、取ったんだな。」 「あ…うん!しゅじゅつ?の時に切った所、もう治ったから先生が取ってくれたの。」 「そうか、よかった。」 あさひは俺への恋愛感情すら記憶に残っていないから、普通の友人として接している。 出会った時のように接していれば、もう一度好きになってくれるかな、とか思いながら。 「あ、そうだ夕也くん。これあげる。」 あさひが渡してきたのは、コーラの缶だった。 「いいの?」 「うん。いつも来てくれるから。何が好きか分からなかったから、夕也くんならこれかなって思ったんだけど…」 もじもじしながら話す癖は、元からあるようだ。 「ありがとう。俺、コーラ大好きなんだよ。」 「本当?良かった~。」 「愛華ちゃん、今日来てくれるかな。」 「ああ、愛華なら来るよ。」 「そっか、じゃあもっと楽しいね。」 15分ほど話していると、愛華がやってきた。 「あーさひっ。来たよ。」 「あ、愛華ちゃんだ~。愛華ちゃん、これあげる。」 あさひが愛華に渡したのは、アイスココアの缶だった。 愛華の好きな飲み物だ。 「え?いいの?」 「俺も貰ったよ、コーラ。いつも来てくれるからって。」 「…そうなんだ…」 偶然だろうけど、自分達の好きな飲み物をくれた事に、嬉しさを感じていた。 「ねえ、あさひ。今、どんな気分?」 「今…?うーん、普通?元気が無いわけじゃないけど…」 「なんか、頭の中でモヤモヤしてない?」 あさひが首を傾げる。 「うーん、よく分かんない…」 「そっか。ごめんね、変なこと聞いて。」 しばらく話しているうちに面会終了の時間が近づき、俺達は帰ることになった。 「じゃあな、あさひ。また明日。」 「私も明日来るからね、あさひ。」 駐車場にある車に着くまで、愛華と喋っていた。 「あさひ、怪我が治ってきてるみたいでよかった。」 「ああ、本当に、良かった。」 「あんたは大丈夫なの?」 「大丈夫。」 愛華が足を止める。 「嘘つき。そうやって自分に嘘つくの、やめなよ。それで
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more

34.言えなかったさようなら

今日は、リハビリっていうのをやるみたい。 折れちゃった骨が治ったから、ちゃんと歩けるように練習をするんだってお医者さんが言ってた。 「はーい、終わりましたよ。病室に戻りましょうね。」 「は、はい。」 右の足が重くて、ちゃんと歩けない。 頑張ってお部屋まで歩けたけど、ベッドに入ったら眠くなってきたから少しだけ寝ようかな。 『…ひ…あさひ…』 誰かが私を呼んでる。 『あさひ。』 あれ? はるひだ。 冒険は終わったの? あれ… なんではるひ、子供のままなの? 『あさひ、俺はもう、死んじゃってるんだよ。』 何言ってるの? 今目の前にいるじゃん。 嘘つかないで。 『ごめんね。嘘じゃないんだ。俺はもう、帰って来れないんだ。』 嘘だ。 嫌だ。 帰ってきてよ。 寂しいよ。 あさひにそんな意地悪しないで。 『…あさひ、もう俺への悲しい気持ちは忘れて、みんなとの楽しい思い出を‪思い出す時間だよ。』 え…? あれ… 何か聞こえてくる。 『待って、あさひー!』 『俺、桐山夕也。よろしくな。』 『あーさひっ!おはよ!ごめんね、遅くなっちゃった。』 『あぁ、夕也くんか。昔から好きだったもんな、お前。』 『…俺、あさひの彼氏になりたい。』 『親友の初デートだもん、頼られないわけにはいかないよねっ。』 『ありがとう。俺の事好きになってくれて。』 『姉ちゃん見て、射的で勝ったんだ!』 『ああ。お互いしわくちゃになっても、俺はあさひと見たい。』 …そうだ。 思い出した。 全部。 ごめん、はるひ。 私のせいで。 ごめんっ、ごめん… 『あさひのせいじゃないよ。』 私があの時、走り出してなかったら、はるひは死ななかったのに。 『あさひのせいじゃない。』 私が… 『あさひ、もう自分を責めるのはやめだ。』 だって、だって…私が悪いんだから。 『あの時走り出してなかったとしても、あの車に誰か跳ねられていたよ。俺じゃなくて、兄ちゃん達が跳ねられちゃったかもしれない。起こるべくして起こった事故だよ。』 はるひ…ごめんね。 『あさひ、もう俺の真似をするのはおしまいだ。俺にごめんなさいをするのもなしだ。これからは、あさひらしく素直に、少しわがままに生きるんだ。約束できる?』 …はるひ、もう会いに来てくれないの? 『
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more

