イソンが弱々しく身を寄せてくると、あずさの胸にはたちまち強い庇護欲が湧き上がった。これまで彼はいつだって自信に満ち、頼もしく振る舞っていた。そんな彼がこのような姿を見せるなんて、原因はどう考えても直哉にある。あずさは冷え切った眼差しで直哉を見据え、イソンを背後にかばうように一歩前へ出た。「直哉、あなた正気?どうしてイソンを殴ろうとするの?」その視線を受けた瞬間、直哉の胸は鋭く抉られたように痛んだ。彼は信じられないものを見るようにあずさを見つめ、怒りのあまり笑いそうになる。「まだ当たってもいないのに、なんで責められなければいけないんだ?お前、変わったな」かつてのあずさは、いつだって彼の後ろを追いかけていた。そんな彼女が、今は別の男を庇うために自分を責めている。正気じゃないのは自分ではなく、あずさの方ではないのか――そう思わずにはいられなかった。直哉は彼女の表情を一瞬たりとも見逃すまいと凝視する。だが、あずさは終始淡々としていた。むしろ煩わしそうに眉をひそめる。「変わった?人なんだから変わるに決まってるでしょう。それに、私たちはもう離婚してる。あなたが私の前に現れる理由なんてないわ。今ごろ怜奈と幸せに過ごしているはずでしょ?プロポーズもしたって聞いたわ。おめでとう。末永くお幸せに」その言葉に、直哉の顔が険しく歪む。「怜奈だと?彼女は怜奈なのか、それとも赤羽花音なのか、お前が一番よく分かってるだろ!どうしてあいつと組んで俺を騙した?俺を弄ぶのがそんなに楽しいのか?それとも、これも新しい作戦か?一度離れて俺に振り向いて欲しいっていう――」彼は怒りで肩を震わせながら続けた。「認めるよ。そのやり方は確かに効いた。だからもう偽物を使って俺を刺激するのはやめろ。今すぐ俺と帰れ。復縁するつもりはないが、埋め合わせならちゃんとする」そう言って、あずさの手を掴もうとした。しかし彼女は迷いなく身を引く。その瞬間、イソンの鋭い目が細められた。彼は直哉の手首を掴み、骨が砕けそうなほど強く握り締める。「黒崎さん。僕のこと、無視しないでくれませんか?本人と恋人である僕の了承もなしに、彼女を連れて行こうとするなんて、無理に決まってるでしょ」「恋人だと?」直哉は鼻で笑った。「冗談はよせ。あずさが愛しているのは――」だが最後
Read more