濃煙の果てに、愛は灰となった
授賞式の夜、消防隊長である彼氏の久保大介(くぼ だいすけ)は、控室で電話を受けたきり、煙のように消えてしまった。
残されたのは私、和泉夏希(いずみ なつき)ひとり。ドレス姿のまま壇上に立ち、彼の代わりに「年間最優秀消防士」の表彰盾を受け取った。
司会者がにやりと笑いながら言う。「久保隊長の胸の内には、名誉よりも大切な方がいらっしゃるようですね」
どっと沸く会場の笑い声。私はただ立ち尽くし、手足の先がじんじんと冷えていくのを感じていた。
家に戻っても、彼が帰ってくることはなかった。出迎えたのは、鼻を突くガスの臭いだった。
次の瞬間、激しい爆発が家を襲った――
瓦礫の中から近所の人に助け出されたとき、スマホに一枚の写真が届いた。
寮のベッドで、大介が上半身裸のまま横たわっている。その寝顔は、驚くほど穏やかだった。
一言メッセージが添えてあった――【隊長ったらもうヘトヘトで、今夜は帰れないって。「あいつがいれば、家のことは心配ない」って言ってたよ】