INICIAR SESIÓN以前から見えていた。 上司の背中に大きなカマが背負われているのが… 「それ…危なくないですか?」 ある日指摘してみたら、血相を変えた上司が詰め寄る。 「いつから見えていた?誰かに話したか?」 そして有無を言わさずキスをしてきた… それは忘却のキス、そして私を操るキス。 「…何してるんですか、初めてのキスなんですけど!?」 「特異体質か。めんどくさい人間だ!」 身分を隠した上司の正体は、寿命が来た人間に、カマを振って冥界へと誘う死神。 他の人間とキスをされたら正体がバレると知った上司は、恋人になれと言って、同居に持ち込みました… 毎日せっせと繰り返されるキスは、やがて甘くなって… 死神✖人間の恋。 最後はどうなるの…?!
Ver más「はじめまして。神西蓮と申します」「うわ、イケメンすぎて緊張するぅ……」バイト先に出勤して社長と副社長の秘密を打ち明けられ、凛花も思い切って蓮の話をした翌週、彼を2人に会わせることにした。話は聞かせてあり、体験談をぜひ聞きたいといった蓮。父の賛成も取り付け、会社近くのカフェで落ち合ったところだ。2人にキラキラした目を向けられ、キョトン、とする蓮。人間の姿を手に入れた彼は、ピュアで邪気のない子供のような表情を見せることが多い。そういうことは、社長たちにもあったのか……「改めて自己紹介しとくね。俺は兄で社長の絆【きずな】。こっちは弟で副社長の縁【えにし】。凛花ちゃんが見破った通り、俺たちは双子。あんまり似てないけどな」座ったまま頭を下げる凛花と蓮に、2人は早速経験談を話し始めた。「俺たちが死神稼業から足を洗ったのは、寿命が来ている人間に、カマを振れなかったからなんだよ」「そう。そのせいで人間界に修行に落とされそうになって、それが嫌で2人で逃げ続けて……そのうち幹部たちと戦うことになってさ」「まぁ、勝利したってわけよ」話を聞く限り、その戦いとはいわゆる剣を振り回したりするバトルとは違ったらしい。「戦いがある、とは聞いてたけど、なんていうか……まやかし、みたいなものだったな」「精神的にジワジワ追い詰められる感じ。……あれ、もし人間がされたら確実に病むよ」まさに、病んだ。2人の話に大きくうなずく凛花。蓮が2人に向かって口を開く。「人間の姿を手に入れた後、死神からの接触は?」「1度もない。ただ死神時代の記憶はいつまでも消えないんだよね」「それについては諸説あってさ……」縁の答えに、絆が声を落として身を乗り出す。「結婚すると消えるらしい……!」「らしい、とは?おふたりにも経験談を聞かせてくれる仲間がいるんですか?」たまらず質問する凛花に、絆は笑い出した。「……え?いっぱいいるよ!皆自分からは言わないだけだから」そう言われて思わず辺りを見渡してしまう。若い人が多いけれど、カフェの外には老若男女、たくさんの人が歩いている。……あの中に、死神としての経験を持つ人が、いる?「結婚するとその記憶自体なくなって、本当の人間としての人生が始まるって話。……話を聞いた人も恋人と結婚して、次に会った時死神の話をしたら笑い飛ばされたもん」
「ちょっとこれ……なにごと?」 「あぁ、夕飯……の下ごしらえをしていたつもりなんだけど」 リモートでの仕事を終え、階下に降りてみれば、切り刻んだ野菜らしきクズがスリッパの下で潰れる感触…… 「下ごしらえか、なるほど……」 キッチンから飛び出した野菜のヘタや皮が、リビングの床にも転がっている。 その種類から、サラダと煮物を作ろうとしていたのがわかった。 「そっか……手伝うよ。私も多少は料理できるから、一緒に作ろう」 どんなに失敗しても、面倒なことをされても、それすら愛しい毎日が始まった。 会えなかった日々、会えるかどうかもわからなかった日々を思えば、このくらい何でもない。 危なっかしい手つきで野菜の皮をむく蓮を、ヒヤヒヤした気持ちで見つめながら、凛花は蓮に聞こうとしたことを思い出した。 「そういえば蓮さん、私のT シャツ知らないかな?胸元にハートが描いてあるやつなんだけど」 明日は出勤する予定の日。 朝になってバタバタしたくないので、着るものを決めておこうと服を出しておこうとした。……が、お気に入りのTシャツが見つからない。 