遥は「ああ」と軽く頷いた。潤がなぜここにいるのか、彼女には知ったことではない。紗月はまだこの後にも授業が残っていたため、遥に軽く挨拶をして足早に去っていった。湊が歩み寄り、遥の手を取った。「行こう、キャンパスを散策しよう」「ええ」ただキャンパスを歩くだけではない。あの日、二人がかつて共に歩んだ道を、もう一度辿り直すのだ。……しばらく歩いていると、遥はふざけて少し小高い階段の上に駆け上がり、下にいる湊に向かって両手を広げた。飛び降りる素振りを見せた。「はい、抱き止めて!」湊は仕方がないなというように微笑み、一歩前に出た。学生時代、二人が喧嘩をした後、遥は彼に仲直りのきっかけを与えようとしたことがあった。今と同じように階段の上に立ち、ここから飛び降りるから抱き止めてほしいと、無茶を言ったのだ。だが、あの時の湊は、彼女が差し出したその「きっかけ」を無視した。それどころか、彼女の願いを無残にも踏みにじり、背を向けて立ち去ってしまったのだ。そして今、彼女は再びあの時と同じように階段の上に立ち、湊に向かって手を広げている。湊はもちろん、その意図を理解していた。彼は歩み寄り、飛び降りてきた遥をしっかりと腕の中に受け止めると、そのまま抱き上げてくるりと一回転した。「あの時は、俺が悪かった。本当は受け止めたかったんだけど、瞬たちがいたから、からかわれるのが嫌で意地を張ってしまった」大学時代は、何よりも男のプライドと体面が一番だった。彼女に頭を下げるのはプライドが許さないと、頑なに思い込んでいた。だが、今は違う。むしろ、頭を下げる機会が欲しくてたまらないくらいだった。遥を下ろし、前の交差点に目をやると、車椅子に乗った一人の男がそこに留まっていた。湊の顔から、笑みがスッと消え失せた。だが、避けるような真似はしなかった。この道を通るつもりだったのだ。潤の姿が見えたからといって、わざわざ遠回りをしてやる筋合などない。二人がそのまま近づいていくと、潤から声をかけてきた。「兄さん、義姉さん。奇遇ですね」湊は彼を冷ややかに一瞥した。「怪我はもう大丈夫だったか?」「ええ。ただ、数日前に足の皮膚移植手術を受けたばかりで、しばらくは車椅子生活を余儀なくされています」湊は短く
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