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321.甘い時間⑪

「じゃあ、そろそろ準備するかな」「えっ? まだ朝早くないですか?」さっき時計を見たらいつもよりまだ全然早い時間だったから、正直まだ慧さんとイチャイチャ出来るかと思ってたんだけどな……。「あぁ。今日はちょっと朝一で会議があってさ。その前に先に柾弥と打合せすることがあるから、ちょっと早めに出ようと思って」「そうなんですね……」なんだ残念……。「朝食も会社で適当に済ますから。まだ朝早いし依那はもう少しゆっくり寝てから出勤するといい」そう言って、慧さんがあたしのおでこに優しくキスをして微笑む。少し残念に思うも、慧さんに朝から甘いキスをもらって幸せな気持ちに戻る。「はい……。慧さん頑張ってくださいね」ベッドから起き上がった慧さんに、あたしもエールを送る。「ん。ありがと」そしてまた優しい微笑みを返してくれる慧さん。部屋を出て行ったあと、あたしはまたベッドに潜り込んで、慧さんのいない残り香と温もりをそっと味わう。うぅ……、さっきまで一緒だったのに、もう慧さんが恋しい。もっと慧さんの温もりを感じていたい。一緒にいればいるほど、くっつけばくっつくほど慧さんを好きになる。ホントはもっと慧さんを独り占めしたいって思っちゃう。慧さんは社長さんだし忙しい人だし、そんなの絶対無理だけど。休みの日だって、慧さんとはなかなか合わないし。だから少しでも時間が合えば慧さんと一緒にいたいって思う。でもきっと慧さんは仕事に戻っちゃうと、きっと頭の中は仕事だけになっちゃうだろうし、あたしのことなんか全然思い出したりしないだろうな。慧さんは仕事が一番の人だし、あたしが一番にならないのはわかってるし、決してそうなってほしいわけでもない。実際仕事してる慧さんが素敵だし、それが慧さんだし、そんな慧さんに憧れて好きなんだし。だけど、やっぱり、だからこそ、ふとした時に、一瞬でも、あたしのことも思い出したりしてほしいなぁなんて、ちょっと思ったりしてしまう。なんて、そんなの贅沢で我儘なことだけどさ。一緒にいれて、家に帰ってきたらこんなに甘い慧さんでいてくれてるんだから、それだけで幸せだって思わなきゃな!最初は好きになってくれるだけでいいと思ってたのに、好きになってもらえたらまたそれ以上に望みが出てきてしまう。あ~相手はあの慧さんなんだぞ!付き合ってもらえて一緒にい
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322.想像以上の想い①

「では、瑠偉さん。次はこちらのパターンでお願いします」「わかりました。よろしくお願いします」撮影スタッフさんの指示に返事をして、カメラの前に立つ琉偉。現在、プロジェクトの撮影真っ只中。撮影スタジオで撮影スタッフと共に、あたしは琉偉の撮影をチェックしている。打合せで決めたテーマ通りになるように、あたしは資料をチェックしながら随時カメラマンさんやスタッフに、こちらのイメージなどを伝える役目。今回の撮影は、SEIKAプロジェクトで使う花とコラボした企画。華やかな色鮮やかなたくさんの花に囲まれた琉偉が、カメラの前で満面の笑みでポーズを決める。くーっっ、これこれ!!琉偉のイメージにピッタリ!うん、だってこれはあたしが琉偉をイメージして全部企画した撮影だからね!絶対この色鮮やかな感じが琉偉に似合うと思ったんだよな~!やっぱりこの花の組み合わせのチョイス我ながら最高!と、自分で選んだ撮影の花のセットを自画自賛しながら、撮影を見守る。今回このEveRに関わることは、あたしが中心に考えることが出来て、実は今回のこの企画も自分が決めたもので。EveRの撮影に関しては、どういうイメージにすると、よりその魅力が伝わるかと、どれだけうちのプロジェクトとリンクさせてそれぞれの良さや目的を伝えられるか。そしてうちの仕事だからこそ引き出せるEveRの新しい魅力というのも重視させたかった。そして今回テーマになっているのが『花×EveR』。撮影では何種類ものイメージの違うの撮影が行われる。