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朱音小夏
朱音小夏
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Novels by 朱音小夏

野良猫、御曹司に拾われる

野良猫、御曹司に拾われる

気まぐれな猫のように、夜な夜な男から男へと渡り歩く"天ヶ瀬 夜斗"。 ある日の夜の事だった。夜斗はいつものように酒場で今夜の相手を探していた夜斗は、一人の男に声をかけられる。しかし、その出会いは罠であった。薬を盛られ、路地裏で暴漢達に襲われた夜斗を救ったのは高級なスーツを身に纏った謎の男ーー"京極 玲央"だった。 いきなり現れた彼は夜斗に「僕の所で飼われないか」と話しを持ちかける。 そうして始まった奇妙な同居生活。けれど、玲央には夜斗にだけは知られてはいけない秘密があった。 それは彼が夜斗を探し求め続けていたという事ーー。
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Chapter: 野良猫、執着される
玲央は落ち着きを取り戻すと、緊張の糸が切れたかのように眠りについた。スーツのままだが起こすのはしのびない。そっとベッドへ横たわらせた。夜斗は玲央の自分への執着が半端ない事に疑問を持ち始めた。そして、何か手掛かりになるものはないかと家の中を散策し始めた。すると、一つの部屋の前で立ち止まった。そういえば、ここには入った事がなかったな。と思い部屋の中へと入る。そして電気をつけると信じられない光景が広がっていた。「な、なんだよ...これ...」そこには一面に広がった夜斗の写真。そっと部屋の中に入ると、デスクに置かれた書類が目に入る。そこには"調査報告書"と書かれていた。「調査報告書?なんでこんなものが?レオはなんでオレなんかを調べた?」報告書に目を通すと流石に昔の物はなかったが、最近の夜斗の行動が事細かく書かれていた。このままこの部屋にいてはダメだ。そう思い部屋から出ようとした時だった。背後から玲央に抱きしめられたのだった。「れ、レオ...」「どうしたんだい?こんなところで。あぁ。これを見たんだね?よく撮れているだろう?」「な、なんでオレなんかを調査したんだ?もしかしてあの夜会ったのは...」「偶然なんかじゃないよ?ようやく君が入り浸っている酒場を見つけられたから行って見たら...ね。」玲央はそう言うと夜斗の耳をペロリと舐めた。夜斗は思わず「ヒッ!」と声をあげる。すると玲央はクスクスと笑い夜斗を横抱きにし、ベッドへと戻ってくる。そして夜斗をベッドに横たわらせると、玲央は夜斗に覆いかぶさってくる。「さぁ、ヨル...いや、夜斗。これから一つになろう?」「れ、レオ...何でオレなんかを...?」夜斗がそう問うと、玲央は夜斗をギュッと抱きしめた。「夜斗は僕の"神様"なんだ...。だから、どうしても欲しかった。僕だけの物にしたかった...。」「...やっぱりオレ達はどこかで会った事があるんだな?」「覚えてなくても無理はない...けど思い出してほしい。」「...教えてはくれないのか?」夜斗はどうしても思い出せないので玲央を問いただすが、玲央は頑なに教えてくれようとしない。夜斗は我慢の限界がきて、「あーもー!」と声を上げると夜斗は玲央の身体をどかし、自身が上に乗る。「オレが欲しいなら、オレを納得させるようにしろよ!オレはお前の"神様"なんだろう?思い
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: 野良猫、決して一人にしない
「ヨル。仕事が出来るように整えてきたんだけれど...。もし無理そうなら...」「オレは大丈夫だよ?安心して仕事させてよ。」「しかし...。」玲央は夜斗の泣き腫らした目を壊れ物にに触れるかのようにそっと手をやる。玲央はあまりにも痛々しい顔をしている夜斗に気を使うが、夜斗は何でもない様子を見せる。一体何の夢をみたのだろうか?夜斗の心を占めているものはなんなんだ?玲央はなんだか面白くない気分でいっぱいだった。「ヨル。君の心を占めているものはなんだい?」「なんだよ、急に。今はレオ。お前だけだぜ?」夜斗はわざとふざけた様子を見せたが、玲央は真剣な面持ちで夜斗を見つめた。「レオ。何をそんなに慌ててるんだ?...っておわっ!!」玲央は夜斗をベッドへと押し倒すと、何やらぶつぶつと呟いている。夜斗はそんな玲央に少し不気味さを覚えてしまった。「ヨルは僕だけの物なんだ...。誰にも渡さない。絶対にだ...!!」「お、おい。レオ?どうしちゃったんだよ?落ち着けって。...んン!」玲央は夜斗の口を無理矢理塞ぐと、夜斗の身体をまさぐり始めた。そして、力任せに夜斗の服を脱がすと慣らしもしないで自身の欲を夜斗にぶち込もうとした。「お、おい!レオ!落ち着けって!...!!レオ!!」「!ヨル...?僕は一体...?」とりあえず玲央の暴走は止まったが、夜斗は玲央に対して恐怖心を抱いてしまった。しかし、今それを表に出すと玲央を傷つけてしまうと思い、なんとか抑え込むことに成功した。「レオ、今のオレの飼い主は誰だ?...お前だろう?何をそんなに怖がる必要がある?」「..."今の"、か...。いずれかは去って行ってしまうのだろう?」「それはどうかな?お前次第だぜ?」そう言うと、夜斗は玲央を抱きしめた。玲央の身体は小さく震えていた。何をそんなに怯えている?所詮気まぐれで拾っただけの野良猫だぞ?夜斗の頭は疑問でいっぱいになっていた。「なぁ。なんでそんなにオレに執着するんだ?オレの知らないところで会った事でもあるのか?」「それは...。ごめん。まだ言えない。だけど、どうか僕の元から消えないでくれ...。」今まで自身に満ち溢れていたと言うのに、こんなに弱った姿を見せられては放っておくなんてできない。ましてや涙を見せられては。今は、玲央を落ち着かせる事が一番だ。「レオ。オレは
Last Updated: 2026-06-29
Chapter: 野良猫、夢を見る
夜斗は念願の回らない寿司に舌鼓をうち、それはもうたらふく食べた。ついでに、高級白ワインも飲んだ。こんな贅沢が許されるなんて玲央さまさまだ。そしてタワマンへと戻ってくると、玲央は部屋へあがろうとはしなかった。「レオどうした?」「ごめんよ、ヨル。僕はまだ仕事が残っていてね。」「それでオレがいくら勧めてもワインを口にしなかったのか。」「そういう事。ヨルの仕事も出来るように整えてくるから少し遅くなる。」そう言うと、玲央は夜斗の身体を引き寄せた。「いい子で待っていておくれよ?僕だけの猫ちゃん?」「早く帰って来てね?ダーリン?」そんな軽口をたたいて夜斗は玲央お見送る。さて、いい気分だし、またジャグジーにでも浸かるとするかな。夜斗は浴室へと行き浴槽にお湯をためる。たまっていくお湯を見つめながら、夜斗は今日一日を振り返った。まさか、ヨウタに仕込まれた技術が本当に役立つ日が来るなんて、思ってもみなかった。そして、まだ彼を忘れられていない自分にも驚いた。「...ヨウタ...」彼の名前を小さく呟く。もう完全に吹っ切れたと思ったのに、いまだに夜斗の心を占める。今、どうしている?オレの事忘れた?少しは探してくれた?「ハッ。...自分から逃げ出したくせに。女々しいの。」夜斗は服を脱ぐと、冷水を浴びて自分の心を静める。熱く火照った身体に冷水は心地よい。そして、少し冷えてきたかな、と思った頃にジャグジーに身を沈める。あぁ、いい湯だなぁ。現実にこんなセリフをつくとは思わなかった。ダメだ。ヨウタの事は忘れよう。今、オレを飼っているのはレオだ。そう思い夜斗はジャグジーから出ると。バスローブに身を包み、あの大きなベッドへとダイブした。酒が回ったかな。眠気が襲ってきた。玲央が帰って来るまでひと眠りだ。ここは病院?あれ?どこかで見た光景だ。「夜斗...、お願いだ。早く目を覚ましておくれ...。君がいないと僕は...」ヨウタ?なんで泣いてるんだ?大丈夫。オレならここにいるから。だから泣かないで。「夜斗...せっかく自由になったのに...。こんな事になるなんて...。」自由になれたのは全部ヨウタのお陰だろう?何言ってるんだよ。あの雨の夜にオレを拾ってくれたのはお前なんだから。だからそんな顔しないでくれよ。「そうだ!退院したらまた美味しいものでも食べに行こう!なんでも好きな物ご
