表現の微妙さについて考えると、まず『気の置けない』が持つコアは「気を遣わなくていい」「遠慮しなくていい」という安心感だと感じます。親しさだけでなく、互いに自然体でいられる信頼関係を含んでいる言葉で、単に「仲が良い」よりも温度感と居心地の良さが強調されます。僕はこの語感を英語に置き換えるとき、場面や話者のキャラクターに応じて語選びを変えるようにしています。
たとえば日常会話で気軽さを伝えたいなら "to be at ease with someone" や "to feel comfortable around someone" が無難です。例:彼とは気の置けない仲だ → "I'm really at ease with him." 仕事や相談の相手に使うなら "a trusted confidant" や "someone I can be honest with" と訳すと、信頼のニュアンスがはっきり出ます。逆に "intimate" は親密さを示しますが、文脈によっては性的な含みが出るので注意が必要ですし、"bosom friend" は古めかしく堅い印象になります。
翻訳の実務では、原文のトーン(砕けた会話か、フォーマルな描写か)、登場人物の年齢や関係性、そして訳文の目的(台詞か説明か)を手がかりにします。僕は台詞では短くて自然な表現、説明文ではやや詳しい語を選ぶ傾向があります。結局のところ『気の置けない』は「居心地の良さ」をどう伝えるかが鍵で、英語では "to be comfortable with" 系列か "to be on familiar terms" 系列のどちらかを軸に微調整するのが実用的だと思います。そうして選んだ表現が場面にしっくりくると、訳文にも自然な空気が流れてくると感じます。