華やかな明るいイメージの花の時は、可愛い満面の笑みで。落ち着いた品を感じられる花の時は、少し微笑む感じの優しさと大人っぽさを感じさせて。そしてクールな美しさを感じられる花の時は、クールでカッコいい色気を漂わせて。それぞれのそのテーマごとに使う花のイメージは、そのままカフェでも使用する。そのテーマごとに設けたメニューを作り、それぞれのイメージの世界で楽しめるそれぞれのコースも用意。そのイメージごとに撮影をし、EveRのそれぞれのメンバーにも今まで見たことないような魅力を開花させるというのも裏テーマになっている。今まではそれこそグループのイメージだったり、メンバーの決まったイメージだったりっていうのを守ってた所も正直あって。実はそのイメージを一度壊して
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323.想像以上の想い②

「逢沢さん。ちょっといいですか?」次のパターンを撮影前に琉偉の衣装チェンジを待っていると、撮影前に琉偉の衣装を準備しているスタイリストさんから声をかけられる。そして琉偉とそのスタイリストさんの元へ行くと。「瑠偉さんの次の撮影なんですけど。資料にある逢沢さんがイメージされてる感じなら、衣装どちらのがいいですかね?」と、衣装さんが最初に予定していた衣装と新たに用意した衣装のどちらがいいかを尋ねてくる。「そうですね~。本来の瑠偉さんなら、多分こっちを選びがちなんですが、今回のうちのプロジェクトのコンセプトでいくと、逆にこちらですかね。次の花のセットがさっきよりかは落ち着いた感じではあるんですが、服によってその花が際立つので、こちらの白い衣装にした方がいいかなと。次はちょっと一体感というか、琉偉さんと花が自然に溶け合ってるようなそんなイメージにしたいんです」「なるほど。そうですね。じゃあ、こちらのがいいですね。すいません。琉偉さん、こちら着てもらってもいいですか?」自分が伝えた意見で、スタイリストさんが衣装チェンジして、琉偉がそちらの衣装に変更する。「わかりました」それからスタイリストさんの指示通り着替えてきた琉偉が、そのイメージになっているかの確認をするため、その衣装を着て新たな花のセットの前に立つ。そして、それを見たあたしは。「うわ~いいです! めちゃいいです! イメージ以上です!」自分が想像してたイメージよりもっと素敵になっていて、思わずあたしは興奮のまま伝える。「瑠偉さん。そのまま少し顔を上げて、そのままこちら見てもらって少し微笑んでもらっていいですか!?」と、あたしはそのままそのセットに立った琉偉に、興奮しながら指示を出す。そして、琉偉がメージ通りの表情をする。あーもう琉偉わかってる!さすがだわ瑠偉!「あーそれですそれです! 最高ですー!!」あたしは思わずいつものファン目線のテンションが入ってしまう。ダメとは思いつつ、やっぱ目の前でこんな自分の理想通りの表情とポーズを推しが撮影してるとか、マジで最高。あーしっかり目に焼き付けとこう。そしてそのイメージで撮影も進行していく。琉偉はホント理想通りの撮影してくれるよな~。琉偉は元々そういう、周りの人の伝えたいことをちゃんと察知して対応出来る能力が優れていて、気配りも出来る
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324.想像以上の想い③

瑠偉と談笑しながら、ファンと仕事と気持ちが行ったり来たりしてる中。スタジオの入口の方で、なんだかザワザワと騒いでいるのが見える。「うわ~すいません! ありがとうございます! こちら今差し入れいただきましたー!」そして、誰かが来て差し入れをもらったとスタッフさんが大きな声で合図して皆に伝える。ん? 差し入れ??誰だろ。瑠偉の事務所の人かな?と思いながら、その声をした方を見ると……。――えっ!?!?慧さん!?!?そこにいたのは、まさかの慧さんと本村さんの姿だった。えっ、えっ! なんでなんで!?なんで慧さんがここにいるの!?ここ会社じゃないよ!? 撮影スタジオだよ!?てか、顔出すなんて一言も言ってなかったよ!?