Last Updated: 2026-06-28
Chapter: 野良猫、気に入られる
人事部から出ると、次に向かったのは社長室であった。玲央は夜斗が緊張してはいないか、と様子をうかがったが、当の本人は平然としていた。「ヨルは緊張とかしないのかい?」「ん?だって、今までの男やパパの中に社長なんていっぱいいたもん。社長という人種には慣れてるよ。」...玲央はなんだかやるせない気持ちになった。今までの男どもにヤキモチを焼いてしまいそうだ。そんな玲央の様子に夜斗はにんまりする。「なぁに?坊ちゃんはヤキモチ焼きさんですかぁ?」「...揶揄わないでくれるかい?それにヤキモチを焼かないなんて無理があるだろう?」「へぁ?」夜斗はおちょくっただけのつもりであったが、こうも素直に認められてしまうとこっちが恥ずかしくなってしまう。そうしてしばらく2人は黙って歩いた。気がつけば、社長室の前へとたどり着いていた。「いいかい?お利口にしてるんだよ?」「...オレは子供か。」玲央は扉をノックすると、中から「入れ。」と渋い声が聞こえて来た。「...なんだ、玲央か。一体どうしたんだ?」「社長。これから私の仕事を手伝ってもらう事にした者を紹介しに参りました。...ヨル。」「はじめまして。ヨルと申します。不束者ですがよろしくお願いします。」まるで結婚の挨拶のようなセリフに玲央は吹き出しそうになるのを堪えた。社長である玲央の父親は、鳩が豆鉄砲を食ったように目をまん丸くすると、急に大声を出して笑った。「はじめまして。玲央がお世話になっているようだね。」「いえ。お世話になっているのはオレの方です。仕事まで斡旋してもらって...。有難い限りです。」「はっはっはっ。よく躾けられているようだな。どうだい?このままウチの玲央の嫁にならないか?」「父さん!」思っていたよりもユーモアたっぷりの社長で、夜斗は安心した。社長は椅子から立ち上がると夜斗の目の前に立ちはだかり夜斗をジッと見つめると、次の瞬間夜斗を思い切り抱きしめた。「しゃ、社長さん?!」「はぁー!なんなんだ君は!なんて愛らしいんだ!ヨル。ウチの子にならないかい?」「父さん!なにをふざけた事を抜かしているんですか。...それと、ヨルは僕のです。さっさと離してください。」「嫌だね。こんな可愛らしい子猫、なかなか会えないのだから。」「...母さんに言いつけますよ?」玲央の言葉に、社長はビシリと固まる。
Last Updated: 2026-06-27
Chapter: 野良猫、採用される
「...る、ヨル!!」「!レオ?悪い。ボーっとしちゃった。」なんで、今こんなところで思い出すかな...。できれば思い出したくない過去なのに。ヨウタの元を去ってから今の生活も始めたのであった。あれだけ嫌悪していた母親と同じ生き方で。「いきなり面談とテストの両方やって疲れたかな?今日はもう終わりで大丈夫だよ。...結果としては採用でいいと私は思います。専務もその方がいいでしょう?」「そうだね。テストの結果もミス0だったし、即戦力になるだろうからね。」「じゃあ...」「もちろん。採用だよ。これから仕事でもよろしく。」夜斗は心の中でガッツポーズをした。オレってばこれで脱ニート?脱ヒモ?と喜ぶのであった。そんな夜斗から見えないところで、玲央と斉藤がひっそりと会話をしていた。「いやぁ、まさか専務にあんな隠し玉があったとは。一体どんなかんけいなんです?」斉藤は思わず興味本位で玲央に尋ねた。すると玲央はいたずらっ子のような笑みを浮かべ、「可愛い可愛い、僕の飼い猫だよ。」と答えた。斉藤はその答えにしばらくポカーンとしたが、次第に笑いがこみ上げてきた。「アハハ。成程。飼い猫ですか!専務の事だか大変可愛がっているのでしょう。」「もちろんさ。もう可愛くって仕方ないよ。...囲ってしまいたいほどにね。」斉藤は「ヨルさんも大変な人に捕まったものだ。」と感想を持ってしまった。やがて夜斗がこちらの様子に気がついてすぐさま寄って来る。まさしく飼いならされた猫のようだ。「なーなー。即日採用とかオレすごくない?ご褒美に回らないお寿司が食べたいな♡」「仕方ないなぁ。分かったよ。その代わり、仕事はちゃんとこなす事!いいね?」「もちろん!オレってばやるときはやる男だよ?」「流石僕の猫ちゃんだ。期待しているよ?」斉藤は、"いちゃつくなら私のいないところでしてほしい"と思うのと同時に、自身も妻が恋しくなったのであった。「それはそうと、社長にはお会いしたんですか?」「いや、これからだ。まずは人事を通ってからかなと思ってね。」「なるほど。...社長の事ですからきっと...いや、絶対ヨルさんの事気に入ると思いますよ。」「専務と好みが同じなので。」とは言わないでおいた斉藤なのであった。「それじゃあ、これから社長室に向かうよ。斉藤、今日はいきなりすまなかったね。ありがとう。
Last Updated: 2026-06-26
Chapter: 野良猫、最初の男8
美容室へとやって来ると、美容師に「切りがいのある髪だねぇ。」と言われた。確かにもういつから切ってないか覚えていない。ヨウタの家に来てからはヘアゴムで髪を括っていたし、特に気にしてはいなかった。「どれくらいの長さにしたいとかある?」「特には。お任せします。」「お!嬉しいな。それじゃあ遠慮なく任せてもらおうかな!」「僕は口出しするからね?」そう言うと、髪がどんどん切られていく。美容師はヨウタとあーだこーだと言いながらカットを続ける。そして30分程経つとヨウタと美容師は満足気に鏡を見るよう促した。「ここまで短くしたのはいつぶりだろう...。」「これでも長い方だよ?ヨウタさんがうるさいから、ホントは刈込入れたかったんだけどね...。」「...それはオレも拒否します。」「でも、これだけイケメンになったんだから、モテモテになっちゃうね(笑)」「それは僕が阻止するよ。」ヨウタは独占欲丸出しで、夜斗の事を抱きしめた。すると周囲から黄色い悲鳴が上がったのであった。「やはり顔が良い者同士は美味い!」と美容師はぐふふと笑った。「それじゃあ、今日はコレで帰るよ。急に予約したのにありがとね。」「ありがとうございました。」「いえいえ!またいつでも来てね。」こうして2人は家路へとついたのであった。帰り道は夜斗の要望により歩いて帰ることに。たわいもない会話をしながら歩いていると、夜斗の後ろから手が伸びて来た。「みぃつけた。」「ヒッ!」「探したんだぞ?母親と一緒で男の所に入り浸ってたんだろうが...もう、帰って来てもらうからなぁ?」突如現れた男は夜斗の父親であった。ヨウタは思わず夜斗に伸ばされた手を叩き落とすと夜斗を強く抱きしめた。「あぁ?誰だお前。こいつには稼いでもらわないといけねぇんだから、こっちに渡せよ。」「...この子は金儲けの道具じゃありませんよ。貴方には渡せません。それに貴方はただの義理の父親でしかも養子縁組もしていない。...違いますか?」なんでヨウタがそんな事知っているんだろう?もしかして調べでもしたのかな?金持ちのすることは分からない...。そんな事を考えていると、夜斗の父親はナイフを取り出してヨウタに切りかかろうとしてきた。寸での所で避けたのでケガはない。「クッソ!避けてんじゃねぇよ!!お前に夜斗は渡さねぇ!!」父親は再びヨウタに
Last Updated: 2026-06-25
ひみつのお姫さま

ひみつのお姫さま

子供の頃からの幼馴染みである佐倉 若葉と巴 新。頭の良い若葉は偏差値の高い共学校へ。頭の悪い新はバカ校で有名な男子校へと進路が分かれた。 ある日、若葉の学校で学園祭が行われた際、若葉は女子の企みにより、女顔を活かした女装をして"桜ちゃん"として客引きをする羽目に。その時、運悪くナンパされ困っていたところ、友人と遊びに来てはぐれてしまった新が助けに入る。若葉は助けてくれた新に礼を言おうとすると、新に両手を握られ、お礼に土曜日にデートしてくれと頼まれてしまう。なんと新はメガネをかけていない若葉を桜ちゃん=若葉だと気が付かなかったらしくって-?!
