LOGIN私は今、支給された華美なドレスを着て各地から慰み者として集められた少女たちと一緒に馬車に揺られている。
ちなみに慰み者の馬車はもう一台あり、そちらには見目の良い青年達が乗せられていた。
少女たちの顔色は皆悪く、青ざめ、せっかくの綺麗なドレスも化粧も台無しだ。
私は別にこの世界で何かしようなどとは思ってもいない。とりあえず生きていられればそれでいい。
白濁液にどれほど塗れようが、食事さえ出来れば生きていける。刺されさえしなければそれでいいのだ。
むしろビッチ先輩と後輩たちから呼ばれていた私だ。同僚や先輩からは常に腹上死を心配されていた。慰み者なんて、はっきり言って天職ではないか。
そもそもセックスなどやることは同じだ。蜜壺に屹立を突っ込んで適度に締め上げ欲望を出させる。ついでに自分も気持ちよくなる。それだけの話だ。気をつけなければいけないのは妊娠と性病ぐらいである。
私は馬車に揺られながら窓の外をしばらく見ていたが、気がつけばいつの間にか眠っていたようだった。
「きゃっ!?」
突然頭から水をかけられた感覚がして私が驚いて目を開けると、そこにはバケツを持った美しい男がこちらを見下ろして立っていた。
銀色の髪を靡かせ、夏空のような青い目には一切の温度が無く、氷のように冷たい。
「良い度胸だな。慰み者のくせに寝るだなんて」
男はそう言ってバケツを放りだし、私の腕を乱暴に引いた。
「気に入った。今夜の相手はお前だ」
男は言うなり私をまるで物か何かのように血生臭い道中を引きずる。そんな光景を一緒に馬車に乗ってきた少女たちが怯えたような顔をして見ていた。
道中にはあちこちに死体が転がり血痕が飛び散っていたけれど、死体は何だかありすぎると返って現実感が無い。ついでに言うと生憎私は血は全然平気だ。職業柄「ムチで打って欲しい」だとか「身体を殴りつけて欲しい」などと過激な客の相手をしてきたからかもしれない。
しばらく死体の転がる道を引きずられ、ようやくやけに豪華な天幕に辿り着くと、今度は乱暴に中に引きずり込まれた。
天幕の中はとても豪華で、外の仄暗くて陰気臭い雰囲気は一切ない。なるほど。どうやらこの男はそこそこ位の高い人のようだ。
私は納得したように頷き、おもむろにドレスを脱ぎ始めた。
「さ、やるわよ。あなたも脱いで」
「……お前……」
さっさとドレスを脱いで下着になった私を見て、男は何故か愕然とした顔をしている。
「何よ? ヤらないの?」
「何故、平気なんだ」
「何が?」
「あの死体の山や血を見ても何も思わないのか?」
怪訝な顔をしてそんな事を尋ねてくる男に私は腰に手を当てて言った。
「何かって? 別に何も思わないわよ。御冥福をお祈りするぐらいだけど?」
「……普通の女はあの光景を見たら大抵怯えるんだがな」
「知らないわよ、そんな事。それよりもあなたも早く脱ぎなさいよ。それとも脱がして欲しいの?」
ついつい女王様の頃の癖で強めに言うと、男は驚いたように目を見開く。
「この俺にそんな事を言う女が居るとはな。まぁいい。興味が失せた。さっさと出ていけ」
男はそう言って仰々しい上着を脱ぐと、私に背を向けて天幕のさらに奥に消えていく。
私はそんな後ろ姿をしばらく呆然と見ていたが、自分がここへ仕事に来たことを思い出して慌ててドレスを着直して男を追いかけた。
「ちょっと! そういう訳にはいかないの——って、なんだ。やっぱりしたいんじゃないの」
薄い幕を勢いよく開くと、男はベッドに座って下半身を露出させ、自分の屹立を扱いている真っ最中だった。
「お、お前! 何故無断でここに——っ」
慌てた男が言うよりも先に、それまでそそり勃っていた屹立がみるみる間に萎んでいく。
「……」
「……」
気まずい雰囲気が流れ、男は急いで下履きを履き直したかと思うと、私が口を開きかけた次の瞬間、喉元に磨き上げられた剣の切っ先が突きつけられた。
「口を開くな。この事を口外したらすぐさまその首が飛ぶと思え」
剣の先が少しだけ私の肌に触れ、背筋がゾクリとする。前世で刺殺されて以来、刃物は今も苦手だ。
「絶対にだ。誰にも口外するな」
二度も忠告してくる男に私は呆れたように言った。