あたしは現れたまさかの慧さんの存在に、心の中で一人パニックになる。だけど、慧さんが来たところで、あたしはいつものように慧さんの元に駈け寄って行ける訳でもなく、出来るだけあたしはその嬉しい気持ちがバレないように、そのまま仕事モードの自分を保つ。そんな社長の登場に皆気付いてからは、こういう形で社長がまさか現れるなんて思ってないので、スタジオ内のスタッフもさっき以上に騒ぎ始める。「えっ、神城社長。生で見ると更にめちゃめちゃカッコよくない!?」「そこらの芸能人よりイケててヤバいんですけど」いろんな芸能人と仕事をしているスタイリストさんやメイクさんたちの中でもそんな声が上がっていて、こっそり聞き耳を立てていたあたしは、やっぱりそれほどのカッコよさなのだと改めて実感する。確かに芸能人でもない普通の一般人なのに、なぜにあんな立ってるだけでスタイルよくてカッコよすぎてオーラもすごいのか。目の前の瑠偉もそれを言えば確かに芸能人のキラキラやオーラはすごい。だけど、カッコよさの種類が二人は違うというか。慧さんは芸能人の雰囲気とはまた違うんだけど、でもなんか惹きつけられる色気というか余裕さというか。慧さんの仕事の姿勢とか自信とか、そういうのも外見に現れていて、自然ときっとそういう魅力が放たれているような気がする。そんな慧さんは慧さんで、本村さんと壁際で話をしていて、顔も真剣なお仕事モード。「えっ。どうしよう。逢沢さん。神代社長が見に来てる……!」すると、隣の瑠偉もそんな慧さんを見てキラキラした目で、あたしにこっそりと話しかけてく
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325.想像以上の想い④

いきなりのそんな状況で、あたしは思わず素で名前を呼びそうになって、慌てて社長と言い換えた。「どう、されたんですか!?  こんなとこに来られるなんて」こんなとこに来るなんて思ってもいなくて驚きはしてるけど、でも今こうやって会えているのは普通に嬉しい。「どんな風に撮影してんのか心配で……気になって見に来た」えっ、慧さん社長としてこんなマメなことしてるの!?プロジェクト関わってる現場、全部にこんな風に顔出してるのかな?それだけ慧さん自身が力入れてるプロジェクトってことだよね。ていうか、そう言ってる慧さんの表情も険しいというか、社長モードの真剣な顔だし、さすがにこういう時はプライベートは持ち込まないってことなんだな。さすがだ。だけど、この言葉通り、社長としてはあたしが彼女だとかそういうの関係なく、やっぱりまだこの担当を任せるのは心配だったってことかな……。あたしは慧さんに会えて嬉しくて、思わず顔が緩みそうになってたけど、そんな慧さんを見てその言葉を聞いて、また気が引き締まる。「あたしがまだ経験なくて、ご心配かけてすいません!  でもめちゃめちゃ順調です! すごくいい撮影になってるので、出来上がったの見たらきっと満足していただける自信あります!」あたしはそう堂々と今の状況を報告する。ちゃんと出来てるか心配でチェックしに来たんだろうけど、実際すごくいい感じに撮影進んでるし、あたしに任せてよかったって絶対思ってもらいたいから、そこはちゃんと自信持って伝えておかないと。家ではそんなこと言わなかったけど、やっぱ社長に戻ると、あたしがちゃんとこの担当に相応しいかどうか不安を感じていたのかもな。そういうとこは、ちゃんと仕事とプライベートと割り切って判断してるってことだよな。慧さん、最近は、家では甘えさせてくれちゃうから、きっと家では言いにくかったのかも。確かに社長としてなら、慧さんも切り替えること出来るし、社長として思ってることも、この場でならこうやって伝えやすいもんね。「あっ、いや、そういう心配じゃ……」すると慧さんの表情がそのあたしの言葉で少し崩れたような表情になる。え? あたしの言ってる心配とは違う……?どういう心配の違いかはよくわからないけど、でも、ここに実際に来るなんてよっぽどのことだし、仕事内容は確認したかったってことなのかも。「
