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別れのカウントダウン

別れのカウントダウン

Par:  涼木Complété
Langue: Japanese
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私・唐沢雫(からざわ しずく)には、人の心が離れていくまでのカウントダウンが見える。 父の頭上にあるカウントダウンがゼロになった日、彼は離婚協議書を投げ捨て、私と母を捨てた。 親友の頭上のカウントダウンがゼロになった日、彼女はついに決心して、あのクズ彼氏を振った。 私は、夫である成宮隼一(なりみや しゅんいち)の頭上にカウントダウンが見えることをずっと恐れていた。 だが幸いなことに、結婚して七年、彼の頭上には何一つ浮かんでいなかった。 私は、こんないい男と結婚できた自分の幸運を何度も噛み締めていた。 先月、彼が私の職場まで迎えに来てくれるまでは。 ふと顔を上げた瞬間、真っ赤な文字が目に突き刺さった。 【702日14時間22分】 二年にすら満たない。 心臓を鷲掴みにされたようだった。私は狂ったようにその答えを探し始めた。 私が何か間違ったことをしたのだろうか。それとも、彼が……心変わりしたのだろうか。 あの大雨の日、会社の入っているオフィスビルロビーで、彼の部下であるインターン生の小西綾(こにし あや)に出くわすまでは。 彼女は全身ずぶ濡れだったが、とても無邪気な笑顔を浮かべていた。 隼一はハンカチを一枚差し出したが、その顔には何の感情の揺れも見えなかった。 だがまさにその一秒、カウントダウンが猛烈な勢いで変動したのだ。 【327日4時間47分】 一瞬にして三百日以上も減ってしまった。 耳を劈くような激しい雨音が響き渡る。 私は悟った。原因はここにあったのだと。

