遥真は、相手の空気を読んでくれるその態度に満足していた。彼は自然と柚香の隣に並び、一緒に散歩しながら近況を尋ねる。「プロジェクトは順調?」「順調だよ」「何か手伝えることがあったら、いつでも言って」その言葉に、柚香は足を止めた。遥真も合わせて立ち止まる。「ずっと聞きたかったことがあるの」柚香が言った。「何?」「あなたの中で私はずっと、養われているだけで、一人じゃ生きていけない人だったの?」声は穏やかだったが、その瞳には真剣な光が宿っていた。「違う」遥真は即答した。「ずっとそう思ってなかった? それとも最近になって考えが変わったの?」柚香が問い返す。どうしても答えが欲しいわけじゃない。ただ、はっきりさせないままでは胸の奥に引っかかりが残る。そして深夜にふと思い出したとき、嫌な気持ちに飲み込まれてしまうから。遥真は真面目な口調で答えた。「ずっと違うよ。君が有能な人だってことは分かってる」柚香は、その言葉が嘘だと分かっていた。よく考えてみれば、離婚して正解だったのかもしれない。玲奈の件がなければ、自分は今も遥真の専業主婦を続けていただろう。この先五年、十年は、きっと今まで通り大切にしてくれたはずだ。しかし、その先は……彼は毎日仕事へ行き、自分は毎日家にいる。共通の話題は少しずつ減り、いつか気持ちが冷めたとき、彼は特別扱いも優しさもすべて引っ込めてしまうだろう。彼は浮気なんてしない。約束を何より重んじる人だから。だけど、二人の間に愛はなくなる。何でも話せる関係だったのに、いつしか話すことがなくなり。かけがえのない存在だったのに、いてもいなくても変わらない存在になり。大切な人だったのに、どうでもいい人になり。「愛してる」はいずれ、「今忙しい」に変わってしまう。「柚香」少しぼんやりしていた彼女を、遥真が呼び戻した。柚香が顔を上げると、彼と視線がぶつかる。遥真は手を伸ばし、彼女の手を大きな掌で包み込んだ。黒い瞳には深い愛情が宿っている。「君を傷つけたのは俺のせいだ。でも、自分を疑わないでほしいし、俺の気持ちも疑わないでほしい」柚香は視線を逸らした。元恋人に自分を知り尽くされているのも、時には厄介なものだ。「俺が欲しいのは君だけだ」遥真はさらに一歩近づく。低く優しい声には、人を惑わせるよう
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