Home / ファンタジー / 有給休暇は異世界で / 第83話:潜入、マヨチュッチュ

Share

第83話:潜入、マヨチュッチュ

Author: 大正
last update publish date: 2026-07-04 07:00:58

 ラムーさんを手伝い、木箱に入りきるだけの泡立て器を持って移動しようとしていたので、アイテムボックスに入れて両手をフリーにしてあげると、めちゃくちゃ喜んでいた。

「ありがとうございます。本当に、アイテムボックスまで持ってるなんてタカナシ様はすごい方ですね」

「どうせお店の見物へ行くついでなので。向こうで渡せばいいんですよね? 」

「はい、よろしくお願いします。あーこれで肩が楽になった」

「しかし、人数分の泡立て器ですか……必要なんですか? 」

「ええ、従業員全員分必要でしょう? 」

 人数分? という引っ掛かりはあるが、まあとりあえず持っていくとしよう。現金なもので、急にリラックスし始めたラムーさんに少し苦笑いしてしまう。ラムーさんの後に続き商業ギルドから少し離れて太い幹線道路を進むと、すぐに列を発見することができた。これがマヨの列なのか。

 並んでいる客を見ると、容器を持っている客と持っていない客両方が存在する。

「容器は…&

Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 有給休暇は異世界で   第99話:純粋な骨作り

     ヤークトさんは、一足先に店に戻っていった。次のパンを焼く時間までに戻らないといけないそうだ。そんなわけで、デクレール親方のところへ置いていかれた俺とセルフィ。 デクレール親方は土の準備をしに行ったらしく、工房の販売スペースに置いていかれることになった。さっきと同じく、親方や徒弟の作品をいろいろと見回す。陶器のベースの色は土地の土の材質で変わるんだったな。「これだけ詰め込め! 異世界に行ったときにチートできる知識100選」の中にも、強化ガラスの作り方やボーンチャイナの作り方についてのネタがあったので俺の頭の中にもしっかりインストールされている。 本当はガラス職人がいれば、確実に白いパン皿を作ることができたのだろうが、先日街巡りついでに調べたところ、どうやらこのあたりにはガラスの材料である石英の砂や珪砂の類のものが産出しないらしい。 本来ならガラスを高温で形状を決めた後、再度熱したあと、冷気で急冷して強化ガラス化することにより、白いパン皿のような強度と、内部で光を乱反射して美しい白さを保つのだが……この地域でガラス工芸を勃興させるのは難しそうである。 その点で言えば、もうオッサラー商法はある意味破綻しているのだが、ボーンチャイナをいかに安く作らせるかと、その希少性をパン屋のおまけでそれを入手できる、という面白さを少し観察してみたいといういたずら心もある。人は欲しいもののためにどこまで日常の延長戦を戦い続けるのか。 白磁は土に含まれる鉄分が少なければ少ないほど白くなるらしいが、この辺の土は……緑になるかならないか、程度には鉄分が少なめではあるらしい。惜しい、というところだろう。 ここに焼いた動物の骨の骨灰に含まれるリン酸カルシウムを混ぜ込むことによって乳白色の温かみある色合いと、陶器よりも高い強度が得られることになる。「本当にうまく行くんですかね……? 白いお皿なんて高級品ですよ? 」「やはりこの辺でも白いお皿は高級品になるのか」 セルフィに一応尋ねてみる。もしかすると知っているかもしれないから、できる限りの知識吸収はしてお

