それは遥生のためってこと?ということは、美琴は遥生のことも気になっているってこと?星乃の中で、収まりかけていた好奇心が、またむくむくと頭をもたげた。律人が軽く咳をすると、星乃はやっと我に返った。振り向くと、ちょうど彼の髪の先から一滴の水が落ちて、胸元にぽたりと落ちるところだった。その雫は、引き締まった胸筋を伝ってゆっくりと流れていく。星乃は一瞬息を飲み、頭の中でつい想像を膨らませてしまった。顔が一気に真っ赤になる。「どうした?そんなに顔赤くして」律人はわざとらしく問いかける。星乃は深呼吸を何度かして、なんとか気持ちを落ち着けようとした。しかし、律人の誘惑するような声に、その防御はあっさり崩されてしまう。頭の中はもうぐちゃぐちゃだ。だめだ。これ以上ここにいたらまずい。相手はあまりにも魅力的で、自分の意志力じゃ、どうにもならない。「着替えて、買い物に行くわ。私は車で待ってる」そう言い捨てると、星乃は足早に外へ向かった。律人は、慌ただしくも落ち着かない足取りで行く彼女を見て、つい口元が緩む。車に戻った星乃は、UMEの業務マニュアルを何度も心の中で唱え、ようやく頭の中の雑念を押さえ込んだ。買い物で食材を揃えた後、星乃は鍋料理用の土鍋もひとつ選んだ。律人の家へ戻ると、二人は一緒にキッチンで食材の下ごしらえを始めた。ちょうど作業の途中でインターホンが鳴り、星乃が玄関へ向かう。ドアを開けると、彩花と遥香が立っていた。星乃はすでに、二人が律人の指示で自分のそばに置かれていたことを知っている。そして遥香もまた、星乃がその事実を知っていると察していた。だからお互い、遠回しなやり取りはやめて率直に話すことにした。彩花は意味ありげに眉を上げ、小声で尋ねた。「どう?もうすぐここに引っ越してくる感じ?」遥香も続けた。「今回の件で、律人さんがあなたをどれだけ大事に思っているかは十分伝わったわ。星乃、このことはそろそろ考えておいたほうがいいと思う」星乃は一瞬、どう説明すればいいのかわからなくなった。今ここに住んでいるのは圭吾の件があったからで、律人が自分を守ろうとしてくれたためだ。危機はひとまず去ったものの、この件について律人から何か話があったわけではない。かといって、自分から切り出すのも少し違う気
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