「……言わないわよ。客の秘密を口外するなんて私のプライドが許さないもの。何よ、あなた勃たないの?」
「言うなと言っただろう?」
静かな男の口調に私は口を噤んだ。何故なら剣の先が私の喉元をスッと横切ったからだ。黙り込んだ私を見て男は剣を私の喉元から避けると、力なくベッドに座り込む。
「もう行け」
「行かないわよ。それバレたら困るんでしょ? だったら一晩中演技してあげるわ」
「?」
「天幕から何の声も聞こえて来ないなんて不自然でしょ? って言ってるの」
「……そうか。言われてみればそうだな」
男は納得したように頷くと大きなため息をついて、始めろとでも言いたげに顎でしゃくりあげてくる。
「あ……ん、っ、ああん!」
「……」
私は男から少し離れた場所でわざと天幕の外に聞こえるように喘ぎ声を出した。そんな私を何とも言えない顔で男が見つめてくるが、仕方がない。
「わざとらしい?」
あまりにも怪訝な顔で見つめてくるので私が問いかけると、男は無言でコクリと頷いた。やはりそうか。女優でもないのだから当然と言えば当然だ。
私はおもむろにドレスをたくし上げると、自ら陰核を弄り始めた。
自慰なんてするのは一体何年ぶりだろうか。突然の私の行動に男はギョッとしたような顔をして顔を反らせると私に怒鳴ってくる。
「ありがとうございました、王」「いや。ではな」「はい。またのご利用をお待ちしております」 今度は深々と頭を下げたオリガを見て、私達もサロンのドアをくぐる。 馬車に乗り込んだオズワルドがふと窓から顔を出して手招きしてきた。「なに?」「これをお前に預けておく。あの部屋は好きに使え。それから毎日夜の18時以降は空けておけ。来られない時は連絡する。これは城の俺の部屋の番号だ」「分かった。来られない時は他の人とヤッていい?」「……ああ」 そう言って手渡されたのは、あの部屋の鍵と数字が羅列されたメモだ。それを何の気無しに受け取った私は、元気よく手を振ってオズワルドを見送ったが、オズワルドは始終何とも言えない顔をしていた。 ※ ダリアに手渡したのはサロンの部屋の鍵だ。恐らくダリアの中の俺は本当にセックスで自分を満足させてくれる相手ぐらいにしか思われていない事も承知している。だからこそ余計に預けておきたかったのかもしれない。 少しでもダリアの首に首輪をつけておきたかったのだ。ついでに俺の部屋の電話番号も渡したが、こちらの思いなど何も知らないダリアはそれを雑にポケットに突っ込んで笑顔で手を振ってくる。 その顔が何だか憎らしくて、思わず顔を顰めてしまった。 帰りの馬車から外を眺めていると、街の灯りが一つ、また一つと消えていく。そんな明かりを見ていると、たまに、ふとした拍子に全てを投げ出してしまいたくなる。 王という役職は孤独だ。俺は割り当てられた役を演じていただけに過ぎないのに、いつの間にかそれがオズワルドという人間になってしまった。 ダリアは俺にデートが下手くそだと言ったが、あれは正しかったのだ。羊を見て可愛いと思う気持ちも、野花の名すら知らないのだから。 けれどそんな事は王には必要のない知識で感情だ。それも分かっている。分かっているが、そんな事すら知らない人間はどうなのだろう? 全ての感情が豊かなダリアこそ、実はとても人間らしいのではないだろうか。だ
「んー……オズ、オズワルド」「……んん?」「もう夕方だよ。お城に戻らなくていいの?」 明日からまた仕事だとオズワルドは言っていた。それなのにこんな時間まで惰眠を貪っていて良かったのだろうか? 珍しく寝起きの悪いオズワルドの寝巻きのボタンをゆっくりと外すと、オズワルドの首筋から胸にかけてそっと指を這わせる。 その途端、驚いたようにオズワルドはパチリと目を開け、私を軽く睨んできた。「この起こし方は止めろ。心臓に悪い」「えー、最高に良い目覚めじゃない?」「どこがだ。また縛られるんじゃないかとヒヤヒヤするから止めてくれ」 そう言ってオズワルドは私に覆いかぶさり、何を思ったのか首筋を甘く噛んでくる。「ちょ、お休みの日はそういう気分にならないんでしょ⁉」 私が問いかけると、オズワルドは少しだけ首を傾げてすぐにニヤリと笑った。