婚約者の初恋が帰国した日、私は彼の親友に嫁いだ
結婚式を1週間後に控えたある日、池田慎吾(いけだ しんご)に言われた。彼の親友・三浦暁(みうら あきら)の相手をしてくれないかって。
「1ヶ月でいいんだ。1ヶ月経ったら、すぐに迎えに行くから。
お前は昔から、誰かの『代わりの女』を演じるのが得意だっただろ。俺のためだと思って、暁が初恋の人を早くに亡くした、その心残りを少しだけ埋めてやってくれ」
私・斎藤梨花(さいとう りか)は何も答えず、迷うことなく頷いた。
だが、それは慎吾のためじゃない。
慎吾と付き合う前、私は東都で、誰かの「代わりの女」を演じることで知られていた。
だから慎吾に言い寄られたときも信じられなくて、ただの御曹司の新しい遊びだと思っていた。
99回目の告白を断った時までは。
「私はそんな良い子じゃない。お金が好きだし、今まで何人もの相手にとっての『代わりの女』を演じてきた。
もしあなたも、私を誰かの代わりにしたいなら、きっちり値段をつけましょう」
強気にそう言った私だったが、慎吾は力なく握りしめていた私の拳を解き、ブラックカードを握らせた。
その瞳には、切ないまでの愛おしさが宿っていた。
「金ならいくらでもある。お前はただ、お前らしくいればいい。俺の恋人として、いつか俺の妻として、そばにいればいい。
二度と、誰かの『代わりの女』になんてさせない」
私は慎吾を信じた。
数日前、慎吾と友人たちのメッセージ画面を見てしまうまでは。
【本命が帰国したら、代わりの女なんていらなくなるだろ?他の男に預けて、本当に寝取られるのが怖くないのか?】
慎吾の返信はこうだった。【ありえない。梨花は俺に惚れ込んでいる】
【それに、梨花と結婚しないなんて一言も言ってない。ただ、真由(まゆ)が帰国した今、昔の未練を少し埋めたいだけだ】
【暁は俺の大事な親友だ。わきまえてるはずさ。梨花には指一本触れない】
けれど、慎吾は知らない。
暁が、私に対してとっくに一線を越えていることを。
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