それは、これまで一度も見たことのない光景だった。最初から最後まで、二人のそばには互いしかいなかった。彼らは幼なじみだった。幼いころから寄り添うように育ち、高校を卒業すると、ごく自然に恋人同士になった。怜司は、千夏の隣に自分以外の男が立つところなど、一度も見たことがなかった。ましてやその男は、大学時代の四年間、何かにつけて張り合ってきた宿敵だった。怜司は唇を真一文字に結んだ。瞳の奥では嫉妬が激しく燃え上がり、目の前の光景を焼き尽くしてしまいそうだった。「千夏、俺と帰ろう。全部、きちんと説明する」彼は千夏をじっと見つめ、手を伸ばして自分のそばへ引き寄せようとした。だが、その前に誠也が立ちはだかった。「南条社長。俺の婚約者に何の用だ?」怜司の体が強張った。視線が、その見慣れているはずなのに、どこか知らない男のように見える顔へ落ちる。たった一目で、胸の内の嫉妬が理性を呑み込もうとした。大学時代から、誠也は何かにつけて怜司と張り合い、どんなことでも彼に勝とうとしていた。それが今では、千夏まで奪おうとしている。しかも、いつだって自分の味方だったはずの千夏は、無意識のうちに誠也の背後へ身を隠していた。その瞳には、彼女自身も気づいていないような信頼が滲んでいた。「婚約者?」怜司は必死に理性を保とうとした。だがその言葉を聞いた途端、こめかみの血管が抑えきれずに浮き上がる。「ふざけるな。千夏は俺の妻だ!」その一言に、会場中がざわめいた。招待客たちは皆、とんでもない修羅場を目の当たりにしたという顔になった。千夏は誠也に申し訳なさそうな視線を向けた。そして怜司へ視線を戻したとき、その表情は冷えきっていた。「怜司、私たちはもう離婚したの」「俺は認めていない」怜司は、千夏がまだ意地を張っているだけだと思い、辛抱強く言い聞かせた。「偽造書類を作るのは犯罪だよ、千夏。俺と帰ろう。茉莉のことを気にしているなら、もう彼女とは会わない。二度と君の前にも現れさせない。それで十分だろう?」千夏は小さく笑った。誠也の背後から一歩前へ出る。誠也の体が、ほんのわずかに止まった。千夏は一歩ずつ、怜司へ近づいていった。怜司の目には、たちまちかすかな光が宿る。誠也を見る目も、嫉妬から挑発へ
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