奪われた光と命懸けの贖罪
私、神谷天梨(かみや あまり)に深く傷つけられた恋人の深山律希(みやま りつき)が、海外へ留学して八年。彼がようやく新しい彼女を連れて、実家へ戻ってきた。
そして同じ頃、私もまた、八年間にわたるがん闘病の末に病院から治療のすべはないと宣告され、自宅に帰って死を待つだけの身となっていた。
母の神谷志保(かみや しほ)に支えられながら車椅子に座る私を見て、律希は口元に嘲笑を浮かべた。
「へえ、八年ぶりだな。ずいぶんと惨めな暮らしをしてるみたいじゃないか。歩くことすらできなくなったのかよ」
その嫌悪に満ちた声を耳にしながら、私はただ静かにダウンジャケットの袖を引っ張り、手の甲に残る無数の注射痕をそっと隠した。
「平気よ。歩いていて転んで、骨折しちゃっただけだから」
律希は再びふっと嘲笑った。
「それならちょうどいい。俺、もうすぐ結婚するんだ。お前、俺の婚約者のブライズメイドでもやってくれよ」
私は相変わらず、ただ静かに微笑んだ。
「やめておくわ。私、もうすぐ遠いところへ行かなくちゃいけないから」
そう言って母の手の甲を軽く叩き、早く車椅子を押して家に帰るよう合図した。