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Chapter: episode22
「え...コレってOKってことで...いいの?」「...嫌いなヤツにこんなことしない。」「!若葉...!!」「?!ちょ!」若葉からの返事に感極まった新は、嬉しさのあまりに思いっきり若葉を抱きしめた。伝わってくる鼓動にこちらまで心臓が跳ね返ってしまうのではないかと思う若葉であった。「そ、それはそうと...なんで中2の頃からオレを避け始めたんだよ?」「そ、それは...若葉もオレと同じ高校行きたいって言ってくれるんじゃないかと思ってたから...。正直ショックで...。」「...それだけ?」新の返答に若葉は思わずポカーンとしてしまった。そんな若葉の感想に新は口を尖らせブーたれてしまった。「あの頃のオレに桜ヶ丘なんてとても行ける頭なかったし、共学だから彼女とか出来るんじゃないかと不安になったんだよ」「の割には海里男子は合コンが好きらしいじゃないか。」「?!な、なんで知って...」「有名な話しらしいじゃん。他校の女子としょっちゅうしてるって。そりゃこんなにデートのエスコートが上手いわけだ。」「ち、違うって!オレは人数合わせに行ってるだけ!エスコートも何度もシュミレーションしたからで...!」若葉の言葉に必死になって新は弁明した。「オ、オレは!ガキの頃から若葉一筋なんだよ!」「え...?」若葉は新のまさかの告白に目を見開いて彼を見た。子供の頃からと言うと、若葉ごコンプレックスの女顔の事をからかわれていた頃からと言う事だろうか。その頃の若葉の新への印象は自分を助けてくれる"ヒーロー"で、自分にはない男気のある"憧れの存在"であった。「...ほ、本当に子供の頃から...?あの頃、泣くなってオレのこと叱ってたじゃないか。メソメソすんな、強くなれって。」「あれはお前に自信持たせたかったんだよ。女顔だからからかわれてるんじゃないって。」「え?女顔だからだろ?」「ハァー。鈍いな。アイツら若葉の事好きだったから、からかったりしてたんだよ。ま、泣かすのは間違ってるけどな。」数年越しの真実に驚きを隠せない若葉であった。「ま、アイツらのお陰で若葉はオレにベッタリになってくれたわけだし、そこは感謝かな?」「べ、別にベッタリじゃねぇだろ!」「いーや。ベッタリだったね。」新はそう言うと当時を思い出したのか、クスクスと笑い始めた。それにつられて若葉も小さ
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: episode21
ゲームセンターに移動してから、若葉と新は思いっきりハシャギまくった。クレーンゲームで若葉が欲しそうに見ている景品を新がとったり、音ゲーをしたり、シューティングゲームをしたり。時間が過ぎるのが早かった。時計を見ると時刻は17時。新が若葉にそろそろ夕飯でも...と声をかけようとすると、若葉の視線は一点をとらえて固まっていた。...そこにあるのはプリクラである。「桜ちゃん、プリクラ撮りたいの?」「え!いえ...その...私撮ったことなくて...」「え、撮ったことないの?可愛いから皆に誘われそうなのに。」「...ゲームセンター自体来ないから...」「あ。じゃあさ、記念にオレと撮らない?」「え...?」「ホラホラ。行こう!」そう言うと新は若葉の手を取りプリクラ機の中へと入っていく。お金を入れ新は慣れたように操作していく。...「プリクラって女子が好む物だよな。手馴れてる。」と若葉は若干気が落ちたのを感じた。新はそんな若葉の様子に気づくことなく、「ホラ、笑って笑って!」と肩を抱きカメラを見る。若葉はそんな新にドキッとして顔を赤らめながらカメラを見る。何回かシャッターを切られると、ラクガキコーナーへ!とアナウンスが流れる。2人はそのアナウンスに顔を見合わせる。「オレ、ラクガキした事ない(笑)」「え?!ど、どーするんですか?」「無しでいっか!」そう言うとラクガキを終了させシンプルなプリクラが出来上がる。そのプリクラを半分こにすると、新は若葉に片方を渡してきた。「はい!今日の記念の1枚!」「凄いシンプルですね(笑)」「まぁ、いいじゃない?(笑)そろそろ夕飯でも食べいかない?」「いいですね。」「ワックでもいい?デートで行く感じのとこじゃないけど、無性に食べたくなっちゃった(笑)」「フフッ。いいですよ。」そうして2人はワックで夕飯を済ませ、帰るまで少し歩くことにした。「今日、どうだった?」「凄い楽しかったです。水族館も、ゲームセンターも!」若葉はくるりと新へと振り向きながら言った。すると新は若葉の手を引き、そのまま抱きしめた。「あ、新君?!」「ごめん。ホントはもっと早く言わなきゃダメだったのに、こんなに引き延ばして、試すようなことして。また傷つくのが怖いから言えなかった。...だから今言わせて?桜ちゃん。...いや、"若葉"。」「?!