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326.想像以上の想い⑤

「逢沢さんがいるだけでこの明るさで現場の雰囲気も華やぐというか。逢沢さんのおかげで自分自身も更にいい撮影が出来てます」「いや、そんなそんな! もう瑠偉さんはずっと完璧なんで! こちらの思ってる以上のことをしてくださるので感激してます!」うわっ、瑠偉が褒めてくれるとか嬉しすぎ。推しの撮影を自分が影響してるなんて、ファンとして幸せすぎる……!「……そうですか。なら良かったです。逢沢は自ら皆さんの担当をしたいと立候補したので、意気込みも最初から強くて思いも誰より大きいので、必ずいいものにしてくれると私も期待しています」すると、慧さんまでもがそんな嬉しすぎる言葉を言ってくれる。まさか慧さんがそんな風に言ってくれるなんて思ってなくて、胸がいっぱいになる。心配してるとか言ってたのに、そんな言葉をかけてくれるなんて。ちゃんと慧さんはわかってくれているんだ……。「そうなんですね! うわっ、嬉しいです。ありがとうございます逢沢さん!」そして瑠偉が笑顔と共に嬉しそうに伝えてくれる。そしてあたしも照れくさいながらも瑠偉に微笑み返す。「差し入れもぜひよければ皆さんで時間空いた時にでも」「あっ、差し入れわざわざありがとうございます! ぜひ皆でいただきます!」そして慧さんの気遣いにお礼を伝える。社長自ら差し入れなんてするんだな~。こういう気遣いもさすが慧さんだな。「瑠偉さん! 次の撮影の衣装チェンジお願いします!」するとスタッフさんが瑠偉に次の撮影のため声をかける。「あっ、はい! あの!神城社長!今は時間がなくて申し訳ないんですけど、またいつかぜひゆっくりお話させてもらえたら嬉しいです!」瑠偉が移動する前に少し焦りながら慧さんに伝える。「あぁ。はい。ぜひ。今度改めてゆっくりと」「ありがとうございます! では、少し失礼します!」優しく返した慧さんに、瑠偉も喜んで言葉を返しながら勢いよく頭を下げて、パタパタと衣装チェンジしに行く。フフ。なんか子犬みたいで可愛い。瑠偉は素直な反応を慧さんの前でコロコロと変化させていくけど、慧さんはいたって常に冷静で余裕で大人な表情と対応。こういうところがやっぱり自分の中で、可愛い瑠偉は癒しの推しで、そして慧さんは大人で余裕でスマートで、いつだって憧れる存在なんだよね。そんな風に思っていたら。「逢沢。ちょっとい
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327.想像以上の想い⑥

「頑張ってるみたいだな」「あっ、はい。自分なりに頑張ってます」「ん。仕事ぶりとか、ここのメンバーとの雰囲気見て、ちゃんとそれ伝わってくるよ」「ありがとうございます……!」嬉しい。嬉しい。「あの。いきなり来られてビックリしました。社長がわざわざ差し入れとかするなんて思ってなかったので。お忙しい中でこんな風にいつも現場回る時間まで取られてるなんて知らなかったです」次の準備をしながらバタバタ動いているスタッフの様子をそこで見守りながら、隣の慧さんに声をかける。「いや、いつもしてるわけじゃないよ」「えっ?」「差し入れ。現場になんて今まで自分で持って行ったことなんてないから」「えっ!?」いつもしてないことを知って、あたしは驚いて慧さんの顔を見る。「えっ、じゃあなんでわざわざ今日は?」「気になるからって言ったろ」「気になるって……」「依那がどんな風に頑張ってるのか、どんな風にこの仕事を作っていってるのかこの目で見ておきたかったから」「えっ、それで、ですか?」「そう。だから差し入れは口実。今までそんなことしたことなかった。差し入れするモノとかはさすがにわからなくて柾弥に頼んだけど」「他ではしたことないのに、わざわざ……」ビックリした。今までしたことないこんなことを、わざわざあたしのために……?正直仕事のことは、あたしに任せてる状況で、社長としても特に詳しく気にかけてくることはなかったから。毎日忙しくしている慧さんの中に、あたしのことをそんな気にかけてくれる時間があっただなんて……。