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Chapitre 1

第1話

私・唐沢雫(からざわ しずく)には、人の心が離れていくまでのカウントダウンが見える。

父の頭上にあるカウントダウンがゼロになった日、彼は離婚協議書を投げ捨て、私と母を捨てた。

親友の頭上のカウントダウンがゼロになった日、彼女はついに決心して、あのクズ彼氏を振った。

私は、夫である成宮隼一(なりみや しゅんいち)の頭上にカウントダウンが見えることをずっと恐れていた。

だが幸いなことに、結婚して七年、彼の頭上には何一つ浮かんでいなかった。

私は、こんないい男と結婚できた自分の幸運を何度も噛み締めていた。

先月、彼が私の職場まで迎えに来てくれるまでは。

ふと顔を上げた瞬間、真っ赤な文字が目に突き刺さった。

【702日14時間22分】

二年にすら満たない。

心臓を鷲掴みにされたようだった。私は狂ったようにその答えを探し始めた。

私が何か間違ったことをしたのだろうか。それとも、彼が……心変わりしたのだろうか。

あの大雨の日、会社の入っているオフィスビルロビーで、彼の部下であるインターン生の小西綾(こにし あや)に出くわすまでは。

彼女は全身ずぶ濡れだったが、とても無邪気な笑顔を浮かべていた。

隼一はハンカチを一枚差し出したが、その顔には何の感情の揺れも見えなかった。

だがまさにその一秒、カウントダウンが猛烈な勢いで変動したのだ。

【327日4時間47分】

一瞬にして三百日以上も減ってしまった。

耳を劈くような激しい雨音が響き渡る。

私は悟った。原因はここにあったのだと。

「成宮社長、奥さん、本当にすみません。こんな大雨で、どうしてもタクシーが捕まらなくて……」

車のドアが開く。

風が雨を巻き込みながら車内へ吹き込み、本革シートを濡らした。

小西綾(こにし あや)は傘を閉じ、全身を雨でぐっしょりと濡らしたまま、後部座席へ滑り込む。

白いシフォンブラウスは肌にぴたりと張りつき、濡れた髪からは水滴がぽたぽたと滴り落ちていた。

見るからに痛々しい姿だった。

それでも、彼女の顔には明るい笑みが浮かんでいる。

隼一は、ハンドルに手を添えたまま振り向かなかった。

ただ、横の収納ボックスからハンカチを数枚取り出し、私の肩越しに後部座席へ差し出した。

「拭きなよ。風邪ひかないように」

その声は穏やかで、いつもの彼らしい気遣いに満ちていた。

綾はハンカチを受け取る際、何気ない仕草を装って、そっと隼一の手の甲に指先を触れさせた。

隼一も、とくに避けようとはしなかった。

「ありがとうございます、成宮社長。やっぱり社長は、私たちみたいな下っ端社員のことを一番気にかけてくださるんですね」

綾はにこにこと笑いながらそう言った。

その口ぶりには、遠慮の欠片もない。

隼一は手を引っ込めると、指先でハンドルを軽く二度なぞった。

「女の子が一人で営業回りをするのは大変だろうからね」

私は助手席に座ったまま、フロントガラス越しに降り続く激しい雨を静かに見つめていた。

ワイパーが忙しなく左右へ動き、幾重にも重なった雨の膜を拭い去っていった。

隼一が「大変だろう」と口にした、その瞬間だった。

彼の頭上に浮かぶ真っ赤な数字が、再び歪む。

【327日4時間47分】

赤い光が一度だけ明滅し――

【289日10時間12分】へと変わった。

たった一言。何気ないその共感だけで。

彼の心が私から離れていくまでの時間は、また一か月以上も縮まってしまった。

私はそっと目を閉じ、胃の奥が小さく痙攣するのを感じた。

「少しエアコンが効きすぎてるかな?」

隼一が不意に口を開いた。

私はてっきり、自分に向けられた言葉だと思った。

「大丈夫」と答えようとした、その時。

後部座席から、綾がくしゃみをした。

「ちょっと寒くて……服がびしょ濡れなので、風が当たると冷えちゃって」

隼一の視線がセンターコンソールへ向かう。

彼はエアコンのダイヤルに手を伸ばし、設定温度を三度上げた。

そして、その視線は私の膝に掛けられたカシミヤのブランケットへと落ちる。

それは数日前、私が使うために車へ置いておいたものだった。

「雫」

隼一が私の名前を呼んだ。

「そのブランケット、綾に貸してあげてくれないか。寒そうだから」

私はゆっくりと顔を向け、彼を見た。

薄暗い車内を、街灯の光と影が次々と流れていき、彼の整った横顔をかすめていく。

その表情はあまりにも自然だった。

まるで、ごく当たり前のお願いをしているだけと言わんばかりに。

下心など一切感じさせず、どこまでも堂々としている。

これが隼一だ。

誰もが称賛する、非の打ちどころのない理想の男。

穏やかで、思いやりがあって、いつだって人に惜しみなく優しさを向ける。

その善意が、時に腹立たしいほどに。

私は何も言わず、膝の上のカシミヤのブランケットを手に取ると、そのまま後ろへ差し出した。

「ありがとうございます、奥さん!」

綾は受け取ると、遠慮する様子もなく全身をすっぽりと包み込んだ。

「奥さんって本当にお優しいんですね。成宮社長がこんな素敵な奥さんと結婚できたなんて、本当に幸せ者です」

そう言って鼻をすすり、満足そうに小さく息をついた。

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第1話
私・唐沢雫(からざわ しずく)には、人の心が離れていくまでのカウントダウンが見える。父の頭上にあるカウントダウンがゼロになった日、彼は離婚協議書を投げ捨て、私と母を捨てた。親友の頭上のカウントダウンがゼロになった日、彼女はついに決心して、あのクズ彼氏を振った。私は、夫である成宮隼一(なりみや しゅんいち)の頭上にカウントダウンが見えることをずっと恐れていた。だが幸いなことに、結婚して七年、彼の頭上には何一つ浮かんでいなかった。私は、こんないい男と結婚できた自分の幸運を何度も噛み締めていた。先月、彼が私の職場まで迎えに来てくれるまでは。ふと顔を上げた瞬間、真っ赤な文字が目に突き刺さった。【702日14時間22分】二年にすら満たない。心臓を鷲掴みにされたようだった。私は狂ったようにその答えを探し始めた。私が何か間違ったことをしたのだろうか。それとも、彼が……心変わりしたのだろうか。あの大雨の日、会社の入っているオフィスビルロビーで、彼の部下であるインターン生の小西綾(こにし あや)に出くわすまでは。彼女は全身ずぶ濡れだったが、とても無邪気な笑顔を浮かべていた。隼一はハンカチを一枚差し出したが、その顔には何の感情の揺れも見えなかった。だがまさにその一秒、カウントダウンが猛烈な勢いで変動したのだ。【327日4時間47分】一瞬にして三百日以上も減ってしまった。耳を劈くような激しい雨音が響き渡る。私は悟った。原因はここにあったのだと。「成宮社長、奥さん、本当にすみません。こんな大雨で、どうしてもタクシーが捕まらなくて……」車のドアが開く。風が雨を巻き込みながら車内へ吹き込み、本革シートを濡らした。小西綾(こにし あや)は傘を閉じ、全身を雨でぐっしょりと濡らしたまま、後部座席へ滑り込む。白いシフォンブラウスは肌にぴたりと張りつき、濡れた髪からは水滴がぽたぽたと滴り落ちていた。見るからに痛々しい姿だった。それでも、彼女の顔には明るい笑みが浮かんでいる。隼一は、ハンドルに手を添えたまま振り向かなかった。ただ、横の収納ボックスからハンカチを数枚取り出し、私の肩越しに後部座席へ差し出した。「拭きなよ。風邪ひかないように」その声は穏やかで、いつもの彼らしい気遣いに満ちてい
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