「お前が相手だとそうでもないようだ」 そう言ってオズワルドは私のナイトドレスの中に手を差し入れてきて、胸をゆるゆると揉みだす。「んっ」 思わず漏れた声にオズワルドは意地悪に笑って噛みつくようなキスをしてきた。 それから私達は夕飯の時間までたっぷりと互いの性欲を発散させ、何だかスタミナがつきそうな夕食を食べて今度はソファでして、やがて——。「流石にタイムリミットだな」「月がもうあんな所まで昇ってるけど、大丈夫なの?」「大丈夫ではないな。御者がハラハラしていそうだ」 笑いを噛み殺しながらシャワーを浴びに行ったオズワルドは、そのまま軍服に着替える。 その間に私も適当なドレスを着てオズワルドの曲がった勲章を直すと、背伸びをしてオズワルドの頬にキスをした。「お疲れ様でした、王。今日はゆっくりお休みを堪能できましたか?」「お前がそんな態度を取ってくると寒気がするが、まぁなかなか充実した休みだったんじゃないか」
私はそんなオズワルドを横目にカウンターバーに行って色々とお酒を眺める。ここには本当に色んなお酒が揃っていて見ているだけでも楽しい。「ねぇオズワルド、ちょっと部屋出てもいい?」「構わないが、どこへ何しに行くつもりだ?」 本から顔も挙げずにそんな事を言うオズワルドに私は頬を膨らませて言い返す。「厨房だよ! ちょと果物貰ってこようと思って。駄目?」「厨房か。厨房はこの部屋を出て廊下の突き当りを右だ」「分かった! ありがとう」 私は意気揚々と部屋を出て長い廊下を歩く。昨夜見た時は何だか雰囲気のある廊下だと思ったが、明るい所で歩くと全然違って良い。 景色を見ながら廊下を進んでいると、昨日のロビーのような場所にたどり着いた。そこでは今日も美しいオリガが眼鏡をかけて書類をまとめている。「おはようございます」「ん? ああ、ダリアちゃん。おはよう。王は?」「今は読書中です」「そう。お休みの日をここで過ごされるのも三年ぶりねぇ」 そう言ってオリガは眼鏡を外して懐かしそうに目を細める。「それまでは王はここでしょっちゅうお休みされてたんですか?」「ええ。ここはサロンだからね。お休みの日は王は一人でここで過ごされていたわ。でもそれは王だけじゃないわね。他の方達も結構お休みに利用されるのよ」「そうなんですか」「そうなの。ところでダリアちゃん、今日のご予定は?」「今日は王がたまにはここで大人しく休めって脅してくるので、大人しくしてるつもりです。あ、でもお仕事あったら働きます!」「お仕事は大体夜だから安心して。それよりも王が自分の部屋で休めって?」「はい。多分私の行動を怪しんでるんだと思います!」「えっと、それはどういう事?」「野放しにしておくと、どこで男を襲うか分からないと思われてるんだと思います!」「……そうなの。なら今日はゆっくり王に監視されていなさいね」「はぁい!」
気がつくと私はオズワルドに抱きかかえられた状態でベッドに居た。そして相変わらずナイトドレスのボタンはきっちり一番上まで閉まっている。「あー……あのまま寝ちゃったのかぁ……」 眠い目を擦りながらぽつりと言うと、それまで固く目を閉じていたオズワルドがうっすらと目を開けた。「……お前、王を差し置いて風呂で寝るとは、良い度胸だな」「ごめんってば! ちゃんと服とか着せてくれたんだね」「仕方ないだろう? 素っ裸のまま風呂に放置など出来ないだろうが」「はは、確かに」「正しくは、身体も洗ったし頭も洗った。乾かして服を着せた、だ。感謝しろ」「えっ⁉」 まさかそこまでしてくれているとは思ってもいなくて思わずオズワルドを凝視すると、オズワルドは少しだけ怯んだように引きつる。「いや、冗談だぞ? 信じるなよ?」「なんだ、びっくりした……そんな献身的な人なのかって思っちゃった」「冷酷王と呼ばれている人間が、そんな事すると思うか?」「思わないけど、オズワルドは全然冷酷じゃないじゃん。皆の勝手なイメージだよ」 言いながら私はベッドから下りると、水差しに入っていた水をグラスに注いで一つをオズワルドに手渡した。「はい、どうぞ」「ああ、すまない」 水を受け取ったオズワルドはそれを一気に飲み干して自分もベッドから出てくる。「朝ご飯とかってどうしたらいいの?」「ん? ああ、あれを使え」 そう言ってオズワルドが指さした先に置いてあったのは、昔懐かしいダイヤル式の電話だ。しかも何だかお洒落である。「凄い! 懐かしい!」「懐かしい?」「うん。私の時代にもこれあったんだよ。まぁ、とは言えはるか昔の事だけどさ」 何だか意外な所でレトロな物に出会ってしまって思わず嬉しくなった私は、受話器を取ってオズワルドを見上げた。そんな私