あたしのことなんて忙しくしている仕事中は、一切思い出しもしないと思ってた。「実際見る方が自分の中でもちゃんと納得出来るから。しっかり信頼関係出来てるようで……。うん。安心、したよ」「はい。ありがとうございます」慧さんにそう言われて、思わず嬉しくて笑顔が込み上げる。「撮影。まだかかるのか?」「えっ、あ、え~っと。次の撮影で今日は終わり、ですかね」「そうか。なら、終わったら早めに帰るように」「あっ、はい。あの社長はまだこのあともお仕事ですか?」「いや、今日は……」慧さんがそのあとを話そうと思ったら。「社長! すいません。さっきの契約の話。今電話あって、直接向こうと社長が話したいって言ってるんで、折り返し連絡してもらっていいですか?」すると
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328.想像以上の想い⑦

「それ⋯。あたしのことですよね⋯?」「えっ!? そりゃそうでしょ!? 他に誰がいるの」あたしが思わず尋ねた質問に、本村さんは驚いて答える。「だって。なんかあの慧さんがあたしにそんな風になってるなんて、なんか信じられないというか実感なくて⋯」慧さんはいつでも仕事人間の人で、そんなあたしの存在が仕事している最中に影響するなんて、なんだか少し他人事くらいに思えてしまうほどで。「ハハ。そっか。君はまだそんな感じか。なんだか慧の方が片想いしてるような感じだね」「えっ!? まさか!? とんでもない! そんなのありえないです! あたしの方が慧さんよりずっとずっと想いは大きいですから!」と、つい興奮して言い返してしまう。「おぉ。わかったわかった。周り聞こえちゃうよ。落ち着いて(笑)」「あっ、すいません⋯」二人でこっそり話していただけに、思わず声が大きくなったあたしを本村さんが落ち着かせる。「なんだか初々しいよね。君たちはまだまだ」「いや、あたしはずっとそんな感じですけど。慧さんは⋯」「いやいや。オレから言わせたら、あいつも今ようやく初恋をゆっくり味わってるようなもんだからね。君と同じあいつもホントの恋愛に対しては初心者みたいなもんだよ」「あの慧さんが⋯」「うん。今日だって、あいつ的にここに顔出したのは君の仕事ぶりが気になって確認したかったくらいに思ってるから、君にもホントのことはきっと言わないだろうけど」「あっ、そうです。さっきそう言ってました」「ハハ。それだけなわけないでしょ。そんなの表向きなだけだよ。ホントは今日、君と瑠偉くんの二人の撮影があるって知って、ずっと気が気じゃなくて落ち着かなかったから、ここにも我慢出来なくて顔出したってだけの話だよ」「そう、なんだ⋯」えっ、そんな話を聞いて、あたしはただ嬉しいでしかない。慧さんのその言動が、あたしの心臓もドキドキさせる。「だからさ。オレ的には嬉しいんだよね」「嬉しい……?」「そう。ようやくあいつが普通の人間らしく普通の男らしい恋愛や生き方してんなぁって」「今まではそうじゃなかったってことですか……?」「そうだね。今まであいつは自分や誰か特定の相手を優先するとか気にかけて自分じゃなくなるようなそんな人間臭いことしない男だったから。だけど、あいつはアンドロイドなわけじゃないし、血の通っ
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329.想像以上の想い⑧

「本村さんが慧さんのそばにずっといてくださってよかったです」「それを言うならこっちも同じだよ」「同じって?」「君が慧に出会ってくれて、慧に人間らしい感情や人を好きになる気持ちを教えてくれて感謝してる」「いえ! そんなあたしは何も!」「慧は、きっと君が想像しているより何倍も何百倍も君を好きだし大切に想ってるよ」「本村さん……」「慧の中では、誰かを愛すことが出来るなんて考えられなかったことなんだよ。だから、君は君で、君の方が慧を好きだと思ってるかもしれないけど、慧は多分それ以上に重みがあると思うよ」「重み……?」「そう。君をこんなにも好きになるってことは、あいつにとってはとても大きな意味あることで、そんな自分になれてるということは、その重みもすごく大きい。