35.退院

記憶を取り戻してから1週間以上経った。 怪我も完治し、リハビリを終えた私は退院することになった。 病院には両親、兄達、夕也、愛華、そして、響が来ていた。 お見舞いには兄達や夕也達の他に両親と義姉達が来ていたが、兄の子供達には来させないようにしていたそうだ。 怪我が酷かったから、これ以上子供たちにショックを与えないようにしていたのだろう。 だがそのせいで、響は私に嫌われたと思い込んでしまったそうで、誤解を解くために連れてきてもらった。 「響、こっちにおいで。」 俯いたままの響がゆっくりと近づいてきた。 響をそっと抱きしめて言った。 「響、姉ちゃんはね、響の事大好きなんだよ。嫌いなんかじゃない。」 「でも、俺のせいで、姉ちゃん、車に…」 「それは響のせいじゃないよ。絶対に響のせいじゃない。」 「ごめんね、姉ちゃん…ごめんね…」 「今はごめんねは言わないで。響、姉ちゃんの目を見て。」 響が目を合わせてくる。 「響が本当に悪い事をした時以外、ごめんなさいはなし。分かった?」 「…うん。」 荷物をまとめ、病院の外に出た。 「心配かけてごめんね。みんな。」 「…お前が生きてさえいてくれれば、父さんも母さんも、お前の兄さん達もそれでいい。心配くらいいくらでもかけなさい。」 「変わったわね、あさひ。…いや、戻ってきてくれた、が正しいかしら。昔のあさひに。」 母がそっと私の頬に手を添えて言った。 「うん。もうはるひの真似はおしまい。はるひと約束したから。」 「そう…安心したわ。あの子、あさひのそばにいてくれてるのね。あの子らしいわ。」 「さて、そろそろ帰ろうか。それじゃああさひ、父さん達は帰るからな。気を付けて帰るんだぞ。」 「うん。」 両親を見送ると、だいにぃが口を開く。 「そうだ、あさひ。お前はしばらく夕也くんの家に泊まることになった。」 「えっ?なんで?」 「お前ん家にあった冷蔵庫、壊れて今はもう無いから。」 「…はい?」 私が使っている冷蔵庫は、私が一人暮らしを始める際にだいにぃから譲ってもらったものだ。 「いやね、食材買って冷蔵庫に入れようとしたら、冷えてなくてさ。業者に見てもらったら、もう古い年式のやつだから直すのが難しいって。だからしばらくは夕也くんの家に泊まりな。その時買った食材は夕也くんの所に持ってっ
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more