Last Updated: 2026-06-29
Chapter: episode20
昼食を終え、展示物も一通り見終えると、2人は水族館内のショップへとやって来た。新が「デートの記念になるものを買おう。」と言い出したからである。ショップへと入ると、若葉は子供のようにイルカのぬいぐるみを手に取り新に見せてきた。「新君、新君!見てください!可愛いです!」「ホントだね。」テンションが上がった若葉の様子に新は笑みを浮かべ見守っている。すると若葉はハッとしてぬいぐるみを元の場所に戻し、顔を赤らめながら新に「スミマセン」と言った。「どうしたの?桜ちゃんが気に入った物買おうよ。」「い、いえ...。大ハシャギしたのが恥ずかしくって...。それに折角ならお揃いになる物が...。い、いえ!やっぱりなんでもないです!」「...オレとお揃いでいいの?」新がそう尋ねると、若葉はボッと音が出る程顔を真っ赤にして小さく頷いた。そんな若葉の様子に新は「可愛いなぁ」と思いながら、丁度近くにあったイルカのマスコットストラップを手に取った。「それならコレとかどう?カバンとかに付けられるし、色も青とピンクがあるし。...どう、かな?」「私とお揃いしてくれるんですか...?」「もちろん!...じゃあコレにする?」「ハイ!あ、お金...」「オレにプレゼントさせて?」新はそう言うと、青とピンクのイルカのマスコットを手にして会計へと行った。会計が終わると、若葉にピンクのイルカを差し出してきたので、若葉は「ありがとうございます。」と言って受け取り、早速バッグに付けた。それを新に見せ、「どう、ですか?」と問いかける。「うん。可愛い。桜ちゃんに似合ってる。」「大切にします...。」「じゃあ、オレも付けようかな。」新はそう言うとメッセンジャーバッグに青い方のイルカを付けて見せてきた。「どう?」「フフッ。可愛いです。」2人は笑い合うと、水族館を後にした。「水族館、楽しかったね。」「はい。とっても。イルカショー、凄かったですね。」「危うく水かぶるかと思ったけどね(笑)」「ですね(笑)あれにはヒヤヒヤしました。」「それじゃあ、ゲーセン行くけど大丈夫?疲れてない?」「あ、はい!全然元気です!」「全然元気か(笑)それならよかった。じゃあ行こうか。」新はそう言うと若葉の手を取り、繋いできた。「デートはまだ終わってないから。ね?」
Last Updated: 2026-06-28
Chapter: episode19
お昼時と言うのもあって、カフェは賑やかだった。ここでも運良く席が空いていたので、すぐに案内された。水族館のカフェであるがとてもメニューが豊富で、どれも美味しそうで目移りしてしまう。「桜ちゃん、メニュー決まった?」「そうですね...ボンゴレパスタにしようかと。」「OK。食後の飲み物はどうする?」「レモンスカッシュでお願いします。」「じゃあ、店員さん呼ぶね。」新はそう言うと「すみませーん」と店員を呼んだ。そして、新はシーフードパスタとコーヒー、若葉はボンゴレパスタとレモンスカッシュを注文した。料理が来るまでの間、2人は色々なことを話した。「桜ちゃん、学校生活はどんな感じ?桜ヶ丘って進学校だから勉強大変でしょう。」「そうですね。でも勉強は好きですし楽しいです。新君はどうですか?」「オレ?ウチは男子校だし授業中も騒がしいよ(笑)あんまりマジメに授業受けてるヤツはいないかなぁ...。まぁ、オレは少しだけど授業聞いてるかな?」「新君はしっかりしてますよね。」「そうでもないよ?勉強だって幼馴染みの影響だしね。」「え?」新の言葉に若葉は驚いた。まさか自分のことか?と疑問を持った。「その幼馴染みってのが桜ちゃんに似てるんだよね。」「...私に?」「うん。見た感じも、雰囲気もなんだか似てるんだ。...だから一緒にいて楽しいし、心地良い。...まぁ、そいつとは疎遠になっちゃったんだけどね。」「...そうなんですね。」心臓の音がバクバクと言ってうるさい。期待してしまう。新と同じ気持ちだと。若葉はそれがバレないように平静を保つのに精一杯になってしまう。笑顔は引き攣ってないか。声は震えてないか。そんな事を思いながら新と会話していると出来上がった料理が運ばれてきた。温かそうな湯気がのぼり、美味しそうな匂いがする。若葉は緊張しているせいかあまり味がよくわからないし、上手く飲み込めない。それでも新に気づかれまいと何もない様を装っている。「うん。ここのパスタ美味しいね。」「...そうですね。サッパリした味付けで食べやすいです。」「食事終わったら残りの展示見て、その後どこか行く?まだまだ明るいし、もう少し桜ちゃんと一緒にいたいんだけど...時間大丈夫?」「大丈夫ですよ。もしよかったら、近くのショッピングモールにでも行きますか?」「あ、いいね!いろんなお店入
Last Updated: 2026-06-27
Chapter: episode18
「土曜なだけあって結構人多ね。はぐれないように手、離さないでね?」新に手を引かれながら水族館へと入っていくと、水族館独特の暗がりの空間が広がっている。新の言った通り、多くの人がこの水族館に訪れているようで、家族連れやともだちど、そしてかっふ。傍から見たら若葉と新の2人もカップルに見えるのだろう。時折こちらを見ながら「見て。あそこに美男美女カップルがいる!」と注目を集めている。「桜ちゃん可愛いから結構注目されてるね。」「そんな事は...。新君がカッコイイから...」「ハハッ!ありがと。」そんなやり取りをしていると、この水族館名物のクラゲの大水槽へとやって来た。若葉は子供の頃からこの場所が好きだった。「わぁ...。やっぱりこのクラゲの水槽...キレイ...」「...桜ちゃんココ好きなの?」「はい。子供の頃からこの水族館に来ると必ず見に来るんです。」「そうなんだ...。オレも好きだよ、この水槽。」2人は水槽の前で歩を止めクラゲ達を眺める。若葉が目を輝かせながら見ていると、不意に視線を感じた。「?新君?どうかしました...か...」若葉が新に尋ねると、その言葉を遮るように新は若葉の口にキスをした。「...え...?」「!ゴメン!つい...。イヤ、だったよね。」「い、いえ...」なんでた?なんでキスをしてきたんだ?若葉は今のキスで頭がパンクしそうになる。若葉は新が分からなくなってきてしまった。「あ、もうじきイルカショー始まるよ。見に行く?」「そ、そうですね!行きましょう。」2人の間に少しギクシャクした空気が流れたが、それも一瞬で新は何事も無かったかのように若葉の手を引き、イルカショーの会場へと足を向けた。会場には人で溢れかえっていて、なんとか空いていた2人分の席へと座った。「良かった。席空いててラッキーだったね。」「イルカショー、人気ですからね。」そしてショーが始まるまで会話を楽しんでいると、ショーの時となり、会場は活気で溢れかえった。イルカ達はジャンプしたり、インストラクターを乗せながら泳いだり、輪くぐりしたりと華麗な技を披露して観客を楽しませた。若葉と新も夢中になり楽しんだ。そうしてショーが終了すると、観客達は皆会場を後にしていった。「時間も丁度いいから、カフェでお昼にでもしようか。」「そうですね。そうしましょうか。イルカ
Last Updated: 2026-06-26
Chapter: episode17
