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第630話

Author: 雨の若君
司野が千尋を突き飛ばしたその力には、一切の手加減がなかった。

むしろ、鬱積した感情をぶつけるような乱暴ささえあった。

千尋は勢いよくよろめき、そのまま無惨に床へ倒れ込む。

まだ転倒の衝撃から立ち直れないうちに、バタン、と大きな音が響いた。

司野は容赦なくドアを閉め切っていた。

体を強く打ちつけた千尋だったが、全身の痛みよりも、胸の奥の痛みの方がはるかに大きかった。

涙はあっという間に瞳いっぱいに溢れ、やがて頬を伝って零れ落ち、床に散って砕けていく。

物音を聞きつけて駆けつけた森山は、到着するなり、可憐な顔を涙で濡らす千尋の姿を目にした。

森山は横目で、固く閉ざされたドアをちらりと見た。

気の毒ではある。

だが、その姿を哀れむ相手は、もう誰もいなかった。

感情をあらわにする千尋とは対照的に、司野はもっと単純だった。

死人のような顔をして、ただ生気を失っているだけだった。

亘がやって来た時、目にしたのもそんな司野の姿だった。

伸び放題の無精ひげに、皺だらけの服。

そのあまりにひどい有様に、亘は眉をひそめた。

「お前……ずっと風呂にも入ってないのか」

近づく
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