36.寂しがり屋なあなた

「あさひー、ご飯できたぞー。」 「はーい。」 寝室から出ると、テーブルには沢山の料理が並べられていた。 「わぁ…美味しそう…」 「退院祝いだから、今日は腕が鳴ったよ。食べようぜ。」 「いただきます。」 「いただいてください。」 「ん~…やっぱり美味しいなぁ、夕也の作るご飯。」 「ありがとう。俺もあさひの作るご飯好きだよ。」 ここ3週間はずっと病院食だったから、しっかり味のついたおかずはしみる。 「いっぱい食べろよ。あさひ、前より痩せてるから。」 「…うそ。」 「本当。さっき抱きしめた時、前より細く感じたし。筋力も落ちてるだろうから、しっかり食べるんだぞ。」 「…だいにぃみたいな事言うね。」 「それぐらいあさひの事が大事なの。」 「いっぱい食べます。」 「よろしい。」 入院する前より胃が小さくなったのか、普段から私が食べているより少ない量で腹が満たされてしまった。 「…お腹いっぱいになっちゃった。」 「入院している間に胃が縮んじゃったんだろうね。」 「ごめんね、本当はもっと食べたかったのに…」 「しょうがないよ。残りは明日食べような。」 「うん。ご馳走さまでした。」 「片付けしてるから、あさひはソファでもベッドでも、好きなとこでくつろいでて。」 「私も一緒にやる…」 「退院したばっかりなんだから、休んどきなさい。」 「…分かった。」 今日は甘えてばっかりだ。 申し訳なくて私も手伝いたいけど、夕也に止められてしまう。 「素直、ねぇ…」 夕也のベッドで寝転がってスマホを見ていると、皿洗いを終えた夕也が隣に寝転がって私を抱きしめる。 夕也を抱きしめ返し、胸元に顔を埋めた。 「んー…夕也の匂い…」 「臭い?」 「違うよ、落ち着くんだ。夕也の匂い、好きなの。」 「ふぅん…」 さすがに引かれてしまっただろうか。 言わなきゃよかった。 「じゃあ、寝る時はこうして抱きしめてあげる。」 「…へへ、ありがとう。」 「…あさひ。」 「ん?」 夕也に呼ばれて顔を上げると、おでこにキスをされた。 「~~っ!」 「ふっ、顔赤くなってるぞ。」 「だって夕也がっ…」 「ごめんごめん。」 「…口にはしてくれないの?」 「…!全く、どこでそんな台詞覚えてきたの。」 私の後頭部を押さえて、唇を重ねてくる夕也
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more

37.壊れるほど愛して

「夕也ぁっ…あ、ああーっ!」 ぷしゃっと音を立て、4度目の絶頂を迎えた。 私の中から抜いた指をぺろりと舐め、再び入れようとする。 「もう指やだっ。夕也の入れてよ…」 指でされてばっかりで、夕也は入れてくれない。 これだけで満たされるわけがなかった。 「だーめ。初めてした日から1回もしてないから、あさひの中きつくなってるよ。」 「もういいからっ、早く入れてっ…」 「あと何回かイかせたらね。」 早く夕也と繋がりたいのに。 この人は私を焦らしたがる。 夕也の手を振り払って押し倒した。 「おい、あさひっ…」 ベッドサイドの引き出しを開けて避妊具を取り出し、夕也のそれに被せた。 「待て、ちゃんと慣らしてからっ、うあっ…」 聞く耳なんて持たず、私は夕也に跨って腰を下ろす。 確かに前よりもきつく感じるが、それよりも夕也と繋がりたい気持ちが勝っていた。 「んっ…夕也がしてくれないなら…私がする。」 腰を上下に動かすと、夕也のそれが私の良い所に当たる。 「は、あ…んっ…」 「あさひ、これやばいって…」 赤くなった顔の夕也。 私を見ないようにしているのか、腕で目元を隠している。 その腕をどかし、両手首を掴み、ベッドに押さえつけて顔を覗き込む。 まだギリギリ理性を保っているようだ。 「くっ…あさ、ひ…」 「夕也、好き、大好き…」 夕也が欲しくてたまらなかった私は、自分がしていることに対する恥など微塵も感じていない。 ひたすら腰を動かし続けて、快楽に溺れまくっていた。 淫らな女だと思われただろうか。 だが、そんな事などどうでもいい。 とにかく今は、心も身体も、満たされていたかった。 「もう知らねえぞ。」 そう言って私の腰を掴んだ夕也は、激しく私を突き上げる。 「あ、あ、ああっ、や、ああーっ!」 「自分で煽った癖に…っ。」 さっき自分で動いていた時よりもずっと深い所に当てられ、十数回突かれただけで簡単に私は果ててしまった。 息を整えていると、今度は私が寝かされて夕也が動き始める。 「待って、今イッた…」 「俺はまだイッてない。」 まだビクビクしている私の中を、夕也は容赦なく突き続ける。 夕也が果てるまで何度もイかされ、潮も吹いた。 私と繋がったまま、夕也が私に覆い被さってくる。 「はぁ…はぁ…ったく、めち
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more

