玉子焼き姫
結婚式の1週間前、妊娠が発覚した私・黒崎栞(くろさき しおり)のもとに、見知らぬアカウントからメッセージが届いた。
差出人は、自分が7年後の私の子供だと言う。
【ママ、僕をおろして】
【僕は生まれつき両足が不自由で、ママとパパはいつも僕のことで喧嘩していた。結局ママは心の病気にかかって、薬を飲んで自殺しちゃったんだ】
【ママにそんな苦しい思いをしてほしくない】
私はすぐに病院へ行き、中絶手術を受けた。
藤原蒼佑(ふじわら そうすけ)は怒り狂い、病院に駆けつけて私と大喧嘩したあと、ドアを乱暴に閉めて立ち去った。
退院して家の前に着いた途端、中から蒼佑が執着している女、桐生遥(きりゅう はるか)の得意げな声が聞こえてくる。
「未来からのメッセージ?そんな馬鹿げた話を信じる人が本当にいるとはね。ふふっ。
たかがデタラメなメッセージ一通で、自分の子供まであっさり捨てるなんて」
蒼佑は淡々とした表情で警告した。
「今回は大目に見てやる。次にまたこうして栞をいじめたら、ただじゃおかないぞ」
ドアの外にいる私は、異常なほど冷静だ。
もう二度と「次」はない。
あのメッセージが嘘だということは知っている。
けれど私自身は、嘘偽りなく、絶望に打ちひしがれた7年後からこの「過去」に戻ってきたのだ。