若葉が家を出て駅前へと着いたのは9時50分。新はまだ来ていないようであった。スマホに目をやると、新からショートメッセージが来ていた。内容は「少し遅れるかもしれない」と言うものだった。若葉はそれに「大丈夫です。気を付けてきてきてください。」と返信した。時刻が10時10分になろうとした時、後ろから肩をポンと叩かれた。新かと思い振り返ったが、そこにいたのは見知らぬ男性2人組。「お嬢さん可愛いね。待ち合わせ?」「...そうですけど。」「もう大分待ってない?良かったらオレ達とお茶しようよ。」「いえ。結構です。」「いいじゃん。減るもんじゃないし行こーよ。」そういうと男性の1人が腕を掴んできた。「!離してください!」「もー、ガード固いなぁ。いいじゃん。お茶くらい付き合ってよ。」「嫌です!」若葉がちょっと泣きそうになったその時だった。若葉の腕を掴んでいた手を掴み返す手があった。強い力が込められていたらしく、男性は「いてぇ!!何すんだ!!」と若葉の腕から手を離すとキレた。目をやるとそこには息をきらした新の姿があった。「彼女はオレのツレです。汚い手でさわるのはやめてくれませんか?」新はそう言うと男性2人組をら睨んだ。その睨みに2人組は怯み、「い、行こうぜ。」と言って去って行った。「ごめん!桜ちゃん!オレが遅刻したばっかりに怖い思いさせてしまって...!」「いえ!大丈夫ですよ?新君、助けてくれたじゃないですか。...王子様みたいでかっこよかったですよ?ありがとうございました。」若葉が笑みを浮かべそう言うと、新は照れくさそうに「ありがとう」と言った。「...桜ちゃんそのワンピース似合ってるね。凄く可愛い。」「!あ、ありがとうございます...。友達とショップのお姉さんにデートだからと色々とえらんでもらって...。」「...それって、オレのためって調子に乗っていいヤツ?」「は、ハイ...。」若葉と新は2人して顔を赤らめて固まり、沈黙してしまった。それもほんの数秒で、新はハッとすると若葉に声をかけた。「す、水族館開いちゃってるね!行こうか!」「そ、そうですね!行きましょう!」新はそう言うと若葉の手を握ってきた。若葉はそれにビックリすると、新は「デートだから手、繋がせて?」といたずらっ子のような笑みで言ってきた。若葉は心の中で「ズルすぎるだろ」と言い
Last Updated: 2026-06-25
その番犬、狂暴につきまして。

その番犬、狂暴につきまして。

ある日突然交通事故で両親を失った京司(けいじ)。そんな彼を引き取ったのは極道で名の知れた五十嵐組の組長であった。 そんな彼の一人息子、叶弥(きょうや)とともに慌ただしい毎日を送る京司。時には絡まれ、時には涙することも。ガキ大将であった叶弥と泣き虫であった京司。高校生となり、二人は身も心も成長し、京司はいつしかそのケンカの腕っ節から、"五十嵐組の番犬"と呼ばれるように。そんな相思相愛の二人が繰り広げる"ワン"ダフルな日常の物語。
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Chapter: episode23
学校に着き、オレは覚悟を決めて下駄箱を開ける。そこには普段と変わらず自分の上履きが入っているだけという光景があった。その事にオレは安堵のため息をつく。そんなオレの様子を見た叶弥はオレの背中をポンと叩いた。「今日は大丈夫だったな。」「あぁ...。よかった。」そうして上履きへと履き替えると教室へと向かう。たまに視線を送られてきたが、オレは気が付かないフリをした。しかし、それに気が付いた叶弥は視線の元へと睨みを効かせていた。すると、「ヒッ」という小さな悲鳴が聞こえた気がしたが、これもまた気が付かないふでやり過ごした。「五十嵐組の番犬は京のハズなのに、なんかオレのが京の番犬みたいじゃね?」「その呼び名恥ずいから別にオレは構わねぇよ?」「お前なぁ...」叶弥は盛大なため息をつくと、オレの頭をわしゃわしゃと撫でつけた。そうこうしている内に教室へとたどり着き、中へとはいる。軽く「おはよう」と挨拶をすると、クラス中から声がかけられた。「おはよう、田河君!よかった学校来れたんだね!」「たくよー、心配すんじゃねぇか。まぁ、五十嵐がいるから大丈夫だとは思ったけどよ。」「心配かけて悪い。情けないところを見せたみたいで...」オレが言葉を続けようとすると叶弥の手がオレの口を塞いだ。「おい、京。情けないなんて事ねぇんだから、いらん事言うんじゃねぇよ。」「そうだぜ田河。大事なクラスメイトなんだから心配して当然だぞ?」「...そっか。ありがとう。」オレが笑みを浮かべお礼を言うと、声をかけてくれたクラスメイトは何故か顔を赤らめた。オレはそれに疑問を持ったが、その瞬間、叶弥の手がオレの顔を覆った。「ブッ!叶弥!何すんだよ。前見えねぇだろ!」「可愛いお前が悪い。」「ハァ?!バッ、可愛いとかねぇだろ!」「こういうやり取りを見てると、番犬って言うよりチワワみたいに見えてくるね(笑)」クラスメイトに"チワワ"と呼ばれてしまい、オレの覇気は地へと沈んでいった。「...チワワはねぇだろ...。」「ハハッ!言い得てんじゃねぇか(笑)」「わーらーうーなー!」クラス中が笑いに包まれていると、チャイムが鳴り、担任の大森が「賑やかだなぁ」と言いながら入ってきた。大森はオレを見ると安心したように笑い、「出席取るぞー」と言い教壇に立つのだった。こうして今日も騒がしい学校生活が
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: episode22
翌朝、オレは息苦しさで目を覚ました。上体を上げようとすると、オレの腹に腕を回して抱き着いて眠っている叶弥の姿がそこにあった。オレはため息をつきながら叶弥の頭を思いっきりひっぱたいた。「いっ...てぇ...」「起きろバカ」叶弥は頭をおさえながら身体を起こしたかと思うと、寝ぼけているのかオレの顔にキスをしまくってきた。「ちょ...フフッ...くすぐったい」「ハヨォー、京...」「フフッ、おはよう叶弥」オレはベッドを下りると制服に着替えてキッチンへ。叶弥は自室へと戻って行った。キッチンへと入ると、朝飯の支度を始めようとしている若衆数人がいた。「あ!おはようございます京司さん!」「おはよう。悪い遅くなって。」「いえ!これからのところっスよ!」そんなやり取りをしながら、オレは若衆の軽口を笑い聞きながら朝飯と弁当の支度を始めた。すると、珍しく叶弥がキッチンへ姿を現した。かと思うと、オレの腰を抱きながら味見を要求してきた。仕方ないので、弁当に詰めようとしていた玉子焼きを一切れ食べさせた。すると満足したのか、オレの首筋にキスを落とし、「ごっそーさん」と言ってキッチンを後にした。一連の流れを見てしまっていた若衆共は口をあんぐりと開け、プルプルと震え始めた。「け...京司さんが拒絶しない...だと?!」「い、一体どういう事ッスか!京司さん!」「...ウルセェ...」コイツ等がいることを頭から離してしまっていたため、オレは赤面するしかなかった。理由を話さなかったせいか、無言は肯定と捉えられたようで、キッチンは阿鼻叫喚となった。「いつ?!いつからッスか?!」「...一体なんの事だかサッパリデス。」「京司さぁん...!」キッチンだけだったのが、気がつけば屋敷中に騒ぎが広がり、果てには凛太朗さんにまで話しが行ってしまった。凛太朗さんは「やっとくっついたのかぁ」と笑いながら居間の席に腰を下ろした。そして当の本人である叶弥はというと、デカいあくびをしながらメシが運ばれてくるのを待っている。高校に上がってから、コイツのせいで騒がれる事が増えた気がするとオレは頭を抱えた。そうして本日の朝飯が始まるのであった。騒がしい朝飯が終わり、オレと叶弥は学校へと登校をし始めた。「お前なぁ、アイツ等の前でくっつくのはやめろよ?」「あ?別にいいじゃねぇか。オレのなんだし。
Last Updated: 2026-06-29
Chapter: episode21
