インターンの食べ残しで婚約破棄
私、有栖川朔乃(ありすがわ さくの)は、社内の会食で目を疑った。
インターンの白石風香(しらいし ふうか)が、一口かじったアワビを、そのまま私の婚約者、稲富竜也(いなとみ たつや)の取り皿に入れたのだ。
竜也は少しもためらわず、それを箸でつまんで口に運んだ。
その夜、私は両家で進めていた縁談の書類を細かく破り、ごみ箱へ捨てた。
竜也は眼鏡を外し、眉間にしわを寄せた。
「アワビ一切れで、そこまでするのか?」
「彼女が食べかけたものを、あなたは平気で食べたのよ」
竜也は顔を上げ、薄く笑った。
「朔乃、お前がそこまで面倒な女だとは思わなかった。
わかった。そこまで言うなら、結婚はなしでいい。ただし、あとで泣きついてくるなよ」
彼は、私がまた以前のように自分へすがると信じていた。
けれど私は笑った。
「わかった。その言葉、忘れないでね」