38.今夜は無礼講

部屋に響き渡る乾いた音と、男女の喘ぐ声。 時刻は、深夜0時を回っていた。 「うあっ、もう出るっ…」 数回突いて、夕也は私の中で果てた。 どくどくと中で脈打っているのを感じながら、私も果てる。 これで夕也が果てるのは4回目だ。 「はぁ…はぁ…んん…んあ…」 息を整えつつ、夕也と深い口付けを交わす。 事故に遭う前の私ならここで白旗を上げていただろうが、約1ヶ月もの間夕也と恋人らしい事をできなかった私は、その空白を埋めるようにひたすら愛と快楽に溺れた。 どうやら夕也も同じみたいだ。 「…ラスト1個だから、あと1回だけ…」 箱に手を伸ばし、手に取った袋を歯に挟み、ちぎって避妊具を自身のものに被せる。 「…最後?本当に?」 「え?」 起き上がって夕也に顔を近づける。 「前した時は多分5個入りだったと思うけど、さっき私が開けた時は『8個入り』って書いてあった。夕也がイッたのは4回。…本当は箱にまだ3個残ってるでしょ。」 「え…いや…見間違い、だと思うけど…」 珍しくどぎまぎしている夕也。 「私、どんなに小さい文字でも数字だけは見逃さないようにしてるの、知ってるよね?」 「えっと…」 私たちの働いている会社は食品を扱っている。 そのため、私のいる部署では材料のロット番号や有効期限などの数字は、見逃さないように必ずチェックする癖がついているのだ。 「…ごめん、5個入りのやつを買ったつもりだったんだけど、間違えて8個入りのやつ買ったみたいで…その…前の時にあさひのこと怒らせちゃってるから…」 しょぼんと下を向きながら話すその姿は、まるで怒られている大型犬のようだ。 「ふふ、怖い?めちゃくちゃにしてって、壊れるまで愛してって言ったでしょ?」 「でも…」 「時間も、仕事も、全部忘れてさ。今夜はいっぱい、愛し合おうよ。ね?」 そう言った途端、夕也は私を押し倒し、私の片脚を上げて入ってきた。 「あっ…!」 「まじで壊れても知らねぇからな…っ。」 いやらしい音を立てながら私を突き続ける夕也は、発情した獣へと変わっていく。 絶え間なく、私を突き続ける。 初めての角度から責められ、これまでとは違う快感を味わっていた。 みっともない表情をしているだろう。 顔を見られたくなくて、両手で覆い隠す。 「裸になっておいて顔隠すとか、矛盾
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more

