私と彼の記憶は、最後の雨が止むまで
卒業式が終わるや否や、私は新幹線に五時間揺られ、彼氏に会うため東都へ向かった。
駅で北川湊(きたがわ みなと)を待っている間、何気なくスマホを開くと、SNSでバズっている一つの投稿が目に飛び込んできた。
【私の気にしすぎでしょうか? 幼馴染が私を置いて彼女を迎えに行っちゃって、なんだかモヤモヤします。
その彼女は私の親友で、私たちは三人とも幼馴染です。彼はいつも、私たち二人にすごく優しくしてくれます。
数日前に私が熱を出した時、彼は夜中なのに私を抱き抱えて病院まで走ってくれて、わざわざ仕事を一日休んで付き添ってくれました。
私が論文のことで教授からダメ出しされた時も、一晩中徹夜で修正を手伝ってくれて……
以前はそんなこと気にも留めなかったのに。最近、彼が親友と長電話しているのを聞くと、なんだかすごく胸が苦しくなるんです】
私はその投稿を読んで、思わずスクロールする手を止めた。
数日前の夜、湊に電話をかけた時のことを思い出した。
彼のスマホは電源が切られていた。
翌日の午後になってようやく折り返してきた彼は、「ちょっと用事があった」とだけ言い、誰と一緒にいたのかは一言も口にしなかった。
コメント欄では、ネット民たちが煽り立てていた。
【今すぐその幼馴染を呼び戻しなよ!君とその親友、彼がどっちを選ぶか試してみたら?】
私がそのコメントに返信を打ち込もうとした瞬間、LINEの通知がポップアップで表示された。湊からのメッセージだった。
【陽菜(ひな)、ごめん。今日は急用が入って迎えに行けなくなった。
タクシーでうちまで来てくれないか?】
私の呼吸が一瞬ピタリと止まった。
震える指で、その投稿者のプロフィール画面をタップする。
そこに表示されている位置情報が、まさか私が今いる東都だった。