オレ達は長い時間抱き合っていたらしい。夕飯の支度をしなきゃなかなかったのに叶弥が離してくれなかったのだ。しばらく経ってから、部屋のドアを叩く音が響いた。「京司さん!若もいますか?夕飯出来たんで呼びに来たんすけど、若、部屋にいなかったんで...」どうやら夕飯はオレ無しで作られたようだった。少し気を使わせたようで申し訳ない。「あぁ、叶弥もこっちにいる。これから行くから先に戻っててくれ。」「わかりました!」呼びに来た若衆の足音が遠ざかるのを聞いて、オレは叶弥から身体を離そうとする。しかし、叶弥の腕の力が弱まることはなかった。「オイ...いい加減に...」オレが言葉を続けようとすると叶弥はオレの首筋に顔を埋め力強く、しかし甘く噛み付いた。そしてその後続けてチリっと吸い付いたのだった。「ちょ...叶弥、お前まさか...」「いいだろ、これくらい。正式にオレのモンになったんだから見せつけてやりてぇんだよ。」「...クソッ」オレはなんだか腹が立ち噛み付くようにキスをした。そしたら、叶弥はハトが豆鉄砲でもくらったかのように目を見開いた。しかしそれも一瞬で叶弥の舌がオレの口をこじ開けて侵入してきた。「あ、ん...ふ...」自分の甘い吐息なんて聞けたもんじゃないが、溢れるものだから仕方がない。唾液が顎をつたったのを叶弥が舐め取り、口が離される。途端、おれは自分がした事が恥ずかしくなり、さっさとベッドから立ち上がる。「ホラ!夕飯行くぞ!」「ハイハイ。京チャンはせっかちですねぇ。...あ、痕消えたら絶対またつけるからな。」ふざけた口調から腹黒い口調に変わったのにブルってしまったが気づかないフリをする。「今日は京のメシじゃねぇのか...」「仕方ねぇだろ。寝ちまったんだから。」軽口を叩きあいながら広間へ向かう。大体のヤツらが揃っていて、待たせてしまっていた事に申し訳なく思いながら席に着く。そして全員が揃ったのを確認して凛太朗さんが音頭をとりいつもどおりの賑やかな夕飯が始まった。「アレ?京司さん、虫刺されっすか?」「え?」「いや、首筋が赤く...」オレの隣に座ったヤツから小声で指摘されオレはバッと首を隠してしまった。「そ、そうそう!虫刺されだから!」オレが赤面しながら言うと、逆隣に座った叶弥がニヤニヤし始めたのでオレはヤツの胸板に裏拳をお見舞いし
Last Updated: 2026-06-28
Chapter: episode20
どのくらい眠っていただろうか。部屋が薄暗くなっていた。時間を見ようとしたが、ガッチリした腕に抱きしめられていて身体が思うように動かせない。首筋には叶弥の寝息が感じられてくすぐったい。夕食の支度をさなければならないので、オレは叶弥に声をかけた。「おい。叶弥起きろ。もう夕方だぞ。」「んー...京がチューしてくれたら起きられるかも。」「...何をふざけたことぬかしてるんだ。いい加減にしろ。」オレは軽く叶弥の頭をこずく。すると力の込められていた腕が緩められたため、オレは上体を起こした。オレに続いて叶弥も起き上がりオレを力強く抱きしめたと思ったら首筋にキスをしてきた。「...オイ。そういうのは恋人作ってやれ。」「...ハ?なに。お前、オレが好きでもねぇヤツにキスするとでも思ってんの?誰彼構わずって?」「叶弥...?何、怖えよ...。だってお前オレに好きだとかなんだとか言ったことねぇじゃねえか。」オレは叶弥がキスしたり抱きついてきたりするのは、幼馴染みの延長線だったり、落ち着かせようとするためだと思っていた。それ以外の何物でもないと。いつも身近にいるせいで距離感がバグってるだけかと...「あんだけ熱い言葉投げつけといて、お前以外に目を向けろって?お前はそれで良いわけ?オレは絶対お前以外の人間はいらねぇよ。お前はオレので、オレはお前の物なんだよ。...好きなんだよ。出会った時からずっと...愛してんだ...。」熱烈な告白にオレは顔が熱くなり下を向いてしまう。しかし、叶弥はオレの顎を持ち上を向かせて自身と無理矢理目線を合わせさせる。叶弥の目は熱を帯びていて見つめられるとこちらが恥ずかしくなる。しかし、叶弥は目線をそらすことはさせずにいる。「...京司。お前は?お前は違うのか...?あとどれくらい示せばオレを見てくれる?」「...オレは...よくわからない。...けど、お前が他のヤツといるのを見るのは嫌だ...」オレは叶弥のシャツを握りながら今のオレの気持ちを伝えた。「...お前、それが"好き"っていう感情じゃねーの?しかも独占欲もあるみたいじゃねぇか。」先程まで怖い雰囲気を出していた叶弥だが、おれの言葉を聞き嬉しそうな笑みを浮かべた。「お前が不安なら何度だって言ってやる。オレは、五十嵐 叶弥は田河 京司を愛してる。」「...オレも。オレも愛してる
Last Updated: 2026-06-27
Chapter: episode19
薄暗い部屋の中、一人の青年が壁に向かってぶつぶつと呟いていた。彼の視線の先には一人の青年が写った写真が壁一面に広がっていた。「ハァ、ハァ...京司君...また会えたね...もしかして僕に会いたくてこの学校に来てくれたのかな...?中学の頃は無理矢理引き裂かれてしまったけれど...まるで僕たちはロミオとジュリエットだね...。でも、もう君と離れる事はしないよ...」そう言いながら彼、"湊 友樹"は二枚の写真を手に取り口付けをする。そこに写るのは中学の頃と今現在の高校の制服に身を包む京司の姿であった。「昔は愛らしくて仕方なかったけれど、君はどんどんキレイになっていくね...。今じゃ大人の色気まで...ダメだよ京司君...僕以外にそんな姿を晒しちゃ...。それにしても、五十嵐 叶弥...未だに僕の京司君の傍にいるとは...憎らしい...!!」彼はそう言うと、写真に写る叶弥の顔に画鋲を突き刺した。「あぁ...早く君をこの部屋に囲ってしまいたいよ...この部屋は僕と君の為に作らせた愛の巣だよ?君も僕に攫ってほしいんだろう...?」彼はねっとりとした視線を壁一面の京司に向けた。「待っててね...僕のジュリエット...」本当は叶弥を自室へ戻すべきなのだろうけれど、オレはなかなか叶弥に握られた手を振りほどく事が出来ずにいた。「京?どうした?」「...叶弥は部屋に戻るのか...?」オレの言葉に叶弥はしばらく固まっていたが、フッと笑みを零し握っていたオレの手を離して頬へとあてがった。「京が傍にいろって言うなら、傍にいてやるよ。昔みたいに一緒に寝てやろーか?なーんて...」叶弥がケラケラと笑いながらふざけて言ったのだろうけど、オレは顔を赤くしながら頬に当てられた叶弥の手に自分の手を重ねた。「それでいい...それでいいから今日は一人にしなでくれ...」「...昔みたいにくっついて寝ていいんか?」叶弥の問いかけに小さく頷いた。「しゃーねぇな。生殺しだが一緒に寝てやるよ。まだ昼間だし軽く昼寝でもするか。」叶弥はそう言うとベッドに上がってきて、オレを抱きしめる形で横になった。同じような生活を送っていると言うのにガタイのいい身体が羨ましく思えた。そして筋肉の付かない自分の身体を恨めしく思った。
Last Updated: 2026-06-26
Chapter: episode18
オレと叶弥は授業に出る事なく、迎えに来た車に乗り帰路へとついた。叶弥は車内にいる間、ずっとオレの手を握って安心させようとしてくれた。車が組へと着くと、叶弥はオレの肩を抱きながら屋敷の中へと入っていった。連絡を入れたお陰か、若衆は離れたところから心配の視線を送り静かに見守ってくれていた。オレの部屋へと着くと、叶弥はオレをベッドに座らせ、叶弥はオレの隣に腰を下ろした。「京、大丈夫か?少しは落ち着いたか?」「あ、あぁ...悪い。もう大丈夫だ。」「...ウソつけ。まだ顔色悪いぞ。」そう言うと叶弥はオレの頬へと手を当てた。そしてオレの額に自身の額を当てジッと見つめてきた。「...叶弥...?」「大丈夫だ京。お前はオレの隣にいればいい。オレがお前を守るから。」そう言うと叶弥はオレに深く口づけてきた。「んぅ...ふっ...あっ、ハァ...」「けい...京司...」オレは息苦しくなったのと気恥しさ、...何より叶弥の体温を感じたくて、腕を彼の背に回した。「ハァ...京司?」「オ、オレも...オレも叶弥の隣にいたい。...これからずっと...」オレがそう言うと叶弥は顔を真っ赤にしオレを見つめてきた。「け、京司?」「もし、許されるなら...オレはお前の隣から離れる事はしたくない。...ダメか...?」「!だ、ダメじゃねぇ!ダメなわけあるか!」叶弥はそう言うと、オレを力いっぱい抱きしめた。その温かさにオレは心が安心していくのを感じ、叶弥を抱きしめ返した。「叶弥、お前はオレだけを見て、オレだけを守ってくれ。...その代わりにオレの全てをお前にやるから。」オレはそう言うと叶弥の手に口づけた。これはオレなりの誓いだ。叶弥はその様子を黙って見ていたかと思ったら、オレの口づけた手に笑みを浮かべながら口づけた。「...これはオレらなりの盃だな。」そう言われると、オレは自分のした事が急に恥ずかしくなり、ベッドにうっつぶした。叶弥はそんな様子を見て、ケラケラ笑いながら手を握り、オレの頭に口づけを送ってきたのであった。
Last Updated: 2026-06-25