「着心地のいいTシャツでよく着てたんだけど、どこいっちゃったかな」 「あ、それなら……」 立ち上がった蓮は、今一緒に寝ている父の寝室に入っていく。 出てきた手に握られていたのは、捜していたTシャツ…… 「蓮さんが持ってたの?」 「あぁ、少しでも凛花を感じながら眠りたくて」 片手を口元にやり、少し照れた様子に心臓が跳ね上がる…… なんて可愛らしい……そしてピュアな愛情表現なんだろう。 「ありがとう……それならこれは、蓮さんが持ってて」 1度抱きしめてからTシャツを差し出すと、蓮は嬉しそうに受け取る。もちろんその頬はほんのりバラ色…… 「私も、蓮さんの服と一緒に寝たいな」 「あ、じゃあ……持ってくる」 もう一度寝室に引き取り、グレーのTシャツを持ってきてくれた蓮。 「今、1度着て、脱いだばっかり」 ほんのり人肌のTシャツを笑顔で受け取りながら、元は父親のTシャツだったと気づく凛花。 まだ人間に戻って日が浅く、彼自身の服はまったくないから仕方ないんだけど……少しだけ何をやってるんだか、と思う自分がいた。 やがて……サラダと煮物、だし巻き卵といった夕食が出来上がった。 勤務時間のこともあり、
「あの男たち2人に、触れさせたな」「え?」じっと見下ろす目が、怒りと悲しみに揺れている。そこで思い出した。……栗田医師、そして伊藤課長のことを。「……あれは、その……ごめんなさい。どうしてか蓮さんに似ていると感じて」「……どす黒いものが心に広がっていくのを感じたよ」全部見られていたことを知り、何とも言えない気持ちになる。「蓮さんが今どんな状態か深く考えられなかった……ただ、早く会いたくて、それだけで。軽率だったと反省してます」「単純にヤキモチを妬いて面白くない気持ちになった。だが、それも必要な経験だったと今なら思う」それはどういう意味なのかと、次の言葉を待つ。「死神なら持たないはずの感情に揺さぶられて苦しみ、狼になって君の前に現れたものの事故に遭わせる結果になった。……おまけにカマも触れなかった」少しずつ表情が明るくなる蓮の表情を、凛花もつられて笑顔になりながら見つめる。「だからこそ、俺は死神を追放され、狼の中にその存在を移すことができた。……そしてキスだ。凛花のキスで、俺は元の体を手に入れた」「……不思議です。こんなにうまくいくなんて」「凛花が起こした奇跡だ」そう言われて思い出す、母の柔らかい笑顔。「お母さん……聖なる人だったお母さんが、全部教えてくれた」「そうか。お母さんは、聖なる人だったな。凛花にも奇跡を起こせる力があったんだ」「きっと、私だけじゃないです」蓮が私を見ていてくれたから。あきらめないでいてくれたからこその奇跡。言葉にすれば泣きそうで、凛花は蓮の胸に頬を寄せた。その夜、父が帰宅して人間の姿を取り戻した蓮に再会した。「なんとまぁ……前よりずっと男前なんじゃない?」凛花と手を繋ぐ蓮に、少しだけジェラシーの視線を向け、父はそれでも安心した様子で笑ってくれた。「ささやかだけど、お祝いにね!」蓮と2人で用意した夕食のあと、父が生クリームがたっぷり入ったロールケーキを出してくれた。カットされたそれを見て、笑う凛花に父が言う。「いちごクリームのさ、ハート型のロールケーキなんて珍しいでしょ?」「初めて見る……!可愛いね!」それはきっと、私たちが結ばれるのを認めたサインだと思った。感謝の気持を伝えながら、2人で話し合ったことを聞いてもらうことにする。「当たり前なんだけど、これからは2人で働いてやっていく
「2本足は久しぶりだ……」テーブルを降り、言葉の通りその場に立つ蓮。感動しながらも、ハッとして後ろを向く。「あの……今何か、着るものを、」レオから蓮になった姿は全裸だ。「あぁ、頼むよ」さり気なく凛花に背を向けるも、全裸だ。窓の向こうにこの瞬間誰かがやってきたら大変だ。「そうだ!まずはシャワーを浴びたら?」目をそらしながら蓮の手を取り、バスルームに案内する凛花の足取りは軽い。触れた手はあったかい……そして何より、背中にあの、大きなカマが見当たらないのだ。「シャワーはこの栓をひねると出てくるから。シャンプーはこっちで、ボディソープは……」「わかる。レオ時代、凛花に洗ってもらうとき、何回もシャワーとソープ間違えたって叫んでたからな」「あ……聞かれてたんだ?!」