  • 有給休暇は異世界で   第98話:ボーンチャイナの再現方法

    「いくつか確認しておきたいことがあります。白い皿が作れないのは土がないから、つまり白く焼くための原料が手に入らないから、ということでいいんですね? 」 適当に開いている椅子に座って、お互い話し合いをはじめる。お茶も何も出てこないが、そういうものをもらいに来たわけでもないので気にせずにおく。ちなみにセルフィは奴隷の身分で自分も座るわけには……と、立ったままだ。「そうだ、白く焼くための土が近くで取れるならその限りじゃないが、この辺ではそこの水差しみたいな碧を出すのが精いっぱい。それ以上白っぽいものとなると釉薬を使うしかないわけだが、白と言っても若干黄色味を帯びてしまう。なかなか作り出せるものじゃないし、運よくうまく行っても作れる枚数を考えたらかなりお高いものになってしまう」「ちなみに、その白の皿を一枚作るにはいくらぐらいかかるとお考えで? 」「そうだなあ……銀貨二枚ぐらいはいっちまうかなあ。ヤマナリさんところで利益をちゃんと確保しつつ、銀貨二枚のおまけをつけるにはパンを何個売れば元が取れそうなんだ? 」「うーん……一年? とてもじゃないがその間待っててくれというには値段も時間もかかりすぎる。その間につぶれてしまうのが関の山だと思う。もっと短期間で収益を上げられて、安くお皿を作る方法があればその限りじゃない。もしくは、その一年に見合うだけの高品質なものである必要があるね」 高品質か、低価格か。どっちを実現するか、というところなのかははっきりしているが、高品質過ぎてもいけないというのはわかる。つまりそれなりにお安くできなければいけないということだな。「骨って、安ければいくらで買えますか? この際牛ではなくてもイノシシ……ミニボアでもいいです」「骨なら……ゴミ捨て場に行けばいくらでもあるんじゃねえかな。何に使うんだそんなもん」 ということは、この世界には豚骨料理もないんだな。もしくは、出汁として知らないうちに使ってしまっているか、というあたりか。これならいけそうだな。「骨を焼

  • 有給休暇は異世界で   第97話:ヤマナリさん

     翌日、さっそく朝の儀式を終えた後、食事をとり、その後、親父さんがパンを買いに行くついでにヤマナリパンを訪れた。道中で新しくできたというパン屋にも立ち寄り、朝食ついでに一つパンを買ってみた。 どうやら新規開店した分だけ新しい釜で焼いているらしく、古い小麦の匂いの染みついていないパンと小麦をしっかりと使った柔らかいパン、そして、小麦を混ぜ込んだ、真っ黒ではない黒パンも人気のようだった。 値段はヤマナリパンに合わせてきているようで、どうやら小麦の自前の入手ルートがあるらしい、ということまではわかってきた。市場で小麦を仕入れていてはこの値段で出すことはできないし、新しい釜だからこそ燃料費も節約できて、トータルで割安の料金に仕上げることができているのだろう。「これはなかなか強敵だなあ。ふんわりしてて美味しいし、ヤマナリパンには普通にやってちゃ勝ち目ないかも」「たしかに、出来立てとはいえ、美味しいですもんね」「二人とも、まさかたどり着いて無理だから店を畳みましょう、なんて店主に伝えるつもりじゃないだろうな」 親父さんとセルフィと三人で買い食いをしながらヤマナリパンに向かう。親父さんも味については確かにヤマナリパンよりも美味しい……と心のどこかでは認めているらしく、心配そうにむしゃむしゃと白パンを食べていた。「まあ、ダメで元々……というところもありますし、俺の知識でだめでも、何人か集まればいい案が出るかもしれませんからね。せいぜいあがいてみますよ」 ヤマナリパンまでに買い食いを終わらせて、親父さんはいつも通り仕入れの分だけパンを買うと、帰っていった。俺とセルフィはヤマナリパンの店主の仕事が終わるまで、しばしヤマナリパンの売れ行きを見ていく。 どうやら常連であるとか、普通に世間話をして帰っていくような立場の人々は買い物に来ているので、完全に閑古鳥が鳴いている、という状態ではないようだ。 しばらくして店が一段落したのか、店主が出てきた。「どうも、お待たせしました。次のパンの仕込みが終わって一区切りついたので、今のうちにいろいろ回っていこうかと思いま