前世で悲劇の恋をしたら、現世で義兄弟として再会しました。

前世で悲劇の恋をしたら、現世で義兄弟として再会しました。

前世で敵国同士の王子だったロメオとジュリアス。二人は戦争の中、国境線のルメリア川で密会をして「来世で共にあろう」と誓い、ジュリアスの持ってきた毒により心中する。 現世の日本に生まれ変わったロメオ、"蔵之 楼"とジュリアス、"雛形 璃亜"。二人は接点はないが同じクラスで、登校中、璃亜が痴漢にあっているのを楼が助ける。そしてその夜、互いの親から「明日の土曜日、再婚相手を紹介する」と告げられ、実際に会ってみるとクラスメイト出会ったことが発覚する。 ある日学校の階段で不慮の事故により二人揃って落下した際、走馬灯のように前世の記憶が蘇ってーーー。
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Chapter: 夢見て、貴方に逢いたい
美容室では楼の監視の元、楼のプロデュースでのカットになった。璃亜はここまでサッパリさせたのは久しぶりだ。と思いながら、美容室を後にした。「明日からはまた学校かぁ。...なんか今日一日がジェットコースターの様だったよ。」「父さん達も明日籍入れるって言ってた。これで明日から正式な兄弟だね。」「なんか、あっという間だったなぁ...。」すると璃亜は楼に向かって、「今日はありがとう。」と照れ臭そうに言った。「なぁに?急に。そんな顔を真っ赤にしちゃって(笑)」「な、なんでもない!!じゃあ、また明日!学校で!!」璃亜は楼からの返事を待たずに走って帰路へと着いた。そして、今の自宅であるアパートに着くと、丁度瑠々花も帰って来ていたようで二人で夕飯の支度をしながら今日あった事を報告し合った。「そういえば、璃亜ちゃん、髪切ったのね!かっこよくなったじゃない!」「こ、これは...楼君に押し切られて...。」「うんうん!いい関係を築けてるみたいでよかったわ。」夕飯を食べ、風呂へと入り、自室へと戻った璃亜は、なんだか明日からどんな顔で楼と学校で会えばいいのだろうか、と考えていた。そして、ベッドの上でゴロゴロと転がっているうちに、あぁ、なんだか眠いなぁ。今日はもう寝てしまおうか。と思い始めた。すると、途端にうとうととし始めてきた。「___やめてください、兄様!」「お前はオレ達の物だ!___になんか渡すものか!!」「ごめんなさい。___様。こんなに穢れてしまって...。」これは、一体何の夢だ?なんでこんなに切ない気持ちになるのだろう。"ピピピ、ピピピ"とアラームが鳴った。目には涙が溜まっていた。...まただ。またあの夢。最近よく見る夢だ。誰かに抱かれ、別の誰かを想う。そんな夢。そして、その夢を見ると無性に楼の顔が見たくなるのだ。何故なのか。この夢には楼も関係しているのか?そんな事を考えていると、時間になっても起きてこない璃亜を起こしに瑠々花が部屋までやって来た。「璃亜ちゃん?起きてる?」「母さん、ごめん!今起きたから大丈夫だよ。先にご飯食べてて!」璃亜は急いで支度を始めた。夢の事はすっかり忘れて。時間はもうかなりヤバい。「あ、璃亜をちゃん!来週の土曜日に引っ越しになるから、ちゃんと準備しておきなさいね!」「分かった!時間ないし、トーストだけ貰ってくね!行
Last Updated: 2026-06-30
Chapter: 出会いの場
さて、楼の変態臭さはおいておいて、支度を済ませた二人はカフェへと向かって歩いていた。楼は璃亜の手を取ると、握り込んできた。「ちょ、っと!楼君?!なんで手...。」「いいじゃない。兄弟なんだし。」「...義理の、だけどね?」どうも璃亜は楼にペースを持っていかれやすい。そして、なかなか楼からペースを奪うことが出来ない。それが何だか悔しくて...。璃亜は思い切って楼の手を握り返した。そんな璃亜の行動に楼はビックリしたが、顔を真っ赤にしている璃亜に愛おしさが増してきてついつい抱きしめてしまった。「ぶっ!!急になんなのさ!!」「いや...、あまりにも愛おしくて...。」「どんな理由...。とりあえず離して!カフェ行くんでしょう?」璃亜に怒られてシュンとなっている楼はまるで叱られた子犬の様。自分よりデカい男に抱く感想ではないが、ついつい撫でてしまいたくなる。「...早く行くよ...お兄ちゃん。」璃亜はぼそりと言うと、楼は顔を勢いよく上げ、顔をパァっと明るくしてみせた。「璃亜!もう一回!もう一回お願いします!」「ヤダよ!ほら、行くよ!美容室の予約もあるんでしょう?」ちょっときつめに返したつもりだったが、璃亜の"お兄ちゃん"呼びに歓喜していて楼は天を仰いでいた。璃亜は「まったく。仕方ないなぁ」と言うと、今度は璃亜から手を握って、走り出した。「ちょ、ちょっと!璃亜?!」「...」璃亜は赤くなった自身の顔を見られたくなくて真っすぐ前を向いたまま走り続けた。カフェに着く頃には二人とも息たえだえになっていた。「ハァハァ...つ、着いた。」「な、なんで走ったの?...もう喉カラカラ。」「べ、別に特に理由は無い...と思う...。」「なぁに、それ(笑)」璃亜の答えに楼は笑うと、息を整えカフェの中へと入って行った。「いらっしゃいませ!...あれ?楼君じゃないか!今日は...お友達と?」「こんにちは、店長さん。彼は瑠々花さんの息子さんだよ。」「!君が!てことは...。」「そ。オレの義理の兄弟。」璃亜は会話に置き去りにされていると、楼に「璃亜」と呼ばれた。「この人はこのカフェの店長さんの田村さん。ちなみにここが瑠々花さんの職場で、父さんとの出会いの場ね。」「は、初めまして!母がいつもお世話になっております。」「瑠々花さんの言う通り、礼儀の良
Last Updated: 2026-06-29
Chapter: お兄ちゃん
朝食はクロワッサンにサラダ、コーンスープにスクランブルエッグと朝から美味しそうなメニューであった。その朝食を見た瞬間、璃亜のお腹がグーっと鳴った。「あ!いや...ごめん。」「ハハッ。いいよ。お腹が空くのは良い事だから。さ、食べよう?今日はオレも部活無いしゆっくり出来るよ。」「あ!たしか明日数学の小テストあるんじゃなかったっけ?!」「そう言えばそんな気がする。オレの苦手な範囲なんだよねぇ...」珍しく弱気になった楼がサラダをフォークでプスプスとつついている。そんな様子を見て、璃亜は思わずクスリと笑ってしまった。そこにはキラキラでかっこいい"蔵之 楼"の姿はなかった。「いいよ。僕でよければ教えてあげるよ?」「え!いいの?!助かる!!」「教えることで、僕も復習が出来るからね。」そうして朝食を終えると、今度は璃亜が「洗い物は僕にさせて?」と言って洗い物を担う事になった。洗い物も終えリビングで小テストの勉強をする。楼も頭が良いので、ものの一時間で復習は終わってしまった。することも特になくなってしまった二人は楼の提案により、気分転換にカフェに行く事にした。璃亜の着替えは一先ず楼の服を借りることにした。体格差がある為、楼のおさがりを着る事になったのだが。楼は着替え終えた璃亜を鏡の前に座らせると、髪をハーフアップにセットした。「璃亜はお母さん似だね。」「よく言われるよ。自分じゃ分からないけど。」「ヨシ出来た」というと髪が邪魔ではなくなった。「髪切らないの?」「切りに行く時間が惜しくって...」「そうだ!カフェ行った後美容室に行こう!今からいける所は...」楼は璃亜の意見も聞かず、どんどん話しを進めていく。美容室の予約が出来たのか、楼はホクホク顔である。「イメチェンした璃亜を一番に見られるなんて嬉しいな♪」「ま、待って!今更だけど、僕行くなんて言ってない...!」璃亜は楼の行動力に度肝を抜いた。陰キャにとって美容室はハードルが高すぎる。璃亜はそう言うが、楼は聞く耳持たずである。もうイメチェンした璃亜に心を持っていかれている。「さ、行くよ璃亜。」「ちょ、ちょっと楼君!」璃亜が楼を呼び止めたその時だった。ふと、楼は立ち止まり、璃亜に向き合うと、真剣な眼差しを向けてきた。「璃亜。誕生日は?」「え?12月。12月の24日だけど...。」「ク
Last Updated: 2026-06-28
Chapter: これは一体誰の夢?