笑い合う声は、これまでの人生で一番明るいと思う。「それじゃ、ゆっくり入ってね」「凛花も……」「え?」出ていこうとする凛花の腕を取り、熱い視線を向ける蓮……そりゃ、今すぐ抱きしめ合いたいけど……目にはいるソレも、準備万端のようだけど……「ちょっと、落ち着く時間が必要だから。今はまだ……」背伸びをして蓮の頬に口づけ、バスルームを出た。父の部屋で新品の下着とリラックスウェアを見つけ、脱衣室へと運ぼうと歩き出す。……すると、さっきまで聞こえていたシャワーの音がやんで、妙に静かになっていることに気づく。「……もしかしたら、まだ安全じゃないんじゃ、」病室に訪ねてきた見知らぬ男のことを思い出した。死神最高幹部との戦いに負け、蓮は死神という役割をなくし、その存在を完全に失って二度と戻らないと。なのに戻った。多分死神ではなく、人間として。……生まれ変わった?どうしてそんな奇跡が起きたのかはわからないけど。「蓮さんっ!」静かになったバスルームの扉を勢いよく開けた凛花。「……ん、どうした?」ソープにまみれた蓮は確かにそこにいた。なんだ。シャワーを止めて洗っていただけか……シャワーが終わるまで、結局心配でその場を離れられなかった凛花。ウロウロと廊下を行ったり来たりしながら、ようやく父の服を着た蓮が脱衣室の扉を開ける。「……どうした?待たせたか?」濡れた髪の蓮がひどくカッコよくて色っぽくて……触れられる喜びと今までの寂しさと不安で、抱きついて泣き出した。「これで安
「俺のマンションに来ていいのは鈴原だけだ」「…えっと、どうしてわかったんですか」絵里奈に別れを告げ、車に乗り込みながら、神西と携帯で話す。「…軽く、テレパシーだろうな。キスをする間柄だ。お前の考えが伝わってくることがある」考えてることが伝わるって…私が課長に特別な気持ちを抱き始めていることにも気付かれるってこと?けれど携帯の向こうの神西は、それ以上のことは言わない。なのでもう少し食い下がってみることにした。「…でも絵里奈は、子供の頃からの親友なんです。神西課長をただの上司として紹介するならいいじゃないですか」…そもそも、付き合おうといったのはそっちだ。「内緒にするなら、徹
闇夜に浮かぶ、外壁をツタが絡まるマンション…そこが住まいだと神西に言われた時、すべてが繋がった気がした。背中のカマ、情報もなく部屋にやってきたこと、アパートの突然の全焼…忘却と操作のキス…そして打ち明けられた死神の話。全部の辻褄が合う。…凛花はこれまでのことをすべて忘れていなかった。その中でわかったことがある。…やはり自分は、見てはいけないものを見ていたのだ。同時に…死神なんて存在が、こんな身近にいたなんて、普通に驚きだ。だって上司だよ?…やたら厳しくて怖いのはそのせいか…「…それにしてもなんだか薄暗い明かりしかつかない部屋だな」自分に与えられた部屋の窓から、何気なく階下を見
「今日から、俺の部屋においで」…妖艶な香りと共に寄り添うのは、神西。「い…いつの間に?」驚く凛花の目が、今朝は注がれなかった自分の背後を見ていると気づく。やはり…忘却のキスの効果は短いと知る。「…忘れ物に気づいて…取りに行こうと思って来た」「…え、何を、忘れたんですか?」「替えの…ネクタイを」取り返しのつくものだったとホッとしたのだろう。凛花はそれでも律儀に言った。「…こんなことになっちゃって…あの、お給料が出たら買ってお返しします」グスッと鼻をすすり、涙ぐむ目元を拭くのを見て、神西はわずかに首をかしげた。なぜ泣く…?引っ越したばかりでたいした荷物はなく、ほかの入居者
…いったいどういうつもりなのか。本当に部屋にやってきた上司が、部下の部屋で普通にスーツの上着を脱ぐなんて…会議室での話は、役員たちが集まってきて呆気なく終わった。2人で中にいた事をごまかすように、とっさに会議の準備を手伝っているふりをした凛花。…お茶汲みまでさせられたところで、神西に声をかけられた。「ありがとう鈴原さん。もうデスクに戻っていいですよ」ドアを開けてくれる仕草が自然で、意外にジェントルマンだと感心したのに…バシッと強めにファイルを押し付けられた。「…このファイル、あとでよく目を通しておいてください」デスクに戻って確認してみれば…中味は小さなメモ1枚。『寄り道厳禁。帰