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第37話

Author: 白川 露
誰もが知っている。一雄は商界と政界の両方に足を掛け、星ヶ丘の半分の命脈を握っている男だ。

正隆が彼を見る目は、まるで昇進と財運へ続く階段を見つめるかのようで、足早に歩み寄り、愛想よく声をかけた。

だが一雄は、彼のことなど一瞥もせず、ただひたすら真帆だけを見据えていた。

怒り、理解できない苛立ち、そして裏切られたという感情が入り混じり、一雄の瞳は、ますます底知れぬ深さを帯びていた。まるで魂さえ吸い込む、黒い渦のようだった。

真帆は、これ以上見ていられず、龍司の車椅子を押して、その場を離れようとした。

だが、ほんの一瞬、気を取られた隙に、男はすでに二人の前へと歩み出ていた。

「鷹宮社長と柊さんは、本当に仲がいいようで」

わざとらしく、「仲がいい」という言葉を強調した。

口元は笑っているのに、声には、噛み締めるような苛立ちが混じっていた。

その笑顔さえ、不気味さを増している。

真帆は、地面に穴があれば、そこへ逃げ込みたかった。

けれど、逃げられない。

手は依然として、龍司に握られたままだ。引き抜くことも、そのままでいることもできず、ただ身動きが取れなかった。

やがて
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