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放課後の教室

作者: 姫吏祢夢
last update 公開日: 2026-07-03 22:39:10

体育祭実行委員の仕事は、

想像していたよりもすごく、

ううん、ものすごく忙しかった。

まず、各クラスごとに体育館使用の予定表を書く。

次にクラス対抗戦の一覧を先生からもらって、

ホームルームで誰がどれに出場するのかを決める。

それから実行委員の会議。

などなど。

もう普段から課題等諸々忘れてしまう私にとっては、

ハードスケジュールで

実行委員になってからは

いつも玲央に答えを見せてもらっていた。

いつも玲央に頼むと露骨に嫌そうな顔をするんだけど、

なんだかんだ優しいから見せてくれて

「実行委員、忙しいのか?」

と少し心配してくれている。

良い幼なじみを持ったもんだ、私は。

そう思いながらいつも頑張ってきた。

ある日の放課後。

教室には私と湊だけが残っていた。

そう、まだ残っていたのだ。

ポスター作り。

「仕事多すぎない?何でこんなにあるの………。」

私は机に突っ伏して嘆いていた。

画用紙。

マジック。

配布資料。

机の上は大惨事だ。

「まだ始まって十分だけど。」

向かいの席で湊が笑う。

「もう疲れた。」

「早すぎ。まだ最初だろ。」

その声にまた笑ってしまう。

「ねえ湊、ここ何色にする?」

「ここは赤がいいんじゃないか?てか伊吹、文字でかすぎ。」

「えええー…。結構頑張って書いたのに。それなら湊書いてよ。」

私がペンを渡すとスラスラと書く湊。

意外と字、綺麗なんだよね。

「男子なのに字上手だよね。」

「まぁな。書道してたからな。」

「いいなぁ。私も習っておけば良かった。」

「伊吹なら墨汁を服に飛ばして早紀さんに怒られてそうだな。」

湊が笑いながら言う。

「失礼な!」

と私がプリプリしていると余計に笑う湊。

あ、早紀さんっていうのはうちの母親のことだよ。

若くて綺麗でしっかりしていて頼れる自慢のお母さんなんだ。

お母さんは「おばさん」って湊たちに呼ばれたくなくて、

早紀さん呼びを貫かせているの。

おっといけない。集中しないと。

教室は窓から夕日が差し込んでいた。

いつもなら帰っている時間。

なのに今日は二人きり。

なんだか少し落ち着かない。

「伊吹。」

「ん?」

「そこ間違ってる。」

「え?」

ポスターを見る。

「体育祭」

の文字が、

「体 育 察」

になっていた。

「待って!!」

私は慌てて紙を隠した。

「なんで!?」

「知らない。」

「知らないじゃない!」

湊は声を出して笑った。

悔しい。

でも、

その笑顔を見ると怒れない。

「昔から変わらないな。」

「何が?」

「天然なところ。」

「天然じゃない!」

「天然はみんなそう言う。」

「東堂湊。」

「はい。」

「喧嘩売ってる?」

「全然。」

また笑う。

本当にずるい。

そんな風に笑われると。

私まで楽しくなってしまう。

「そういえば、伊吹は小学生の時さ、時間割全部逆に持ったきてたよな。」

「あれは事故!月曜日なのに金曜日の持ってきてしまったの。」

「別の日に給食袋も忘れてた。」

「何で覚えてるのよ!?」

「おもしろかったから?」

湊がまた笑った。

教室は私たちの笑い声以外何も聞こえなくて

静かだった。

湊の笑いが止まってまた作業を進めていた。

時計の秒針だけ聞こえる。

心地良いな。

そう思っていた、その時だった。

窓から強い風が吹き込む。

机の上のプリントが舞った。

「あっ!」

私は慌てて手を伸ばす。

同時に湊も手を伸ばした。

指先が触れる。

一瞬。

本当に一瞬だった。

だけど、心臓が大きく跳ねた。

「……。」

「……。」

先に離したのは私だった。

「ご、ごめん。」

私がしゃがんでプリントを拾っていると

湊も一緒に拾ってくれた。

「別に謝ることないだろ?」

湊が少し笑った。

湊の顔を見ると、湊も私の方を見ていて

目が合った。

一瞬、沈黙が起きた。

でもすぐに校庭から部活の掛け声が聞こえてきて

その音で我に返った。

湊も同じだったみたいで。

「続きやるか!」

「う、うん!」

とまた作業に戻った。

なんだろう。

最近、湊といると変だ。

前はこんなことなかったのに。

「顔赤い。」

「え!?」

「暑い?」

「暑くない!」

「ふーん。」

絶対面白がってる。

幼なじみなのに、

何でこんなに意識しちゃうんだろう。

私の胸の鼓動はなかなか落ち着いてくれなかった。

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