指先の繊細な動きに私が身体を捩ると、オズワルドはすかさず私の割れ目に手を入れてきた。「あっん!」「もう濡れてるぞ」「結構前から濡れてたよ」「そうなのか?」「うん。だって、この後オズワルドとするんだ~って思ったら勝手に濡れちゃうんだもん」 言いながら私はオズワルドの胸に指先を滑らせると、オズワルドは低く呻いて腰を引こうとする。そんなオズワルドを逃さないように私は彼の腰に腕を回して、熱い塊を扱き出した。 そんな私に反撃だとばかりにオズワルドは私の中に指を二本ねじ込み、それぞれバラバラに動かし始める。「やん! そこ、駄目だよ」「どうして? 随分気持ちよさそうだが——っ」 声を詰まらせたオズワルドの弱点は先端だ。ここに触れるとオズワルドの先走りが溢れてくる。「オズもね?」「……お前……」 まさかやり返されるとは思っていなかったのか、オズワルドは軽く私を睨みつけ、そのまま私を持ち上げた。「ここでは何の遠慮もいらない。好きなだけ喘げ」「うん」 天幕ではそこまで大声では喘げなかった。何故なら声が外に丸聞こえだったからだが、この部屋はどうやら防音がしっかりしているようだ。通ってきたどこの部屋からも声は聞こえなかった。 オズワルドは私の身体にゆっくりと熱い塊を沈めて行く。私は完全に持ち上げられているので、オズワルドのしたい放題だ。「はぁ……気持ち良い……溶けそう……」 静かに私の中に沈む熱い塊にうっとりしながら言うと、オズワルドも深い息を吐きながら言う。「ああ……俺もだ。挿れるだけで、どうにかなりそうだ」 いつもよりもずっとずっと静かでゆっくりなセックスは、それだけで私達を高ぶらせた。前戯もほとんどしなかったので、まるでこれが前戯だとでも言うように。 やがてオズワルドが私を持ち上げたり下ろしたりし始めた。その度に自分の重みで最奥に電気が走ったかのように痺れる。「あっ、あっ、あっ、っく、っう」「はぁ、
「あなた、ダリアさん。今後の活躍に期待しているわ。何かタブーな事とかある?」「特にありません! 縛られても逆さ吊りにされても平気です! お尻の方も使えます! もちろんやる方も得意です!」 SMには特化している私だ。そういう技術を聞かれているのだと思って胸を張ったが、オズワルドはとうとう突っ込まなくなったし、オリガは唖然としている。「王……」「何も言うな。何も聞きたくない。まぁそういう事だ。雇ってやってくれ」「は、はい……」 とんでもない奴連れてきやがったな、みたいな顔をしているオリガにオズワルドがそっと目をそらす。 しばらく二人は沈黙していたが、やがてオズワルドのお腹が小さく鳴った。「お食事をされますか?」「ああ、頼む。今夜はここへ泊まる。お前も食べるだろ?」 そう言ってオズワルドは私の方を振り向いた。「いいの?」「構わない。そういう訳だオリガ。2人分を部屋へ運んでくれ」「畏まりました」 そう言ってオリガはもう一度私を見て心配そうに立ち去っていく。「部屋って? 予約とかしてないよね?」「そんなものはいらない。ここは会員の数だけ部屋が割り当てられているんだ。まぁ、言わば別荘のようなものだな」「随分ふしだらな別荘だけど、それじゃあオズワルドの部屋もあるって言う事?」「もちろん。こっちだ」 オズワルドは軍服の裾を翻して長い廊下を歩き始めた。 オレンジ色の淡いランプに彩られた廊下は、それだけで何だか雰囲気がある。 やがて突き当りの部屋までやってくると、オズワルドはおもむろにポケットから鍵を取り出して部屋を開け始めた。「すっご……え? スイートルームじゃん!」「スイート、なんだ?」「ごめん、こっちの話。ここがオズの部屋?」「ああ。ほら、早く入れ」「あ、うん」 背中