  • 有給休暇は異世界で   第96話:ヤマナリパンからの相談

     解体所の解体結果書と薬草の鑑定結果書をもって冒険者ギルドのカウンターにようやくたどり着き、書類を渡して本日の仕事の結果を受け取る。大銀貨3枚と銀貨1枚、それに大銅貨2枚での支払いを受け取った。 どうやら、合計で銅貨換算で3120枚分の仕事をした、ということになるらしい。ガルキン狩りまわった時の二倍ほどの金額になったか。薬草採取も結構儲かるんだな。「おかげで助かりました。薬草が少し心もとない状態だったんです、また足りなくなった時によろしくお願いしますね」 薬草採取でも鑑定の力を使えばかなり儲けることができると自信がついたな。薬草採取のスペシャリストとして名を馳せる未来もあるかもしれない。鑑定のおかげとは言わなければ問題はないだろう。「今日は儲かりましたね! 」「ああ、そうだな。ワイルドボアも倒せたし、段々と力をつけてきてこれたという自信もついた。あと二つもレベルが上がれば一人でもワイルドボアを倒せそうな気すらしてきた。この調子で頑張っていくか」 セルフィと軽く話しながら帰り道につき、銀の卵亭にたどり着いたところで早めに湯をもらっておく。メリーさんからは「今日はゆっくりだったねえ」と言われてしまった。 確かにいつもはもうちょっと早いし、できるだけメリーさんの都合に合わせて帰ってきているからな。その分今日は珍しく感じたんだろう。 今日は薬草採取の割に収入が多かったのと、冒険者ギルドでの鑑定に時間がかかったからだと言い訳をしておいて、そのままお湯をもらって部屋に戻る。 血まみれ……というほどではないが、ミニボアの返り血が程よく付いた服を水魔法で軽く濡らして軽く濡らして、こすり落とす程度にしておく。明日でもいいかな……朝にでもしっかり綺麗にして、乾かしてしまえば良いか。よし、明日明日。とりあえず今は体の汚れを落とすのが先だ。 ほぼ全裸になり全身をごしごしとこすりながら汗を落としていく。途中からセルフィに背中を拭いてもらい、お礼に背中を拭き返してやる。いつもの作業を終えたところで、着替えて食堂へ下りる。すると、親父さんから声がかかる。「タカナ

  • 有給休暇は異世界で   第95話:三日月草

     午後からも引き続き薬草を集めていく……が、やはり予想通り、ミニボアと薬草の取り合いになった。しかし、ミニボアも集団で一気に薬草の群生地を荒らしに来ているというわけではないようだ。 群生地に引きよせられるように一匹、また一匹と、ホルム草を掘り返すのに夢中になってる間にこっそり近づいて倒す、というミニボアを暗殺するような形で一匹ずつ倒している。 食後すぐの一件以来、ワイルドボアがまた出てくるという状態にはなっていないが、いつ出てきてもいいように注意はしている。ミニボアはともかく、ワイルドボアは足音の振動でわかる。 ミニボアの足音も分かるようになればいいのになあとは思っているが、そこまで大きいモンスターではないのでなかなか難しいというか、俺の過敏さではミニボアは判断できない。が、セルフィは判断できるらしい。「次、また来ますよ。やっておきますか? 」「対応よろしく……血抜きはこっちでやるから」「はい」 セルフィがミニボアを倒して、ミニボアの血抜きはこっちでやっておく。流れた血が薬草にかからないように注意しつつ、ミニボアの血でさらにミニボアが寄ってこないようにはしているものの、やはり血だまりはできてしまうことになる。 かといって移植ごて程度の大きさでは、血抜きした血を溜めておく穴を掘るのも一苦労だ。そのための穴を掘っておいても……結局あふれてしまうし、それならと思って垂れ流しにするのだが。 その血の匂いをたどってミニボアがまた一匹、また一匹とぽつぽつと出てくるので、そのたびにセルフィと倒して血抜きを繰り返す。 ◇◆◇◆◇◆◇ 段々、薬草を集めるよりもミニボアの相手をしている時間のほうが長くなりつつあるころ、日が傾き始めた。「そろそろ帰るか……途中からミニボアとホルム草の取り合いになったのはちょっと想定外ではあるが。まあ、ワイルドボアも二匹ほどさらに相手することになったし、その分収入になったと思えばいいか」 ワイルドボアはあの後、さらに二匹引っ掛かってきた