39.誰よりも愛している人

―夕也視点― 「ずっと愛してるからな、あさひ。」 すやすやと眠るあさひの頬を撫で、起こさないようにそっとキスをする。 ここにちゃんといる事を確かめるように、あさひを抱きしめて目を閉じる。 あさひが車に跳ねられたあの日、俺は永遠にあさひを失ったと思った。 もう目を覚まさないんじゃないか。 このまま死んでしまうんじゃないか。 道に倒れているあさひを見た時、そう思った。 あさひを失ってしまうのが、とても怖かった。 あさひと付き合い初めてから、あさひは自分の一部となった。 仕事に行く前も、仕事をしている時も、仕事が終わって家に帰った後も、休みの日も、頭の片隅にはいつもあさひがいる。 あさひが死んだら、俺の心も死んでしまう。 そう思えるほどに、いつの間にか大好きという感情が、愛情へと変わっていた。 前の職場で、俺のあさひに対する思いが重すぎると同僚に言われたことがある。 確かに、10歳の頃からずっと同じ子を好きでい続けるなんて、それは恋愛感情というより執着心のようなものに近い。 「俺、結構めんどくせえし、重い男だな…」 初めての時に抱き潰してから、あさひと会う約束をしている前日には必ず抜くようにしていた。 そうしないと理性を保てない、と、自分で分かっているからだ。 だが、昨日は結局タガが外れてしまい、またあさひを抱き潰してしまった。 退院したばかりだというのに、無茶をさせてしまった。 自分の行動を猛省しているうちに、日が昇り始めてしまった。 「ん、んん…」 あさひがゆっくり目を開ける。 また、怒られてしまうだろうな。 「…ふふ、おはよう、夕也。」 腕をのばして俺の頭を撫でる。 こうしてあさひに撫でられるのは初めてだ。 意外と、悪い気分じゃない。 「…怒ってないのか?」 「ん?なんで?」 「いや、昨日…また抱き潰しちまったからさ…」 また怒らせたと思っていたのに、あっさりとした態度だ。 「めちゃくちゃにしてって言ったの、私だし。私の事すごく大事に思ってくれてるの、知ってるからさ。それに…」 「それに?」 あさひが少しムスッとした顔になる。 「私以外の女の子の裸とか、見て欲しくないし…私だけで気持ちよくなってほしいから…」 「…ん?どういうこと?」 「男の人ってみんなそうなんでしょ。1人でする時、その…そ
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more

40.ごめんなさい

―あさひ視点― 約1ヶ月ぶりの出勤。 ずっと病院にいて、あまり体を動かせなかったために筋力がかなり落ちてしまっているから、しばらくは軽作業だけをすることになった。 タイミングがいい事に、フォークマンの栗原さんが私の入院と同時に仕事復帰したため、倉庫の仕事は滞ることがなかったそう。 出勤してすぐ、買ってきた菓子折りを各部署に渡してきた。 「大変ご迷惑をお掛けしてしまい、申し訳ありませんでした。」 「やだ、ちょっと謝らないでよ!迷惑なんてかかってないし、そもそも悪いのは運転手じゃない!」 「でも、私の不注意みたいなものなので…」 「不注意じゃなくて、甥っ子くんを守ったんでしょう?桐山くんから全部聞いたわよ。優しい風間さんらしいけど、なんでも自分のせいにしちゃダメよ。」 「…はい。」 「ふふ、前より雰囲気がなんだか柔らかくなった気がするわ。より一層女の子っぽくなったというか。」 「…もっと自分らしくしろって、家族に言われましたので。」 「そう。まあ、前の風間さんも、今の風間さんも、私はどっちも好きよ。」 「ふふっ、ありがとうございます。すみません、これで失礼いたします。」 「頑張ってね!」 しばらくの間、調理過程の記録のみをする事になったから、体に負担を欠けることなく仕事をすることができた。 昼休憩の時間になり、工場入口で靴を履き替えていた時、美奈が近づいてきた。 「あの、あさひちゃん…」 「…どうしたの?」 「…その、怪我は、大丈夫なの?」 まさか美奈にそんなことを聞かれるとは思っていなかった。 「うん。もう治ったから大丈夫だよ。骨も元に戻ったし。」 気まずい空気が流れる。 「あ、あのっ、あさひちゃん…」 「…?」 「…酷いこと言ったりして、ごめん。それと…酷いこともしてごめん。」 「酷いこと…?」 「桐山くんの事、見た目だけの人間なんて言ったりしてごめん。あさひちゃんの、彼氏なのに…酷いこと言ってごめん。それと…あさひちゃんから桐山くんの事奪っちゃってごめん。」 奪った? どういう意味だろう。 「奪ったってどういう事…?」 「…本当は知ってたの。あさひちゃんが桐山くんの事を好きだったの。桐山くんがあさひちゃんの事を好きだったのも気付いてた。でも桐山くんを取られたくなくて、桐山くんに『あさひちゃんは他に好き
last updateLast Updated : 2026-07-27
Read more
PREV
12345
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status