あの夜のクラブでのキスとは違い、今の誠は真理の意思を尋ねている。二人の間にはまだ数センチの距離があり、真理が彼を拒絶する余地は十分に残されていた。だが、彼は麗子からもらったキャンディを大切に取っておいてくれて、それをわざわざ彼女の口に運んでくれたのだ。真理には、彼を拒絶することなどできなかった。彼女はわずかに顔を上げ、誠とその甘さを分かち合った。グレープ味のキャンディが、二人の吐息の中でゆっくりと溶けていく。まるで本物の果実のような甘酸っぱさが溶け出していた。昨夜とは違う。誠がゆっくりと身を離した時、真理は自分の耳元に落ちた彼の微かな吐息を感じ、耳の裏が一気に熱くなるのを感じた。彼女は顔を背け、自分の今の動揺を彼に見られまいとした。「勘違いしないでよね。お兄ちゃんがあなたを認めたからって、私があなたと付き合うって決まったわけじゃないんだから」「そんな図々しいことは思っていないよ」湊が彼に、真理へ堂々とアプローチするチャンスを与えてくれた。今の誠にとっては、それだけで十分すぎるのだった。真理は頬を赤く染めながら言った。「わ、私……もう帰るわ」「送っていくよ」真理は気恥ずかしさと苛立ちが混じって、プイッと背を向けて怒ったふりをした。「ついてこないでよ!」誠は彼女のその後ろ姿を見て、まるで自分の縄張りを侵されてシャーッと威嚇している小猫のようだと思い、口角を上げた。「君のお兄さんからの指示だからな」「……」彼女は頬を膨らませてスタスタと歩き出した。誠はその後をついて行った。……夜の海岸線。海辺には夜風を楽しむ人々が何人もいたが、湊は遥の手をしっかりと引きながら、砂浜をゆっくりと歩いていた。遥は辺りをキョロキョロと見回した。「用事があるって、これのこと?」「妻と一緒に食後の散歩をする。これ以上の重大な用事があるか?」もし遥からの頼みがなければ、湊がわざわざ誠に相手してやることなどなかっただろう。将棋を一局指し、食事を一度共にした。それだけで、彼には誠の人柄と覚悟を見極めるには十分だったのだ。湊は遥の頬を軽くつねり、不満げに言った。「お前が気にかけろと言った任務はこれで完了だ。まさか、あいつらの後をずっと尾行しろとでも言うつもりか?」彼が誠に
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