  • 有給休暇は異世界で   第94話:リベンジ

     午前中を目いっぱい使って、ひたすら薬草集めをする。午後も薬草集めの予定だが、昼食のサンドイッチを食べながら、午前の分量を広げて、セルフィの取った薬草の一本一本判別して雑草を省きつつ、改めて束にしていく。「結構頑張って薬草ばかり抜いていたと思うのですが」「十分頑張ったほうだと思うぞ。7割から8割ぐらいはホルム草やハププ草だ。一部は雑草も混じってるが、このぐらいなら十分許容範囲だと思う」「じゃあなんで仕分け直してるんですか? そこまで詳細な鑑定はしなくても向こうでやってくれると思うんですが」「そりゃ、ギルドの手間を省かせるためでしょ。俺は鑑定で間違いなくホルム草やハププ草だと見分けられるんだから、大量にガバッとセルフィに取ってきてもらって、仕分けしてお渡しするだけでお賃金が得られるんだから、少ない程度の面倒は受け入れるってもんだ」 実際、ギルドではどうやって普通の草と薬草の見分けをつけているのか、まではわからない。俺みたいに鑑定もちの職員が仕分けているのかもしれないし、薬草鑑定士、みたいなより限定された職員がその仕事を任されているのかもしれない。 何にせよ、これが薬草でこれが薬草じゃない、とそれぞれわかってる限り、俺の性格上混ぜ込んでごまかすことはできないってことだな。どうせばらばらにされて組みなおされて新しく束を作り直されて、その作り直しの時間で、もう何束分か薬草を入手することができるはずだったとか。 そういう時間が出てくるならここで多少時間と手間がかかっても、きっちり仕分けしておくほうが、関わるみんなにとって無駄がなくなってよいことだ。俺の手間でみんなが得をするのは悪くない。 ホルム草とハププ草からそれ以外の草を完全に分けて、束にし直すと、ホルム草が37束、ハププ草が18束できた。それにテルミ草が8束出来上がっているので……全部買い取ってもらうとしても、午前の分だけで銀貨7枚分は堅いな。 それに加えてホーンラビットの血抜きした奴が10匹あるから、さらに銅貨50枚。今日はなかなかにいい収穫をしている。一日めいっぱい使えばまた銀貨10枚分稼げるのは確実だな。 これでまた、いつで

  • 有給休暇は異世界で   第17話:剣聖だった

     今日は東門から出るらしい。東門から出るほうが草むらに近く、また薬草の採取場からは離れているうえにこちらはモンスターが出やすい方向だということらしい。東のほうに行けば行くほどモンスターも強く、ゴブリンの巣なんかもできやすいとのことで、戦闘を行う冒険者は大体東門から出ていくらしい。「さて、では行きますよお二方」 イアンちゃんが先頭に立って歩みを進める。「はい、イアン先生」「なんですかタカナシさん」「このあたりには何が出るんですか? 」「このあたりにはスライム、ホーンラビット、ミニボアの三種類が出

  • 有給休暇は異世界で   第16話:冒険準備

    「とりあえず、冒険者として恥ずかしくない格好はしないといけないな……着たままの服一着だけでは洗濯もできないだろうし、サイバルさんのところへ行くか。服は……俺も一着しか持ってないけど、セルフィは女の子だし、洗濯して乾かしてる間の服も必要だろう。よし、まずは服、その次に装備、それが終わったら……時間があればお金を稼ぎに行こう」「はい、頑張ります」「とりあえず武器は……これを持っててもらうか」 アイテムボックスからショートソードを取り出

  • 有給休暇は異世界で   第15話:仕掛け人ここでネタ晴らし

     食事を終えた後、宿の部屋に戻る。メリーさんにはちゃんと今日から二人になるけど追加料金が必要かどうかを確認しておく。 どうやら一部屋いくらの計算らしく、よほどうるさくしたり人数を詰め込んだりしない限りは人数としてカウントしないらしい。それにセルフィはまだ子供でもあるし、子供で一人にカウントするのは問題だ、ということのようだ。ここはメリーさんの温情に感謝だな。 部屋に戻り、まだ何もない部屋に移動すると、さっそくセルフィと正面に向かって話し始める。こっちは椅子に座って、セルフィはベッドに腰かけて、足をブランブランさせながらこっちに向いて話しかけ始める。

  • 有給休暇は異世界で   第14話:価格交渉

     話し合いが終わり、さっきまでいた店員を呼びに奥へ顔を出す。「すまない、話し合いが終わった。この子を買い取ることにしたい。いくらだ」「そうですか。お決めになりましたか。この子は……正直なところ性格も暗く、まだ幼いのでこれから育つ分も考えると……金貨4枚というところでしょうかね」 指を4本、差し出してきた。「ちなみになんだけど、人が一年間生活するのにいくらぐらいかかる? 」 小声でイアンちゃんに確認する。「そうですね、家がある前提だと金貨2

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status