何度か呼び出し音を鳴らして、ようやく電話がつながった。相手が何も言わず、ずっと黙っているのを確認してから、小夜は慎重に尋ねた。「佐々木先生でしょうか。樹の保護者の、高宮小夜です」「……話すべきことは、もう全部話しました。ほかのことは、本当に何も分からないんです」電話の向こうから聞こえてきたのは、ひどく疲労しきった声だった。小夜は一瞬、言葉に詰まった。これほど大きな事件になった以上、優奈はここ数日、何度も同じことを問いただされてきたのだろう。まして長谷川家も柏木家も、一筋縄でいく相手ではない。きっと散々振り回され、責め立てられたはずだ。完全な巻き添えだった。小夜の知る限り、この先生は責任感のある人だった。彼女は心の中でため息をつき、言った。「どうか警戒しないでください。責任を追及したり、先生を責めたりするつもりで電話したわけではありません。ただ、学校での二人の子供の関係がどうだったのか、先生から直接聞きたいんです。もし可能なら、あの日に具体的に何が起きたのかも、もう少し教えていただけませんか」そこで小夜は少し間を置き、続けた。「誰も、こんなことが起きるなんて思っていませんでした。この件の責任を、一人の先生だけが全部背負うべきではありません。停職の件も、私の方でどうにかできないか働きかけてみます」電話の向こうは、やはり黙ったままだった。けれど、通話は切られなかった。小夜も急かさず、静かに待った。……「樹くんと星文くんは、私の見る限り、関係は良かったと思います」長い沈黙のあと、電話口から再び、かすれて疲れた声が聞こえてきた。「星文くんが入学したばかりの頃、きちんと食事が取れていなかったのか、体調を崩したことがありました。その時、保健室へ連れて行ったのは樹くんでしたし、一緒に昼食を食べようと誘ったのも樹くんです……その後も、たまに言い争うことはありましたが、いつも一緒に遊んでいました。樹くんは、確かにわがままで、少し気に障るとすぐ怒るようなところはあります。でも、本質的に悪い子ではありません……あの子がこんなことを起こすなんて、私にも信じられません」優奈は深くため息をついた。あの日は、もう放課後の時間だった。本来なら列に並んで、保護者の迎えを待つはずだったのだ。ところが、あの二人が列を抜け出
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