きっと好きの深さや重さは、慧の中で何より価値あることで重要なことなんだ」「そんな大きな意味あることが、あたしってことですよね……」「そうだよ。だから君はちゃんと自信を持っていい。慧のそんな大切な相手に今なれてるということ。それは誰でもない今の君だからそうなれていることを忘れないで」「はい。ありがとうございます……」本村さんの言葉はいつも胸に強く響く。とても大切なことを慧さんの代わりに伝えてくれる。きっと慧さんから直接聞けないような大切なこと・意味あること。それをあたしも無理して聞き出そうとも思わないけど。でも、こうやって本村さんから聞けることがとても有難い。慧さんにとって本村さんがどれだけ大切な存在で、そしてあたしにとっても本村さんはとても重要な存在で、いてもらわなきゃいけない人か、またそれを改めて実感する。「だから、君はどんな時も慧の味方でいてほしい。そしてそのままの君であいつを支えてやって」「はい……」その言葉に本村さんの慧さんへの想いを感じられる。こうやって少しずつ時間を重ねていくことで、こうやって慧さんのことを知っていくことで、その言葉の意味や重みや深さを感じていく。「本村。悪い。この契約に関しての書類。もう一度確認したいんだけど会社戻れるか?」すると、電話を終えた慧さんが戻ってきて本村さんに声をかける。「あぁ。やっぱり変更したいって?」「あぁ。ちょっともう一回契約内容確認してどうするか考えるよ」「了解。じゃあ会社戻るか」「頼む」そして、電話相手との契
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330.想像以上の想い⑨

それから撮影は順調に進み、そんなに時間がかからず終了して、あたしは慧さんに言われた通り、まっすぐ帰宅した。さっき会社に戻った慧さんはやっぱりさっきの仕事が長引いてるのかまだ家には帰ってきてなかった。さっき会ったばっかりなのに、いつも以上にたくさん会えてるはずなのに、少し会ってしまうと、自分への思いがけない慧さんの想いを聞いてしまうと、更に会いたい恋しくなる気持ちが加速する。慧さん早く帰ってこないかなぁ~。あたしはリビングでソワソワしながら帰ってくる慧さんを待つ。そして耳を澄まして帰ってくるのを待っていると、玄関が開く音がして慧さんの元へと駆け出す。「おかえりなさい!」「あ、あぁ。ただいま。なんだ、先帰ってたのか」「はい! あれから順調に進んでスイスイーって全部終わりました!」「そっか。ならよかった」「あっ、柚子茶飲みますか?」「あぁ。もらおかな」「はい! じゃあ、すぐ入れますね」「ん。ありがと」「てか、あのあと慧さん帰ってからももう瑠偉喜んじゃって大変だったんですよ~」あたしは慧さんを出迎えたあと、先にリビングに戻りながらあのあとの瑠偉の様子を慧さんに報告し始める。「フフ。もうあのあとの瑠偉のテンションの高さ」瑠偉が慧さんのファン仲間のような感覚になって嬉しくなって、思い出しながら慧さんに伝えていると。「もういい」「えっ?」後ろから慧さんの声が聞こえたと思ったら、思いっきり腕を引っ張られてなぜか慧さんの胸に抱き締められる。えっ??「帰ってきた早々他の男の話なんて聞きたくない」えっ????抱き締めながらすぐ近くにある慧さんの顔。わけがわからないまま抱き締められるものの、その顔はいたって真面目で戸惑う。「慧……さん?」「お前はオレのモノだよな……?」「えっ? はい……」あたしはよくわからないまま返事をする。「なら黙って」そう言うと、慧さんは更に抱き寄せて唇を強く重ねてきた。えっ? えっ??なんか激しい慧さんにあたしはそのまま受け入れながらも戸惑い続ける。さっきまでの優しい余裕な慧さんとは別人で。なんだか余裕がなく切ない表情をしながらあたしを見つめたかと思ったら、あたしをそのまま求める。そして、少し唇が離れた瞬間。慧さんの胸を少し押して、一瞬離れる。「いきなりどうしたんですか!? 慧さん。何かあ
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