璃亜が風呂から上がると、楼がソファーで横になっていた。寝息がスー、スーと聞こえてくる。それもそうだ。今日も部活があったのだから、疲れていたのだろう。先に風呂を貰って悪かったな。そう思いながらソファーへと近づいていき、楼の様子を見る。すると、楼は涙を流していた。これは起こした方がいいか?!とわたわたしていると、小声で何かを呟いているのが聞こえた。「___ス。」「え?」「ジュリ...アス...。」その名を聞いた瞬間、璃亜の心臓がドクンと音を立てた。そして、強い頭痛に襲われる。なんだ、この感覚は。身体が何かを思い出せと訴えかけてきているようだ。璃亜は思はずその場にしゃがみ込み、頭を押さえる。そして頭痛に耐え切れずそのまま気を失ってしまった。「...ん。ここは?」たしかソファーで寝ていた楼に近づいた時に気を失った気がする。どうしてかは思い出せない。ここはどこだ?ベッドの上?「!璃亜!目を覚ましたんだね!良かった...。」「ごめん。なんでか気を失っていたみたい。迷惑かけちゃったね。」「迷惑なんかじゃないよ。でも一体何があったんだろうね?」「...そう言えば楼君の寝言を聞いて...」「オレの?」その寝言もなんだったかは思い出せない。考えれば考える程分からなくなってくる。楼はそんな璃亜の肩をそっと抱くと落ち着かせるようにそばに座った。「無理に思い出す事はないよ?きっとその時が来れば思い出せる。大丈夫。安心して今日はお休み?」楼は璃亜をそっとベッドへ横たわらせると、璃亜の目に手を当てた。その手の温度が温かくて、なんだか懐かしくて。そのまま璃亜は夢の世界へと飛び込んでいった。その時一瞬見えた楼の顔は優しくも、悲しげな顔をしていた。どうして、そんな顔をするんですか?私達はもう離れなくていいんですよ?___あれ?僕は何を思っているんだ?「おやすみ、璃亜。よい夢を。」悲しい悲しい夢を見た。愛する二人が引き裂かれる夢を。結局、二人は毒を飲んで、死を選んだ。「来世のオレ達に乾杯。」「来世こそは貴方と共に。乾杯。」そこで世界は歪む。あぁ。今度こそは二人で幸せになりましょう___様。目が覚めると璃亜は楼に抱きしめられていた。璃亜はそれに理解するのに数秒かかった。意識が覚醒すると璃亜は大声をあげてベッドから転げ落ちた。「?!璃亜?!どうしたの?!」「楼君
Last Updated: 2026-06-27
Chapter: 愛を乞う。片想い
タクシーが着いた先は、大きな一軒家であった。こんなところに楼は住んでいたのか。...一体父親になる友成は何者なのであろうか。璃亜が呆けていると楼が「そんなところで突っ立てないでおいで。」と呼んできた。「今度から璃亜も此処に住むんだからね?」「...友成さんて何者なの?こんな豪邸...。」「一応人気作家、かな?璃亜も学校で読んでたよ?"倉人 実里"。」「え、えぇ?!僕大ファンなんだけど!!今日も本屋で新作買ったんだよ?!"黒い海へ"!!」璃亜はテンションが爆上げになり、大興奮していた。そんな大作家さんがこれから自分の父親になるなんて...。あれ?でもどうやって母である瑠々花と知り合ったのか?不思議に思っていると、楼から家の中に入るように促され、玄関をくぐった。「ね、ねぇ。楼君はうちの母と友成さんがどこで知り合ったか知ってるの?」「ん?たしか...、カフェで原稿をやっていた時に接客してくれた瑠々花さんに一目惚れしたとかなんとか...。」たしかに、瑠々花の化粧が急に気合が入ったものになったのには気がついていた。そういう事だったってわけか。そうしていると、楼からリビングのソファーに座るように誘われた。そのままソファーに座ると、楼は満足し、キッチンへと姿を消し、お湯を沸かし始めた。璃亜はなんだか急に緊張してきてカチンコチンになってしまった。そんな様子を見て、楼はクスリと笑うと璃亜の隣に腰を下ろした。「...もしかして緊張してる?」「!ろ、楼君近い...!」そしてどんどんと近寄って来ると、体勢は楼が璃亜を押し倒す形になっていた。楼はネクタイを緩めると、顔を璃亜へと近づけた。キスをする寸前でやかんのピーっというお湯が沸いた音がした。楼は残念そうに起き上がると再びキッチンへと向かった。璃亜は頭がパンクしそうであった。どうして、楼が自分なんかにキスをしようとした?!もしかして揶揄われてる?!そんな風に考えていると、楼が紅茶をいれて戻ってきた。「温かい紅茶でも飲んで、ゆっくりしよう?あ、お風呂沸かしてくる。入るでしょ?」「う、うん。そうしようかな。」璃亜は楼の淹れた紅茶に口をつける。フルーティーな香りが鼻孔ををくすぐる。風味もとても好みだ。「楼君、この紅茶凄く美味しいよ。」「ホント?良かった。オレのお気に入りなんだ。こう見えて紅茶にはうるさいからね(笑
Last Updated: 2026-06-26
Chapter: 変わりゆく関係
そして、いよいよやって来た食事会。タクシーに乗ってやって来たのは、ここら辺では有名な高級レストラン。璃亜は「金持ちだとは思ってたけれど、ここまでとは...。僕、場違いじゃない?」と思うのだった。レストランの中に入ると、一人の男性が母に近寄ってきた。「瑠々花、待っていたよ。...璃亜君、だね?初めまして。私は君のお母さんとお付き合いしている"蔵之 友成"です。今回はお母さんとの再婚を許してもらいたくこの場を設けさせてもらったよ。」「...初めまして。雛形 璃亜です。この服ありがとうございました。」「いやいや、気にしないで。...うん、よく似合っているよ。」...ん?今"蔵之"って言ったか?いやいや。そんなまさか、ね。「席で私の息子も待っているよ。きっと璃亜君、ビックリするだろうなぁ。」「え?それって...」「雛形!」「え、えぇ?!蔵之君?!」"そんなまさか"はドンピシャで当たっていた。瑠々花の再婚相手は楼の父親だったらしい。まさか、楼と義理の兄弟になる事になるとは...。もしかして、ここ最近の楼の行動の理由は...。「あ、別に雛形と兄弟になるから仲良くし始めたわけじゃないからね?もともと仲良くしたかったんだけどタイミングが合わなくって...。そんなときに父さんから再婚話を聞いて。」「そ、そうだったんだ。」「もう!二人とも固いわよ?兄弟になるんだからお互い名前で呼ばないと!」瑠々花からの無茶ぶりに璃亜と楼は顔を見合わせると、二人は顔を真っ赤にして固まった。「...まるでお前たちの見合いのようじゃないか。」「ホントね。見てるこっちが恥ずかしくなってくるわ。」「さぁ、お食事にしますよ。」と瑠々花から言われ全員が席に着く。そして楽しいお食事会...となったのは二人の親だけで、璃亜と楼は少し緊張していた。ほどなくして、食事が終わると、瑠々花と友成は「高級ホテルのスウィートルームに泊まるの♡」と言って、璃亜と楼の二人を置いて去って行った。「...なんか嵐みたいな時間だったな。」「だね。僕らこれからどうすればいいんだろう?」「...もし、雛形が嫌じゃなければオレんち来る?」「え?いいの?」璃亜にとっては思ってもみない申し出で、このまま一人寂しく帰るよりはいいかな?と思い、楼からの申し出を快諾した。友達の家...に行くなんていつぶりであろう
Last Updated: 2026-06-25
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